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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第68回 株式会社三基精工

「ややこしいものづくり」に徹して60年
大手メーカーからアテにされる存在に

「飛び込み営業は得意ではないので、『広域商
談会』などで当社に関心を持っていただく企業
と出会い、フォローの営業を数年続けて受注
できるようになるケースが多い」と語る三基精工
の国本正行社長(写真上)と同社の本社・工場
(写真下)

 「創業者の山岸八十八さんは、産業機械メーカーのA社に勤め、定年の数年前に退職して当社の前身の山岸製作所を興しました。昭和40年のことです。ものづくりが好きで手先が器用だったこともあり、A社時代の山岸さんは難しい工程を担当していたようです。その経験を生かして、独立後は工程や設計が『珍しいもの』『ややこしいもの』を率先して受注するようにし、2代目の先代社長はそれをモットーにしました」
 語るのは3代目社長の国本正行氏。国本社長によると、創業間もなく引き受けた仕事は油圧ポンプの部品加工で、山岸氏の独立を聞きつけてある産業機械メーカーの一次下請けが声をかけてきたそうだ。
 その7年後の昭和47年には、工作機械の組み立ての仕事が舞い込み、さらに9年後(昭和56)には半導体を製造する機械メーカーより、位置決めを高速・高精度で実現するXYテーブルの製作を依頼されることに。いずれも『あそこならやってくれる』という口コミや知人の紹介などを機にマッチングし、成約に結びついたものだという。

工作機械などの設備も自社で開発

同社の製作例の検査装置の部品(写真上:溶
接した製缶品をNCフライスで加工。機械加工
後、表面処理・熱処理は協力会社と連携して
対応している)と自社開発した縦型ホーニン
グ盤(写真下)。他にもメーカー等の依頼を受
けて、自動計測器や省力化装置など多数開発
している。

 そして平成3年には下水道工事用の機械の製作に参入。知人に請われて下水道用のパイプを通すための掘削機づくりを引き受け、また新たな業界へとその1歩を踏み出したのだった。
 国本社長が振り返る。
 「特定の業界の仕事だけに特化せず、幅広く色々な業界と付き合っていく……。これは2代目社長が意識し始めたことですが、特定の業界に偏ってその不況に見舞われると、ダメージが大きくなる可能性があります。そのリスクを回避するために幅広く色々な業界と付き合うことを旨としたようです」
 同社のその方針をサポートし、顧客開拓の一助となったのが、当機構が実施してきた「取引あっせん」と「広域商談会」だ。
 「取引あっせん」は、東京や大阪などの大手メーカーから「これこれの部品加工ができる企業を紹介して欲しい」と照会があった際、当機構では県内の複数の企業に打診し、のちの商談を依頼するもの。取引条件が双方で合意に至れば成約となり、受発注に結び付くというものだ。
 この「取引あっせん」で同社では、金属製品製造業のB社、一般機械メーカーのC社、前出とは別の工作機械メーカーのD社とマッチングして成約。D社からは、部品づくりの他に組み立ても依頼されるようになり、これらの企業からはその後も継続的に受注するようになったそうだ。
 また「広域商談会」は、東京、大阪、名古屋などで毎年開催される商談会。富山県内のものづくり企業数十社がそれぞれの都市の商談会場に赴き、現地の大手メーカーやその一次下請けとマッチングするものだ。その「広域商談会」に同社は可能な限り参加し、多くの企業と成約に至り、中には大口の発注を続けてくれる企業もあるそうだ。
 大手機械メーカーのE社は、最初は引張り試験機の部品づくりと組立てだったが、他の仕事にも発展。交通関連機械メーカーのF社、バルブメーカーのG社、自動車の検査装置メーカーのH社などからも依頼されるように。E社との取引では、後には同社から中古のホーニング盤(筒状の金属部品の内径を磨く機械)を譲り受けたのだったが、長年使ううちに劣化し、ホーニング盤メーカーも少なくなっていたことから、「ならば自分たちでつくろう。設計、部品づくり、組み立て、完成品への仕上げの技術を有しているのだから、工作機械もなんとかなるのではないか。技術力を高め、みんなのモチベーションを上げるよい機会だ」と、ホーニング盤もつくったのだった。

二度の大不況を乗り越えて

三基精工の工場内の様子(写真2点とも)。同
社では、自社開発の治具で難削材や複雑な形
状の製品も高精度に加工している。

 こうして幅広い業界での顧客開拓に努めてきた同社であったが、平成20(2008)年秋のリーマンショックでは大打撃を被った。
 「創業以来この年まで、多少の波はあったものの、ほぼ右肩上がりできていました。ところがリーマンショックのあおりを受けて、売上は80%減少。工場の機械はほとんど動かなくなりました。専任の営業マンがいない当社では、私や他の役員が営業を兼務していて、連日お取引先回りを行いました」(国本社長)
 国本社長は当時、専務取締役だった。2代目社長とともに、国の雇用調整助成金の活用、金融機関からの借入と返済猶予の相談など「やれることは全てやった」のだそうだ。
 令和2年春から始まったコロナ禍も、他の多くの企業と同様に同社にも暗い影を落とした。売上は半減し、前回同様に国の雇用調整助成金の他に当機構の補助事業も活用することに。令和4年度の「富山県中小企業ビヨンドコロナ補助金」の採択を受けて、工場の空調設備の更新を図って、作業環境を改善。翌年度も同様の補助金の支援を受けて、工場の照明のLED化を進め、前年度の事業と合わせてコストダウン(電気料金の削減)を進めることができたという。
 この2つの不況の嵐の谷間で、国本専務が社長に昇任。平成28年夏のことだ。
 「広域商談会」への参加は従来同様に続け、「ややこしいものづくり」を依頼してくれそうな企業との出会いを期待して、令和5年からは「富山県ものづくり総合見本市」(隔年開催)にも出展するように。こうして地道にマッチングの場に参加したり、口コミや紹介などで新たに出会ったりしているうちに、時期は順不同ながらも、食品メーカーの省力化装置、薬品容器の検査装置、工業系の大学から依頼されての実験用装置、機械メーカーから依頼されての原子力発電所用の自動装置なども受注するようになったのだ。
 量産ものではなく、ややこしいもの(一品もの、小ロットもの)にこだわるのはなぜか? 量産ものは価格勝負での安値合戦になり、経営の安定や技術の蓄積に繋がらないから。部品の製作だけではなく、その装置の組み立てまで一式で受注するようにして、売上げの拡大や利益率の向上を図ってきたのだった。

人づくりは如何に・・・?

業務に必要な資格はすべて取得し、品質検査
の研修や外部の加工技術向上の勉強会・講習
会には積極的に参加している(画像2点とも研
修や講習会などの様子)。

 この「ややこしいものづくり」を担う人材を同社ではどのように育成しているのか? そのあたりを国本社長にうかがうと次のような答えが返ってきた。
 「新卒は工業系の学部・学科の出身者、中途採用は当社と類似の工場で働いた経験がある人を対象に、『ややこしいものづくりを中心に受注している』と最初に明らかにし、初めの1年間はいろいろな部署を回って多くの経験を積んでもらいます。そこで本人の希望を尊重し、また部署の先輩の要望も聞き入れ最初の配属先を決めます。配属先が決まって、ある技術に習熟しても、それをさらに向上させるために技術セミナーなどには積極的に参加させます。これを繰り返すと、『ややこしいものづくりが好きな職人集団』ができるのです」
 ちなみに「山岸製作所」から「三基精工」に社名変更したのは平成13年のこと。3つのこと(「納期、品質、コスト」の3つ)を基本的に守り、客先の精工なものづくりのニーズに応えていく・・・、という思いを込めているそうで、「最近ではそこに従業員の発案で『誠実、信頼、創造』も加味して、よりややこしいものづくりに取り組んでいます」と国本社長は胸を張った。

連絡先/株式会社三基精工
〒939-3552 富山市水橋肘崎668-5
TEL 076-479-2710
FAX 076-479-2711
URL https://sankiseiko.com

作成日  2026/10/01

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