第79回 合同会社ポラリス 富山県よろず支援拠点 ワクワクチャレンジ創業支援事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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第79回 合同会社ポラリス

障害児の楽しい居場所づくりで起業

発達支援の姿勢も評価されて

「子どもたちを自然の中で遊ばせ、発達の
支援をしたい」と「障害児通所支援」の施設
「くじらぐも」を開設した小幡久美子代表。

 「令和3年4月1日、『くじらぐも』はオープンしました。初日には、ピカピカの小学1年生が4名来てくれました。利用者募集は2カ月前からしかできなかったので不安でしたが、子どもたちの笑顔を見ることができてほっとしました」
 「くじらぐも」は、(合)ポラリスの小幡久美子代表が運営する、障害児の通所を受け入れている施設のこと。半年ほどして定員の10名を満たすようになり、令和6年度から運用を開始した「となりのくじらぐも」と合わせて、1日平均20名程度を受け入れるまでになった。
 小幡さんの創業の経緯に入る前に、まずはその事業概要を紹介しよう。「何度か取材を受けたのですが、なかなか理解していただけないケースもあって・・・」と小幡さんは取材の冒頭で話されたが、実は、編集子もその1人。小職の場合は、「学童」(あるいは放課後児童クラブ)と小幡さんらが取り組む「放課後等デイサービス」を混同したことが誤解の一因であったが、それを防ぐためにも事業の概要から説明しよう。

放課後等デイサービスとは・・・

「くじらぐも」の外観。2階建ての「となりのくじらぐも」は
令和6年度から運用開始。午前中は主に未就学児を
対象とした「児童発達支援」、午後は小・中学生を
対象とした「放課後等デイサービス」の場として2施設
合わせて1日平均20名を受け入れている。


 正確にいうと、小幡さんらが取り組む事業は「障害児通所支援」と呼ばれる障害(者)福祉サービスのひとつだ。この支援制度は平成24年、児童福祉法の中に定められたことで始まった。
 「障害児通所支援」には、目的や対象によって以下の4つの支援がある。
①児童発達支援・・・未就学の障害のある子どもが対象。生活力や対人関係を円滑にする能力などの向上を支援する。
②放課後等デイサービス・・・小学生から高校生までが対象。放課後や休業日、長期休暇中に生活力向上の支援などを行う。
③医療型児童発達支援・・・上肢・下肢・体幹に障害のある児童を通わせ、基本動作や知識技能を習得し、集団生活に適応できるような訓練と医療的なケアを提供する。
④保育所等訪問支援・・・障害のある児童が通う園や学校を訪問し、集団生活に適応するための支援を行う。
 各種支援を受けるためには利用者(保護者)が市町村に申請し、児童の状況に合わせて支給量(利用日数)が記載された「通所受給者証」の交付を受ける。交付後に利用を希望する支援事業所に連絡を入れ、利用スケジュールを確認の上、支援を受ける。利用料は支援の内容や量によって予め決められており、その9割は自治体から給付され、利用者の負担は1割と定められている(所得により上限額あり)。
 ポラリスが行っているのは、「③医療型児童発達支援」を除く3つの支援だ。通所する児童は、自閉スペクトラム症、ADHD(注意欠如多動症)などの発達障害を持つ例が多い。小学校に隣接する施設や地域の公民館等で、健常児を対象にしている「学童」とはまったく異なるものだ。

幼稚園退職後にこの事業と出合う

通所する児童とゲームなどを楽しむ様子。(個人情報
保護のため、児童の画像はぼかしています。以下同)

 

 小幡さんは学卒後、20年近く幼稚園教諭として働いてきたが、体調不良をきたして退職。実はこの退職の年(平成24年)、「障害児通所支援」の制度が始まったのだが、「当時は、制度が始まったことは知りませんでしたし、子どもに関わる仕事に復帰することも想定していなかった」そうだ。
 再び子どもと向き合うようになったのは、自然保育を行っているある保育園から連絡をいただいたのがきっかけ。その主宰者がケガをして動けなくなったため、「復職できるまで手伝って欲しい」と請われたのだった。その半年あまりの経験をFacebookで情報発信していたところ、富山市内で障害児通所支援を行っているある事業者から「事業所を増やす計画を持っているので、手伝って欲しい」と連絡を受けたという。そこで施設長として働きながら、障害児通所支援について詳しく知るようになったのだ。
 その事業所で3年目を迎えた令和2年のことである。新型コロナウイルスの蔓延により事業所が勤務調整を行うようになった際、小幡さんは来し方行く末に思いを馳せ「自分が理想とする通所支援事業所をやってみたい」と創業の意欲が芽生えたのだった。
 ポラリスが産声を上げたのは、令和2年7月だ。翌年4月からの児童の受け入れを目指して準備を進めた。まずは候補地・物件探しからスタート。小幡さんが理想とする通所支援事業所は、ビルの1室に施設を構えるスタイルではなく、広い庭を備えて子どもが外で遊びたいといえばすぐに遊べる環境。また周辺の住宅とは少しの距離を保ちつつも、地域の人々と交流ができる事業所を目指したのであった。
 そして一方では、知人に勧められて当機構の富山県よろず支援拠点を訪問。前の職場では施設長を務めて、収入や支出のあらましは把握していたため、それを参考に事業計画書を作成し、よろずのコーディネーターにアドバイスを求めたのだった。
 小幡さんが振り返る。
 「コーディネーターには福祉事業のあらましを説明し、収支の試算なども見ていただきました。そこでアドバイスいただいたのは、私が試算したいくつかの支出項目に対して『ここはもう少し多めに見た方がいい』というものでした。そこで福祉事業所の税務に詳しい税理士を探し、事業企画書をブラッシュアップしたのです」
 またコーディネーターに相談した際には、「実際に事業を始めるようになったら、機構には『ワクワクチャレンジ創業支援事業』という創業者を助成する制度があるから、ぜひ活用したらよい」と勧められたのだった。そして、令和3年度に入ってその支援を仰ぎ、ホームページの制作や絵本・遊具の購入などに役立てたという。

金融機関も事業計画を評価

天候のよい日は子どもたちは庭に出て遊ぶことが多い。
庭の片隅には畑があり、秋にはさつまいも掘りが予定
されているという。

 

 小幡さんが、「放課後等デイサービス」の“商圏”と想定したのは、富山市の北東部、具体的には国道8号より北側、西は四方・金山新のあたり、東は水橋のあたりまでとする地域。その中ほどに事業所を構えると、児童が通う小学校からの送迎が30分程度以内になると予想し、そのエリアで物件探しを行ったのだ。
 すると、小幡さんが理想としていた環境にある、もう何年も使われていない元はクリニックという建物に遭遇。管理する不動産業者に中を見せてもらうと、建物本体は使えそうもなかったが基礎はしっかりしていた。また建物の南側には広い庭があり、さらに南には公民館が。西には保育所・公園が広がり、多少大きな声を上げてもよいような好立地だった。
 「迷うことなく、そこで『くじらぐも』を開く決断をしました」
 と小幡さんは当時を振り返るが、税理士の支援を受けて策定した事業計画書を携えて、初期の事業資金の融資を金融機関に申し込むと、「金融機関では調査チームを編成し、商圏調査、潜在需要などを調べ、事業としての可能性を評価し融資してくれた」(小幡さん)のだそうだ。

利用者募集は2カ月しかなかったが・・・

取材当日、「放課後等デイサービス」の支援を受け
て通所してきた児童たちと、スタッフの皆さん(写真
上)。写真下は「くじらぐも」から南の方角を望んだ
様子。前方の建物は地元の公民館。たまたま鯨の形
に似た雲が・・・。

 課題は、利用者募集だった。法人を設立し、「くじらぐも」を整備することは、土日等を利用して前の職場での勤務と並行して行えたのだが、退職する令和3年1月末まではいわゆる告知活動・販路開拓はできなかったのだ。
 「他の施設では、前年から利用者募集を行っており、私が告知活動を始めた2月1日には、ほとんどの児童の通所先が決まっている状況です。それでも告知しなければいけませんので、私たち施設側と保護者の間を取り持つ機関として相談支援事業所というものがあるのですが、そこを通じて保護者の皆さんに告知していただきました。驚いたことに富山県内のほぼ全域から『児童発達支援』が対象とする障害を持った未就学児の保護者からたくさんの問い合わせをいただきました」(小幡さん)
 その告知活動の結果が冒頭に紹介した4名の1年生と、保護者と一緒に定期的に通う30名あまりの未就学児であった。4名は小幡さんが“商圏”と見込んだ地域の小学校に通う児童であったが、未就学児の居住地は富山市はもちろんのこと、滑川市、魚津市、立山町、上市町、舟橋村、射水市などの周辺の市町村もあったという。
 県内全域から注目を浴び、またこの後「放課後等デイサービス」で順調に利用者を伸ばしてきたのは、「くじらぐも」が単なる預かり施設として児童を受け入れてきたからではない。同所の特色は、児童の発達を支援するプログラム(言語・コミュニケーション、認知・行動、運動・感覚、健康・生活、人間関係・社会性の5領域に沿った支援プログラム。令和6年度からはさらに拡充)を取り入れていることだ。小集団の中で、仲間と一緒にこのプログラムに取り組むことで、経験を増やし、自信に結び付けて欲しいという「くじらぐも」の姿勢が評価され、利用者を伸ばしてきたのであった。
 その結果、ポラリスは営業初年度から黒字を重ね、本年度からは「となりのくじらぐも」でも事業を開始し、児童の受入れ人数を増やすとともにスタッフの拡充も図るようになったのだ。
 ちなみに社名の「ポラリス」は北の空で輝いて旅人を導いてきた北極星に由来する。障害児の道しるべになりたいというポラリス代表としての思いの表れか。また「くじらぐも」は「小学校教科書こくご一(下)」(光村図書出版)に掲載されている物語『くじらぐも』にちなんだ様子。鯨のような大きな雲に乗って子どもたちが楽しいひと時を過ごすように、通所施設「くじらぐも」を楽しい居場所にしてもらいたいという小幡さんの願いが込められているようだ。

連 絡 先 :合同会社ポラリス

所 在 地 :〒931-8417 富山市古志町3-1-1

従 業 員 :11名

 T E L  :076-460-0206 F A X :076-460-0823

 U R L : https://www.kuziragumo-toyama.com

作成日  2024/6/11

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