TOP > 中小企業ルネッサンス > 第67回 株式会社カワベ
大型の金型製作に特化してノウハウ蓄積
大手ものづくり企業からも受注するように
「当社の強みは、国内有数の大型加工設備、
短納期、高精度製品の安定供給」と胸を張る
川邊博己社長(写真上)と同社の社屋(写真下)。
「私のおじいちゃんは割と新しいもの好きで、福光のこんな田舎の工場に、県内でもまだ珍しかった大型のマシニングセンタを昭和61年に導入し、自動車部品の金型などをつくっていました。そのマシニングセンタの操作法を真っ先に覚えたのがおばあちゃんで、自分がマスターしたら他の社員に教えていました。おばあちゃんは高卒で、工業科出身ではなかったのですが、最先端のリケジョでした」
語るのは(株)カワベの2代目社長の川邊博己氏。「おじいちゃん」は川邊社長の祖父であり、創業者の川邊清氏、「最先端のリケジョのおばあちゃん」は創業者を支えた妻のふじ子さん。カワベは、南砺市福光の郊外の田園地帯に工場を構える企業であるが(従業員は創業時から今日までおおむね10名前後)、自動車や飛行機、半導体製造装置などの金型や金属部品づくりに携わってきた、小さいながらもキラリと光る技術を持った企業だ。
同社の設備の例。写真上は導入して間もない
高速立型マシニングセンタ、写真下は門型マ
シニングセンタ。
創業は昭和45(1970)年。大阪で一旗揚げて鉄工所を営んでいた清氏だったが、健康を害して福光に帰り、再起を期して起業した。
「おじいちゃんの友人が重機メーカーに勤めていて、その縁で重機の部品づくりからスタートしたようです。そして後に、近くにあった金型メーカーから仕事を依頼されるようになり、そこでノウハウを蓄積して金型や金型の部品づくりをメインにするようになりました。その発注先に自動車メーカーの一次下請、二次下請があり、丁寧に仕事をこなす中で信頼関係をつくってきたようです」
川邊社長は祖父からの伝承を以上のように語り始めた。そして昭和61年、前記のように大型のマシニングセンタを導入したのだ。地方の中小企業にとっては“大きな賭け”のような設備投資であったが、そこには祖父なりの考え方があったという。川邊社長の回想をまとめると「競合他社との差別化を図ることが目的だった」ようだ。
ご承知のように本県はものづくりが盛んで、金型メーカーも多数存在している。そのほとんどが中型、小型の金型を生産し、技術の向上とともにコスト削減に努め、受注競争にしのぎを削っている。カワベの創業者は、競合他社が多い中では独自性を出すのは厳しいと判断し、製造が難しい大型の金型づくりを模索。そのために大型のマシニングセンタを導入し、差別化を図ろうとしたのだった。
この大型マシニングセンタを操作したのがリケジョおばあちゃんだった。
「おばあちゃんはコンピュータ制御になる前から工作機械を扱っていて、説明書を読みながら独学で操作方法を習得したようです。当社は初期には女性の従業員が多く、おばあちゃんは彼女らにも操作法を指導し、私の母にも教えていました。私の母は今は事務仕事に専念していますが、少し前までは現場に入って、男性の従業員に混じって金型づくりに携わっていました」(川邊社長)
同社工場で働く社員の皆さんの様子(写真2
点とも)。奥行きのある大型の金型の製作な
どでは、工具の取り付け方で寸法精度が異
なってくるという。
バブル景気の終盤、「行け行けドンドン」の波に乗って受注を伸ばした同社であったが、バブルの崩壊が同社を襲った。
川邊社長が祖父とのやり取りを思い出しながら語る。
「おじいちゃんがよく言っていましたが、バブル崩壊の時は確かに厳しかったけど、仕事の依頼は途切れなかったようです。大型の金型づくりができるところが少なかったからでしょう。ところがそのおよそ20年後のリーマンショックの時は、仕事はほとんどなくなって、売上は前年の2割くらい。リーマン・ブラザーズが破綻した翌年の2月頃は、会社は開店休業状態が続き、ストーブで暖をとって帰るだけの日が続いたそうです」
リーマンショックは平成20年9月、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻によって起きた世界的な恐慌のこと。カワベのみならず多くの企業が打撃を受けた。「不況のあおりを受けて、先代社長は一時は廃業を考えたこともある」(現川邊社長)ようだが、気を取り直して中京地区の企業を訪ねての営業活動に勤しんだという。
これには伏線があった。同社は平成14年頃より当機構が実施している「取引あっせん」(県外の企業等からの外注先の紹介事業。当機構では複数の候補企業を紹介し、商談は企業間で実施)や「広域商談会」(東京、大阪、名古屋等に県内のものづくり企業が赴き、メーカーや一次下請とマッチングを行う商談会。年に2〜3回開催)にはよく参加し、商談の経験を積み重ねていた。また中京地区には大型の金型を発注する企業があり、営業に回りやすいという感覚もあったようだ。
ただ先代社長はここで、中京地区の企業のオーダーに答えられないもどかしさを痛感。要求される加工精度や加工時間の短縮は従前に比べてはるかに進み、中京地区のものづくり企業との技術力の差を見せつけられたようだ。そこで川邊清社長(当時)は、工作機械に取り付ける工具の品質を上げ、そのセットの仕方などの正確さを向上させるために、人材育成に注力するようになったのだ。
「コンピュータ制御の工作機械を入れたら、どこの工場も同様の精度で加工できるとは限りません。同じようにプログラムしても、工具の取り付け方、工具の刃先の摩耗具合、工具の取り替え頻度によって、寸法の精度や加工表面の滑らかさ、加工時間はまったく異なります。特に当社が得意とした大型の金型製作では、奥行の深いものを加工したりするため、工具が長くなります。長い工具を工作機械に取り付ける際、正確に取り付けないと高速回転によってブレて、寸法がピタリとこないとか加工面が粗くなったりするのです。おじいちゃんはそれをなくすために、社を挙げて工作機械を扱うことを基礎から学び直したのです」(川邊社長)
航空機関連での同社の製作実績。
写真上は治具部品(1500mm×400mm)、
写真下は実験用製品(3000mm×400mm)。
こうしたことが功を奏して同社の加工技術は徐々に向上し、時にはドリルやエンドミルなどの工具メーカーに、その改良やカワベ用のオリジナル工具の開発を求めるまでに。また、更なる人材育成を図るために「高度ものづくり人材確保支援事業」(平成27年度)を活用し、大手工作機械メーカーを定年退職したエンジニアを再雇用し、従業員の技術指導に当たらせた。そして翌年には「ものづくり人材育成支援事業」の採択を受けて若い従業員を採用し、前述のエンジニアとリケジョおばあちゃんが、工作機械の操作方法を手取り足取り指導したのだという。
川邊社長が振り返る。
「この少し前から、国のものづくり補助金に応募したり、この人材確保の助成事業も申請したりするようになり、書類は私が作成しました。商談会への参加も私が決めるようになりました。確か平成27年か、28年の名古屋での広域商談会だったと思います。日本で数社しかその技術を持っていないというA社と商談する機会を得て、金型づくりを受注することができました。その厳しい品質基準にお応えしているうちに、航空機や半導体製造装置に関する金型や部品加工を依頼されるようになり、また電鋳というニッケルによるコーティングによって製品の表面を滑らかにする特殊金型の製造にも関わらせていただくようになりました」
事業承継は、コロナ禍のど真ん中の令和3年に行った。創業者の天界への旅立ちに伴って、孫の博己氏が社長を引き継いだ。前社長の晩年から、経営の実務を移譲されつつあったとはいえ、未曽有のコロナ禍は容赦なく襲ってきたそうだ。三交代で「不夜城」といわれた前出のA社からの発注も激減。祖父から引き継いだ“大型の金型製作に特化し、技術力を上げる”をモットーに事業を続けたところ、「取引あっせん」(令和4年)により大型の機械装置メーカーとのマッチングの機会を得て、受注したのだった。
同社では品質の良いドリル、エンドミルなど
の工具を、適切に交換して、加工対象物の寸
法を正確に出すよう心がけているという。
コロナ対策としては、同社では「富山県中小企業リバイバル補助金」(令和3年度)の採択を受けて、大型マシニングセンタにオプションの加工ソフトを導入。これにより小物の金属加工が可能になり、マシニングセンタの生産性が上がった。また同年「富山県中小企業者緊急支援補助金(通称「ミニリバイバル補助金」)」を活用し、切削や穴あけなどに利用する汎用フライス盤に装置を一部追加し、熟練工と同等の加工ができるように改良し、受注拡大への環境づくりに努めた。そして翌年には「富山県中小企業ビヨンドコロナ補助金」の支援を受けて、工作機械の主軸からエアガンのように空気が噴射するように改良。切削によって生じる金属の粉塵、切子を吹き飛ばし、作業環境の改善を図ったのだった。
新しい金型づくりにも取り組んだ。数年前の広域商談会を機に取引が始まったB社が、自動車メーカーのギガキャスト化に応えてその実施を模索し始め、外注先のカワベにその協力を求めてきたのだ。ギガキャストとは、例えば従来は50個の部品を溶接によって一体化していたものを、最初から一体成型で作り出す製造技術。部品点数を少なくして生産性を高めようと、電気自動車などで導入されつつある製造技術である。
同社ではB社のニーズに応えるために、「とやま中小企業チャレンジファンド事業 ものづくり研究開発支援事業」の採択を受けて、ギガキャストの製法開発に挑戦。数十トンから数百トン単位の金型に、多数のネジ穴を正確な位置に、正確な大きさで加工するために、専用の工具も調達するなどして取り組んだ。
「金型の大型化は、自動車業界に限らず今後求められる傾向にあるでしょう。それは当社にとっては追い風になりますが、社員にとっても楽しみな点があるようです」
と川邊社長は語る。その意味するところは、例えば自動車の金型の場合、外見から「あれは僕がつくった金型からおこされた○○だ」と推測できるようになる。製作した金型が内部に組み込まれて見えなくなるよりも、つくり手としてはやりがいを感じるとともに仕事へのモチベーションも上がってくるのだという。
「建設業界では地図に載る仕事という言い方をしていますが、それに近い感覚でしょう」
川邊社長はそういって、工場で働く7名の従業員の矜持を推し量り、彼らの活躍による同社のますますの発展を期待するのであった。
連絡先/株式会社カワベ
〒939-1610 南砺市福光690
TEL 0763-52-5600
FAX 0763-52-5587
URL https://www.kawabe-k.co.jp
作成日 2026/03/27
