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研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第29回 ライフケア技研株式会社

連携で、一気に進んだ発汗チェッカーの開発
セルフメディケーションに大いに貢献して・・・

ライフケア技研の各種の機能性パッチ。販売第1号の「アルコール
体質試験パッチ」は左上の赤い箱。

 形状的には、救急絆創膏に近いライフケア技研の機能性パッチ。貼るだけで本人の生体状況や体質をうかがい知ることができるスグレモノだ。
 最初に発売されたのは「アルコール体質試験パッチ」。その名のとおり、貼るだけでアルコールに「強い」・「弱い」・「飲めない」の体質がわかり、若者の一気飲みによる急性アルコール中毒の予防やアルコールハラスメント防止に役立つと、今も人気の一品だ。その後同社は、「皮膚水分チェッカー」や「リラックス度チェッカー」「頭皮脂チェッカー」などを相次いで世に送り、今回の研究開発の基ともなった「発汗チェッカー600」を発売したのは、平成22年2月のことだった。
 「発汗チェッカーは元々は、ある学校の先生から『子どもたちがサッカーに夢中になって、水分補給のタイミングを逸して熱中症に近い状態になることがある。それを防ぐことはできないか』と相談を受けたのが開発の始まりでした」
 横井秀輔社長はそう振り返るが、富山大学医学部の協力を仰ぎながら、腕の発汗量から全身の発汗量を換算するノウハウを蓄積し、熱中症予防の一助となるパッチをデビューさせたのであった。
 それから3年半後の平成25年の暮れのこと。思いもよらぬところから問い合わせが入った。

大手企業から相次いで声が・・・

腕に付着した「発汗チェッカー600」とその改良タイプの「発汗
チェッカー1500」(写真下)。ちなみに上の画像では、多少の
汗をかいたため300mlの水分補給をすすめている。

 問い合わせの主は、関電プラント(関西電力グループ)の関係者だ。平成24年夏頃から同社では、熱中症対策のために、高温の作業現場で発汗チェッカー600を用いていたが、その関係者は発汗チェッカーの使用感を伝えるとともに、「脈拍や深部体温も計ることができたらありがたい」と計測器具のウエアラブル化(装着型の小型コンピュータ端末化)について打診してきたのである。その意図するところは、作業者本人が働きながら自己の体調管理を継続的に行い、危険な状態に近づいた際は、ウエアラブル端末が音や振動で警告を発するようにする。また計測データは、作業現場の監督者も同時に知ることができるようにし、万一、作業者が警告に気づかなかったとしても、監督者が注意できるようにしたいという。さらには、将来的には集積したデータを本社の健康管理部門や産業医などがビッグデータ化し、それを解析することを通じて、より効果的な熱中症対策を講じることができるようにしたい、という遠大な構想を持ったリクエストをライフケア技研に寄せてきたのであった。
 「従来のパッチは、化学的なノウハウがあればつくることができます。われわれは、それについては詳しかったので開発も製造も内部で可能でしたが、ウエアラブル化では試行錯誤の連続でした。何よりもわれわれには、電気・電子的なノウハウがなかったのです」とパチェック事業部の広川諭部長は当時を思い起こす。
 そこで同社では、当機構の「ものづくり研究開発支援事業」(平成26年度)の採択を受けて「ウエアラブル熱中症予兆チェッカー生体計測機器の開発」に着手。富山大学工学部の教授がオムツの濡れを静電容量で検知・測定する電子回路の研究をしていることを知り、教授の協力を仰いで発汗量を測定するウエアラブル機器の開発に乗り出すとともに、脈拍や深部体温の計測法についても探り始めたのである。
 深部体温は一般的には、体温計を口にくわえて安静にする、あるいは肛門または耳の穴に体温計を差し込んで安静にして計測する。ただこうした計測は、作業しながらでは不可能なため、同社ではサーミスタ(温度を計測するセンサの一種)を用いることを試みるも、そのセンサでは作業現場の環境温度による影響を受けやすいことと、その計測値と深部体温の相関性がほとんど認められなかったことが重なり、深部体温の計測は断念して発汗量と脈拍の計測に絞って開発を進めるようにした。
 ウエアラブル型の生体計測器の開発は、初めは五里霧中であった。電子回路、電極、バッテリーから構成される機器は、当初は一体化することなく開発が進められるのだが、平成26年11月に行われた医療機器の展示会「HOSPEX Japan2014」(東京ビッグサイト)にデモ機を出展した際、今度は大手電機メーカーの研究者から声をかけられ、様々なヒントをもらう。これを機にライフケア技研では開発の方向転換と電機メーカーとの共同研究のチャンスを得、ウエアラブル化は一層進むことになった。

共同開発によりウエアラブル化が進展

横井社長とともに、ウエアラブル型発汗チェッカーの開発やPRに
取り組んできたパチェック事業部長の広川諭さん(上)と、ウエア
ラブル型発汗チェッカーの試作機を展示した猛暑対策展の同社
のブースの様子。

 それに拍車をかけたのが、その開発が平成28年度の国の「戦略的基盤技術高度化支援事業」(通称:サポイン)に採択されたことだ。従来から一緒に研究してきた富山大学に加え、関電プラントが正式に名を連ね、スポーツウエア大手が側面から応援するとともに、先の大手電機メーカーは“縁の下の力持ち”として、技術協力に多大な役割を果たすことになった。
 申請したテーマは「発汗計を搭載した世界初のウエアラブル型熱中症予兆チェッカーの開発」。使いやすくて便利な、腕時計型の熱中症予兆機器を開発しようという。当初の試作段階では発汗センサ(水分量計測器)をライフケア技研が主体となってウエアラブル可能な形態として開発し、電機メーカーから電気・電子関連の技術供与を受けたリストバンド本体(脈拍センサと通信モジュール、LCD、充電バッテリーで構成)をリード線でつなぐ分離型としていたが、展示会等でのユーザーからのニーズに基づき、リストバンド本体に発汗センサを内蔵した一体型へと研究開発を発展させていった。
 「付着型の発汗チェッカーは、腕の中ほどで発汗量を計測し、そこから全身の発汗量を換算していました。長年の研究で、換算の係数を得ることができたのですが、ウエアラブル型では手首で発汗量を感知しますので、新たに係数を求めなければいけなくなりました。その係数を割り出すのが、難点の1つでした。一口に発汗量といっても個人差が大きく、係数を求めるためだけに半年ほどを費やしました」
 と横井社長はサポインでの共同研究でネックになった点を紹介しながら、「脈拍の計測でも難しいところがありました」と大手建設会社の協力を得て行った使用実験の様子を続けた。それを要約すると以下のようになる。
 ウエアラブル型の試作機を土木工事の現場で試したところ、削岩機を使用するなど激しい振動をともなう作業現場では、脈拍の計測がうまくいかないケースが発生した。その原因は、作業機や重機の激しい振動が脈拍計測の障害になった、あるいは電子回路にバグ(コンピュータのプログラム上の不具合)が生じたためで、これらについてはその都度改良が加えられ、現在では問題ない状況になっているという。
 再び広川部長が語る。
 「展示会等で一体型の試作機を紹介すると、以前の分離型チェッカーの何倍もの反響がありました。製鉄所など、作業現場に高炉があるところが多く、また建築や土木工事など屋外で仕事をされる方々からも注目されました。テーマパークからのお問い合わせもあり、『屋外勤務のスタッフの熱中症対策に使いたい』とご意見をいただきました。現在は来年(2019年)夏の発売を目指して、細部の調整をしているところです」
 ブルートゥース(Bluetooth/デジタル機器用の近距離無線通信)を用いているため、チェッカーを装着した作業員の発汗量や脈拍の計測データを作業員自身のスマートフォンなどでキャッチすることも可能だ。監督者はスマートフォンでキャッチしたデータをチェックし、作業員が熱中症の警告に気づいていない場合は、注意を促すこともできる。さらには計測データを本社等に転送し、従業員の健康管理を全社的に、そして一元化することも視野に入ってきたのであった。

さらなる連携と進化が・・・

ウエアラブル型発汗チェッカーの試作機の装着例。上の画像の
水滴マークに続く「2420」は測定開始から現在(撮影時)までの
積算発汗量を示し(つまり2420ml)、ハートマークの後「92」は、
1分間の脈拍数を示す。

 ウエアラブル型熱中症予兆チェッカーに、新たな可能性を見出す動きもある。発汗量から熱中症の危険性を予知しようとするだけでなく、他の生体情報もそこから得て、健康管理に役立てようというのだ。
 その1つが、汗から血糖値を計測しようという試み。糖尿病に悩む人は、指先を針で刺して採血する簡易型血糖測定器を用いて血糖をコントロールしているが、針を刺すことに抵抗感を持っている人も多い。それを非侵襲的に、つまりは痛い思いをすることなく血糖値を計ることができるようにしようというのである。
 「腕時計型の熱中症予兆チェッカーを展示会等で紹介していましたら、ある大学の教授から提案をいただきました。汗から血糖値を計測できるシステムを共同で開発しようというのです。汗の中のある成分の量を計測すると、血糖値が分かるのですが、それをこのウエアラブル型生体チェッカーを進化させて、実現させることで話がまとまりました」
 さすが薬学の博士号を持つ横井社長。教授の提案を化学的に理解し、今後の共同研究の約束を取り付けたようだ。そして続けて語るには、「付着型のチェッカーを、ウエアラブル化して高度に進化させることができたのは、技術やノウハウを持った企業や大学と連携できたおかげです。このチェッカーに他の生体情報を検知するセンサを搭載すれば、セルフメディケーションにもっとお役に立てる。そこでも様々な連携によった新たな技術が開発されるでしょう」とウエアラブル型健康管理機器の夢を描き、「その第一歩としてこの熱中症予兆チェッカーはヒット商品に育って欲しい」と熱い思いを吐露して取材をしめくくった。

[ライフケア技研株式会社]
 本社/富山市問屋町2-4-15
 TEL 076-411-0201
 FAX 076-451-2610
 URL http://lifecare-giken.co.jp/

作成日 2018/12/12

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