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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第41回 株式会社イーシステム

CG系映像制作・映像アプリ開発を行う
北信越でオンリーワン企業

MRのゴーグル型試作機を装着しながら、映像技術の未来につい
て語るイーシステムの中村秀樹社長。場合によっては、いわゆる
テレビはなくなるかも……!?
ちなみに中村社長は今、遊泳している宇宙飛行士を見ている。

 まずは右の写真をご覧いただきたい。(株)イーシステムの中村秀樹社長が装着しているのは、「VR(バーチャルリアリティ)・AR(オーグメンティッド・リアリティ=拡張現実)の次にくる」と言われているMR(ミックスド・リアリティ=複合現実)デバイス。同社は、このデバイスで動作するアプリケーションの開発に取り組んでいる。
 このデバイスを装着すれば、テレビを見たり、バーチャルでパリや戦国時代に瞬間移動したかのような風景が現れたリ、または、まだ設計段階の構造物を3Dで映像化して、通信機能を使って遠隔地の設計事務所の人と打ち合わせしたり、どういうアプリケーションを開発するかはアイデア次第だそうだ。
 「将来的にもっと小型化して一人一台の時代がくるかもしれませんが、今AR・MRの開発に取り組んでいる業者のほとんどが大都市圏に集中して、北信越にはほぼないことに危機感をもって取り組んでいます」(中村社長)とのことだ。
 編集子もゴーグルを試着させていただいた。目の前には宇宙空間が広がり、地球をバックに宇宙飛行士が遊泳している。それを見ているうちに、こちらも同様に宇宙にいるような感じにさせられた。
 こうしたことを試みる会社が富山にあったとは驚き以外の何者でもない。

映像制作で培ったCG技術を水平展開

地元テレビ局・北日本放送(KNB)用に制作した、オープニングと
エンディングのCG画像。前半はプロジェクションマッピング風に
演出され、後半は富山の自然を表現している。

 システムエンジニアとして業務システムなどを設計・開発してきた中村社長が、(株)イーシステムを立ち上げたのは平成16年12月のこと。 もともと技術屋であり、コンピュータに精通していたことから、北信越では珍しいCG系映像によるテレビCMの制作を業務とするようになった。
 映像制作について大別すると、実写系とCG系に分けられる。実写系は文字通り、カメラで映像を撮影することが主体の映像制作会社。CG系はパソコンとにらめっこして映像を制作してゆく。 CG系制作会社の9割以上は首都圏に集中しているという。
 ではイーシステムの場合、地方では競合する会社がほとんどないため市場を独占して安泰であったかというと、そうでもない様子。テレビCMは景気の波や社会的な風潮に左右されやすく、状況が厳しくなるとCM制作のペースも足踏みする傾向にあるのだそうだ。そこで中村社長は自社の強みを改めて考えた結果、3D-CG技術がイーシステムのコア技術であり、CG技術をテレビCM制作以外にも水平展開を行い分散化を行うことを決めたのであった。

(株)能作の新社屋に設置された富山県の観光等を紹介する
プロジェクションマッピング。
富山県の形をしたスクリーンに天井から映し出している。

 ところが、もともと地方にはCGによる動画制作の需要が少ない上に、同社もいわゆる販促営業に慣れていないため、急に動き出してもなかなか成果が上がらなかった。そこで中村社長は知人の経営者に相談したところ、商工会議所経由で当機構を紹介され、よろず支援拠点で経営相談を行うとともに、中小企業首都圏販路開拓支援事業の適用(平成28年度)を受けて、従来とは違った視点での営業を開始したのである。
 「よろず支援拠点では、まずは当社のビジネスモデルを紹介しました。すると『CG動画を制作している会社が富山にあること事態が珍しい』と言われ、『その特色を前面に出して会社を売り込むことが大事だ』と2人のコーディネーターからアドバイスされました。そして、当時新社屋建設中であった高岡市の(株)能作さんが、『プロジェクションマッピングの制作ができる会社を探しているから紹介する』と同社にコンタクトをとってくれました。また中小企業首都圏販路開拓支援事業を活用しての、新規開拓を薦められたのです」
 中村社長が言う中小企業首都圏販路開拓支援事業とは、当機構の販路開拓マネージャー(商社OBなどの経験を有する)が、経験や人脈を生かして中小企業の販路開拓の支援を行うもので、時には「○○商事の□□部長に会って、この商品を売り込んでみよう」とアポイントをとってくれたりするものだ。この制度を活用して同社では、大手カーエレクトロニクス会社とテレビ局(東京のキー局)を紹介され、カーエレクトロニクス会社からは仕事の依頼を受け、テレビ局とはこの取材の時点で商談継続中ということだった。

同社が作成した北陸新幹線富山駅の3D画像のスライスモデル。

 また当機構に相談に通う内に、同じ建物にある富山県機電工業会を訪ねてサンプル動画をお見せすると、ある役員から「当社にきて欲しい」と依頼され、打ち合わせを重ねるうちに商談が成立したのだそうだ。そのサンプル動画とは、駆動している車のエンジンのスライスモデルの動画。しかもスライスする角度を変えてお見せした。実写では駆動中のエンジンをスライスすることは不可能であるが、CGでは可能である。北陸新幹線富山駅の工事手順やリニューアル後の駅の構造などのスライスモデルや火山内部のマグマの動きなどのCG画像もご覧いただいたそうだ。
 「実写では、火山の内部の撮影はできませんが、CGでは映像化が可能なのです。そこをご理解いただくと、一気にお客様との距離が縮まり、受注につながるケースが多くなります」と中村社長はニコニコ顔で答えるのだった。

未来塾で新たな事業の可能性を

標高などの数値データを元に作成した立山連峰の立体的な
CG画像を例に、インタラクティブな世界の可能性について語る
中村社長。

 よろず支援拠点や販路開拓マネージャーとの接点ができたことにより、徐々に販路が広がってきたイーシステム。中村社長はさらなる拡大を目指して平成29年度にとやま起業未来塾に入り、経営についての考え方を復習するとともに「全天球」の事業化と拡大についてのプランを練ろうとしたのである。
 富山は立山や海王丸パークなど屋外型の観光地が多い。悪天候時、屋内施設で大型タッチパネルを使った全天球コンテンツを見て楽しんでいただき、天候が優れなくても満足度を高めて次回また来ていただく。また、一人カラオケ・一人飲みといったいわゆるおひとり様対応のため、スマートフォン版も合わせて開発。観光地の満足度向上に活用できる。この事業化の可能性を探りながら、同社の経営の柱の1つである映像アプリ開発をより強化していこうというのだ。
 例えば目の前の風景のディスプレイ上の画像に、400年前の戦国武将がつくった城を再現し、当時の武士の目線で城内を進んだり、スライスモデルによって城の構造を理解するなど、観光や歴史、建築などの視点で楽しむことができる。これを、いろんなビジネスシーンで応用していきたいというのが中村社長のコメントであった。
 もちろん同社では、従来のテレビCMの他に、展示会等で使う企業紹介・商品紹介映像制作の他に、最近注目を集め始めたプロジェクションマッピングにも力を注ぎ、映像制作の分野でもスキル向上を図りつつ、映像アプリ開発の二枚看板によって会社を支える事を目指しているようだ。
 最後に中村社長に改めてうかがった。
 「とやま起業未来塾修了後に、タイムマシンに乗って13年前の自分に会いに行けたら何といいますか」と。するとこんな答えが返ってきた。
 「全天球についてのビジネスプランを検討するかたわら、経営者って何かを見つめたいと思っています。その結果、従来思っていた以上の厳しい言葉で『いろいろ甘くない』というかもしれません。ただ私は、創業したことは正解だったと思っているので、先ほどの言葉に『これからいろんな経験ができるぞ』とプラスすると思います」
 中村社長は13年の間に経験してきた山あり・谷ありのビジネスシーンを思い出しているように見えた。

連絡先/株式会社イーシステム
〒939-8006 富山市山室391-1
TEL 076-481-6625 FAX 076-481-6635
URL http://esyst.webnode.jp/

作成日  2017/08/02

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