第49回 株式会社宮商 第49回 株式会社宮商 中小企業首都圏販路開拓支援事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第49回 株式会社宮商

マグロ問屋が、イワシ、寿司、シイタケも・・・・
販路開拓マネージャーが八面六臂の活躍を

同社が主に扱うマグロ商品。天然本マグロのサク
(写真上)と天然本マグロ赤身の刺身(写真下)。

 元々は麩(ふ)やこんにゃく、トコロテンをつくって食品スーパーに卸していた(株)宮商。先代社長が元気で、宮野勳社長がまだ若い頃、築地のお店で海産物ビジネスについて学んだことを縁に、マグロの卸も行うようになり、後にこれを本業にするようになった。また社長の子息が、築地でビジネスマンの一歩を記し始めたのを縁に人脈がさらに広がり、築地市場にお店を持つまでに。市場の移転に伴って豊洲にもお店を構えた。
 「当社が扱うマグロは、料亭やお寿司屋などの業務用で、その品質は中~高級にランクされるものばかり。客単価は最低でも1人当たり1万円台後半以上の金額です。寿司をはじめとする和食の人気が世界的に高まっていますから、マグロの需要も年々増えています」
 取材の冒頭から景気のよい話が出てくるのかと思いきや、続く話を聞くと、どうもそうではない様子。宮野社長が言葉を継いだ。
 「需要が増えているのは確かですが、一方で天然もののマグロの水揚げ量は減る一方です。資源として、枯渇の方向に向かっているのかもしれません。もしそうなら、マグロの卸を主な業務としている当社にとっては死活問題です」
 宮野社長がさらに続けた弁を要約すると、以下のようになる。市場では、天然ものが少なくなっても、問屋間の競争が激しいため相場が高値安定にはならず、価格競争を繰り返して「中小のマグロ問屋は右から左に商品を流しているケースが多い」という。

マグロからイワシに注目

「氷見いわし唐揚げ」の調理例(写真上)と水揚げ後
すぐに下処理されてパッケージにされたもの(写真下)

 そこで宮野社長がとったのは、将来の売上の柱を育てることだ。手始めに、富山湾で水揚げされるイワシを下処理して、飲食店に向けて唐揚げ用の素材として販売することを企画。うまく行けば、アジの唐揚げやホタルイカの釜揚げなどにも触手をのばす心づもりであった。
 「同じ水産加工品でも、富山湾の場合は漁場と市場が近く、鮮度がいいうちに加工用のラインにのせることができます。イワシは漢字で書くと『魚』編に『弱』い。本当に痛みやすい。でも当社は鮮度のいい氷見産イワシを使っていますから、おいしさが全然違う。これは富山の魚の優位性だと思い、開発には力を注ぎました」(宮野社長)
 こうしてでき上がったのが「氷見いわし唐揚げ」である。氷見のイワシは『広辞苑』の「氷見」の項で、「氷見鰯で名高い」と編纂者にいわせるほどの逸品。それを下処理して小麦粉を振り、居酒屋などで揚げるだけの商材に仕立てたのだから、販売はスムーズに進むと思われた。
 「でもなかなか、販路開拓が進みませんでした。初めのうちはおいしく揚げられるようにするのに精一杯で、県内を少し営業に回った程度でした。少しメドが立ったところで、首都圏での拡販を試みましたが、営業先がマグロとまったく異なりましたので苦戦しました」
 平成27年頃を振り返って宮野社長が語った。
 このままでは、売上の柱に育てる試みが早々と頓挫してしまう。「そうしないために」と宮野社長は、「あそこは何でも相談にのってくれる」と知人の経営者から聞いていた当機構を訪ねて、販路開拓のアドバイスを求めたのだった。それに答えた当機構の相談員は、「中小企業首都圏販路開拓支援事業に申し込んだらよい」と勧め、「採択になった場合は、販路開拓マネージャーが“手取り足取り”営業方法を伝授し、販促をイチから支援する」と付け加えた。宮野社長はさっそく申し込んだ(平成28年度)。
 「マネージャーは小売業大手の元営業マン。さすがに新規開拓の営業のツボを心得ておられて、アドバイスをいただいて、いくつかの飲食店を回らせていただきました。なかなか感触がよく『これはいけるかな』と思ったのですが、商談を進めるうちに困ったことが起きたのです」
 宮野社長がいう困ったこととは、原料の確保のことだ。その年、氷見沖では原料のカタクチイワシの水揚げ量が安定せず、平成27年までは平均すると1,000t程度以上の水揚げがあったものが、28年には335tと激減(『氷見市水産統計平成29年度』)。いくつか引き合いのあった商談も進めることができなくなってしまったのだ。

冷凍寿司の営業でもノウハウ光る

マグロに次ぐ新しい売り上げの柱を模索する宮野勳社長
(写真上)と「中小企業首都圏販路開拓支援事業」により
販売先が開拓されつつある同社の冷凍寿司。(写真下)

 カタクチイワシの水揚げ量に関しては、同社の努力で解決できる問題ではない。宮野社長は意識を切り替えて、今度は富山湾の魚介類をネタにした冷凍寿司の開発に挑戦。同社のグループ企業が扱っている米飯改質剤を用いてご飯を炊くと、冷凍してもご飯(すし飯)が白蝋化したり、ぱさぱさ・ぱらぱらしたりするのを防ぐことができることを活かし、冷凍のにぎり寿司をつくって世に送ろうというのだ。
 「アナゴや焼きサバをネタにしたもの、あるいは押し寿司を冷凍したものは商品化されていますが、生の魚介類を握った冷凍寿司はまだほとんど世に出ていません。販促については当社単独でも試みましたが、営業先の仕入担当者に会うこともできず、販路開拓マネージャーのお力をまたお借りすることにしました」(宮野社長)
 同社では平成30年度・令和元年度の2カ年にわたり「中小企業首都圏販路開拓支援事業」の採択を受けて、再び“手取り足取り”新規開拓の営業法を学ぶことに。その手法は、まずは大手商社の元営業マンであるマネージャーが商品の特性を理解し、相談企業がどこへ売り込みをかけたいと思っているのかを理解するところから始まる。方向性が間違っていると判断した場合は軌道修正し、合っていると思われる場合は営業候補先企業を数十社ピックアップ。連絡先はもちろんのこと仕入担当者の名前を調べる支援をし、さらにはその担当者に向けたレターや商品説明の文書作成のサポートも行う。そして、書類が配送されて数日した頃を見計らってかける電話でのアポイントの取り方も見本を示し、“一度会って、試食していただく”約束を取り付けるのだ。
 「当社の冷凍寿司に関しては、私は『こんなところを客先として想定しています』とマネージャーにお話しし、まずは『東京で販売してみたい』と希望を申し上げました。すると次回の相談日までに30社ほどのリストをいただき、そこへ文書をお送りして電話でアポイントをとることを繰り返しました。こんなアナログ的なことで・・・と思いましたが、当社単独でやっても成果が出なかったのでマネージャーのアドバイス通りにしました」(宮野社長)

皇室御用達のお店にもルートが

さらなる商品企画としてブランド化を図っている奥能登
でとれる大きく、肉の厚いシイタケ(写真上)と地元の
レストラン等で人気のシイタケの鉄板焼き。(写真下)

 その結果は・・・。
 以前は、仕入担当者に電話すら取り次いでもらえなかったものが、ほとんどつながるようになり、ほぼ半数の企業と面談の約束を取り付けたのだ。この取材の時点(令和2年2月上旬)では、そのうちの2社と成約、5社と継続して商談を進め、例えば「ご飯の量を○g程度にすることができるか」「ネタの大きさをこんな感じにできるか」などの相談を持ちかけられ、それを受けての試作を行っているところだという。
 予断は許さないものの、明るい光が見えつつある。可能性を感じ取った宮野社長は、かねてよりブランド化を進めていた直径8cm、肉厚3cmのシイタケの販売について助言を求めたところ、マネージャーは「こんなに立派なシイタケなら・・・」と皇室御用達のあるスーパーのバイヤーに「一度、宮野社長のシイタケを見てほしい」と電話を入れ、その場でアポイントをとったのだ。
 「そのスーパーに商品を納めることは、食品メーカーにとっては大変なステータスで、信用にもつながります」と宮野社長は力を込め、「他にもアドバイスをいただいて、冷凍寿司の次はシイタケの販路開拓に努めたい」と意気軒昂に語った。
 宮野社長のさらなる販路拡大の展開に期待したい。

連絡先/株式会社 宮商
〒933-0826 高岡市佐野新町670-5
TEL 0766-25-2855 FAX 0766-25-2864
URL http://www.miyasho.jp/

作成日  2020/03/27

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