TOP > 中小企業ルネッサンス > 第48回 株式会社クリエイトダイス
事業の多角化を図り商材を開発
公的支援で販路も拡大
高岡市戸出の工業団地に本社・工場を構えるクリエイトダイス。社名の「ダイス」が示す通りプレス金型生産を主な業務とし、建材メーカーや自動車部品メーカーなどのニーズに応えて、その供給拡大を図ってきた。
ところが国内のみならず、アジアの国々のものづくりの力が高まるにつれて競争が激化し、金型一本での経営は厳しさが増している。そこで同社が行ったのは、収益の柱を確保するための商材を増やすことと、それに合わせて販路の拡大に向けて商談会や展示会に積極的に参加するようにすることだった。すべてを自己資金で賄うには大きな投資が必要となるため、公的な産業支援も活用しながら事業の多角化に乗り出したのである。
デザインフェンス「カターゴ」のタイプR(写真上)と
タイプM(写真中)、タイプKの施工例(写真下)
その第1弾は、デザインフェンス「カターゴ」の開発。もともとの構想は十数年前からあったそうだが、具体的な形になり始めたのは平成21年度のものづくり補助金の支援を受けて、金属プレートに効率的にパンチングするマシンを開発したことからだ。従来の加工機(レーザーやターレットパンチプレス)では1列1穴のパンチングしかできなかったが、CADデータと連動させた新しいマシンでは、1列20穴を同時に加工できるという作業効率が極めてよいものになった。
「当初は『デザインパンチング』と称して、幅30cmの金属プレートに、パンチングにより文字やデザインを浮かび上がらせ、フェンスとして商品化しました。新世紀産業機構の支援を受けて展示会に出展したり、富山県の『トライアル発注』の制度に採用されて、県のホームページやカタログに掲載していただき、PRも徐々に開始しました」(穂田社長)
すると、ぽつりぽつりと問合せが入るようになり、注文にまで発展するケースが出てきた。そこで同社では、デザインフェンス「カターゴ」と銘打って正式に商品化とブランディングを図るとともに、パンフレットを作成し、また専用のホームページも開設するなどの積極策を展開。さらには、建材専門のポータルサイトを通じて、建設業界やエクステリア業界、また工事を検討している施主などに「カターゴ」をPRしたのだ。
あわせて、「カターゴ」のバリエーション展開も実施。タイプR(緩やかなアール形状の連続パネルを用いた有孔スクリーン)、タイプM(庇形状とフラット形状の連続パネルを用いた有孔スクリーン)、タイプK(スパンドレル形状の連続パネルを用いた有孔スクリーン)の3タイプをそろえ、もう1つ、オリジナルデザインのオーダーメイドも可能にしたのだ。
「熱かしめ」のイメージ図(上)と実際の加工例(下)。
青い突出部に熱を加えて圧着・整形し、急速に冷やす。
「カターゴ」の商品化・ブランディングの一方で、同社では「インパルスウェルダー」の開発にも着手。この装置は、樹脂製品のボス部(ネジ込み式の場合はネジの部分に相当)を熱で溶かして圧着し、急速に冷やして固定するもの。「熱かしめ」と呼ばれる樹脂部品の接合技術の1つで(圧着の概念図参照)、強度が高く、外観や精度がよいことから密かに注目の技術であった。
「インパルスウェルダーの技術を保有している企業は、当時、国内では2〜3社くらいしかなく、しかも、長らく特許を保有してきた1社がマーケットをほぼ独占している状態でした。独占状態であるため価格や仕様、納期など、導入する側の企業は融通が利きづらい状況であったと聞きました。ある時、当社が治工具や生産設備を納めていた大手の樹脂成形メーカーから、納期面も含め、より使い勝手のよいインパルスウェルダーを開発してもらえないかと相談を受けたのです」(穂田社長)
同社が開発した「インパルスウェルダー」の一例(写真上)
と展示会の様子(写真下)。
これも、そもそもの始まりは十数年前のことだが、商品として日の目を見るようになったのは平成25年頃のこと。開発を持ちかけてきた樹脂成形メーカーが採用したのはもちろんだが、自社ホームページに技術情報を掲載したり、プラスチック部品製造の企業に営業をかけると、こちらもぽつりぽつりと問合せが入るように。本業のプレス金型とともに、先に挙げたデザインフェンス「カターゴ」、そしてこの「インパルスウェルダー」を持って、当機構の広域商談会(神奈川、名古屋、大阪等で年に1〜2回開催)や自動車メーカー等に本県の新技術や新工法をPRする商談会(トヨタ自動車、本田技研工業、デンソー、マツダなどで、年1回を目安に開催)、さらには平成28(2016)年には当機構の販路開拓挑戦応援事業を活用して東京ビッグサイトで行われた「オートモーティブワールド2017」内の「クルマの軽量化技術展」に参加するなど、いっそうの拡販を試みるようにしたのだ。
平成25年7月に行われた「とやま新技術・新工法展示
商談会in TOYOTA」の告知パンフ(写真上)と第4の
柱として期待がかかるバスのシートのフレーム(写真下)
「カターゴ」については、安定的な受注には課題があるようだ。ただ、各種のPRが効を奏して、年間一千万円単位のオーダーがまとまることもあるところから、従来、パンチング後の曲げ加工を外注していたのを内製化しようと設備の導入を図り、利益率の向上を試みようとしている。一方の「インパルスウェルダー」については、平成25年のトヨタ自動車での商談会でお披露目したところ、トヨタのあるサプライヤーとの間で話がまとまり、納品に至った。
穂田社長が振り返る。
「トヨタ自動車の展示会では、同社のサプライヤーセンターに赴き、四十数社の富山県企業とともに製品や技術を展示しました。来場者は1,500名を超え、当社は5社程から引き合いをいただきました。その後、相手先企業を訪問し、技術の詳しい説明を行ったり、見積を提出したりと商談を続け、商談会から1年後、ある1社から受注することができたのです」
その企業からは、後に追加のオーダーが定期的に入るように。クリエイトダイスにとっては重要な顧客に育ちつつあるところだ。
「クルマの軽量化技術展」でも、同社は新規の顧客開拓に成功。静岡県の自動車ランプメーカーからもインパルスウェルダーに引き合いをもらい、従来の顧客エリアである北陸と同じくらいに東海エリアの顧客も増えつつある。
「商材を増やす中で、例えば『今年はプレス金型の受注は少なかったけれど、インパルスウェルダーなど装置関連の受注が伸びた』というふうに、リスクの分散が可能になりつつあります。バスシートフレームの生産も含めた主要4事業の中での当面の有望株は、インパルスウェルダーだと私は思っています。普及率はまだまだですが、自動車はEV化の影響で軽量化が重要視され、プラスチック部品の採用はますます増えることが見込まれます。その流れの中でインパルスウェルダーが果たす役割はさらに大きくなることが予想され、認知度が上がれば顧客の開拓も進む、と期待しています」
穂田社長のその言葉を裏付けるように、同社では平成28年度の「ものづくり人材育成支援事業」を活用して、電気設計についての知識のある人材1名を雇用。初期の人件費の助成を受け、インパルスウェルダーの改良やオーダー増に対応できるエンジニアの育成を計画しているようだ。
本業のプレス金型以外の商材にも力を入れ、事業の多角化を図るクリエイトダイスの取り組みに今後とも期待していきたい。
連絡先/株式会社 クリエイトダイス
〒939-1118 高岡市戸出栄町46-6
TEL 0766-63-5801 FAX 0766-63-5746
URL http://createdies.co.jp/
URL http://design-punching.com/
作成日 2020/03/02