第44回 株式会社ジオインフォシステム 中小企業首都圏販路開拓支援事業 ものづくり人材育成 事業継承 TONIO Web情報マガジン 富山

TOP > 中小企業ルネッサンス > 第44回 株式会社ジオインフォシステム

企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第44回 株式会社ジオインフォシステム

コンピュータにしかできない仕事を
地理情報を生かして展開すると・・・・・

同社のルート計画システム「ジオルー
ター」によって地理情報に配送ルート
まで表示したもの。このケースでは、
3台の車での配送が計画され、車ごと
にルートが色分けされている。

 「例えばこれから、20カ所のお宅に荷物の配達にうかがうとして、回り方の組み合わせは何通りあると思います? 順列計算すればいいのですが、その組み合わせは60京(けい)を超えます。ではもう少し難しく、富山市内120カ所のお宅に、午前9時出発、午後6時までに帰社、その間に配達するには何台の配送車を、何人のドライバーを確保したらよいでしょうか」
 湯浅剛社長が、配送先をプロットした富山市内の地図を示しながら問いかけてくる。時間にとらわれることなく60京通りの組み合わせを示すことは不可能ではないと、編集子は湯浅社長に見栄を張ろうとしたが、続きの問いかけで頭がパンクしてしまった。それを見越して湯浅社長が続ける。
 「当社が開発したジオルーターでは、開始時間、終了時間、休憩時間、荷下ろし時間、荷物の重量等の設定を行うと、短時間に必要な車両台数が計算されます。配送先が1,000件の場合は、約20分で配送ルートの作成まででき、それを地理情報に連動させると視覚的にルートの確認もできます」
 物流を中心に、限られた時間内に多数の地点を回る必要がある業務では、こうしたシステムは便利であるが、そもそも湯浅社長は地理情報を活用したこうしたビジネスをどのように展開してきたのか。

地理情報とコンピュータ技術を融合させて・・・・・

「コンピュータにしかできないことを、より速く・正確に、地理情報を
活用して事業化したいと思った」と創業時を振り返る湯浅剛社長。

 大卒後、大手IT企業に勤めた湯浅剛氏。途上国の青年に青雲の志をいだいてもらおうと、青年海外協力隊に入ってヨルダンへ。イルビット市のヤルムーク大学コンピュータセンターに派遣されて、大学生の情報教育などの支援をしてきた。その時、国や国土について意識を持つようになり、昭和62年に帰国した際は、航空測量の会社に勤務。そこで地理情報とコンピュータの技術を融合させると、新しいビジネスが展開できるのではないかと思い至り、平成13(2001)年にジオインフォシステムの旗を掲げたのだ。
 「当初は家内と2人でした」と湯浅社長は振り返る。前職の航空測量の会社や最初に勤めたIT企業などから依頼されてシステムをつくるように。またそれら企業への従業員の派遣も依頼されるようになった。
 「日々の売り上げを確保するためには、こうした仕事もこなしていかなければなりませんが、地理情報とコンピュータ技術を融合させたいという夢は諦めず、細々と開発は続けていました」と湯浅社長は雌伏の時を懐かしんだ。
 初期のシステムは、配送計画を立てる複雑な演算はできなかった。ある飲料メーカーに納めたシステムは、自販機の所在地と自販機毎の売り上げを管理するもので、地域毎の売上げの特徴や売れ筋商品の分析などに利用されたという。
 同社独自の地理情報を検索するシステム「ジオインフォ」(Geoinfo)ができたのは平成17(2005)年のこと。そこに住宅地図を連動させたシステム「ロコマップ」(LOCOmap)が加わり、さらには「グルっと」(GuRutto/地図上の複数地点をぐるっと一筆描きするように効率的なルートの作成を支援する)やルート計画システム「ジオルーター」(GeoRouter/冒頭に紹介した配車計画や配送ルートを作成するシステム)などへと発展したのであった。
 「ジオルーターは、配送先に時間指定があったり、急に配送先が変更になったりしても、柔軟に対応することができます。システム説明の際、『配送』という言葉を使うので運送業者向けのシステムのようにみられがちですが、デイサービスの送迎や広域にわたる高圧鉄塔の巡視管理などにも使われていますので、物流以外にも用途はたくさんあるものと思われます」と湯浅社長は語り、「本年度当たりから企業の導入が進むのではないか」と期待を寄せるのであった。

ITでみんなをハッピーに

ディスプレー上の「出勤」ボタンを押すと、その時の時刻を打刻し、
顔写真も撮る「笑顔レコーダー」。出勤時に自分の顔をチェック
するようになり、必然的に笑顔に。下2枚の画像は同社スタッフの
システム開発の様子。

 以上のシステムは社名との関連から同社の主力商品に育てようという熱い意欲がうかがえるが、「笑顔レコーダー」や「WAC」(ワック)は「ITの技術を生かしたちょっと変わったシステム」として耳目を集めている。
 まずは「笑顔レコーダー」である。これは同社が開発した、パソコンで出退勤の登録ができるインターネット上の勤怠管理システムのこと。画面上のボタンを押すことにより出退勤の時間を打刻するとともに、顔写真も撮影する。この際、従業員は笑顔を意識するようになり、それを通して心の持ち方も明るくし、ハッピーにしようというものだ。毎日の笑顔写真を蓄積し、月単位で「今月の笑顔大賞」を社員の総選挙で決める事業所もあるそうだ。
 「関西のある病院にも導入していただきました。医療機関といっても、患者さんに対してはサービス業の心構えで臨まなければいけません。その病院には80人近いスタッフがいるそうですが、この笑顔レコーダーの導入を機に院内が明るくなったとオーナーは喜んでおられます」(湯浅社長)
 笑顔レコーダーに思わぬ副産物ができた。その名も「笑顔アルバム」。NTT西日本との共同開発で、出退勤の管理機能を外し、顔写真を従業員全員で共有できるようシステムをアレンジしたのだ。そして、すてきな笑顔には「いいね」のボタンを押せるように。写真好きの経営者が、笑顔あふれる職場づくりと品質向上を目指して導入を決めたそうで、その取組みがNTT西日本の新聞広告の形で中日新聞に紹介されたのであった。
 一方のWACは、web上の受注を自動的に集約するシステム。確認漏れなどによる受発注の間違いを防ぐものだ。
 以上が同社の主な商品だ。売上げに占めるシステム等の販売の比率は約20%。派遣や請け負いによる売上げが大半をしめている。

販路開拓マネージャーが細かいところから指導

各種IT関係の技術を有し、同社のシステム開発で様々な貢献を
してきた新留佐知子さん。販路開拓マネージャーから営業活動の
ツボの指導を受け、自社製品の販路拡大に取組むようになった。

 「本当は自社商品をもっと売りたいのですが・・・」と湯浅社長は胸の内を語る。しかしながら、同社には営業専門の担当者はいない。従来の販売は、web上でシステムのPRをし、問い合せいただいた事業所に説明のための訪問、この繰り返しであった。せっかくすごいシステムを開発しても、期待したように販売数をのばせないところから、もどかしい思いをしてきたのだ。
 そこで同社では、当機構の「中小企業首都圏販路開拓支援事業」(平成29年度)の採択を受けて、大都市圏での販促活動を展開することに。販路開拓マネージャーの指導の下、売り込み先企業の選定やDMの案内文を作成し、そして関心を持っていただいた企業には商品紹介の営業に同行してもらうなど、手取り足取り営業の指導を受けたのだ。
 「正直なところ、今の時代にDMか・・・と最初は思いました。ところが案内文ひとつ取っても工夫を凝らしたものでしたし、DMが着いた頃を見計らってかける電話も、さすが大手商社で鍛えられた方だけはある、と感心させられる話し方でした」と販路開拓の“いろは”の指導を受けた新留佐知子さんは語り、「それにしてもDMの反応があんなに高いとは驚きました」と続けた。
 同社では、販路開拓マネージャーの指導の下、30社ほどにDMを送付。そのうち、面談にこぎ着くことができたのは半数ほどで、いずれの企業とも商談は続けているそうだ。ちなみに商談の相手先は、業界ではトップクラスの企業ばかりである。
 こうなると、“もうひと押し”したくなるのは当然のことだ。同社では平成30年度も同支援事業の採択を受けて、件(くだん)のマネージャーの指導を受けることに。「大手に1社でも採用されたら、中小への普及は速い」と湯浅社長も意気軒昂であった。

連絡先/株式会社ジオインフォシステム
〒931-8334 富山市千原崎1-7-17
TEL 076-471-8211 FAX 076-471-8233
URL http://www.geoinfo.co.jp

作成日  2018/09/20

このページのトップに戻る

Copyright (C) 2005-2013 Toyama New Industry Organization.All Rights Reserved.