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T-Messe2023富山県ものづくり総合見本市開催

「やはりリアル開催はいい……」とあちこちで

T-Messe2023オープニングセレモニーの様子
(写真上)と会場の様子(写真下)。

 「ディスプレイ越しではなく、対面での商談は真剣味が増すようだ」。
 「やはりリアルの展示会で、商品を生で見て、触って、質感を確認できるのがいい」
 4年ぶりのリアル開催となったT-Messe2023富山県ものづくり総合見本市(10/26〜28、富山産業展示館)。前回(2021年)の見本市はコロナ禍によりオンライン開催となったため、今回の対面での商談に期待を寄せる出展者、来場者からは冒頭のようなコメントが相次いで寄せられた。
 出展企業は国内外の287社・団体。工作・産業機械、自動車関連、電子・電機、IT、プラスチック、アルミ、繊維、医薬品、化学、鋳造・金型・金属加工等の製造業を中心に各社自慢の先端技術やサービスなどをアピール。また中国、ベトナム、インドネシアなどからは貿易促進や投資を呼びかける政府系機関のほかに、バイヤーも参加して活気溢れる展示会となった。
 今回のレポートでは、T-Messe2023に参加した4社・機関について紹介しよう。

今、インドネシアを見つめる視線が熱い

インドネシア共和国の投資環境についてセミナー
で語る同国投資省/BKPM日本事務所のモハマ
ド・リファナ所長(写真上)とセミナー会場の様子
(写真下)。

 まずは、「海外投資環境セミナー」で「インドネシア投資の最新情報」について紹介した、インドネシア共和国投資省・BKPM日本事務所のモハマド・リファナ所長のセミナーから。同所長は日本とインドネシアが外交関係を結んで、今年が65周年であることを紹介。そして2022年から2023年にかけて岸田首相とジョコ・ウィドドインドネシア大統領との4回に及ぶ会談と、両国間の貿易および投資分野での連携強化についての合意事項の概要を述べた後で、日本からの投資を呼びかけたのだった。
 ここ5年あまりの、インドネシアへの投資額(米ドル換算)を国別にみると、日本は4位または5位に位置している。例えば2022年は、1位はシンガポールで約132億8000万ドルの投資。以下、2位中国(約82億2000万ドル)、3位香港(約55億1000万ドル)、4位日本(約35億6000万ドル)と続いている。
 投資分野として注目されているのは、2020年までは通信・物流・倉庫関係などであった。これが2021年からは、金属や機械関連の産業がトップとなり、3年前の投資額から3倍弱の伸びを示すようになったという。
 インドネシアは天然資源が豊富だ。石炭、ニッケル、スズ、銅、ボーキサイド、鉄鉱石、金・銀などの鉱物資源に加えて、ヤシ油やゴムなどの植物由来の資源にも恵まれている。特にニッケルは世界最大の埋蔵量を誇り(2100万トンと推計されている)、電気自動車(EV)の蓄電池の原材料として注目されるやいなや、世界のEVメーカーがその確保にしのぎを削るようになったようだ。
 モハマド・リファナ所長は、インドネシアの投資環境の特に注目すべき点を以上のように概説した後で、現在進みつつある国主導の69の投資プロジェクトを例示し(うち2つのプロジェクトは、セミナー時には投資家募集を終了)、あわせて税制などの優遇措置のほか、営業許可事務等の簡素化、土地取得(購入・賃貸)にあたっての優遇策などを備えた20のSEZ(Special・Economic・Zone)を紹介。「日本でいう“特区”のような外国企業の投資優遇地域をインドネシア国内に20カ所設けているので、ものづくりが盛んな富山の企業の皆さんも、ぜひ工場進出などをご検討ください。特に製薬企業の投資を期待しています」と呼びかけたのであった。

見本市の前に韓国企業から商談依頼が

NES株式会社の展示ブースの様子(写真2点とも)

 続いて紹介するのは、富山大学(五福キャンパス)の近くに本社を構えるNES(株)。同社は、市町村の防災無線や大型映像システム、企業の駐車場や車・人の入退場制御システムなどの電気工事・電気通信工事を得意とし、一方ではDX・GX化をにらんでの企業のニーズにあわせたアプリケーションの開発なども行う企業だ。金沢、福井にも営業拠点を設け、お客先の出先(支店・営業所)が全国に展開されていることから北陸以外での工事も多数受注。また自社HP上にショールームサイトを構築するなどインサイドセールスにも力を入れており、その営業範囲は全国といってもよい。
 同社は、T-Messeにはほぼ毎回出展し、新規開拓のための種まきを行ってきた。年によっては顧客開拓に成功し、経営安定の一助にしてきたのだが、今回のT-Messeでは少し変わった出会いがあった。実は事前に、韓国のある企業から商談の依頼があり、当機構経由でマッチングの場が設けられたのだ。面談に臨んだ村田晃常務取締役が語った。
 「韓国企業の担当者と、その地元の経済特区の担当者、そして東京事務所の方の3名がお見えでした。皆さん日本語が堪能で、弊社のホームページをご覧になられた上でご連絡いただいたようで、あるシステムの調達を希望されていました」
 韓国企業のニーズの概要を紹介すると、あるシステムにAIを搭載し、人員配置の合理化を進める構想を持っているそうだが、そのAIを独自に開発して欲しいというものだった。
 「独自のAIの開発となるとハードルが高いので、今回は見送らざるを得なかったのですが、今後はこうしたニーズにも対応できるようスキルアップを図りたいと思います」と村田常務は韓国企業との商談の経緯をまとめる一方で、「それにしても驚いたのは、日本語でしか表記していない弊社のホームページをご覧になられ、また弊社がT-Messeに参加するのを調べられて、事前に商談希望のご連絡をいただいたことです」とT-Messeの注目度の高さに感嘆されたのだった。
 同社は今、あいの風とやま鉄道の呉羽駅北側で進む再開発にあわせて、本社移転を計画。2024年3月頃の竣工、5月以降の業務開始を目指してビルの建設が進んでいるところだが、新しい門出を迎えるにあたって村田常務が付言した。
 「展示会には、お客様の企業が出展されていることもあります。そのお客様や来場者との交流を目的に、弊社ではT-Messeをはじめとする展示会でブースを構え、ブランドイメージの向上を図ってきました。今回の韓国企業との出合いでは、可能性が他にもあることを気づかせていただいた点でよい経験になりました」

注目の的になったドローン

オープニングセレモニーの後、DJI JAPAN株式会
社のブースに立ち寄り、ドローンの説明を受ける
新田八朗富山県知事(富山県ものづくり総合見本
市実行委員会会長)(写真上)と、ドローンの用途
などを解説していただいた同社の木田雄貴さん
(写真下)。

 海外企業の中で、ひときわ注目を集めていたのはドローンを展示していたDJI JAPAN(株)だ。同社はドローンメーカーのDJI(本社:中国深セン)の日本法人。ドローンの販売を主な業務とし、T-Messeには今回初めて参加した。ブースへ次々と訪れる来場者に対応していた、同社ソリューションエンジニアの木田雄貴さんにお話をうかがった。
 「皆さんドローンへの関心が極めて高いようですが、その用途となると空撮をイメージされる方がほとんどのようです。でもドローンって、様々な分野で利用が可能で、弊社では『ドローンで空から産業革命を起こそう』という意気込みで取り組んでいます」
 木田さんのコメントは極めてアグレッシブなものであったが、様々な利用法とは、測量や観察・点検、運送、農業の薬剤散布等々。観察・点検ではドローンに搭載するカメラやセンサーのバリエーションを増やせば、例えば屋根瓦の破損箇所の確認や台風・地震等の被害状況、各種機器の点検等にも利用でき、人員や機材投入の合理化を図れるという。
 先述の木田さんが続けた。
 「例えば、サーマルカメラを搭載してドローンを飛ばし、民家の屋根瓦の確認をするとします。そこで瓦が割れたり、風雪で瓦が浮いたりしているところは、正常なところとは温度が違うため一目瞭然でわかるのです。確認作業の大幅な合理化につながるだけでなく、受注件数を増やすことも可能です」
 こうしたドローンの利用の仕方を、来場者の業務や関心にあわせて紹介したところ、見本市初日の半日ほどの間で複数の商談と見積依頼があったとのこと。うち1社は、まさしく屋根の補修にドローンを利用している業者であったが、「サーマルカメラによる点検作業の合理化に強い関心を持たれた」(木田さん)と商談に手応えを感じていたようだ。

日本と大連(中国)の架け橋に

大連彩宜塗装材料有限公司の創業者・青山春暁
さん(写真上)と同社が塗装などの表面処理を施し
た製品例(写真下)。青山さんは同社の経営は後
継者に任せ、日中間のビジネスのサポートなどに
注力するようになっている。

 もう1社お話をうかがったのは、大連彩宜塗装材料有限公司の創業者の青山春暁さんだ。青山さんは中国残留邦人の母親とともに1983年に帰国。のちに、日本のある自動車メーカーに勤め、塗装などの表面加工・着色の技術を習得して技能士の資格をとり、転職したメガネメーカーでは若手技術者にフレームの塗装・着色についての指導も担当したのだった。
 大連に渡ったのは2000年のこと。メガネメーカーが大連に塗装工場をつくったのを機に赴任し、同社の中国での展開の礎づくりを担当したのだ。その9年後にメガネメーカーを退職して、大連で起業。金属やプラスチックの塗装・表面加工等を主な業務とする大連彩宜塗装材料有限公司を起し、日系企業からの受注を中心に業務を拡大し、今では経営を若手の後継者に委ねて青山さん自身はサポート役に徹し、住まいも再び日本に移したのだった。
 T-Messeへの参加は前回の2021年からだという。自動車メーカーでの勤務経験や日系企業の受注を数多くこなしてきたことから塗装の品質は高く、「ブースにお越しになられた日本の企業の方に、弊社の塗装技術を紹介すると皆さん驚かれ、参考までに見積りを依頼され、場合によっては……」(青山さん)と商談のとば口に立つケースが多々あるという。今回の見本市でも複数の企業から声をかけられ、フォローの商談が後日に続くと微笑んでいらっしゃった。
 青山さんには、販路拡大のほかにT-Messe等の日本の展示会に出展する目的がもう1つあった。それは日本と中国の架け橋となり、展示会等を機に若手社員を呼び寄せ、日本のものづくり企業を見学させること。「見聞を広めて、モチベーションを高めたり、働くことの意義を考えたりして、よりよい職場づくりに役立ててほしい」と考えているのだ。
 今回のT-Messeでも、青山さんは5名の社員を大連から出張させ、見本市前日に県内のある企業の見学を実施。機械化が進み整理整頓された生産ライン、掃除が行き届いた休憩室やトイレを視察した後で、メニュー豊富な社員食堂で実際に昼食もとったという。いずれの社員も大変に感激し、「自分たちの会社もこういうふうにしたい」と口々に言ったそうだ。
 青山さんによると、最近、中国の経営者の間では京セラの創業者・稲盛和夫氏が人気だという。盛和塾の会員になる人も多いらしく、“経済発展して裕福になったけど、何のためにがむしゃらに働くのか”と、その答えを日本の一経営者に求める人が後を絶たない様子。「こうしたことも、中国の若いビジネスマンに伝えたい」と青山さんは熱く語った。
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 4年ぶりのリアル開催の故か、今回のT-Messeには以前にはない賑わいがあったようだ。多くのブースで会話が弾んでいるのを目の当たりにして、企業と企業、国と国に大きな輪が広がっていくのが感じられ、ここから多くの成果が生まれることを願うばかりであった。

○問合せ先
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      (公財)富山県新世紀産業機構
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TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326

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作成日  2024/01/26

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