令和元年度 とやま起業未来塾(シェアライフ富山 社長 姫野泰尚氏 インタビュー) とやま起業未来塾  TONIO Web情報マガジン 富山

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令和元年度 とやま起業未来塾(シェアライフ富山 社長 姫野泰尚氏 インタビュー)

塾での学びの過程をダイジェスト紹介

とやま起業未来塾のロゴマーク。第1期の塾生がデザインした。

 「会社を興し、自分で事業を展開したい」「新分野に挑戦し、事業を拡大したい」
 こうした創業や新分野への進出の志を持ったアントレプレナー(Entrepreneur/起業家)を支援するために設けられた「とやま起業未来塾」。平成17年度にスタートし、令和元年度は第15期生19名を送り出したところだ。
 修了生の延べ人数は385名(令和2年3月31日現在)。その約7割が起業や新分野進出し、今では日本国内のみならず世界のマーケットも視野に入れ、海外に拠点を構えている企業も現れ始めている。
 今号のTONIO Newsの特集では、令和元年度のとやま起業未来塾の進行スケジュールを例に、そこで何を学び、どのようにビジネスプランをブラッシュアップしていくかを紹介するとともに、ユニークなアイデアの下で、空き家を活用してシェアハウスやゲストハウスの展開に取り組んでいる15期生・姫野泰尚氏の事例を紹介しよう。

富山から世界へ。夢へのサポーター。

第15期(令和元年度)塾生募集のパンフレット。

 とやま起業未来塾は、例年3月中・下旬から4月中・下旬頃に新年度の塾生募集を開始。当機構のホームページで告知するほか、自治体や商工会議所・商工会などの窓口に募集要項のパンフレットを掲示し、入塾希望者を募っている。提出に必要な書類はすべてホームページからダウンロードすることができ、必要事項を記載して未来塾の事務局へEメールで申し込む。
 令和元年度のコースには「未来ビジネス創造コース」、「ものづくり・商業・サービス業コース」、「コミュニティビジネスコース」の3つがあり、募集定員はそれぞれ、4名、10名、6名程度。「未来ビジネス創造コース」では、既に事業を展開している方で、「さらなるビジネスの拡大を目指す方」、「事業承継を行った(行う)後継者」、「新たなビジネスに挑戦する方」、「第4次産業革命(IoT、ロボット、ドローン等)に対応する事業を行う方」などを対象に、全国展開・海外展開、販路拡大等を目指す企業人の育成を目指す。
 「ものづくり・商業・サービス業コース」、「コミュニティビジネスコース」はともに創業予定の方、創業後1年程度の方を対象に、前者のコースでは「地域の資源活用、独創的な商品・サービス等の開発により、創業を目指す起業家を育成」を、後者では「地域課題の解決を図る地域貢献型事業の創業を目指す起業家を育成」を目指す。申込者の競争倍率は年度によって変動はあるものの、2倍前後で推移しており、県内屈指の創業塾・起業塾となっている。

「生涯の友を得たようだ」

講座の進行途中で、ゼミ形式で自身のビジネスプラン
を発表し、講師やコースの塾生からの質問を浴びる
(写真上)。プランを練り上げていく際には、個別の
指導もある(写真下)。

 開講式は例年5月下旬から6月に開催。令和元年度は、石井隆一名誉会長(富山県知事)、稲垣晴彦塾長(北陸コカ・コーラボトリング(株)会長)ほか、師範・起業アドバイザーを務める県内企業の社長・会長などが一堂に会して新年度入塾生の門出を祝い、また顔合わせの交流会も行った。そして翌週からは、毎週土曜日午後の半日を利用して、講義を実施。
※ 石井名誉会長の名の「たかかず」の「たか」の漢字は、正しくは「隆」の「生」の上に「一」が入った字体です。ホームページではこの字体を表示できないため「隆」を用いています。
※ 令和2年度からは水口勝史氏(立山科学工業(株)社長)が塾長を務める予定。
 講座の中には、県内外の経営者の新規事業開始や販路開拓などの実践的な話をうかがう機会もあれば、金融機関からの融資や事業を進めるにあたっての権利関係なども含め、塾生の個別の課題を扱う個人指導もある。
 なかでも塾生に好評なのは、講師や同期の塾生からの意見をもとにブラッシュアップしていく過程だ。TONIO Newsで取材してきたとやま起業未来塾出身のアントレプレナーたちも、「そもそも、そのニーズはあるのか」「価格設定は妥当なのか」「市場の見方が甘すぎるのではないか」「成長予測のバックグラウンドの数字が知りたい」等々の忌憚のない意見を講師や同期の塾生から浴び、自身が見落としていた、あるいは甘い見立てをしていたことに気づかされ、新たな視点から事業プランを練り直す機会を得てきたのであった。
 この真剣なディスカッションは、半年にわたって繰り広げられる。そこから同期の塾生間に一種の連帯感が生まれ、「学生時代の友達とはまた違い、本音で語り合える生涯の友を得たようだ」と語る修了生を、編集子は羨望のまなざしで見たことが幾度もある。
 カリキュラムを経て、塾生は自身のビジネスプランをブラッシュアップしていく。中には入塾時の想定とは違ったビジネスプランがまとまり、11月の発表会・修了式を迎える人もいる。令和元年度の最終発表会では、各コースから選抜された8名(未来ビジネス創造コース2名、ものづくり・商業・サービス業コース4名、コミュニティビジネスコース2名)により、持ち時間各10分でプレゼンテーションが行われ、受賞者(4名)の表彰を経て、半年にわたって行われたとやま起業未来塾は幕を下ろした。

不動産店に勤めながら起業

シェアライフ富山の代表を務める姫野泰尚社長(写真上)
と現在運営しているシェアハウスの一例 (写真下)。 利用
者は学生より社会人の方が多いようだ。

 以下に紹介するシェアライフ富山の姫野泰尚社長は、令和元年度(第15期)の受講生だ。未来塾と出会い、起業するまでの経緯を全て紹介すると長くなるので、要点を押さえて記そう。
 オーストラリアで映画のエキストラなどを経験したのちに帰国した姫野社長。在豪中に、不動産投資に関する本を読んだことを縁に不動産業に関心を持った。そして平成21年1月、全国にフランチャイズ店を展開している大手不動産会社にフランチャイズ加盟している県内のある不動産会社に就職。営業の道を歩んだ。そこで2カ月もしないうちに、中部エリアのフランチャイズ店でトップの成績を上げるようになり、さらにその後には4店舗を管理する部長になった。
 「会社には実家から通っていたました。仕事がうまく回り始めたので、そろそろ一人暮らしをしようかと考えていたところに、5LDKの一戸建てを『なんとかして欲しいと』という相談を受けました。見ると立派なお宅です。『自分が住みたい』と思ったので、家主には『私が借りて、シェアハウスをやってみたい』とお願いしました」
 姫野社長は当時を振り返ってそう語るが、このシェアハウスの事業は、勤務先の不動産会社の社長の了解も得て、姫野社長個人が行うことに。入居が決まった際には、手数料として1人につき家賃1カ月分を勤務先の不動産会社に支払うことを条件に、勤務時間も利用してシェアライフ事業に奔走した。
 平成21年頃の富山では「シェアハウス」という言葉はまだなじみが薄かったのではないかと推測されるが、ホームページ上で告知すると一カ月あまりで完売。噂を聞きつけた人々の入居希望が後を断たないため1棟ずつ増やし、平成26年には6棟のシェアハウスを運営するまでになった。そこでその年の1月、不動産店に勤めながら、姫野氏はシェアハウスの運営会社シェアライフ富山を設立。翌年には古民家を再生したゲストハウスも始めることとなり、やがて「チェックイン・チェックアウトの業務にも対応する必要性が出てきたため不動産会社を退職」し、自身の事業に専念するようになった。

空き家の有効活用をビジネスに

「オモイエ」プロジェクトの第1弾としてスタートした
ゲストハウス「泊まることのでき る売薬資料館」の
内部。“売薬さん”の商売道 具であった薬箱や秤
(はかり)なども展示し、 「くすりの富山」を紹介し
ている。

 姫野社長が未来塾に入塾したのは令和元年6月のことである。軌道に乗りつつあったシェアハウスの事業を見直し、どちらかというと財務・法務・資金繰り・経営管理など、会社経営の基本的なことを学びたいと思って志望した。ところが受講してしばらくしたのち、当初の期待以上に得るものがあった。
 「皆さん自分の事業への思い入れが極めて高く、マネタイズモデル、すなわち事業から収益を得る仕組みづくりを真剣に考えておられました。それを間近で見て、私は刺激を受けました。また時には“その売上の数字の根拠は何? 甘いのではないか”と同期のビジネスプランを見ながら自分のプランを見直すことができたこともよかった。中には初めのうちは、はっきりとした目標を見いだしていない塾生もいましたが、受講期間中にどんどん形になっていくのがまた刺激的でした。私にとってはその空間に彼らと一緒にいることができたことが、未来塾の一番の収穫でした」(姫野社長)
 刺激を受け、姫野社長はよりどん欲になった。シェアハウスやゲストハウスの運営という視点にとどまらず、富山だけでなく全国的にも増えつつある空き家の活用についてのビジネスプランを練ろうと、意識が変わってきたのだ。
 古い空き家の価値は、一般的な不動産屋の視点でいうと、上物の評価額はゼロといってよい。従って土地の評価額から解体費を引いたものが空き家の評価額になる。町家風に、両隣が隣接している場合は、補修費をさらに引かなければならない。そうなるともうほとんど残らないか、マイナスになってしまう。また商店街の古い空き家の場合は、間口が狭くて奥行きがあるケースが多い。いわゆる「うなぎの寝床」だ。敷地の形もそれを反映していることが多いため、新しく家を建てるにしても使い勝手の悪いものにならざるを得ない。土地の評価額が上がる要素は少ないのが実情だ。
 ところが空き家の所有者には、思い出がいっぱい詰まった家であるだけに、不動産屋の評価はなかなか受け入れられない。このギャップゆえに、放置される空き家がますます増えるという悪循環が繰り返されているようだ。そこを姫野社長は、リノベーション による付加価値ではなく、オーナーと家との思い出やその土地の文化など元々そこに残されている歴史に価値を見出し、コンセプト設計をすることで、都市部の人々や海外からの旅行者にゲストハウスとして利用してもらうことにした。もちろん元のオーナーも利用でき、宿泊客がいない時にはゲストハウスを訪れて、思い出に浸ることも可能である。つまり、思い出の家を完全には手放さない、という選択肢をオーナーに提案できることになるというわけだ。
 「そのモデルケースとしての試みが、富山市岩瀬の旧売薬さんのお宅です。どこの不動産屋も二の足を踏んだ物件を、私は『オモ“イエ”プロジェクト』と銘打って、『泊まることのできる売薬資料館』として活かせるのではないかと思いました」と姫野社長は空き家を活かすマネタイズを紹介し、「年が明けてからは、新型ウイルスが猛威をふるい、旅行業、ホテル業全体が大打撃を受けていますが、こんな時こそ、地元の人にもたくさん利用してもらいたい。売薬や北前船といった何となく知っている地元の歴史も、まさか売薬さんが北前船で北海道で商売していたなんて。と私たちも知らなかった歴史にだって出会える。空き家には掘り下げるほど可能性が眠っている」と続けた。
 思い出の家を活かす「オモイエ」プロジェクト。姫野さんの試みが全国にも広がり、空き家問題解決の一助になることを期待するところだ。
(第16期生の募集は令和2年3月25日から4月20日の期間で受け付けております。あなたのチャレンジをお待ちしております。)

○ 問合せ先  とやま起業未来塾事務局
        (公財)富山県新世紀産業機構 企画管理課内
所在地:〒930-0866 富山県富山市高田527番地
        (公財)富山県新世紀産業機構内
TEL 076-444-5601  FAX 076-444-5642

作成日  2020/03/31

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