オンラインセミナーでも企業活動を支援
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海外展開に方向性を見出す企業も

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オンラインセミナーでも企業活動を支援
海外展開に方向性を見出す企業も

 

令和2年度に実施したオンラインセミナーの様子
(写真上/「You Tubeを活用した集客・販促の
ノウハウ」(R3/1/22)、写真下/「空飛ぶクルマと
惑星探査制御技術」(R2/7/31)。本文でも紹介した
ように初めての試みであったが、「受講しやすい」
と好評であった。

 令和2年は、コロナで明け、コロナで暮れた。年末に発表される「新語・流行語大賞」や「今年の漢字」は、コロナ禍を象徴する「3密」「密」に。その「密」を避けるために、各種事業やイベントが中止になったり、参加人数を絞って行われるなど、未知のウイルスへの感染予防のために翻弄された1年となった。
 そうした中、当機構では感染状況を鑑みながら、セミナー等の開催・中止を判断。開催に至った場合は、アクリルパネルの使用や受講者の定員を半分に抑えて受講者間の距離を保つなどの対策を施して実施したほか、オンライン化により講師と受講者のオフィス(あるいは自宅)を結んで行ったものもある。
 オンラインセミナーのテーマは多彩だ。中小企業支援センターが所管したオンラインセミナーは、集客や販促をテーマにしたものから、働き方改革や労務管理全般についての解説、ホームページの作り方とそれを活用した販促のノウハウを紹介するなど、前年までのセミナーと比較しても遜色のないメニューがラインナップされた。イノベーション推進センターが行ったオンラインセミナーも、次世代のロボットや自動車、医薬工連携などの技術開発をにらみ、ものづくり県富山の活性化に向けたテーマについて活発に執り行われた。
 アジア経済交流センターでも同様であった。例年行われている「海外バイヤー招へい商談会」(11/26)は、当時、新型コロナウイルス感染症の蔓延が落ち着いていたため従来通り対面形式で行われたものの、そのおよそ1カ月前に行われた「ASEANビジネスセミナー」や海外ビジネスアドバイザーによる個別相談の一部はオンラインにより実施。感染拡大を防ぐために、当機構としても細心の注意を払ってきた次第だ。

この状況で海外市場開拓を目指して

K&S Groupの加藤薫社長(写真上)と
「おさかな家」店内の様子(写真下)。

 このコロナ禍にあって、オンラインセミナーの受講を機に、富山湾の白エビや寒鰤などの魚介類を商材として海外展開に踏み出そうとしている企業がある。その名はK&S Group(株)。居酒屋「おさかな家」のほか3店の居酒屋と、フランチャインズ展開している「北陸×イタリアン バルッチャ」を擁する飲食店グループだ。同社では令和2年に入ってから、落ち込む売り上げをカバーしようと、地区のイベントや大型商業施設の催事などに出店するようになり、さらには先述のように海外の市場もうかがい始めた次第。そのきっかけを加藤薫社長が語る。
 「実は昨年の初夏に、白エビ漁をされている漁師さんに会って、『コロナの影響で白エビの販売が振るわない。冷凍庫に白エビが貯る一方だ。なんとかできないか』と相談されました。漁師さんたちも困っていたわけです。その相談を受けて、少しでも力になることができるのならと思いましたし、うまく販路開拓ができれば当社にとってもメリットになると思いました」
 ところがそう簡単に、白エビの流通に新規参入できるものでもない。もともと白エビが商業利用されるほど水揚げされているのは富山湾のみで、白エビを扱う問屋は古くから6社がしのぎを削っている。その6社の営業マンが、北は東北地方、南は中国・四国地方まで隈なく歩いていて、国内で新規開拓をしようにも、未開の市場は残りわずかだった。
 「そこで私は中国や東南アジアの国々への、白エビの輸出を思いついたのです。中華料理にはエビがよく使われますし、これらの地域ではエビの養殖が盛んですから、白エビも受け入れられやすいのではないかと期待したのです」
 こう思った加藤社長は、当機構のアジア経済交流センターを訪ねたところ、「ASEANビジネスセミナー」と「海外バイヤー招へい商談会」を紹介され、早速申し込んだのだった。

シンガポールと富山を結びオンラインセミナー実施

令和2年10月26日に実施された「ASEANビジネス
セミナー」の当機構セミナールームの様子(写真上)。
セミナールームでの受講の他に、web会議のシステム
を用いたため受講者のオフィス(自宅)での受講も
可能となった(会場受講20名、web受講30名)。
写真下はアジア経済交流センターの鎌田慶昭センター長。
大手商社OBで東南アジアでのビジネス経験が豊富。

 ASEANビジネスセミナーは10月26日に行われた。そのころの日本の新型コロナウイルスの感染状況は比較的落ち着き、感染対策を行った上で従来の対面形式で実施されたのだが、講師の1人・関泰二氏(日本アシストシンガポールの代表)が拠点を置くシンガポールからの来日が難しくなり、一部オンライン形式でのセミナーに変更。関代表のオフィスとセミナー会場をweb会議システムを使って結び、セミナーを実施したのだ。セミナーはライブ配信され、パソコンやスマートフォンからもweb会議システムを用いてセミナーに参加できるように配慮された。
 ここで講師の関泰二氏を紹介しよう。氏は、シンガポール企業の海外進出や貿易促進を支援する政府機関である、シンガポール国際企業庁のシニアマーケットオフィサーや在京シンガポール大使館の商務官などを経て、日本アシストシンガポール(NIHON ASSIST SINGAPORE PTE. LTD.)を設立。その代表を務め、日本の企業のASEAN各国への進出や取引のアドバイスなどを行ってきた人物。日本企業の製品やサービスを現地のマーケットに適応させるノウハウにについては高い評価を得ており、これまで600社を超える日本企業のASEAN進出についてのアドバイスなどを実施してきている。ASEAN各地に人脈を持つ当機構アジア経済交流センターの鎌田慶昭センター長が依頼し、今回のセミナーの講師を引き受けていただいた。
 セミナーでは、鎌田センター長がASEAN各国の基礎データを紹介した後で主要6カ国の対日貿易の概況を紹介。さらには今後の経済成長の予測や日本に対する信頼度やビジネス環境などデータを用いて、投資先としてASEAN各国の魅力などを解説した。
 それに続いて関代表は、セミナー当日直近のデータを用いながらASEAN各国の新型コロナウイルスの感染状況を俯瞰した後で、「シンガポールを中心としたフライト6時間のASEAN市場には約30億人の巨大な市場があり、シンガポールはそのゲートウエイ」と力説。シンガポールにあるチャンギ空港は「ASEANの中心にあって100以上の航空会社が乗り入れ、世界の300都市との間で週6800便を飛ばしていた」が、「コロナ禍により状況は一変、経済は落ち込みつつある。コロナ対策の規制は、段階的に緩和されるだろうが、今年中には元には戻らないかもしれない」と当時の状況を踏まえて述べた。
 そして関代表は、「これはコロナ以前のASEAN市場の見方で、コロナ後は変わってくる可能性もある」と前置きした上で、ASEAN10カ国を食品販売の視点から「成熟市場」「成長市場」「潜在市場」に大別。「成熟市場のシンガポール、タイは参入障壁が低く、他との差別化が求められる。消費者の意識は成熟し、価格やメニューの多様化も進んでいる」とまとめ、成長市場については「日本食は高級食。拡大する中間層向け商品を充実させ、中低価格に設定。モール等への出店を心がけ、中食や持ち帰りも導入する」と付言した。

リデザインという考え方

シンガポールからweb会議のシステムを使って
ASEAN各国へのビジネス展開についての
ポイントを紹介された日本アシストシンガポール
代表の関泰二氏。

 さらに関代表は、「日本からASEAN各国に商品を輸出するには、リデザインという考え方が必要」
 といい、日本のドレッシングメーカーの展開について例示した。その概要は概ね以下のようなものだ。
 ドレッシングメーカーでは、シンガポールへの輸出を企画するも、まったく売れなかった。そもそもシンガポールでは生野菜を食べる習慣がなく、ドレッシングの必要性はまったくなかったのだ。そこで相談を受けた関代表は、ドレッシングの使い方のリデザインを実施。シンガポールではチキンライスに各種のソースをかけて食べる習慣があることを踏まえ、ドレッシングをチキンライスのソースとして用いることを提案。食品売り場などでの試食会を通じて、消費者にドレッシングの利用を広めたのだった。
 「日本の常識だけで物事を判断しない」ことの必要性も強調された。シンガポールに進出した日本の居酒屋の多くが、後に定食屋に変わったそうだが、「シンガポールでは日本の居酒屋のように食べながらお酒を飲む習慣がなく、食事は食事、お酒はお酒と分けて考えている」という。また日本では「?」がつけられそうな食品の組み合わせ、例えばおでんに蕎麦を入れる、エビ天蕎麦+カレーなども一定の支持を受けており、日本の常識にとらわれて「それはNo」と決めつけないことが大切だそうだ。
 日本酒の販売についても興味深い指摘があった。「日本酒の紹介の仕方で『甘口』『辛口』がありますが、あれは東南アジアに限らず海外では伝わりにくい表現ですから、数値化してグラフで示すなど科学的に表現したらよい。そうすると甘口、辛口の定義が明確になって、その場で試飲してもらうこのお酒がどこに該当するかが説明しやすくなる」というのだ。
 こうした具体例を引きながら、さらには100点あまりのパワーポイントによる資料を示しながら関代表はシンガポールのオフィスからセミナーを進めたのだが、これをK&S Groupの加藤社長は当機構のセミナールームで受講したのであった。

タイの企業3社と商談。輸出直前までいくも……

氷見漁港での鰤の水揚げの様子(写真上)と
富山湾の宝石と称される白エビ(写真下)。
K&S Groupの加藤社長は「日本から輸出される
魚介類の中で、この2つは差別化が図れる」と考え、
タイへの輸出を試みた。

 加藤社長がASEANビジネスセミナーを振り返る。
 「実は私は、このセミナーに参加するまではシンガポールに白エビを輸出したいと思っていましたが、関さんのお話をうかがって、タイに興味が移りました。タイはシンガポールと同じく『成熟市場』で、日本の企業もたくさん進出していて、日本からの駐在員もたくさんいます。また日本でもおなじみのエビ、ブラックタイガーの養殖が盛んだったことも思い出し、まず最初にタイへの輸出を試みることにしました。日本の他の地域から魚介類の輸出が試みられているかもしれませんが、白エビや寒鰤はそれらとの差別化が十分に図れます」
 そしてASEANビジネスセミナーのほぼ1カ月後に行われた「海外バイヤー招へい商談会」では、タイから参加の3社と商談。そのうちの1社、「J社とは鰤を中心とした富山湾の鮮魚を小松空港経由で輸出する」(加藤社長)ことで話がまとまったそうだが、第1便に予定していた12月中旬の飛行機が雪のためフライトしなかったため延期したところ、今度は年末にタイの卸売市場で新型コロナウイルスの感染者が出た様子。同社の卸先の市場ではなかったものの、地域を挙げて市場をしばらく閉鎖することとなったため、寒鰤は行き場を失ってしまったのだ。
 また他に商談したI社、D社は、加藤社長イチオシの白エビに関心を示してくれたのだが、「コロナ禍が落ち着いたら商談を再開する約束をし、今は忘れられないように時々メールを送っている」のだそうだ。
 「J社との商談の過程では、いずれ現地のデパートなどで鰤の解体ショーを行って、刺身やにぎり、鰤料理を試食していただくことや、私の知人の富山ブラックのラーメン屋も連れていく、などいろいろアイデアが出ていました。そのうちに日本国内でも『第3波到来』と騒がれるようになりましたから、こちらも『コロナ禍が終息するまで待とう』となりました」と加藤社長は語り、無念な胸のうちを明かしてくれた。
    *                             *                              *
 冒頭に紹介したように本年度は多彩なオンラインセミナーを実施した。その数およそ40。受講者からは「移動時間の観点から従来より参加しやすかった。この路線を継続して欲しい」「会場での受講とweb受講を組み合わせた一部のセミナーでは、回を重ねるたびにweb受講の参加者が増えた。web受講は便利だ」「講師にとってもオンラインセミナーは都合がよいのではないか。講師の居住地によっては、長い移動時間がなくなり、引き受けやすくなるのではないか」と好意的な意見が多く見られた。
 最後に1つに関代表のコメントを付け加えておく。
 「コロナ禍によって展示会や商談会の様子が変わりつつあります。従来のようなホールでの商品PRの他に、これからはオンラインによる商談も増えてくる。多くの企業がweb会議の魅力に気づいたと思います。オンラインによる商談で必要なのは、短時間で商品の魅力を的確に伝える動画です。私どもへの相談には、『オンラインによる商談の進め方をサポートして欲しい』というのが増えています」
 商談のオンライン化は、時代の趨勢になるのかもしれない。

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL https://www.near21.jp

作成日  2021/03/02

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