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よろず支援拠点開設10周年

富山の中小企業・小規模企業を元気に!!

ワンストップで経営課題に答えています

中小企業庁がよろず支援拠点スタート時に示した
「支援体制のイメージ図」(『よろず支援拠点について』
より)。富士市産業支援センターf-Biz(売上拡大等に
向けた解決策の提示・継続支援で成果を挙げている
モデル)や板橋区立企業活性化センター(他機関等が
対応しない経営改善案件を丁寧に解決していくモデル)
等の支援モデルが参考にされた。

 「よろず支援拠点」の開設・・・。
 この昭和レトロな感じのする、国の中小企業支援策が始まったのは平成26年のこと。その前年に第二次安倍政権が始まり、アベノミクスへの期待が高まる一方で、「失われた10年」が「・・20年」に伸び、このままでは「・・30年」になるのではないかという懸念もあった。経営者の高齢化、事業承継がスムーズに進まない現実、労働人口の減少、正規・非正規の雇用形態の二極化、女性の労働力の活用やワーク・ライフ・バランスなどの、今日的な企業経営の課題はすでに浮かび上がりつつあった。
 当時、日本には約382万社の企業があった。そのうちの99.7%(380万9,000社)は中小企業が占め、また全従業者約4793万人のうち、70.1%(3361万人)が中小企業に雇用されていた(データは「平成26年経済センサス基礎調査」参照)。中でも小規模企業(約325万2000社、従業者約1126万人)の持続的発展が重要との視点から法整備が行われ(平成25年「小規模企業活性化法」、平成26年「小規模企業振興基本法」)、一方では、現場の支援機関の充実策として、国の肝入りで「よろず支援拠点」が各都道府県に開設された。

総合的に、チームで、ワンストップで

富山県よろず支援拠点のチーフコーディネーターの
羽田野正博氏(写真上)と初期の富山県よろず拠点の
パンフレット。最初の3年間で多い相談内容
(上位3ジャンル)は、H26年は「売上拡大」
「ものづくり」「広告戦略」、H27年は「売上拡大」
「経営知識」「施策活用」、H28年は「施策活用」
「事業計画策定」「商品開発」であった。

 本県に「富山県よろず支援拠点」が開設されたのは平成26年6月のこと。実施機関として当機構内に事務局が置かれた。スタート時には3名のコーディネーターが配置され、「中小企業・小規模事業者のみなさん あなたの『したーい』を叶えます」と呼びかけ、相談受付を開始。「したーい」の例として挙げられたのは経営改善、売上拡大、現場改善、販路拡大、人材育成、商品のPR、海外展開、創業、などであった。
 チーフコーディネーターの羽田野正博氏が語る。
 「よろず支援拠点での相談対応のポイントをまとめると、1)総合的・先進的な経営アドバイスをする、2)チーム編成を通じた支援をする、3)ワンストップサービス、が挙げられます。相談は無料で、何度でも、答えを見つけるまで、相談者といっしょに取り組みます。これは従来の公的な経営支援の相談対応からすれば画期的な取り組みでした」
 ポイント別に少し詳しくいうと、まずは「総合的・先進的な経営アドバイス」から。よろず支援拠点のコーディネーターには、中小企業診断士をはじめ各種資格を有する者の他に、大手企業の現場で改善や販促、商品開発に携わるなどの経験豊富な者が多く、従来の支援機関では十分に対応できない経営相談に、総合的・多角的な視点からの解決策を提案するだけでなく、継続的なフォローアップも実施しようとした。
 2つ目の「チーム編成を通じた支援」では、課題解決のために複数のコーディネーターで相談対応したり、外部の専門家や大学、各種研究機関等との連携が必要な場合は、よろず支援拠点がハブとしての役割を担い、ワンチームとしての効果的な支援を心がけている。そして3つ目の「ワンストップサービス」では、専門的な支援機関や大学等との接点のない中小・小規模企業の経営者に、適切な支援機関・大学等を紹介することで、いわゆる「たらい回し」をなくすよう努めている。

最近の支援事例

県内の商工会議所・商工会、金融機関、行政の商工
関係等の産業支援などの業務に従事する担当者向けに
行われた富山県よろず支援拠点の「令和4年度の実績
報告及び令和5年度の活動計画」の様子。
18名のコーディネーターが紹介された。

 こうした野心的な取り組みと、コーディネーターが年を追うごとに充実してきたことが功を奏して、富山県よろず支援拠点の利用者は年々増加。発足当初の平成26年度は、1,724件だった相談対応件数は、昨年令和4年度には5,500件を超えた。令和5年度は18名のコーディネーターが県内の中小・小規模企業の経営者の相談に応じるようになった(法律や知財に詳しい専門家(弁護士、弁理士)はいないものの、当機構が実施する「専門家派遣事業」においては、これらの専門家の指導を受けることができる支援メニューも用意している)。
 最近の支援事例を紹介しよう。
 あるラーメン店からの、同店独自の調味料「白海老味噌」を「瓶詰め商品として販売して、コロナ禍で落ちた売上を回復したい」という相談。食品加工に詳しいコーディネーターは、製造技術の確立と商品設計、衛生管理、賞味期限設定の保存試験、食品表示、コスト試算と価格設定、商談会活用などについてレクチャーし、富山県食品研究所や富山県商工会連合会の協力も仰いだ。その結果、瓶詰め商品が完成し、県内の道の駅や日本橋とやま館で販売されるようになり、都内のあるデパートでの採用も決まった。
 次にプライベートジム創業の支援。創業者は、機器メーカー勤務を経て大型ジムで働き、ジム運営のノウハウを身につけた。令和3年2月にUターンし、「とやまUIJターン起業支援事業」の申請と、事業プラン策定の相談のために来訪。経営全般と起業に詳しいコーディネーターは、「運動メニューの差別化」を提案し、「機能改善」「姿勢改善」「ダイエット」などのメニューを用意して令和3年11月にオープンした。そのプライベート指導が好評を博し、この5月には小規模事業者持続化補助金の助成を受けて、2店目を出店。3店目も視野に入れるまでになった。
 3例目は、螺鈿工房からの相談。同工房では螺鈿を施した指輪などのアクセサリーをハンドメイドアプリで紹介してきたが、売れなかった。マーケティングが得意なコーディネーターは、市場のニーズに合わせて指輪のデザインを増やすことと、体験教室での制作を提案。また店主夫人の要望を入れて螺鈿を施したネイルシートも開発し、改良を重ねた。そしてこの6月、展示会で60件余りの商談を行い、うち20件は期待が持てるという。またネイルの体験会は、予約ですぐに満席になるほど人気が出てきたそうだ。
 4例目は、富山への移住を機にチョコレート専門店を始めた方への支援。同店では、富山の特産品を生かした無添加チョコレートを製造・販売するプランを持っていたが、事業計画策定とIT活用に詳しいコーディネーターは、当機構の「とやまUIJターン起業支援事業」だけでなく、富山市の「新規出店サポート事業」、富山商工会議所の「小規模事業者持続化補助金」への応募も提案し(3件とも採択)、準備期間中からホームページやSNSを活用しての情報発信を勧めた。今年1月にオープンしたところ、想定以上の売上を確保することができ、ECサイトの準備も進めているという。

10年以内に上場を目指す案件も

ModelingXのスタートアップ時の構想を話す山田航大
社長(写真上)と第2回北陸ビジネスプランコンテスト
(令和3年4月)での表彰の様子(写真下)。
このコンテストではVRを活用したリフォームの提案
サービスを発表し、「審査員特別賞」を受賞した。

 もう一例紹介しよう。
 こちらは10年以内に上場を目指す案件。創業者の山田航大氏は大卒後、県内の金融機関に勤めたが、学生のころからの夢である起業を実現するために退職。当初は「具体的に何をする、という明確な目標があったわけではなかった」(山田社長)そうだが、コミュニケーションツールの1つ・スカイプ(Skype)を利用して海外の学生と会話するうちにITの世界に関心を持ち、「ITには人と人をつなぐ力があり、いろんな可能性がある。また富山から世界と直接つながることもできる。これを用いて仕事ができるのではないか…」と思い至り、当時注目されつつあったVR(Virtual Reality/バーチャル・リアリティ:仮想現実)に着目した。
 「といっても、後に商品化を進めたVR上の、住宅展示場のモデル住宅を見学する『MELIFE』(ミライフ)の構想が最初からあったわけではありません。住宅のリフォームを3Dの仮想空間で『Before』・『After』でご覧に入れたりするプランなど、幾つかの段階を経て発展してきました」と、山田社長は同社のメインサービス「MELIFE」の発展の経緯を振り返るが、ビジネスプランのコンテストに出場してアイデアを発表するなどの経験を通して、事業のブラッシュアップを図り、起業に向けての準備を進めてきた。
 ふたたび山田社長が語る。
 「ビジネスプランのコンテストで入賞すると、審査員やコンテストの主催者や協賛者のトップと交わる機会を得るばかりでなく、その分野の最先端の技術や市場の動向をうかがい知ることができますし、また私たちの事業に可能性を見出していただいた方々からは、投資していただくこともでき、実際、当社ではいくつもの大手企業から支援していただいています」
 山田社長は銀行員時代からビジネスプランのコンテストに参加し、4度の入賞を果たしてきた。その都度、「銀行なら支店長か役員以上でないと会えないような」(山田社長)大手企業の経営陣や経済団体のトップとの知遇を得、それらを刺激にビジネスプランを進化させてきたのだった。

コーディネーターから事業所運営について学ぶ

事業の進捗状況などを山崎コーディネーターに話す
山田社長(写真上)と「MELIFE」(ミライフ)のイメージ
画像(写真下)。同社のホームページにはモデルハウス
訪問のVR動画が公開されていて、設計図だけでは
うかがい知れない住まいの様子がわかる。
より高度化した動画を開発中。

 また山田社長は、よろず支援拠点のコーディネーターとのやり取りの中で、創業へのモチベーションや経営者としての自覚を高めてきた。そのうちの一人、山崎勇人コーディネーターは、食品業界の川上(メーカー)から川下(小売)までの仕事をいくつか経験し、飲食店経営のために独立した人物だ。食品メーカー在職中には、「食品の鮮度低下」に関心を持ったことを契機に冷蔵庫の改良を試み、ある大学教授の協力を得て、例えば梨や柿ならば3〜4カ月鮮度を保てる冷蔵庫を開発・販売するなど、ものづくりの視点も併せ持ち、富山県よろず支援拠点のコーディネーターには令和3年4月に就任した。
 山田社長が振り返る。
 「山崎さんと出会ったのは、私が銀行を辞める前の年でした。たまたま山崎さんのお店を訪れてソフトクリームを注文し、おいしかったのでその後も行くようになりました。その中で親しくなり、山崎さんの創業の経緯などの話もうかがいました。私が創業の夢の話をすると、山崎さんは真剣に聞いてくださり、『ちゃんとマーケティングした方がいい』とアドバイスもしてくれたのです」
 山崎氏が富山県よろず支援拠点のコーディネーターに就任する1カ月ほど前に、山田社長は銀行を退職。祖父母が営む農業を手伝いながら、フリーランスとして住宅展示場のVR導入の支援を行う山田社長に「遠回りになるかもしれないけれど、農業の経験はムダにはならない。いろいろ経験しながらも、VRのことは核に持ち続け、ビジネスプランを練り上げたらいい」と励まし続けたのだった。
 山崎氏がコーディネーターに就任してからは、よろず支援拠点にも足を運ぶように。拠点には創業、事業計画作成、販売促進、資金繰り、税務、労務管理などにも詳しいコーディネーターがおり、その一人ひとりにも山田社長はアドバイスを受け、事業所運営についての基本的なことを学んだ。
 そして翌年の4月。中学・高校・大学が同じであった友人の織田拳丞氏が、仕事を辞めて山田社長と合流。「ともに描いてきたビジネスプランを実行に移し、ワクワクする仕事がしたい」とModelingXの設立に加わったのだ。
 それから1年と数カ月が過ぎた。2人で始めた事業は、今では社員10名を数えるまでに。複数の企業からの投資を得、また住宅メーカーなど5社の支援も受けて、今年の秋にはモデルハウス見学のシミュレーションツールを公開する目処も立ったところだ。

     *     *     *

富山県よろず支援拠点では、時代のニーズに合わせて
各種経営課題をテーマにしたセミナー・講演会等も
実施している。写真は、昨年夏に実施されたインボイス
導入にあたっての制度解説のセミナーの様子。
講師は当よろず支援拠点の
コーディネーター・崎山強氏(税理士)。

 令和5年度、富山県よろず支援拠点のコーディネーターは18名に充実してスタート。富山市高田の情報ビルに拠点を置きつつも、富山市立図書館や魚津商工会議所、南砺市商工会に設置されたサテライトでの相談、また日本政策金融公庫(富山支店、高岡支店)、信用金庫(高岡、石動)、滑川商工会議所、立山舟橋商工会、富山県創業支援センター(SCOP TOYAMA)などでの相談会も実施し、県内全域の中小企業・小規模企業者にとって利用しやすい環境を整えた。開催の日時やコーディネーターの出勤予定などは、下記、富山県よろず支援拠点のホームページや電話でご確認ください。ご相談は全て無料ですが、原則、事前予約制となっております。

○問合せ先:富山県よろず支援拠点
所 在 地:〒930-0866 富山市高田527 情報ビル1階
      (公財)富山県新世紀産業機構内 富山県よろず支援拠点
TEL 076-444-5605  FAX 076-444-5646

URL : https://toyama-yorozushien.go.jp

作成日  2023/09/11

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