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富山県ものづくり総合見本市2019開催

過去最高の出展数で新技術にあふれた

中小企業が集まるコーナーも、多くの来場者でにぎわった今回の
総合見本市。3日間の来場者数は25,000名を超えた。

 今回で5回目を迎えた「富山県ものづくり総合見本市2019」(会期:10/31〜11/2、会場:富山テクノホール)。今回から「T-Messe」の愛称がつけられた見本市では、富山県内のものづくり企業187社(団体含む、以下同)をはじめ、海外からは中国、ロシア、アメリカ、インドネシア、マレーシアなど12カ国(地域含む)から196社が参加。県外企業95社をあわせると、過去最高の478社の製品や部材が展示され、各社自慢の最新技術やサービスが紹介された。
 会場では、バイヤーや企業の調達担当者が情報収集に勤しむ一方で、工学・化学系などのものづくりにまつわる学部・学科で学ぶ学生らが、将来の就職活動の一助にとブースを訪ね、関心のある企業の事業内容や製品についてのリサーチも展開。3日間の会期中に、延べ25,981名が来場した。
 今回のTONIO Newsの特集では、ものづくり総合見本市に海外から参加した企業や団体の声を紹介する。


注目された中国の新しい開発プロジェクト

瀋撫新区管理委員会の投資セミナーで挨拶する中国国際貿易
促進委員会遼寧省分会の龐宝国会長(写真上)と瀋撫新区の
投資環境を説明するチョウ・ヒン氏(写真下)。

 まずは中国から参加された、遼寧省の瀋撫新区管理委員会の投資セミナーから。注目の新しい開発プロジェクトの説明に先立って挨拶に立った、中国国際貿易促進委員会遼寧省分会の龐宝国(ホウ・オウコク)会長は「遼寧省と富山県は1984年に友好県省を締結して以来、経済や教育、文化、観光、環境保護など多くの分野で協力事業を展開し、様々な成果を上げてきました。昨年8月には、石井富山県知事が遼寧省を訪問され、遼寧省人民政府の唐一軍省長と会談し、交流をさらに促進させるための覚書に調印しました。中国では今、国家級の産業集積地の開発施策として瀋撫新区が計画され、インフラ整備や企業誘致が行われています。ここではよりよい協力関係が構築され、新しい成長局面を迎えるための準備が進められています」と切り出した。
 瀋撫新区は遼寧省の瀋陽市と撫順市の間で開発されている約171㎢の開発区。李克強総理が遼寧省委員会書記時代に提唱されたプロジェクトであり、また習近平主席の一帯一路構想のスタート地点として注目される重要な新産業都市である。2019年3月から本格的な開発が始まり、総投資額は500億元(約8,300億円)が見込まれるという。
 開発計画の詳細については瀋撫新区管理委員会のチョウ・ヒン氏が説明された。要約して以下に紹介する。
 瀋陽市と撫順市の間にある瀋撫新区は、遼寧省および中国北東部の中心ラインに立地し、30分圏内ある都市は瀋陽市、撫順市、本渓市、鉄嶺市など。桃仙空港もその圏内にあり、高速鉄道網をはじめとする交通体系も整備されている。2018年9月には国家級のプロジェクトとして認可され、遼寧省の特区として開発に弾みがついた。
 産業集積の方向性としては、ハイテク産業、新興産業、特徴のある産業の3つの枠組みを想定。具体的には総合的医療産業、ビッグデータ産業、人工知能産業、ロボットやセンサーなどのスマート機器製造産業、そしてファイナンステクノロジーの一大拠点の構築を目指す。例えば、総合的医療産業では、健康食品や生物医薬関連の企業、高性能医療機器を開発製造する企業、精密医療・衛生管理・介護などの医療・福祉サービスに関わる企業など多岐にわたる。また、人工知能産業では、AIロボットの開発を筆頭に、AIを搭載した各種無人機の開発、無人自動運転技術の開発およびそれらを実現するためのスマート機器の端末やアプリの開発など、重層的に産業の集積を目指していく。
 チョウ・ヒン氏によると、瀋撫新区のPRや投資の窓口となる国外事務所はすでに5カ国に開設し、新区紹介の協力契約は55社と締結。瀋撫新区への投資契約は261件に達し、中には日本のある自動車メーカーも前向きに検討している。今のところ、各企業の投資総額は1,706億元にのぼるという。

大連三沅工業有限公司の陳悦さんは、同社の貿易担当として
来県。

 遼寧省からは多数の民間企業も出展していた。そのうちの一社に大連市の大連三沅(ミモト)工業有限公司がある。同社は精密板金や金属製品の機械加工を得意とする企業。ブースの様子をうかがっていると、多くのビジネスマンが同社の説明パネルの前で足を止め、担当者の説明に耳を傾ける姿が何度も見受けられた。同社で貿易業務を担当している陳悦さんに、日本企業との取引の様子から話を聞いてみた。
 「商社経由で精密板金加工品などを日本の企業に納めています。富山に来るのは今回初めてですが、過去には名古屋などで開催された展示会に出展したことがあり、富山県の企業にも当社製品を納めさせていただいています」と語り、県内企業の名前を挙げた。そして続けて「富山は製造業が盛んな都市と聞いています。ブースの前で立っていると、当社のパネルに興味を示してくれる来場者が時々いるので、商談に結びつけたい」と意欲を示していた。

サハリンのサッシ企業、札幌から全国へ

三重サッシの高断熱を力説するKARVI社のKaragulakov氏
(写真上)と同社の三重サッシ(写真下)。樹脂サッシの芯材に
スチールを用いて強度を補強。ドイツの窓メーカー、日本の
ガラスメーカーが技術協力している。

 続いてお話をうかがったのは、ロシア・サハリンから三重サッシの販路開拓を図って出展したKARVI COMPANY(カールヴィ・カンパニー)のMikhail Karagulakov(ミハイル・カラグラコフ)さん。氏は同社のマーケティング部長を務め、日本市場開拓の期待を背負って札幌市のカールヴィ・ジャパンの代表も務めている。
 同社が日本での展開を試み始めたのは、2015年のこと。マーケティング調査を行い、三重サッシ販売の可能性について探った。そこで「Go」サインが出たことを受けて翌年3月、札幌市に日本での拠点を設置。各種展示会・商談会への参加を通じ、日本の消費者への三重サッシのPRに努めるとともに、建設会社、工務店、リフォーム店等を対象に販売協力店の開拓に乗り出した。
  Karagulakov氏が語る。
 「日本のサッシは引き違い形式が多く、外気が入る隙き間があるところから、冷暖房の効率が悪い面があります。その点、当社のサッシは内開きまたは内倒で開ける形式で、窓を閉めている時の気密性は引き違い形式より極めて高い。そのうえガラスは三重ですから、例えば北海道の真冬でも、日中、日差しがある場合は朝の一時暖房を使うだけで、陽がかげるまで温かさを保つことができます」
 と三重サッシの断熱性を強調して、札幌市で導入されたSさん宅での、二重サッシから三重サッシへの変更にともなう光熱費の推移を表した資料を出した。マンション住まいであったSさん宅では、2つの窓をKARVI の三重サッシ(1,485×1,195mm)に交換したのだが、設置前の冬期(2015年11月〜2016年3月)では約65,000円だった光熱費が、翌年同期には25,000円に下がり、代金の92,000円(工事費含む)は3年目(この冬)に回収される見込みである。
 断熱や光熱費節約の効果は口コミで広まった。北海道ではすでに20軒を上回る戸建て住宅、7棟のマンション、30棟ほどのアパートに同社の三重サッシが取り付けられ、全国にも徐々に拡大。富山県内でも設置例があり、取材の2日前には県内の工務店を通じて見積依頼が入ったという。同社では、大阪・東京と順次ショールーム等の拠点を設け、「西日本では冷房効率のよさも訴えていく」とKaragulakov氏は意欲満々であった。

台湾の精密鋳造品企業、地方都市での展開も・・・

SOARTEKでマネージャーを担当している廖素櫻さん(左)と日本
の企業リタイア後、同社の品質管理の指導を行っている林広人氏
(写真上)。下の写真は、SOARTEK社の外注先を希望してきた
精密加工企業の担当者。

 3社目は台湾のSOARTEK(ソーテック)。ステンレス鋼や炭素鋼、耐熱鋼・銅合金などを用いた精密鋳造品づくりが得意で、砂型鋳造やダイキャスト、プレス抜き、メタル射出成形など各種金属加工の技術を用いて産業機械の部品製造も行い、OEMでの生産も受け付けている。
 同社でマネージャーを担当している廖素櫻(リョウ・ソイン)さんに話をうかがった。
 「当社は自動車関連を除く、産業機械全般の精密部品をつくり、30年ほど前から日本の企業に納めています。日本の企業で長く実績を積まれたエンジニアから指導を受けていますから、品質については日本製品とほとんど変わりません。今までは大都市周辺の企業とお取り引きさせていただいてきましたが、製造業が盛んな富山でも顧客開拓をしたいと思い、前回の見本市から出展しています」
 流暢な日本語を話す廖さんはさらに続けた。
 「2年前に出展した際、商談の成果は出ませんでしたが、富山県内の鋳物屋さんと知り合うことができました。その後たまたまですが、当社の社員が住んでいる自治会で小さな釣り鐘をつくることになり、見本市で出会った鋳物屋さんにお願いすることになりました。仕事が広がるのは、こういったご縁がきっかけになりますから、富山の皆さんに当社のことを知っていただこうと思い、今回も出展しました」
 同社では従来、東京・大阪・名古屋などで開催される展示会・商談会に参加してきたが、近年は、ものづくりが盛んな地方都市も注目し始めた様子。品質管理の指導を行っている林広人副総経理が付け加えた。
 「会場のレイアウトの仕方が変わり、来場者の反応もいいようです。ブースでの当社製品の説明は何社にも行いました。脈がありそうな企業は数社あり、そのうちの1社、神奈川県から来られた方には本社訪問の約束も取り付けました。当社は、東京ビッグサイトで行われる機械要素技術展には、ここ6年ほどは毎年出展していて、神奈川の企業の方やその同僚もおそらく来場されていたと思いますが、今まで出会うことはありませんでした。こうしたご縁はどこでできるかわかりませんので、今後も出展のチャンスがあれば生かしていきたいと思っています」
 そのうちに1人の男性が同社のブースを訪れ、プラスチックケースから金属製の機械部品と思われるものを取り出して、いろいろ質問を始めた。後で確認すると、「この見本市に出展していないある企業が、自社をSOARTEKの外注先として使って欲しい」(廖さん)と売込みにきたのだそうだ。
 それを受けて林副総経理が語る。
 「来場者に当社製品をPRをするのはもちろんですが、他の出展者に当社をアピールすることも大事だと改めて思いました。会場の混み具合を見ながら、私も当社のPRに会場内を歩いてみます」

初参加のマレーシア企業、日本上陸を熱望

VICTOR MANUFACTURING社のShone社長と同社の小型の
チャンバー。温度や湿度を設定して厳しい環境を人為的に創出し、
この中で機器の耐久性などを調べる。マレーシアの日系自動車
工場では2社が同社の機器を導入している。

 マレーシアの企業は今回の総合見本市が初めての出展で、12社(団体含む)が来日。そのうちの1社、VICTOR MANUFACTURING (ビクトリー・マニュファクチャリング)社に取材を申し込んだ。同社では、温度や湿度を一定の条件に保ち、機器や部材の耐久性などの試験を行うチャンバーや、部材の引っぱり強度を検査する機器の製造販売を行っている。
 日本の企業(正確には日系企業)との取引は、2014年から始まった。その経緯をNg Shone Fone(ショーン・フォン)社長が語る。
 「マレーシアにある日系自動車メーカーの工場に当社製品を売込みに行きました。そこではバンパーやダッシュボードをつくっていて、その引っぱり強度を測る機器を探していました。当社にはその検査機器がありますので、工場と話し合って、機器を3回レンタルしました。工場では3回の検査結果を検証するとともに、日本の本社が、日本の機器で測定している検査データとも比較しました。その結果、2つのデータは同じ結果を示したので、マレーシア工場での導入が決まりました」
 チャンバーの導入もほぼ同じ経路をたどった。ワイパーゴムに使われる接着剤の耐久性を調べるために、先の自動車メーカーの工場では、同社のチャンバーで高温多湿の環境をつくり、その中で検査を実施したのだ。その検査結果が、日本の本社のデータと一致したので、VICTOR MANUFACTURING社のチャンバーがマレーシア工場に導入されることに。のちには、現地の他の日系自動車メーカーの工場にも採用され、フィリピンやインドネシア、タイなどへも輸出もされるようになった。
 Shone社長が再び語る。
 「今年に入って、日本の大手家電メーカーからお問い合わせをいただき、導入が決まりました。こうしたところから、日本でのビジネス展開を足がかりに、アメリカやヨーロッパの市場も視野に入れようと考えていた矢先きに、マレーシア政府関係者からこの ものづくり総合見本市のことを聞きました。日本での展示会出展は初めてですが、これからもチャンスがあれば出展したい」と意気軒昂であった。
 取材の時点でShone社長は4社との商談を行っていた。「うち2社は可能性が高いと思われる」とにこやかに商談の印象を語るが、仮に成約に至っても、満足ではない様子がうかがえた。その理由を尋ねると、「この見本市に出展したのは、販売先を開拓する以上に、当社の代理店としてチャンバーや強度検査機を取扱っていただき、機器のメンテナンスも行っていただくパートナーを探しているのです」と返してきた。
 Shone社長は日本の市場に本気で根を下ろすつもりのようだが、数年先にその根がどこまで伸びているかが楽しみなところだ。

*     *     *     *     *

 今回のものづくり総合見本市では、各種ビジネスセミナーの他に、全日本製造業コマ大戦、小学生を対象にした科学ものづくり教室、ロボットによるチアリーディング実演等おなじみのコーナーが設けられた。また新しい試みとして、女性の経営者やものづくりに関心のある女性技術者等の交流の場として「ものづくり女子交流会」が企画された他、昨年から今年にかけて県内中小企業へのIoTの試験導入とその結果を踏まえてのパネルディスカッション「Technology ×IoT IoTが変えるものづくり」が催されるなど、従来にも増して盛りだくさんな内容となった。

作成日  2020/01/07

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