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とやま次世代自動車 新技術・新工法展示商談会 in TOYOTA

TOYOTAの関係者も驚いたとやまの新商品
1400年続く木製建具の技法が次世代自動車に!

「とやま次世代自動車 新技術・新工法展示商談会in TOYOTA」の案内チラシ。
トヨタ自動車を中心に、関連会社や部材等納入会社などにも配布され、動員が
図られた。

 年を追うごとに進化する自動車。ガソリンエンジンからハイブリッド、電気自動車へと駆動のシステムは大きく変化を遂げつつあり、それに合わせて周辺機器や部材も様変わりしようとしている。7回目を迎えた「とやま次世代自動車新技術・新工法展示商談会」(今回はトヨタ自動車(株)で開催。7/18〜19)では、そうした背景を踏まえて、富山県内の各社が新しい技法による金属加工品や制御システム、新素材等を紹介し、その熱気は会場をさらに暑くしたのであった。
 その展示商談会に、創業86年を迎える砺波市の河島建具が初出展。「建具屋さんが自動車メーカーに何を?」と例年の出展者のみならず、展示会関係者の中にも頭に?マークをつける者が多数いたのだが、同社のマネージャー・河島亜紀さんはどこ吹く風と涼しい顔。「障子(しょうじ)の組子、欄間(らんま)の組子というふうに、既成概念で組子をご覧になられるから『建具屋が・・・』と思われるのです。でも組子をマテリアルのひとつとして理解されたらどうでしょう。可能性はものすごく広がると思います」と意に介しなかった。

展示商談会での河島建具のコーナーの様子。自動車の内装に
組子を用いるアイデアに関心を示し、終日、数人の人だかりが
できて注目のコーナーになった。

 そして当日・・・。
 河島建具の展示コーナーには人だかりが絶えず、「ここだけ異空間のようだ」とささやかれた次第。その顛末を中心に「とやま次世代自動車 新技術・新工法展示商談会in TOYOTA」の概要を紹介しよう。

組子の復活にかける河島建具

組子を組んでいく河島隆志社長(上)と、富山で学んだり働いた
りしている外国人を対象にした組子づくり体験での一コマ(下)。

 まずは組子のことだ。組子とは細く引き割った木に、溝、穴、ほぞ等の加工をして、カンナやノミ、ノコギリ等で調整しながら1本1本組みつけていく木工細工の一技法。障子や欄間などの木製建具の装飾として用いられることが多く、1400年前の飛鳥時代から続く日本の伝統技術のひとつである。
 河島建具ではこの組子の、建具の世界での新しい展開を探るとともに、建具以外の世界・・・例えばインテリアや日用品などへの応用ができないかと模索。試作品開発の様子は、このTONIO Newsでも2年ほど前に紹介したところだ。(同社の過去の記事はこちら
 その後、同社では自治体の生涯学習や企業の異文化紹介などのイベントに招かれて、組子の紹介や組子づくり体験会などを実施。高岡の銅器関係の企業とのコラボイベントでは、富山県内で学んだり、働いたりしている外国人を、古式ゆかしい日本家屋に招き、襖(ふすま)や書院に用いられている実物の組子を参照しながら、その由来を紹介するとともに、組子づくりも体験していただいたそうだ。
 「どの会場でも組子づくりはたいへん好評で、銅器屋さんでのイベントはその後、追加で3回開きました。こうしたところから、工場見学の出張バージョンとして、組子づくりを訪日外国人旅行者向けの観光メニューとして商品化できるのではないかと考えました。そこで新世紀産業機構の『地域資源活用事業』の支援を受けて、ホテルや旅館などで開催する組子づくり体験メニューの開発に乗り出したのです」
 河島隆志社長がいう組子づくり体験メニューの開発については、平成30年度に着手。2年目の本年度はその改良に取り組み、今後は旅行代理店や観光協会などへのPRを行い、その受注を期待しているところだという。
 一方で同社では、インテリアなど建具以外で組子を用いた商品を「TATE - GOOD」(タテ・グッド)と称してブランディングを始めるとともに、そのホームページの整備や商品開発も進めたのであった。

TOYOTAの関係者に組子を見てもらおう

高岡銅器の風鈴と組子のコラボによる「組子風鈴」(上)と、
トレイなどに用いる「縁樹」(下)。

 商品や体験メニューの開発など、組子の水平展開が緒に就き始めたちょうどその頃、「とやま次世代自動車 新技術・新工法展示商談会in TOYOTA」の開催案内が同社に。河島マネージャーは「組子を紹介するよい機会だ」と出展申込を行い、社長とともに組子の紹介の仕方や展示資料の内容について検討し始めた。
 「組子の商品開発では、いろんな展示会に出て情報収集に努め、来場者の反応を確かめてきました。中でも啓発されたのは、東京インターナショナルギフトショーの中で開催される『素材展』です。ここへの来場者は、組子をマテリアルのひとつと理解し、いろんなシーンでの使い方のヒントをたくさん出してくれました。発想が自由なので、多くの刺激をいただきました」(河島マネージャー)
 TOYOTAの展示商談会の案内が届いた時、同社はあるお宅の新築に際して、リビングの天井に組子を張る工事を請け負っていた。間接照明が採用されたその部屋は、組子の美しい模様が映えて、豪華さはこの上ない。そのあり様を目にした河島マネージャーは、「自動車のサンルーフに組子を用いてもいいのではないか」とひらめいたのだ。
 さっそく社長に相談し、TOYOTA車の高級ミニバン・アルファード(ALPHARD)の内装をCGで作成。天井と窓際、車載ディスプレイの枠を組子で装飾した様子をパネル化し、展示会場で掲示したのである。
 それが、冒頭でも紹介した「人だかり」をもたらしたのだ。その結果、出展企業39社中、河島建具は最も注目される企業のひとつに。同社のコーナー前を通る人は、ほぼ全員が足を止めた。中には「おもしろい展示がある」と事務所に残る同僚に連絡を入れて、見学を勧める者がいた。自動車の内装を手がけるTOYOTAのある協力企業では、社員が社長に「とにかく見た方がよい」と一報を入れたため、社長も含めほとんどの社員が交代で会場に足を運び、組子が施されたアルファードのCG画像を目にして、そのアイデアと美しさに感嘆の声を上げたそうだ。

「オプションでの採用は可能性が高い」

アルファードの内装に組子を用いた例(CG)。
展示商談会の会場ではこれを大きくパネル化したところ、
来場者の目を引きつけた。

 では実際のところ、自動車の内装に組子が採用される可能性はあるのか。そのあたりのことを河島社長に尋ねると、「標準採用はすぐには難しいかもしれませんが、オプションでの採用は可能性が高いと思います」と力強い答えが返ってきた。そして河島マネージャーは「改善すべき点のヒントもたくさんいただきました」と続け、「軽量化についてのアドバイスは多くの見学者からいただきました」と、来場者の関心の高さをうかがわせた。
 掲示したパネルでは、組子をガラスではさんでサンルーフのように用いることを想定していた。ところが昨今は、燃費向上のため部材の軽量化が求められ、電気自動車ではそれが一層顕著だという。そこで来場者の多くから、「ガラスの使い方を工夫したらよい」「他の素材も検討してみたら・・・」と様々な意見が寄せられたそうだ。また、組子に難燃加工が必要なことも来場者との会話の中で気づかされ、2人はさっそく次回の展示商談会に向けて改良に乗り出したのであった。

 この「とやま次世代自動車 新技術・新工法展示商談会」は、富山県の協力を得て平成17(2005)年より不定期に開催。トヨタ自動車の他に本田技研工業、デンソー、マツダでも行い、その関連企業や部材納入企業などからも多数の参加を得てきた。ちなみに今回のトヨタ自動車での展示商談会では1,809件の商談が行われ、数十件が成約に至るのではないかと期待されている。
 自動車メーカーでの展示商談会は、今後も開催する予定だ。告知や出展企業の募集などは ホームページなどを通じて行うが、関心のある方は担当課までお問い合わせを! 一見、自動車と関係なさそうに見えても、河島マネージャーのように視点を変えると、可能性のある製品が富山にはまだ埋もれているかもしれない・・・。TOYOTAの展示会では富山のものづくりの懐の深さを改めて認識させられた。


株式会社河島建具の問い合わせ先
所在地 〒939-1324砺波市荒高屋511-2
TEL 0763-32-0105
FAX 0763-33-7105
URL http://kawashima-tategu.com/
TATE-GOODのURL http://tate-good.kawashima-tategu.com/

とやま次世代自動車 新技術・新工法展示商談会 の問い合わせ先
所在地 〒930-0866 富山市高田527 情報ビル2F
     公益財団法人富山県新世紀産業機構 販路開拓支援課
TEL 076-444-5603

FAX 076-444-5644
URL https://www.tonio.or.jp/

作成日  2019/10/24

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