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富山県ものづくり総合見本市2017開催

国内外から440社が出展して盛大に

「富山県ものづくり総合見本市2017」の開会式の様子。県内の各
業界団体、アジアの国々の在日大使館や領事館、貿易促進機関
の代表者などの列席を得て、石井富山県知事が挨拶を行った。

 2017年10月26〜28日の3日間、4回目を迎えた富山県ものづくり総合見本市2017が開催された。会場のテクノホール(富山産業展示館)には、従来の大展示場(東館)に隣接して新館(西館)が増築され、この見本市はこけら落としのイベントとなった。
 見本市の実行委員会会長を務めた石井富山県知事は、「今回は、新たに増築した新展示場を活かし、出展業種を大幅に拡大するほか、複数の企業が連携して展示するブースを設けるなど、前回から更に充実した総合国際見本市となった。国内外の多くの企業が一堂に会する格好のビジネスチャンスであり、この機会を最大限に活かし、多くの成果が生まれることを期待する」と開会の挨拶の中で述べたが、その言葉のとおり、伝統工芸、食品加工、クリエイティブ産業などの業界からの新たな出展も得た。また、海外からは従来の中国、台湾、韓国、モンゴル、ロシア、フィリピン、ベトナム、タイ、インド、米国に加え、新たに香港やミャンマーからも出展。参加企業は国内290社(団体含む、以下同じ。)、海外からは150社となった。
 北陸新幹線開業に合わせて開催した前回の見本市(2015年開催、388社出展)を上回る企業が出展し、また天候に恵まれて来場者は24,500名(速報値)と、前回より8,000名あまり増えた。
 そうした中で、見本市初参加のインド企業など海外からの出展企業4社にお話をうかがった。

「日本企業の本社にアプローチしたい」

FLURO ENGINEERINGのエンジニアMokashiさんと同社が
つくる産業機械用金属部品の一部。ボールネジやベアリング
などが展示されていた。

 まずはインドのFLURO ENGINEERING PVT.LTD.(フルロ・エンジニアリング)。インド西部のマハーラーシュトラ州ナヴィ・ムンバイに本社を構える同社は、各種産業機械のシャフトやリニアベアリング、ボールネジなどの部品をつくる企業。近年は製造ラインの自動化の分野に関心を持ち、クライアントのニーズに合わせたカスタマイズも行い、差別化も図っている。
 マハーラーシュトラ州には、インドで最も多くの日系企業の拠点がある。2016年10月現在のその数は709カ所(在インド日本国大使館・ジェトロ「インド進出日系企業リスト」2017.1 より)。FLURO ENGINEERING では、ドイツやアメリカ、中国の企業との取引はあるものの、日本企業との取引はない。過去には「インドの日系企業を通じてのアプローチも検討した」ようだが、「それよりは日本の本社と直に接点を持ちたいと考え方が変わってきた」と見本市に参加していた同社のエンジニアRiaz Mokashi(リアズ・モカシ)氏が語った。
 同社では2016年から、日本のビジネスショーに出展する機会はないかとインターネットで調べ始めたという。そしてある時、「富山県ものづくり総合見本市2017」を紹介するサイトを発見。各種完成品メーカーとさまざまな部品・部材メーカーが一緒になって催されるこの見本市に関心を持ち、出展を決めたのである。
 会期中、スタッフは交代で産業機械やロボットなどを展示する完成品メーカーのブースを訪れ、日本企業の情報を集めるとともに、自社製品の売り込みも活発に行った。「ブースで待っているだけでは時間がもったいない。当社の製品や技術を売り込んだ他に、当社の工場に導入したらよい便利な機械はないかと探しました」とMokashi氏は積極的に動いた背景を語った。
 取材中、テーブルの片隅に置かれた十数枚の名刺が視界に入った。ブースでの問合せに応じた日本企業の名刺である。一番上にあったのは、工作機械や自動搬送機などをつくり日本の自動車メーカーに納入している、産業機械メーカーの調達担当者の名刺であった。そのことをMokashi氏に伝え、「その会社は海外展開を積極的に行っており、確かインドにも拠点を持っていたはずだ」と付言すると、「帰国したら調べて訪ねてみる」と微笑んだ。そして「この見本市出展を契機に、日本の他の地域でも営業活動を展開したい」と意気込みを見せた。

富山に留学、創業。そして大連に子会社を

大連日聯信息技術有限公司のブースには、親会社林インター
ナショナルの蕭さんが控え、金型や精密加工部品を展示し、
同社の技術について説明していた。・

 続いてお話をうかがったのは、中国の大連日聯信息技術有限公司。主な製造品は金型や機械要素部品、精密加工部品などで、各種LEDライトの販売も行っている。100社近い中国からの出展企業の中で唯一、富山に営業所を持っていることが『出展者ガイドブック』からうかがえたため、取材を申し込んだ。
 「当社は富山市に本社がある林インターナショナルの子会社です。林インターナショナルは1996年に設立されました。社長の林広麗(リン・コウレイ)は創業前、留学生として富山大学で学び、卒業後は富山県内のある企業に就職しました。しかし半年ほどで退社して、今も続く貿易商を始めたのです。当初は中国から機械部品や石材、食材などを輸入し販売していましたが、富山県は製造業が盛んで金型の需要が多くありました。そこで大連に子会社を設立して、県内企業のニーズに合わせて金型や精密部品などを製造するようになったのです」
 インタビューに応じてくれたのは、林インターナショナルの蕭浩倫(ショウ・コウリン)さん。同じく富山大学への留学経験のある蕭さんは流暢な日本語で続けた。
 「大連日聯信息技術が得意なのは、プラスチック射出成型用金型、アルミダイカスト用金型及び各種機械部品の精密加工です。県内のアルミやプラスチック関連の企業からのオーダーをたくさんいただいています」
 この他に首都圏や中京圏、関西圏の企業からも受注が入っている様子。蕭さんをはじめとする営業スタッフが日本各地のものづくり企業を訪ね、前回の見本市「富山県ものづくり総合見本市2015」にも出展するなど積極的に販路開拓をしてきた結果である。
 「新たな取引先を見つけるには、この見本市は効率的で便利です。海外からの出展企業の大半は部品・部材メーカーで、ブースを訪ねる方の目的意識がしっかりしています。いわゆる冷やかしでの訪問は少ない。前回の見本市でも会期中に出会った日本企業の数はそんなに多くはありませんでしたが、その後も連絡を取り続け、成約に至っているところがあります。ですから今回も……」と蕭さんは期待を寄せた。

「日本海側でも顧客を開拓したい」

「今回メインに紹介しているのはカップリング(軸継手)です」と
NARA CORPORATIONのKimさんは強調していた。

 韓国企業の中からは、この見本市には初参加となるNARA CORPORATION(ナラ・コーポレーション)のBeom Gu Kim(キム・ボング)さんに話をうかがった。同社は、タービンなどで用いられるターニング装置や各種産業用機械に用いられる動力伝達用のカップリング(軸継手)等を製造することが得意な企業。韓国国内の大手機械メーカーに提供するのはもちろんのこと、日本や中国、東南アジアの国々にも輸出している。
 Kimさんは、「当社が日本の市場に初めてアプローチしたのは、およそ30年前。発電関係のプラントメーカーや造船所などを中心に、私たちの先輩が営業で歩いたそうです。今日の日本企業の主な取引先には……」と旧財閥系の企業名をいくつも挙げ、「船舶向けターニング装置に関しては、OEMも含めると日本の市場の90%くらいのシェアを持っています」と続けた。ターニング装置はターニングギアともいい、蒸気タービンなどの大型の装置を停止させた直後あるいは始動前に、毎分数回の低速で回転させる装置。大型装置の温度分布を均一にし、自重による軸の曲がりを防ぐために用いられる。NARA製のターニング装置は、日本では大手造船会社で採用されたのを機に、競合各社や他のプラントメーカーも注目し、販路が広がってきたようである。
 同社が今回の見本市に出展したのは、シェアの伸びしろのあるカップリングの販売促進と、日本海側の顧客開拓が目的。「日本の地方都市で開催される工業展には、初めての参加になります。富山県は日本海側有数の製造業が盛んな地域ですから、日本海側での営業拠点づくりに適しているのではないかと思います」とKimさんは熱く語った。
 取材の前に、同社のブースを遠巻きに観察してみた。散発的に訪れた来場者に、名刺交換の後でカタログ一式を手渡し、質問に答えている。いずれも富山県内の中堅・中小の産業機械メーカーで、この取材中にもあるメーカーの調達担当者が訪ねてきた。また「商談の時間をゆっくりとってほしい」という事前の商談予約もあったそうで、「日本海側の拠点づくりとしてはまずまずのスタート」とKimさんは取材を締めくくった。

「数学的、工学的センスは抜群」

KHAI THAC PRECISIONをベトナムに設立したイモト精機の井本
豊社長(左)と、同社のエンジニアTRAN NHAT TRUONGさんは、
各種切削部品に日本語での解説を加えて展示していた。

 もう1社、ベトナムのKHAI THAC PRECISION CO.,LTD.(カイ・タック・プレシジョン)のブースも訪ねた。同社は大阪府枚方市にあるイモト精機が、5年前にベトナムに設立した現地法人。工作機械をはじめとする各種産業機械の切削加工部品を製造している。
 「今から7〜8年前、円高が進行したときに海外での部品加工を思い立ち、アジアの国々を候補地に挙げました。その時、彼が当社で働く姿を見て、数学的・工学的なセンスが極めて高いところから彼の祖国であるベトナムに関心を持ったのです」
 イモト精機の井本豊社長がいう「彼」とは、今も同社で働くTRAN NHAT TRUONG(チャン・ニャット・チューン)さん。TRUONGさんはいわゆる技能実習生ではなく、イモト精機ではエンジニアとして働き、金属加工部品の設計や品質管理を担当している。
 「さっそくベトナムに視察に行くと、既に金属加工のサプライヤーはたくさんありました。その中で印象のよかった企業に図面を渡して、『この部品をつくって欲しい』と依頼しました。ベトナムに行く前は、『こういう部品をつくることができるようになるには1年くらいはかかるだろう』と思っていたのですが、1カ月もしないうちに図面通りの部品をつくって送ってきました。TRUONGさんのように、工学的センスの高い人がベトナムには多くいるのではないかと思いました」と井本社長は振り返り、「これだけ高い技術を持っているならば、現地法人を設立して他の日本企業のオーダーにも応えていくと、可能性はもっと広がると確信しました」と続けた。
 KHAI THAC PRECISION の年商は90万ドル (米ドル)を超え、従業員も10名を擁するまでになった。売上げの比率は、親会社であるイモト精機からの依頼分が約30%。残りの大部分を、他の日本企業から受注し、取引先は関西の他に埼玉、広島、熊本など日本の各地に及ぶ。この見本市への出展は「北陸での市場開拓を期待して決めた」そうだ。
 ベトナムからの出展企業が、「工作機械や半導体装置などに使う切削加工部品を提供」と謳ったのが目を引いたためか、あるいはブースに控えている日本人らしき人物(井本社長)を見て、声をかけやすいと判断されたためか、ブースに立ち寄る来場者は比較的多かった。井本社長とともにブースに控えていたTRUONGさんも北陸での足がかりをつかもうと必死であった。

*     *     *     *     *

(株)村田製作所のロボットによる「チアリーディング部実演」の様子。東館
ロボットステージでのべ5回実演され、いずれも見学者で満席になった。

 富山県ものづくり総合見本市2017では、こうした企業ブースの他に、国立研究開発法人材料研究機構の橋本和仁理事長による「我が国の科学技術政策と富山県産業の方向性」と題した基調講演、『下町ロケット』(池井戸潤著)に登場する神谷弁護士のモデルとなった鮫島正洋氏(弁護士・弁理士)やロボットクリエイターとして世界的に活躍する高橋智隆氏によるトークイベントなどが開催され、ものづくりの方向性や醍醐味が語られた。
 一方、ものづくりの楽しさを伝えるイベントとしては、ロボットによるチアリーディングの実演や恒例となった全日本製造業コマ大戦などを開催。ロボットのチアリーディングでは、一糸乱れずに演じるその様子に来場者からは万雷の拍手が送られた。また「とやま特別場所2017」と銘打たれたコマ大戦には、県内外から37チームが土俵に。8つに分かれた予選リーグの後に、各リーグの1位、2位が決勝トーナメントに進んで熱戦を繰り広げた。決勝は、金型・航空機関連部品製造のアイティオ(株)(魚津市)と、自動車部品製造の田中精密工業(株)(富山市)の取組み。軍配はアイティオ㈱に上がり、ものづくりに関心を寄せる子どもたちからも喝采を浴びた。
 こうしてさまざまな視点から、富山や国内外のものづくりが注目されるとともに、ものづくりの楽しさも体感された富山県ものづくり総合見本市2017であったが、商談のフォローが順調に進み、企業間の業務提携等も多くなることを祈るばかりである。

作成日  2018/01/30

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