第53回 株式会社HARITA 産学官オープンイノベーション推進事業費補助金 TONIO Web情報マガジン 富山

TOP > イノベーションが産む金の卵 > 第53回 株式会社HARITA

研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第53回 株式会社HARITA

循環経済の構築に向けて補助事業を活用
トラブル発生率を抑え、生産性向上へ

「デジタルツイン活用による情報付加価値型再生原料の
創出と循環経済の促進」のテーマの下での研究開発の概
要を語るHARITAのイノベーション戦略本部の仲里卓氏。

 ここ数年、よく耳にするようになった「サーキュラーエコノミー」という言葉。一般的には「循環経済」と訳される。サーキュラーエコノミーが目指すのは、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルから脱し、廃棄物を極力出さず、資源を循環させる経済システムを構築することだ。資源枯渇やCO2排出による地球温暖化への対策が求められるなか、行政のみならず、企業においても積極的な取り組みが広がっている。
 当機構では令和7年度から、産学官連携による技術開発支援に、「サーキュラーエコノミー枠」を導入した。また、関連動向を紹介する技術セミナーを開催するなど、県内企業の取り組みを積極的に支援している。
 こうした支援を受け、循環経済の構築に取り組む企業の一つが高岡市に本社を構える株式会社HARITAである。HARITAは当機構の「産学官オープンイノベーション推進事業費補助金」(令和6〜7年度)に採択され、「デジタルツイン活用による情報付加価値型再生原料の創出と循環経済の促進」に取り組んでいる。「デジタルツイン」とは、コンピュータ上の仮想空間に現実世界を再現し、現実世界と対になる双子(ツイン)をデジタル上に構築して、シミュレーションなどを行うものである。同社では、この研究開発によって、回収した廃棄物の「再生原料」としての品質向上を図った。また、「生産過程の中でどれだけのCO2が回収できたのか」「いつ、何からつくられたのか」などのトレーサビリティ(生産履歴)についても、確かなデータを再生原料に付加し、ものづくり企業が環境面や品質面で安心して再生原料を利用できることを目指した。

再生材の本格的な利用に備えて

同社は家電リサイクル法の再商品化工場として認定され
ている。写真は左上から時計回りに「エアコン/フロン
を回収して手解体で資源別に回収」「テレビ(ブラウン
管・薄型)/手解体で資源別に回収」「冷蔵庫・冷凍庫
/リサイクルできるプラスチックを回収後、フロンを回
収してシュレッダーへ」「洗濯機・乾燥機/手解体で資
源別に回収」の様子。再生材は新しい家電製品の材料と
して活用されている。

 こうした動きは、日本よりも欧米が先行しているケースが多い。例えば、EUで制定されたELV規則(廃自動車規則)などはその代表例の一つといえる。
 今回の開発テーマに中心的に取り組んだHARITAの仲里卓氏は次のように説明する。
 「本規則は、自動車の設計から廃棄までのライフサイクル全体における環境負荷低減と資源循環の確立を目的とし、新車への再生材使用を義務づけるものです。また、トレーサビリティを明確にするため、自動車のライフサイクル情報を記録するデジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入が予定されており、その実装基盤としてCatena-Xなどのデータネットワークの活用が想定・検討されています」
 Catena-X(カテナ・エックス)は自動車産業全体でサプライチェーンに関するデータを共有するプラットフォームである。完成車メーカーから部品・素材メーカーまで、多様な企業がデータを活用できる仕組みとなっている。こうした規制や市場の変化に対応しなければ、EU域外で製造された自動車がEU市場で販売しにくくなる可能性もある。そのため日本の自動車メーカーにおいても、再生材の活用に本格的に取り組む動きが進んでいる。そして、この潮流は自動車業界にとどまらず、他のものづくり分野にも徐々に広がりつつある。
 一方、リサイクル業界では「コストが高い」「品質が安定しない」「生産過程が見えにくい」といった課題が指摘されてきた。その背景には、製造業などの動脈産業では大企業を中心にデジタル化が進展しているのに対し、静脈産業であるリサイクル業界は中小企業が多く、デジタル化が十分に進んでいないという実情がある。そのため、廃棄物排出事業者やメーカーから「この再生原料を生産するために、どれだけのCO2を排出したのか」「どのような成分がどれだけ含まれているのか」と問われても、詳細なデータに基づいて回答することが難しいケースがあった。そこでHARITAは今回の研究開発を通じ、こうしたニーズに応えるための基盤づくりに取り組んだ。
 開発にあたって同社が掲げた目標は、「デジタルツインの構築と生産の最適化」「一次データに基づくGHG排出量の自動算出」「トレーサビリティと素材情報の統合」の三つである。

富山県立大学の協力を仰ぐ

パソコン上に再現した同社のデジタルツインプラット
フォーム。設備の管理(監視)のほか工程の最適化を可
能にする基盤を作成した。赤枠の部分は富山県立大学が
開発したスケジュールのシミュレーションの結果を表す。

 まず取り組んだのが、「デジタルツインの構築と生産性の最適化」である。破砕や選別を行う工場内の多様なデータを収集し、コンピュータ上に実際の工場と同様の環境を再現した。従来は、現場の経験や勘に基づいて機械操作や工程調整を行う場面もあった。しかし、デジタル空間でシミュレーションを実施することにより、最適な生産計画を導き出すことができることを目指した。「最も効率のよい処理順序が明らかになれば、コストや残業時間の抑制にも繋がります」と仲里氏は話す。
 次に、「一次データに基づくGHG排出量の自動算出」に取り組んだ。GHG(温室効果ガス)排出量を算定する際、従来のように工場全体の電力使用量や電気料金から概算するのではなく、設備ごとに電力計測器を設置し、日々の消費電力を一次データとして詳細に記録する仕組みを構築した。これにより、「この製品の生産に、この設備を使用し、これだけのGHGを排出した」といった、より正確な計算ができるようになる。再生原料を使用するメーカーにとっても、信頼性の高い環境情報を得られることになる。
 「トレーサビリティと素材情報の統合」では、投入原料の情報と、回収製品の成分分析結果をサイバー空間上に集約した。再生原料の生産履歴、すなわち「いつ、どのラインで、何を原料として製造されたのか」という情報と、成分情報を紐付け、品質保証書としてメーカーに提出できるよう、透明性の高い管理体制の構築を目指した。
 これらの技術的な課題を解決し、目標を達成するため、同社は、富山県立大学に協力を依頼し、教授陣から指導を受けることとなった。従来から「工場の効率的なスケジュール管理」などをテーマに共同研究を進めてきた経緯もあり、今回のプロジェクトでも連携を深めた。
 まず、過去の生産ラインにおける業務記録やトラブル記録を機械学習させたモデルを活用し、「機械のトラブル予測システム」を開発。これをHARITAの生産ラインに実装した。仲里氏は当時を振り返る。
 「このシステムは、設備や作業者に起因するトラブルについて、復旧に必要な人数や時間を予測するものです。生産現場に導入した結果、週平均でトラブルの発生率を45.8%抑制できました。また生産効率についても2.1%向上させることができました」

設備の予知保全も可能に

上記デジタルツインプラットフォームの一例として、同
社の生産設備の映像と、生産設備に設置された計器の映
像を載せた。工場内に設置したカメラを通して、パソコ
ン上に生産設備や付帯計器の稼働状況がリアルタイムで
表示される。わざわざ現場に行かなくても、設備の稼働
状況が把握できるようになり、計器を通して異常個所を
いち早く特定できるようになった。

 さらに大学の協力のもと、パソコン上に再現したデジタルツインのプラットフォームを導入。廃棄物の入荷量に応じて、最も利益が見込める処理順序や、残業削減につながる作業手順をシミュレーションした。その結果、効率的な生産スケジュールを立案できるようになっただけでなく、設備の予知保全にも対応できるようになった。予知保全とは、設備が故障する前にセンサーなどで異常の兆候を検知し、部品交換やメンテナンスの必要性を設備管理者に知らせる仕組みである。これにより、設備トラブルを未然に防ぐことが可能となる。これが「デジタルツインの構築と生産の最適化」における研究開発の成果である。
 では、「一次データに基づくGHG排出量の自動算出」では、どのような研究開発を行ったのか。
 このテーマでは、工場内の設備ごとに電力メーターを設置し、得られたデータを集約して、自動的に計算・整理するシステムを開発した。これにより、従来のように工場全体の電力使用量を把握するだけでなく、設備ごと、時間帯ごとの電力使用量を把握することが可能になった。また1日の作業スケジュールに対し、全体の電力使用量がどのように変化するかを予測するシステムも開発した。例えば、ある設備の処理速度を落とすケースをコンピュータ上でシミュレーションしたところ、作業時間は260分伸びる一方で、使用電力量を164kWh削減できることが判明した。GHG排出量の抑制につながる可能性が示されたのである。
 「トレーサビリティと素材情報の統合」では、どの時間帯に、どの作業で、どれだけの電力を使用したかをシステム上で結びつける仕組みを開発した。これにより各種作業の電力使用情報を資源回収情報と紐づけることが可能になり、その工程で回収された資源の素材構成に対して、エネルギー使用に関するトレーサビリティを示せるようになった。
 また富山県立大学の教授の指導のもと、廃エアコンを鉄、アルミ、銅、プラスチックなどの素材別に解体し、分解調査を実施した。その結果、室外機では178部品、室内機では130部品の素材構成を明らかにした。これらをリサイクルした際に回収される資源量や排出される温室効果ガスの見込み量を算定し、素材成分と環境影響の関係を明らかにするための基礎データも収集したという。

求人活動などにも好影響

太陽光発電パネルリサイクル(環境省の実証事業)に取
り組んだ際の湿式比重選別ライン。シュレッダー選別ラ
インにより破砕し、金属類(鉄・アルミなど)を取り除
き、ジグ式湿式比重選別機(ジグ選別機)で物質相互の
比重差を利用して上層分と下層分に分けることでガラス
類、プラスチック類、貴金属(銀など)に選別すること
ができる。同社ではこの他に経済産業省やNEDOなど、
さまざまな補助金事業の採択を受け、アルミやプラス
チックをはじめ、さまざまなマテリアルリサイクルの技
術の向上に取り組んでいる。

 今回の「産学官オープンイノベーション推進事業費補助金」によるHARITAへの支援は、令和6年度から令和7年度までの2カ年にわたる。研究成果については、生産ラインへ導入可能なものから順次実装を進めている。
 仲里氏は次のように話す。
 「日々の利益や温室効果ガス排出量を予測・可視化できるシステムを開発し、現場に導入しています。一方で、『設備ごとの最適な選別条件を自動で決める』段階には至っておらず、今後の課題として捉えています」
 さらに今後の展望について次のように語る。
 「人口減少に伴って廃棄物の発生量が減少し、処理業界では資源の獲得競争が起こりつつあります。今後、その傾向はさらに強まると考えています。そうした中で当社は、リサイクル原料のデータをより詳細に整備し、お客様に安心してお使いいただける体制をつくっていきたいと考えています」
 HARITAでは当機構の補助事業に加え、国の研究開発事業なども活用しながら、産業廃棄物の処理技術向上に取り組んでいる。
 最後に、「こうした取り組みは営業や求人などの企業活動に影響していますか」と尋ねた。仲里氏は間髪を容れずに「あります」と答えた。
 「公的な研究開発事業に採択されることは、お客様からの信頼向上につながります。また求人活動の場面でも『HARITAは先進的な環境・IT企業である』という認知が広がり、優秀な人材の確保に大きく貢献しています」
 循環経済の実現に向け、デジタル技術と現場力を融合させるHARITAの挑戦は、環境対応だけでなく、企業競争力の強化にもつながっている。

株式会社HARITA
 本社/高岡市福岡町本領1053-1
 TEL 0766-64-3516
 FAX 0766-64-3046
 URL https://www.harita.co.jp

作成日 2026/10/26

このページのトップに戻る

Copyright (C) 2005-2013 Toyama New Industry Organization.All Rights Reserved.