第44回 北陸テクノ株式会社 農商工連携ファンド事業 とやま中小企業チャレンジファンド事業農商工連携推進事業 脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン) 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) TONIO Web情報マガジン 富山

TOP > イノベーションが産む金の卵 > 第44回 北陸テクノ株式会社

研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第44回 北陸テクノ株式会社

もみ殻処理炉を独自に開発
抽出するシリカの利活用も模索

もみ殻は日本全体では毎年約200万トン排出される
といわれるが、暗渠(あんきょ)の工事等に利用
されるのはわずかで、ほとんどは野焼きもしくは
産業廃棄物として焼却されている。

 もみ殻の野焼き・・・。みずほの国の、秋の風物詩ともいえる懐かしい風景だ。
 しかしながら、環境保全への意識が高まる中で、現実にはなかなか厳しいところもある様子。野焼きを禁止する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、農業者によるワラやもみ殻の野焼きは例外として認められてはいるが、条例でそれすらも禁止する自治体が現れつつあるという。
 その課題解決のために手を挙げたのが、射水市、JAいみず野、北陸テクノ等である。射水市では毎年約6,000トン排出されるもみ殻を、産業廃棄物として1トン当たり10,000円強のコストをかけて焼却するのではなく、有効活用する方策があるのではないかと模索。もみ殻の利活用については、もみ殻灰に含まれるシリカを用いる研究は実験レベルではすでに行われていたが、実際に処理プラントでもみ殻を燃やすと、クリンカー(高熱により灰が固まりとなったもの)ができて燃焼障害が起こった。もみ殻の処理プラントは、実用化の段階で足踏みしていたのだ。
 そこでこのプロジェクトに、工業炉の開発では定評のある北陸テクノが参画。のちには、シリカの物性や用途開発に詳しい大学の研究者らも加わって、開発に弾みがついたのであった。

手探りで環境炉の開発へ

同社の主力製品の例。溶湯がきわめて高く、異種
合金の溶解を可能とするコンビネーション溶解
システム(写真上)と、炎がスパイラル状に回転
することで熱がムラなくルツボ全体に伝わる
スパイラル炉(写真下)。

 「実は当社がプロジェクトに参画する前には、県外の別のメーカーがもみ殻の処理プラントの開発に携わっていました。しかしながら、もみ殻をいい具合に焼き上げることはなかなか難しく、5年ほど試行錯誤された後で当社に声をかけていただいたようです。といっても、当社はもみ殻燃焼のノウハウを持っていたわけではありません。様々な実験を通して、従来の研究成果を検証していきました。その中で、もみ殻を燃やす際、プラント内の温度を制御することがポイントだとわかってきたのです」
 同社の朝井幸司社長が、射水市、JAいみず野が中心になって進めていた「もみ殻循環プロジェクト」に加わった平成26年頃を振り返った。
 野焼きのように空気が十分に供給された場合、もみ殻の燃焼温度は1,000度以上に達する。しかしこれではもみ殻に含まれるシリカは結晶化し、溶液に溶けにくくなる。溶液に溶けにくいと、稲作用の農業肥料として用いようとしても稲が吸収できない。その他工業分野で活用しようにも、結晶化してしまうと、用途開発の道が閉ざされてしまう。もみ殻に含まれるシリカの活用には、非晶質で可溶性のあることが求められたのだ。
 同社で、もみ殻の処理プラントの技術開発を率いてきた木倉崇専務が語る。
 「ホームセンターなど販売されているもみ殻くん炭は、400度弱で蒸し焼きにされてフワフワになっています。一方で、800度を超えた温度で燃焼すると、もみ殻のシリカは結晶化します。われわれが欲したのは500度から800度の温度域での、焼きムラを生じさせることなくもみ殻を燃焼する制御技術で、試行錯誤の結果、そのノウハウを開発しました」 
 処理プラントは平成30年に完成した。そして国道8号線沿いにあるJAいみず野のカントリーエレベーター(生産者の共同利用施設)脇に設置され、翌年の秋から本格的に稼働。一方で同社では、当機構の「農商工連携ファンド事業」(平成30年度)の採択を受けて「もみ殻から生成される非晶質シリカの販路開拓」のために展示会に出展し、もみ殻由来の結晶化していないシリカの存在をPRしたのだった。

大学等と連携して大型の開発プロジェクトに

同社の朝井幸司社長(写真上)と
最初に開発されたもみ殻処理プラント(写真下)。
JAいみず野のカントリーエレベーターに導入された。

 朝井社長が代わって続けた。
 「もみ殻由来のシリカについては、従来は研究論文上で議論されているだけで、実際の素材としてはあまり知られていませんでした。そこで市場調査も兼ねて、このシリカ素材の宣伝のために展示会に参加したのです。農業肥料としての用途開発については、新薬開発のような治験やエビデンスが必要となり、承認されるまで相当の日数がかかるので当社ではそれを避け、どちらかというと建築資材や日用品の世界で展開できないかと期待しました。また化粧品での応用も可能性があるということでしたので、その業界の方々への告知にも努めた次第です」
 こうしてもみ殻由来のシリカの用途開発に乗り出した北陸テクノであったが、平成31(令和元)年には、環境省の「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」の採択を受けて、「バイオマス高機能次世代発砲硬化体材料の開発」にチャレンジ。わかりやすくいうと、セメントレスのコンクリート(セメント製造時にCO2発生量が多いため、セメントを用いないコンクリートが求められた)であるジオポリマーコンクリートの開発に、もみ殻由来のシリカを活用できないかと模索したのだ。そこでの研究開発を進めていくと、より高品質なシリカ灰の安定的な量産が必要なことがわかり、令和2年度、当機構の支援を受けて、国の「戦略的基盤技術高度化支援事業」(通称「サポイン」)に応募し、「もみ殻処理炉の高性能化と建築資材用シリカ原料の開発」に着手。一口にジオポリマーコンクリートといっても様々な性能があるため、もみ殻由来のシリカの物性にあったセメントレスコンクリートを開発しようとしたのだ。
 その際には、先進的なノウハウを有する大学や大手企業が協力。シリカの物性評価には早稲田大学が、シリカの用途開発・ジオポリマーコンクリートの評価には京都工芸繊維大学と倉敷紡績(株)が、処理プラントの温度管理とシリカ灰の性状確認については小山工業高等専門学校などが3年にわたって支援したのであった。

「いずれは化粧品に・・・」

もみ殻処理プラントの開発を率いてきた同社の
木倉崇専務(写真上)と、サポインの支援を受けて
改良されたもみ殻処理プラント(写真下)。

 その結果、「例えば800度弱の温度で30分燃やし、その後400度の温度で1時間蒸らすと質のよいシリカ灰ができることがわかり」(木倉専務)、それらを踏まえて処理プラントを改良。また、燃焼データを遠隔地から監視できるシステムも開発し、実装の際の合理化も図ったのだ。
 合わせて、高品質化したもみ殻由来のシリカを用いたジオポリマーコンクリートを、住宅の断熱材に使われてきたウレタンに取って代わることができないかと模索。ウレタンは断熱性には優れているものの、燃えやすいことが難点として挙げられてきたが、難燃性のジオポリマーコンクリートでそれを補えないかというのだ。
 「建築分野での実用化に向けた研究はこれからも続け、今後は日用品や化粧品の分野での用途開発も進めていきたいと思います。化粧品にはシリカが用いられていますが、そのほとんどは鉱物由来のシリカです。それを植物由来のシリカに置き換えることができれば・・・。イメージ的には、鉱物由来より植物由来の方が親しみやすいでしょう」
 朝井社長はそう抱負を語り、「近い将来、もみ殻処理プラントの販売や、もみ殻由来のシリカの利活用を売上の柱のひとつに加えたい」と続けた。

 北陸テクノ株式会社
 本社/射水市青井谷1-8-3
 TEL 0766-57-1400
 FAX 0766-57-1401
 URL https://www.h-techno.com

作成日  2023/09/19

このページのトップに戻る

Copyright (C) 2005-2013 Toyama New Industry Organization.All Rights Reserved.