第52回 ビニフレーム工業株式会社 アルミサンドボックス事業補助金 TONIO Web情報マガジン 富山

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研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第52回 ビニフレーム工業株式会社

アルミサンドボックス事業活用して新工法開発
実用化して集合住宅に採用

CLT造のビルのベランダに取り付けられたパネル式の手
すり(写真上)。写真下は木造の構造物の接合部分で使
用されるラグスクリューボルトの一例。

 「国が推奨し、カーボンニュートラルの立場から民間のデベロッパーも注目し始めているようだから、CLT造の中高層のビルが今後増えてくる。それを見越して、木造のビルに富山県で多く生産されているアルミ製手すりを取り付ける工法を開発したらいいのではないか」
 令和4年のある日、ビニフレーム工業(株)の建材事業本部長(当時)は思いついた。前年には日本初のオール木造のビルが仙台(7階建て)で竣工し、その予感の現実味が高まってきているところだ。同社では従来、鉄筋コンクリート造(以下、「RC造」)のビルや3階建てまでの木造住宅向けに手すりの製造販売を行い、取付け強度を確保するための工法も開発していたが、CLT造の中高層向けビルへアルミ製手すりを安全・確実に取付け、普及させていくための取付け工法の開発には至っていなかった。
 ちなみにCLT(Cross Laminated Timber)は、ひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した、厚みのある木質パネルのこと。高い強度と断熱性、耐火性を持ち、コンクリートや鉄骨に代わる新しい構造材として注目され、中層建築物や大型公共施設など木材があまり使われてこなかった分野での利用が進みつつあり、さらなる普及が期待されている構造材だ。

地元企業、公設試が開発に協力

今回の新しい取り付け工法の開発に携わった同社建材開
発部の鷹休将樹主幹(写真上)と西田明日翔氏(写真下)。

 新工法の開発に携わった同社建材開発部の鷹休将樹主幹、西田明日翔氏にうかがった。「RC造の建物での取付工法を、そのままCLT造の建物に使ってはいけないのか」と。すると「RC造のビルに手すりを取付ける工法については長い建築の歴史の中で検証され、一定の基準がありますが、CLT造のビルではエビデンスがありません。従って、そのまま工法をスライドさせるのは危険です。コンクリートの躯体と木の躯体では性質が異なりますから…」(鷹休主幹)と返ってきた。
 同社では、当機構の「アルミサンドボックス事業補助金」(令和4年度)を活用して、取付工法の開発に着手。この補助事業は、富山県内のアルミ関連産業に広く課題を募り、その課題を解決するための取組みに要する経費の一部について補助を行うもので、同社では当機構のアルミコンソーシアムに相談の上、補助を受けながら工法開発の糸口をつかめないかと挑んだのだった。
 開発にあたっては、手すりのベースプレートを固定するアンカーの補助材としてラグスクリューボルト工法やケミカルアンカー工法を用い、より安定して固定される長さや形状、収まり状態を探るための単柱試験を実施。その最適な状態での圧縮・引張・せん断試験を、材軸方向・材軸直行方向それぞれで性能実験を行った。
 なおこの工法開発にあたっては、既製品のラグスクリューボルトを用いての試行の他に、本工法用にボルトの太さや長さ、形状を調整する可能性があったため、ラグスクリューボルトメーカーA社の協力を仰ぎ、またCLT構造体への接着強度の検証ならびにCLTの構造面からのアドバイスを受けるために、富山県農林水産総合技術センター木材研究所が共同研究に加わった。また単柱試験は(一財)ベターリビングが定める、墜落防止手すり性能試験方法のアンカー・取付金物の強度試験に基づいて行われた。

市場投入にこぎつけた

工法の強度などを確認する試験の様子。写真上はCLTの
ラグスクリューボルトで固定してのせん断試験、写真下
はエポキシ樹脂で固定しての、強風を想定しての繰返し
荷重・疲労試験。

 単柱試験では、手すりに取り付ける際のアンカー材に、ラグスクリューボルトで補強してのその強度を確かめた。いろいろ検証した結果、既製品のラグスクリューボルトを若干細く・短くしたもの(125mm)が、手すりの施工環境で強度を発揮したためそれを採用することに。この単柱試験の比較対象として、RC造の建物で従来から用いられてきた、アンカー材をエポキシ樹脂により硬化させる工法(一種の接着剤で硬化する工法)でも強度を確認したところ、両方ともベターリビングのアンカー・取付け金物の強度試験はクリアしたもののエポキシ樹脂を用いた工法の方が高い強度を示したのであった。
 続いて行われたアンカー強度試験では、単柱試験で高い強度が確認されたラグスクリューボルトを用いた工法とエポキシ樹脂を用いた工法を施した試料をもとに、引張試験(引き抜く方向での負荷試験)、圧縮試験(抑え込む方向での負荷試験)、せん断試験(横方向の負荷試験)を行い、その耐久性試験を実施。続く「繰返し荷重・疲労試験」は(一社)日本建築学会の「実務者の建築物外装材耐風設計マニュアル『ASTM強風イベント試験』に基づき行ったところ、いずれも強度はクリアしたものの試料により結果にばらつきが出た。その要因は、CLT躯体の樹種、含水率や比重の違いにあると推測されたため、同社建材開発部では継続課題として次年度以降も自社単独での開発を続けたのだった。
  西田氏が振り返る。
 「特許の関係で詳しくお話しできないのですが、工法に改善を加えてラグスクリューボルト工法、接着系あと施工アンカー工法と銘打って特許出願し、令和6年に入ってから製品化に向けて開発をステップアップしました」

都内の木造集合住宅で採用

 ただ実際に、営業の現場で問合せ・引合いが多いのは接着系あと施工アンカー工法による手すりの取付けだという。その背景を鷹休主幹が推測する。
 「ラグスクリューボルトでの固定では、1つの固定箇所毎に4本のボルトと、それぞれの固定作業が必要になります。その点接着系あと施工アンカー工法では、それぞれのアンカーにエポキシ樹脂を注入するだけですから、ラグスクリューボルト工法より資材も工賃も安価になります。それゆえビルのオーナーや設計事務所、デベロッパーは接着系あと施工アンカー工法を選択されるのでしょう」
 ビニフレーム工業として、この新工法での手すりの販売に正式に乗り出したのは昨年10月からであるが、先行販売により東京都目黒区の地下1階、地上4階建の木造集合住宅(竣工は令和7年3月)で、接着系あと施工アンカー工法で同社の手すりが取り付けられ、幸先のよいスタートを切ったところだ。
 「まだ広く認知された工法ではないので、営業レベルの段階からデベロッパーや施工業者を訪ね、工法の詳しい説明にうかがったことが何度もあります。せっかく生み出した新しい工法ですから、これから建てられる木造集合住宅等の建築物には1棟でも多く採用されたい」
 取材に対応していただいた西田氏はそう言って、「当社の経営陣は、この工法での年間売り上げの目標を定め、シェア拡大に向けて営業スタッフにハッパをかけているところです」と結んだ。新工法が金の卵を産む契機となることの期待がうかがえる。

  • 「アルミサンドボックス事業補助金」について
    (この事業は、令和5年度で終了しています)

ビニフレーム工業株式会社
本社/魚津市北鬼江616
TEL 0765-24-1034
FAX 0765-24-1439
URL https://www.vinyframe.co.jp/

作成日 2026/03/09

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