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研究開発により誕生した新技術・新製品に秘められたイノベーションと、その原動力を探る!

第35回 ユニオンテクノ株式会社

企業間連携による試作機の製造が
新たな連携を生んで新ビジネス誕生

工場の製造ラインの自動化などに取り組むユニオン
テクノの澤井真悟社長。近年は社のブランド力向上
を図り、新しい技術の開発に取り組み始めた。

 「中小企業の工場には、大企業の工場に比べると自動化が進んでいない工程がまだまだあります。それは、中小企業のものづくりの現場では多品種少量生産が多く、かつ同じ製品が何年も継続する保証はなく、一品一様の自動機を導入した際の投資回収のメドが立ちにくいからと考えます。また働き方改革が施行され、今までのように人海戦術による生産対応が難しくなってくることも想定されますし、人間にしかできない仕事に労働力を集中していかなければならないこれからの時代には、以前よりも自動機の導入は切実な課題になるでしょう。当社はお客様のものづくりの現場で一緒になって自動化や安全対策、収益力向上に取り組むパートナー企業として、お役に立てると自負しています」
 こう語るのは、平成26年に創業したユニオンテクノの社長・澤井真悟氏。法人も社長も若いが、時代背景も見据えて事業展開・技術開発を模索しているようにも見受けられる。
 ユニオンテクノは、ユニオン産業の機械製造部が独立してできた会社だ。各種製造業の工場からの依頼を受けて、産業機械の設計・製作・据え付け等を実施。製造ラインの省力化に加え、製品の品質向上や作業の安全面の改善などに力を発揮してきた。 独立前の社長は、その中でも開発課に属し、大手ケミカルメーカー、インフラ企業、大学と共同して、次世代吸着式冷凍機を開発。この時の経験を生かして新会社では、何をすべきか模索し始めたのだった。

ロボット技術研究会に参加して…

とやまロボット技術研究会の活動例。写真上は
ロボット技術セミナーの様子。写真下は「2019
国際ロボット展」に出展した際の様子。研究会が
企業間連携(石金精機、ユニオンテクノ)で試作
された自動供給装置も展示された。(石金精機
紹介URL https://www.ishigane-fas.co.jp/)

 「独立前、吸着式冷凍機の方は、企業規模に対して段々と話が大きくなりミスマッチになっていき、会社に負担をかけました。また産業機械製造の方はリーマンショックにより厳しい状態が続いていました。今思えば平成26年の独立は、好転させる為の最善のタイミングだったように思えます。当時の私たち機械製造部員は先行き不安の中で、まずはユニオン産業として既に受注していた仕事をやり切ることを決心し、資本は人だけで独立しました。そんな私たちに対してお客様や協力会社様からご理解とご協力を賜り、30年続く“ユニオン“の冠を残して仕事をやり遂げることができました。その後、技術開発は封印し、産業機械製造に注力して会社の地盤固めに専念しました」(澤井社長)
 いわゆる本業に回帰したユニオンテクノ。「創業からの数年間は独立に伴う費用や工場設備固定費が重くのしかかり赤字でした」と澤井社長は付け加えるが、かつての顧客は同社の復活を「発注」という形で応援したのだ。そして黒字化のメドがたった平成29年に、富山県工業技術センター(現・富山県産業技術研究開発センター)の誘いに応じて、当機構に事務局のある「とやまロボット技術研究会」(現・「とやまロボティクス研究会」)に加入。製造ラインの自動化技術についての知見を深めるための活動を始めた。
 ここで「とやまロボティクス研究会」について紹介しよう。前身の「とやまロボット技術研究会」の設立は平成19年。県内企業のものづくり技術と研究機関の技術シーズのマッチングで、ロボット産業の創出・活性化および製造業へのロボット導入による競争力強化を目指してつくられた。主な活動としては、ロボット技術セミナーの開催、ロボット産業創出やロボット利活用のワーキング活動、ロボット先進地の視察、そして国際ロボット展への出展などを実施。会員には県内でロボットに関する研究を行う個人や企業、高等教育機関・公設試験研究機関などが名を連ね、令和2年4月現在の会員数は個人287名、団体129機関が登録している。
 各種の活動に参加しての感想を、澤井社長が語った。
 「先進地の視察や国際ロボット展で最先端の技術を見るのは本当に勉強になります。中でもありがたいのは、そういう機会にユーザーの声を直に聞くことができることです。大企業の工場でしたら、 投資を計画的に行い専用の自動化ラインを導入することも可能ですが、ほとんどの中小企業はそうではありません。中小企業の方々は専用機的な自動化ラインではなく、調整すると他の製品でも使えるような、一種の汎用性のあるロボットが求められているのがわかりました」
 ロボットの流行(はやり)をいうと、近頃は「協働ロボット」が人気の的だ。かつて注目を浴びた溶接ロボットのように、柵の中で、速く・正確に作業するロボットではなく、人と同じステージで、人とともに働き、人に触れたりすると安全に停止するロボットである。しかしながら中小企業が求めているのは、こうしたロボットよりも、投資メリットが大きい24時間無人で作業するロボットだ。それも単一のワークではなく、複数のワークをこなす、なおかつ安価であれば「なおよし」というのだ。

改めて新技術の開発に!

同社の多軸ロボットのティーチング(写真上)と
開発にあたってのデザインレビューの様子(写真下)。

 「しばらくの間、新規の開発については封印してきましたが、創業から5年目を迎えた平成30年に『経営が安定しつつあることから、新規の技術開発にも目を向けよう。技術力の向上は、企業のブランドイメージを高めるためにも必要だ』と思うようになりました。ただ、すぐに本格的な開発に取り組むのではリスクがあり、また当社単独での開発にも限度があると思い、一種のフィジビリティー・スタディーとして、汎用性のあるロボットについての事業の可能性について調べてみました。その際、富山県の『企業間連携による協働推進事業』という支援制度を活用させていただき、中小企業の製造ラインのニーズを掘り起こしました」(澤井社長)
 この取り組みから、中小企業の過酷な実態が浮かび上がった。中小企業の工場では、バラ積み部品の組立てや検査、梱包作業などは三交代による人手に頼っているが、働き方改革の影響や近年の多品種少量生産の需要増加に対応し切れなくなり、慢性的な人手不足に非常に苦慮しているという。そこで部品の仕様変更があるたびに、工程の自動化やロボットの導入が検討されるものの、
①ワークの種類が多様ですぐ変わる(専用機だと汎用性に乏しく、使えなくなる恐れがある)
②自動機やロボットを導入したいが、限られた投資しかできない(費用対効果がわからないものに投資できない)
③導入しても、ワークが変わったら使いこなせない(専門性が必要で、社内では人材不足)
 などの課題に直面し、仮に資金の準備ができても、導入に踏み切れない中小企業の厳しい現実が明らかになったのだ。
 「こうしたことを踏まえて当社では、既存の多関節ロボットと画像認識(ビジョンセンサ)を組み合わせた、簡単な自動供給装置の開発を目標にしたらよいのではないかと考えました。また、専門知識がなくても、部品の仕様変更に対応できるシステムにするために、画像認識の単純化を図ることも企画しました」
 澤井社長は、再び新規開発に取り組み始めた経緯(いきさつ)や方向性をこのように語った。
 そして具体的な開発と試作機をつくるために、当機構の「企業間連携による製品試作事業」(令和元年度)の支援を受けることに。株式会社石金精機との連携を通して、中小企業でも導入可能で、汎用性のある自動供給装置の開発に乗り出したのだ。
 「石金精機様に連携をお願いしたのは、同社も各社の部品などをつくり、そのための自動機の開発にも積極的に取り組んでおられるからです。また石金精機様は、ユーザーの生の声をたくさん聞いておられます。それらを総合して、的確なアドバイスがいただけるのではないかと期待した次第です」(澤井社長)
 こうしてユニオンテクノと石金精機の企業間連携が始まった。

連携が別の連携につながり新ビジネスが…

同社が開発した自動供給装置(写真上)。「この
装置のビジョンセンサの設定は、入社1年目の
ロボットについてはビギナーの社員が行ってい
ます。ですからロボットに詳しくない人でも設定
変更が可能です」と澤井は太鼓判を捺した。
写真下は運搬支援ロボットの「CoRoCo」。
紹介URL https://seeds-robotics.jp/

 まず取り組んだのは装置の設計である。
 パレットなどにバラ積みされた部品をロボットでピッキングするためには、ビジョンセンサを用いて部品の形を一つずつ認識する必要がある。最近のトレンドは3Dカメラを用いる傾向にあるが、ビジョンセンサは極めて高価(システム含め1,000万円以上)で、部品の表面が反射したり透過色である場合は認識力が落ちて不確実性が高まるという難点がある。おまけに部品の仕様が変更された際、ビジョンセンサの設定を変えるには、高度な知見が必要となるシステムがほとんどで、人材難の課題が降りかかってくる。
 「当社では、コンベアをロの字型に組み、接続部分が少し重なり、そして段差を持たせました。こうすると移動のラインを移るたびに部品が転がり、部品の重なりを防いだり、前のラインでは判別しにくかった部品の姿勢を変えるようにしました。そして安価な2Dカメラによる画像認識システムを採用し、部品の仕様が変わった際のビジョンセンサの設定変更も容易にできるようにしたのです」(澤井社長)
 ロボットに詳しくない人でも、マニュアルに沿って操作を行うと、ビジョンセンサの設定変更ができるそうだ。おまけに費用は、3Dカメラ搭載の自動供給装置と比べると半分程度ですむという。
 試運転による検証では、単なるピッキングの他に、形状の異なる金属ネジ3種と樹脂部品1種を同時に流して判別させ、それぞれ3個ずつをピッキングして、排出用のトレイに乗せるという、複雑な作業も試された。ネジが小さかったため3種の区別に苦戦するところも見受けられたそうだが、改良の課題が見つかったことで開発への意欲が高まるという副次的な効果がもたらされたという。
 この試作機を、昨年9月に行われた「第2回名古屋ロボデックス—ロボット開発・活用展—」と12月の「2019国際ロボット展」で紹介したところ、企業からの問合せが相次いだようだ。
 「試作機をブラッシュアップして販売していく・・・。売れるに越したことはないのですが、今回の技術開発の主眼は別なところにありました。それは、この試作機を見て『これができるのなら、こういうことはできませんか』と、自動化への悩みを抱えた工場から相談を寄せていただくことです。おかげさまで名古屋や東京での展示会では、ビジネスにつながる可能性のある相談をいくつも受けることができました」(澤井社長)
 実際、今回の試作機に興味を示したのが、「CoRoCo」(コロコ)という運搬支援ロボットを開発した東京貿易マシナリー株式会社のSEEDs ロボティクス事業だ。
 製造業の工場では、AGVと呼ばれる無人運搬機がある。予め設定された誘導方式に従い、製造ラインの各所を回って部品の配布や製品の回収などを行う便利な運搬機だ。価格は1台100万円以上。中小企業は二の足を踏む価格である。それを「CoRoCo」は独自センサを応用して問題解決にアプローチしている商品だ。前輪駆動の4輪台車に内蔵する独自センサにつながるテザー(ひも)を人が持って歩くだけで100kgの荷物を“ころころ“と運搬することができる。
 テザーの引き出し量と引き出し角度に応じて、まるでその人について行くように最適な速度と方向で走行するのだ。この特徴を生かせば、先頭のCoRoCoに2台目、3台目を連結して300kg以上の荷物を1人で運搬することも可能である。1台の価格はAGVの半分以下。導入し易くコストメリットを感じられる価格だ。
 「荷物を乗せて、女性でも指先で引っ張って移動できるように設計されています。ですから、働き手を選ばずに運搬支援が可能です。また、導入済みAGVを先頭に、2台目、3台目にCoRoCoを連結して ハイグレードなAGVとの無人での共存運用も可能です。このような支援型ロボットと当社の自動装置を組み合わせて、さらなる価値をお客様に提供していくことが可能になると考えています。今後、東京貿易マシナリーさんと一緒に自動化支援事業を展開できることに期待しています」
 澤井社長は意欲満々に語り、「支援メニューを活用させていただいて、企業間の連携が多方面につながったことは当社にとっては財産になりました」と付け加えて、取材を締めくくった。
 今後も新たな企業間連携が生まれ、より一層活躍されることを期待したい。

[ ユニオンテクノ株式会社 ]
 本社/富山市婦中町下井沢3217-1
 TEL 076-465-5940  FAX 076-466-3810
 URL http://www.union-techno.com/

作成日 2020/09/28

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