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若い研究者を育てる会

若研30年を振り返って
若い研究者を育てる会 研究幹事 杉森 博

若い研究者を育てる会は、富山県内企業の若手研究者と大学・富山県工業技術センターとの共同研究を通じ、現場で即戦力となる企業技術者の育成とリカレント教育、そして企業の枠を超えた技術者同士の連携の輪を広げることを目的として活動を続け、本年度創立から30年を迎えました。これを記念し、若研30年の歩みを紹介するとともに、JAXAで活躍する富山県出身の若手研究者を招き「JAXAにおける宇宙開発と研究」と題して講演をいただきました。

若研30年を振り返って

 「若い研究者を育てる会」。私たちは略して「若研」(わかけん)と呼んでいます。若研は、企業の若手研究者を富山県工業技術センターや大学が受け入れて、共同研究を実施することにより、現場で戦力となる技術者を育成することを目標に活動してきました。複数の企業の若手研究者が一堂に会し、いろんな研究テーマに取り組んでいます。そこから企業の枠を超えた、技術者同士の連携の輪を広げるという効果が出ています。もちろんそれぞれの職場に帰られて、開発の実戦部隊として活躍していただいていることはいうまでもありません。
 若研の発足は、富山県工業技術センターの前身、富山県工業試験場の職員が県内企業との共同研究の成果をまとめて、昭和60 年11月に学位をとったことがきっかけとなっています。その際、試験場によく来ておられた県内中小企業のあるオーナーが、「博士号取得をお祝いする会を設けよう」と呼びかけ、講演会、パネルディスカッション、そして交流会を計画されました。その時にそのオーナーが「これを機会に若い研究者を育成する会をつくろう」と旗を振られ、会則などを整備して62年1月、正式に発会した次第です。
 初代会長はエルコー(株)(今日のコーセル(株))の飴久晴社長にお願いしました。そして同年4月から産学官による研究活動を開始。当時はテクノポリス華やかなりし頃で、そのベースキャンプである富山県新世紀産業機構の前身の技術開発財団に事務局を構えてスタートした、とうかがっています。以後会長は、会員企業社長の持ち回りのような形でお願いし、現在の武内繁和会長(武内プレス工業(株)社長)は13代目です。会員企業は大手・中堅企業併せて現在13社で構成されています。研究幹事には、富山大学、富山県立大学、富山県工業技術センターなどのメンバーが入っています。

共同研究形式による人材育成

 若研での研究の進め方についての概要を紹介します。まず年度初めに会員企業や大学、工業技術センターから研究テーマを提案していただきます。それを元に参加企業を募集して、テーマとメンバーを決定します。いわゆる「この指とまれ方式」です。テーマを決めるに当たっては、当初は複数の企業が参加する研究テーマを選ぶ方式をとっていましたが、最近では個別の企業が1つのテーマに取り組む例も徐々に出始めています。
 研究テーマが決まりましたら、原則週に1回、工業技術センターや大学などに企業の研究者が集まって、そこで受け入れ機関の職員と共同で研究を実施していきます。こうして研究を進めて、年に3回、7月、9月あるいは10月、そして12月に経過報告をします。そこで討論も行い、時には厳しい指摘を受けることがあります。そして最後には研究論文にまとめて、3月中旬に発表会を行います。
 今回、若研30周年にあたり記念誌をつくり、インタビューや座談会でいろいろな方にお話をうかがいました。いくつか紹介すると、実験結果を科学的にとらえ研究手法やそのプロセスなどを考えるようになった、指導機関の最新の設備が非常に役に立った、指導機関の研究者とつながりができてよかった、発表や論文作成を通して研究内容の整理や表現方法を学ぶ機会になった、等々の意見 がありました。中には、試行錯誤を繰り返していろいろ失敗もしたが、最後はうまくいった。会社に戻って課題に取り組んだ時も、試行錯誤しながらも開発を続けることができたのは、若研での経験があったからだ、と失敗をバネに成長することができたという回想もありました。
 この30年間で190テーマの研究を実施しました。参加した企業の技術者はのべ361名。若研を卒業された多くの方々が、企業の一線で活躍されています。研究テーマそのものは、実用化を目指したものではありませんが、研究成果を特許出願したものがありますし、若研の研究を契機に実用化に至ったケースもありました。
 実際に取り組んだ例をいくつかご紹介したいと思います。若研第一回目のテーマは「複合材料の開発〜金属粉末・樹脂複合材料による射出成形用簡易金型材料の開発」で、工業技術センターを指導機関とし、県内企業3社の研究者が参加しました。また当時はマイコンが活発に使われ始めた時で、「介護用ロボットアームの試作」もテーマになり、県内の4社が熱心に取り組みました。平成19年は電気自動車が話題にのぼり始めた頃ですが、この試作にゼロから取り組みました。その他、小型燃料電池の開発や山岳遭難者捜索システムの研究、体質診断用のDNAチップと評価機器の開発など、その時々のホットなテーマにも取り組みました。最近では、富山県ものづくり研究開発センターの電波暗室や3Dプリンタを使った研究など、最先端の機器を利用した研究も行っています。
 この30年を振り返って、ある企業のオーナーはこんなふうにいっておられました。「この会は参加企業と指導機関の熱意があってはじめて続く」「若研への参加によって、企業は間接的に利益を得ている。でも短期的にはそれがなかなかわからない」と。他の経営者も似たようなことをいっておられました。  私どもとしましては、参加企業と指導機関が一緒になって若研に取り組むことにより、企業の長期的な人材づくりの一助になる……、そう思って若研での活動を続けていく所存です。

若い研究者を育てる会事務局
所在地 富山市高田529 富山技術交流ビル2F (公財)富山県新世紀産業機構
産学官連携推進センター プロジェクト推進課
TEL 076-444-5607  FAX 076-444-5630

作成日  2016/12/08

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