第53回 株式会社コラレアルチザンジャパン 小さな元気企業応援事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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第53回 株式会社コラレアルチザンジャパン

BED AND CRAFTで井波のまちに刺激を
木彫刻に誘われて外国人が歩き始めた

古民家再生に携わるうちにBED AND CRAFTのビジネスプラン
を思いついた山川智嗣社長。

 7年あまり、中国・上海で建物の設計業務を行ってきた山川智嗣氏。後半の3年間は上海の友人と設計事務所を共同経営し、発展著しい中国に「設計/山川智嗣」の足跡を残してきた。
 日系企業の、特に小売業が中国各地のショッピングモールで店舗を構える際には引っ張りだことなり、その出店担当の日本人が任期を終えて日本に帰ると、そこからまた設計の依頼が入るように。「日本にもオフィスを構えよう」と帰国したのは2016年のことだった。
 「東京に事務所を構えるのも選択肢のひとつにありました。ただ日本では家やビルを建てるのはいわばプラモデル化されていて、柱はA、B、Cのメーカーから、壁材はD、Eから、設備機器は……というふうに、パーツを選んで組み立てるだけで味気なくなっています。そこで木を使ったものづくりが盛んな井波を拠点にしたら、ものづくりの醍醐味を味わえるのではないかと思い、日本での活動の拠点を井波に置きました」
 富山市出身の山川社長は、帰国当時をそう振り返るが、砺波・南砺地区を中心に展開するあるホームビルダーに叔母が勤めており、「設計を手伝ってほしい」と声をかけられたのも、魅力のひとつだったようだ。

「職人に弟子入りできる宿」を

BED AND CRAFT1棟目のTATEGU-YAの外観。宿の中では
協力してくれる職人の作品を展示紹介もしている。(©️Kosuke Mae)

 山川社長はそこで、新築の設計を依頼される一方で、古民家再生に携わることもしばしば。太い柱や梁を使った古いあずま建ちの家を何軒も見るうちに、空き家の古民家を活用して木彫刻の体験と宿泊をセットにした「BED AND CRAFT」(ベッド・アンド・クラフト)のビジネスモデルを考案。コンセプトは、職人に弟子入りできる宿だ。この新規事業を協力関係にあるホームビルダーとともに立ち上げ、産業観光を視野に入れて動き出したのだ。
 「井波には、瑞泉寺の近くに宿泊施設がわずかにあるのみで、観光客のほとんどは井波に寄り道する感覚です。そこで観光振興を図るには、旅行者の井波での滞在時間をいかに長くするかが課題で、もっとも効果的なのが泊まってもらうことでした。そこで井波に残る木彫刻職人になるための弟子入り制度をアレンジして、古民家での宿泊と合わせて商品化したのです」(山川社長)

手袋をはめて漆を練ったり絵つけしたりし、工程の多さから漆器
の価値を知る外国人も多いとか。

 最初の1棟目は、山川社長が自宅用に購入した古民家の2階を改装して、宿泊施設にあてた(TATEGU-YA/建具屋と命名。1泊1組限定)。食事や風呂は町内の飲食店や銭湯、場合によっては車で十数分のところにある庄川温泉を利用してもらうことを想定して、2016年9月にスタート。翌年の8月にはコラレアルチザンジャパンを設立し、BED AND CRAFTの事業を引き継ぐとともに、従来から行っている建物の設計にも注力するようになった。
 一方で、地元の彫刻作家、漆芸家、仏師に協力を仰ぎ、弟子入り先を確保。旅行者から希望があった場合は3時間の指導をお願いすることに(ただし2人以上)。体験料は宿泊料金の他に1人6,000円と設定し、外国人がよく閲覧する旅のサイトで告知し始めたのだ。
 すると、欧米の人々からの予約が次々と入るようになり、外国人に人気だとウワサされるようになると、国内からも予約が・・・。最初の1年間で1,000人泊(5人が5泊した場合は25人泊)を達成したのだ。
 「例えば、木彫の弟子入り体験で、木のスプーンを作ったとしましょう。量販店に行けば木のスプーンは1本数百円でありますので、日本的な感覚でいうと『それで6,000円?高い』となります。ところが欧米の方々の感覚では『6,000円でプロの職人から3時間も直に指導を受けることができるか!安い』となるのです。価値観がまったく違う」と山川社長は最初の1年を回想し、「おまけに彼らは、弟子入り体験や古民家に泊まった感想などを旅のサイトに長々と投稿するため、それを読んで興味を持たれた方が予約を入れるという、口コミの好循環が起きたのです」と続けた。(体験料は後に改定し、現在は1人10,000円)
 1,000人泊のうち、およそ7割は外国人で、さらにそのうちの7割が欧米人。漆芸では長いゴム手袋をはめ漆を練るところから始めるのだが、仮にそこでかぶれても「彼らには貴重な体験で、また漆器の価値を改めて知るよい機会になっている」そうだ。

言葉の壁も乗り越えた

書院やふすま等の日本の古い建築様式を多く残して再生された
2棟目のTAEの内部。長期滞在者向けに、くつろぎの部屋や水回
りの設備も充実させている。

 こうしてBED AND CRAFTを始めると課題も見えてきた。そのひとつは、朝食だ。一般的なホテルや旅館では、利用者が希望すれば朝食は用意される。ところが、BED AND CRAFTでは、食事は町の飲食店を利用していただくことを想定しており、夕食については何ら問題はないものの、朝から開いている飲食店が井波にはなかったのだ。その結果、旅行者は近くのコンビニでサンドイッチや弁当を買い求めるしか空腹を満たす手段はなかったのである。
 その不便を解消するために山川社長は、チェックインラウンジにカフェを併設。彫刻職人が出した木屑で薫製した料理を提供するとともに、夜は旅の話を肴にくつろげるバーとして営業するようにしたのだ。
 また1週間、2週間の連泊希望者が増えてきたところから、2018年1月に、2棟目のTAE(たえ)をオープン。キッチンやお風呂の設備を充実させ、井波での生活をのんびりと堪能できるように。地元の食材を買い求めて、調理を楽しむ旅人も増えつつあるという。

欧米の方々には依然として寿司が人気のようだが、山川社長が
開発したアプリには井波の飲食店が11店掲載。「ウチの店も紹介
してほしい」と依頼してくる飲食店もあるとか。(©️Kosuke Mae)

 言葉の壁もあった。当初は山川社長らが通訳として弟子入りの3時間をともにしたのだが、通訳を介すると師匠から指導を受けた感覚が薄くなり、また職人も直接伝えられないもどかしさを感じているようであった。そこで、数カ月した時から通訳抜きでの指導に変更したところ、片言の英語ながらも身振り手振りを交えて必死に伝えようとする師匠の姿勢に旅行者が感激。そのうち師匠サイドの語彙が増えたところから理解が進むようになり、サイトへの投稿は満足度の高いものが多くなったのだ。
 夕食用の飲食店の案内にも工夫を凝らした。山川社長が実際に井波の町を食べ歩き、自信をもって推薦できるお店を紹介するアプリを開発(英語版と中国語版)。Googleマップと連動させて、お店まで迷わずに行けるようにした。
 こうしてBED AND CRAFTの事業が徐々に軌道に乗ってくると、外国人が瑞泉寺やその参道を歩く姿が多く見受けられようになり、町の人々も山川社長の試みを注目するように。飲食店の中には英語のメニューを用意するところが現れ、また看板にも英語表記のものが増えつつあるという。お店の中にはベジタリアン向けのメニューの開発について、山川社長に意見を求めてきたところもあったそうだ。

支援メニューでおしゃれなプレートを開発

「小さな元気企業応援事業」の採択を受けて開発された栃の
プレート(26cmのもので14,000円)。「季の実」のサイトには、
バリーエション展開されている商品も順次紹介されている。

 山川社長はさらに気づいた。井波を象徴するような木彫品で、手頃な値段でおしゃれなお土産品がないことに。そこで、当機構の「小さな元気企業応援事業」(平成30年度から2カ年)の採択を受けて、井波彫刻の特性を活かしたお土産品の開発に乗り出した。
 その背景を山川社長が語る。
 「1、2日あるいは1週間ほど井波に滞在して、木彫の文化に興味を持っていただいたとしても、獅子頭や欄間はけっこう値が張って大きく、お土産には向かないところがあります。そこで井波を旅した記念になるようなものをつくりたいと思い、職人さんたちの意見もうかがいながら商品開発を試みました。井波を活性化させ、BED AND CRAFTの事業を充実させる一助にもなると思っています」
 その第一弾としてでき上がったのが、右に紹介する木製のお皿だ。お皿の形に粗びきされた木材にひと彫りずつノミを入れて形を整えた後で漆を施し、井波らしい一品に仕上げられている。「応援事業」では、このバリエーション展開や販促ツール(パンフレットやホームページ)の作成も支援し、山川社長の事業とともに木彫刻の町・井波の活性化をサポートしているところだ。

3年前から瑞泉寺やその参道を歩く外国人が目立ちはじめ、
BED AND CRAFTの試みを地元の人々も再認識するように
なっている。(©️Kosuke Mae)

 こうした山川社長の活動は旅行者だけでなく、経営者の目にもとまるように。経済同友会の本部ならびに各県の役員の方々がその試みに関心を持って井波を視察した際、会員のひとりの沖縄県のある旅行代理店の社長が、「自分もやってみたい」と空き家になっている元料亭の建物を購入。そこをリノベーションして3組の旅行者が宿泊できるようにし、その運営を山川社長に委託してきたのだ。
 「実は2棟目のTAEも、建物のオーナーは別にいて、その運営を当社は委託されています。当社はまだ創業間もないベンチャー企業ですから、古民家を次々と購入してリノベーションする余裕はありません。井波の活性化のために理解を示してくださる方がいれば、オーナー制で宿泊施設を増やせないかと思っていた矢先にTAEの案件が浮上し、今年1月には沖縄の方がオーナーに名乗りを上げてくれたのです」(山川社長)
 築80年は越えてはいるものの、元料亭だけにふすまや屏風が残り、けやきの柱や梁とともに、古きよき日本家屋の風情をかもし出している様子。この秋にオープンして予約を取り始めるところだ。
 BED AND CRAFTを始めて、この9月で4年目に入った。稼働率も徐々に上がり始め、最近では60%くらいに。経営的にも安定してきた。これもひとつのまちづくり、あるいは観光振興か。「工芸が盛んで、古民家の空き家がある地で、BED AND CRAFTをやってみたいという方がおいでになれば、ぜひとも協力したい」とは、山川社長が取材をしめくくった弁。関心のある方は数日泊まってみてはいかがか。

所在地/南砺市本町3-41
代表者/山川 智嗣
資本金/50万円
従業員/正社員2名、パートアルバイト14名
事 業/商業施設等の設計、宿泊体験型観光業
TEL0763-77-4544
URL/https://www.corare.net

作成日  2019/10/15

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