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第61回 エコーウッド富山株式会社

県産杉の間伐材を用いて商品開発を
「より身近な生活用品を」と活発に

本業の土木工事のかたわら間伐材の利用について
商品開発を進める同社の米澤尚美社長(写真上)。
写真下は、間伐材を土木工事の場で利用する一例。

 間伐材の利用については国(林野庁)はもちろんのこと、都道府県の中でも重要な政策課題として掲げているところが多い。「間伐材 利用法」でネット検索すると、自治体の森林を所管する担当課などが監修した“間伐材利用事例集”がいくつもあり、土木工事用資材から生活用品までさまざまな製品が列挙されている。今回取材でうかがったエコーウッド富山(株)もその課題に取り組む一社。同社は、当機構発足当初から間伐材利用にあたっての技術開発、商品開発の支援を求め、県の担当課(森林政策課)や富山県農林水産総合技術センターの木材研究所も訪ねたのであった。
 米澤尚美社長が振り返る。
 「最初は確か、十二・三年くらい前だったと思います。TONIOの『地域資源活用プログラム』支援を受けて、間伐材利用の技術開発、商品開発に取り組みました。その時は、初期に目標とした商品開発にはたどり着けなかったのですが、『加圧式防腐処理』という雨や雪にさらされても材木が腐らなくする技術を開発することができました。その技術を後々の商品開発に生かすことができたのです」

間伐材をエクステリア・ガーデニング用品に!

ガーデニング・エクステリア向けに開発された商品。
写真上は木製プランター、写真下は木塀の一例。

 工事用の木製看板や屋外の掲示用木製パネル、公園の杭などはその一例であるが、業者向け・公共工事向けが多いため、一般の消費者にはなじみの薄いものであった。同社ではかねてより、「人びとの生活の近いところで用いられる商品を開発し、間伐材の利用についてもっと知っていただきたい」という願いを持ち商品開発に取り組んできたのだが、平成26年に入ってエクステリア・ガーデニングの分野での商品開発に的を絞り、「とやま中小企業チャレンジファンド事業 小さな元気企業応援事業」の採択を受けて、それを加速させたのである。
 米澤社長が続けた。
 「当時はガーデニングが趣味の方が増え、各種メーカーからいろんな商品が開発され、販売されていました。そこで私どもでも、そのジャンルで商品を企画し、富山県産杉の間伐材を用いたプランターや木塀を開発しました。木製ですから樹脂や金属の製品より自然に馴染み、県内の森林環境の整備にもつながると思ったのです」
 販促にあたっては建設会社や工務店等の協力を仰ぎ、また自社のホームページ等でも紹介。平成30年に起こった大阪北部地震では、ブロック塀の倒壊により児童が死亡するという痛ましい事故があったため、軽量な木製の塀が注目されることもあったようだ。またDIYが得意な消費者から、「キット化して自分で工事できるようにできないか」と打診されたのを機に、キット化を模索。しかしながら、設置場所の環境が多種多様なところから、それに合わせてサイズの異なる多数のキットや部材を用意することは難しく、また多少の造作が必要になるケースが多いことから、基本セットでの販売に限ることにしたのであった。

間伐材を用いて避難小屋を製作

間伐材を用いて建てられた災害時対応の避難小屋
「ECOYA」(エコヤ)。太陽光パネルによる発電・蓄電
により、スマホ80台分の充電が可能。USBの接続口が2つ、
災害時用非常電源(100Vコンセント)2つが設置され
ている。

 そうこうしているうちに、先に挙げた大阪北部地震を始め災害を伴う地震がいく度か起こり、また大雨による水害等も毎年のように日本のどこかで発生するように。その際よくニュース番組等で報じられるのは、避難した公民舘や小学校などで救援物資をもらうために並ぶ列の他に、スマホ充電のための順番待ちの様子などであった。
 「今の時代、スマホは通信手段であるだけでなく、決済・支払いのツールでもあります。それを考えると、仮に災害により電線が寸断されても、自立して発電・充電できる簡易型の避難小屋があってもいいのではないかと思いました。公民館のようなきちんとした建物にすると大きな予算が必要になりますが、公園の東屋のような簡易なつくりで、ソーラー発電のパネルを屋根に置き、その電力を蓄電し自由に充電できるようにしておく。こういう施設を、公園などの公共の場に設置すると町に安心が増えるように思われます」(米澤社長)
 同社ではこの思いを形にするために、「とやま中小企業チャレンジファンド事業 ものづくり研究開発支援事業」(平成30年度)の採択を受けて、県産杉の間伐材を用いての、太陽光蓄電装置を備えた災害対応型東屋の開発に着手。小矢部市内のこども園の協力を得て、園庭にサンプルの東屋を建てて、“モデルハウス”として自治体に紹介するとともに、自社のホームページを活用してのPRにも乗り出したのだ。
 「コロナの影響で対面での営業はできないのですが、今までのところ複数の、全国の自治体よりお問い合わせをいただき、そのうち幾つかにはお見積も出させていただきました。ある自治体では、避難小屋というよりは観光地の休憩小屋的な用い方を想定されているようで、オープンスペースでありながら、若干ある風よけの機能も評価いただいているようです」と米澤社長は語り、「またコロナ禍によってもう少し設備を充実させてテレワークの拠点として活用する、木製のカーポートとしても使えるのではないか等々の意見も寄せられています」と続け、「ECOYA」(エコヤ)と名づけられた東屋ビジネスに可能性が広がりつつあることを教えてくれた。

管理業務のIT化の指導を受けた

その他の間伐材の応用例。写真上は遊具、写真下は
足踏み消毒液スタンド。消毒液スタンドは、令和2年度
の「富山県トライアル発注商品」に認定され、県の
厚生センターや公立の病院等で設置が進んだ。

 さてこうして商品開発に勤しむ一方で、同社では会社全体の管理業務のシステム化・IT化に取り組み、それを円滑に進めるために当機構の「専門家派遣事業」(令和3年度)を活用してITに詳しい専門家を招聘(しょうへい)し、その指導を仰いだ。
 「それ以前の業務管理は、各人が主にエクセル等を使って、各人の仕様で行っていました。ですから現場で工事等を行う職人さんが、業務日報に残業時間を記入したり必要な資材をリストアップした表を作成した場合などは、プリントされたその資料を事務部門で入力し直して、勤怠や給与、資材の在庫管理、買掛・支払・会計などの資料を作り直していたのです。パソコンに詳しい従業員が少なかったので、システム化・合理化をなかなか進められなかったのですが、定年を迎える従業員がポツポツ出始めたのを機に、時代に即した業務管理の手法を導入しようと思ったのです」
 米澤社長は、業務管理のIT化を図った背景をこう語るが、すんなりと進んだわけではなかったようだ。なかには「そんなこと急にいわれても……」と渋る従業員もいたそうだが、経理担当者が勤怠管理のサポートに時間を取られて本来の業務ができず、会計事務所から事務員を派遣してもらうなど合理的でない作業の進め方をいくつもしていることを従業員に理解してもらうところからスタート。その前提として、専門家は従業員一人ひとりと面談して各人の業務を把握し、無駄に重なり合っている部分はないか等のチェックも行ったのだ。
 「従業員のヒアリングにより、システム化せず、各人が個別に入力していたのでは、無駄な作業が多いばかりか転記の際に入力ミスがあることが明らかになりました。また、各人の作業があまりにも属人化していることも判明しました。これについては皆、従来からうすうす気づいていましたが、ある担当者が休んでも仕事が止まらないようにするには、業務管理のシステム化や情報の共有を図ることが大切だということを、辛抱強くすべての従業員に説き続けたところ、徐々に意識が変わってきました」(米澤社長)
 同社では今、一体的なシステム導入に向けてその準備を進めているところ。継続的に開発されている新商品の在庫管理にもいずれは威力を発揮するようになると思われる。
 取材の最後に、間伐材を利用した商品開発についての抱負をうかがうと、米澤社長は次のように答えた。
 「コロナによって私たちの暮らし方、働き方、余暇の過ごし方が変わりました。この先、ゼロコロナになるのか、ウィズコロナになるのかを考えた時、ここしばらくの間は、ウィズコロナの方が可能性が高いように思われます。そこで当社では、こうした変化を踏まえた上で間伐材を用いたある商品の開発を企画し、試作を行っています。近い将来、皆様にご案内できると思います」
 米澤社長がいう“ある商品”は、取材の場では実名が出ていたが、ご本人の希望でここでは伏せる。ただ最近よく聞く「テレワーク」「二地域居住」「ワーケーション」「屋上利用」などのワードをヒントに考えると、答えにたどり着くかもしれない。商品名を聞き、編集子ら取材スタッフは「それは今の時代、ニーズがあるのではないか」とつぶやき、同行した機構スタッフは「販売促進の支援メニューもありますので、ぜひご活用ください」と意気込んだのだった。
 同社の新商品については、乞うご期待!

所在地 / 小矢部市内御堂157番地
代表者 / 米澤 尚美
資本金 / 3,500万円
従業員 / 12名
事  業 / 土木・建設業、建築資材製造販売
T E L / 0766-61-4988
U R L / https://www.ecowood.co.jp

作成日  2022/11/15

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