TOP > オーダーメイドの企業支援 > 第68回 合同会社CIBO(チーボ)
中心商店街周辺から駅北へも展開
新天地でイタリアンの名店CIBOは・・・
飲食を介した人とのコミュニケーションのあり方に
魅力を感じ、飲食店を営むようになったCIBO代表の
森隆太郎氏。昨年オープンしたCIBO VERA PASTA
WYE店で抱負を語る。
「CIBOが初めてお目見えしたのは、平成7年のことです。建物の老朽化で閉店する令和2年までの25年間、富山市の花水木通りに根を下ろしてきました。大和百貨店が現在地に移転した際、ご縁があって総菜のお店『CIBO DELI BAKE』(チーボ デリ ベイク)を平成19年に出店させていただきましたが、その前まで、お店の多店舗化については考えてもいませんでした」
CIBOの代表・森隆太郎氏は振り返るが、昨年7月に富山駅北のDタワーに出店した「CIBO VERA PASTA WYE店」(チーボ ヴェラ パスタ ワイ)も合わせると、今では5店を擁するまでに。「イタリアンの名店CIBO」は富山の人々に愛され、「テナントが空いているので入りませんか」「ビルを新築するので出店しませんか」と誘われて、お店を増やしてきたのだった。
その歴史を振り返りつつ、当機構とのご縁についても紹介しよう。
初代 CIBOのドア付近(写真上)と内部(写真下)の様
子。お店では映画の鑑賞会なども開いていたという。
学生時代、進学先の大阪の喫茶店でアルバイトをしていた森代表。飲食を介した人とのコミュニケーションのあり方に魅力を感じ、「将来、飲食店をやるのもいいかも」「マスターと呼ばれたい」と思うようになったという。卒業後は、大手コーヒーメーカーに勤務。外食事業部に配属され、喫茶店の運営などに携わった。
故郷にUターンしたのは6年後。当時、富山市内にイタリアンの若手シェフが注目を集めていたお店があり、結構繁盛していたという。森代表は迷わず、「修業させてほしい」と門を叩いたのだった。
同氏が記憶の糸をたぐる。
「シェフと面識があったわけではなく、また求人していたわけでもありません。お店の勢いのようなものを感じ、売り込みに行ったのです。若いスタッフが生き生きと働いているのが印象的でした。それを見てますます『ここで働きたい』と思い、シェフにその旨を伝えました。すると『明日から来てください』と誘われたのです」
こうして森代表は、CIBOの礎となるイタリア料理と関わるようになったのだ。
そして2年の月日が過ぎた頃、「30歳になるから、そろそろ自分のお店を持ちたい」と独立の準備を開始。その運営スタイルについて考え始めた時、ニューヨークのデリ(総菜の量り売りをするお店)を紹介する本に遭遇し、マンハッタンの超人気店に視察に行ったのだった。
「いろんな総菜がショーケースの中にずらりと並べられ、多くの市民が利用していました。それを見て、私の目は釘づけになりました。日本では百貨店でもそういうことにまだ取り組んでおらず、それを路面店でできないかと思ったのです。時代的には少し早過ぎたのでしょうが、とにかくやってみたかったのです」(森代表)
富山市南田町に開いたCIBO(1号店)は、2階建てだった。元は教会という建物を、2階はイタリアンのレストラン、1階はデリとしてレストランメイドの総菜とパンを販売するように。ただし純粋なイタリアンではなく、例えばワインビネガーを使った料理は、その代わりに米酢を用い、日本人の口に、ご飯のおかずに合うようにアレンジしたのであった。
CIBO DELI BAKE花水木通り店の正面外観(写真上)
とショーケースに並ぶ総菜等(写真下)の様子。
森代表によるとレストランは結構流行ったが、1階のデリは、なかなか売上げは伸びなかったようだ。2階のお客が、「おいしかったから」と帰り際に総菜を買い求めることはあまりなく、それぞれの客層はまったく異なっていた様子。「最初の数年間は、デリの売上げの不足分をレストランで補っていたようなもの」と森代表は回想するが、デリを軌道に乗せようと奮闘している姿は、人の目に止まっていたようだ。大和が現在地に移転した時、その関係者から「地下の食品売り場に、デリを出店しないか」と誘われたのである。
「CIBO DELI BAKE富山大和店」をオープンしたのは、平成19年のことだ。百貨店への来店客をベースに販売するようになったため、富山市内を中心としながらも県内全域でファンを開拓する機会を得て、ここにCIBOは多店舗化の第一歩を踏み出した。
「建物の老朽化で解体することになり、最初のお店は閉店しましたが、のちに私は総曲輪周辺で4つのお店を持つようになりました。その時、私が意識していたのは、多店舗化よりは地域密着です。『地域の人々に愛され、必要にされてこそ、飲食店、小売店は続けることができる』、私は常々そう考えてきました。大和の他のお店も、ビルのオーナーや地元商店会の世話役などから声をかけていただき出店したのですが、皆さんも同じような心意気を持っておられ、それに共感して出店を決意したのでした」(森代表)
総曲輪周辺での出退店を時系列で示すと以下のようになる。
・平成7年6月 イタリアンレストランCIBO創業。小売コーナーを設け、総菜やパンの販売も行う。
・平成19年9月 CIBO DELI BAKE富山大和店出店。イタリア料理の総菜を販売。
・令和元年6月 ROSETTA O MICHETTA(ロゼッタ・オ・ミケッタ)を花水木通りに出店。イタリア料理のトリッパ(牛の胃を煮込んだ料理)をバラの形にしたパンにはさんでサンドイッチにしたものを販売。
・令和2年2月 建物老朽化によりレストランCIBO閉店。
・令和2年4月 CIBO DELI BAKE花水木通り店出店。
・令和2年7月 総曲輪ベースにパスタをメインにしたCIBO VERA PASTA(チーボ・ヴェラ・パスタ)を出店。
こうして見ると、元号が「令和」に代替りしたあたりからCIBOはお店を増やす方向で動き始めたのだが、CIBO DELI BAKEをオープンした令和2年4月に森代表は当機構を訪問。「専門家派遣事業」を活用しての経営相談を申し込まれたのだ。
総曲輪ベースのCIBO VERA PASTAの店内(写真上)
と料理の例(写真下)。パスタがメインのお店。
「各店の事業を類型化すると、食事を提供する部門、総菜等をつくる部門、総菜等を販売する部門になります。端的にいうと飲食、工場、物販です。従業員の意識も管理の手法も違うわけです。最初のCIBOではこの3つを1カ所で行っていましたから目が行き届いたのですが、分散するとうまく管理ができなくなってきたのです」
森代表はこう語り、専門家派遣要請の舞台裏を明かしてくれた。
要請に応じて森代表の相談役になったのは、中小企業診断士のA氏だ。A氏には(合)CIBO設立時(令和2年1月)に登記や事業を拡大するにあたっての売上計画、資金計画の策定などでアドバイスをいただいた経緯があった。前年までの決算等も把握し、CIBOの指南役としては打ってつけの人物だった。
指導を仰いだ日々を森代表が振り返る。
「Aさんは当社の課題を分析して、その対処法・解決策の答えを用意し、それをストレートに伝授してくれるのではないのです。カウンセリングというか、話し合う中で当社の課題を私自身に認識させ、その解決策も私に導き出させるのです。言葉を変えると、気づかせてくれるのです。そして実行しやすい環境づくりを、アドバイスしてくれるのです」
令和2年のこの時の一番の課題は、店舗ごとの採算の把握が不十分なことだった。複数のお店を運営し、この先さらに増える計画がある中で、「全体としては黒字だけど、部門ごとではよくわからない」では不安が募ってきたようだ。
中小企業診断士の指導の下、これ以降、改善が試みられたのは、部門ごとの売上・仕入れなどの数字を把握すること。工場から販売店のDELIへ総菜が出荷された場合は、「工場はDELIへいくらで総菜を売った」、「DELIは工場からいくらで総菜を仕入れた」と数字で把握するように。売れ残りの量もきちんと把握し、製造量の調整に反映できるようにしたのだ。そして、これがうまく進まない場合は、事業所ごとにスタッフがPDCAサイクルを活用し、数字による管理の徹底と、それによるマネジメントの質の向上を図ったのであった。
富山駅北のDタワーの外観(写真上)とその1階の
CIBO VERA PASTA WYE店(写真下)の様子。
客席数は50席。平日はビジネスマン等、近隣施設で
イベントなどが多い週末はその来場者が来店されるという。
そして令和6年、CIBOにとっては未開の地ともいえる駅北への進出が決定。Dタワーのテナント募集の関係者から誘いを受けCIBO VERA PASTA WYE店を7月にオープンすることになったのだが、それに先立って再び中小企業診断士のA氏を招聘(しょうへい)。「専門家派遣事業」を活用して、CIBO各店の現状把握や新設店の売上計画、全体的な利益率の改善などについてのアドバイスを求めた。
「ご存じのように食材はすべて値上がりしています。また、テイクアウト用の包装材や保冷剤等も値上がりし、従来通りの価格は維持できなくなりました。お客様には事情を説明し、料理や総菜を値上げさせていただきましたが、厳しい経営環境にあります。そこでDタワーへの出店を契機に、健全経営のためには何が必要かを改めて考えることにしたのです」(森代表)
中小企業診断士のA氏は前回同様、気づきに重点を置き、森代表自らが店舗運営に取り組めるようにしたのだった。そのポイントを列挙すると以下のようになる。
・新店舗出店に合わせて、既存店も含めた全体の事業計画を作成し、資金計画を立てる。
・商品ごとの利益率を把握する。利益率の高い商品に注力し、各店舗の収益性を高める。
・客単価を上げる。飲食店では回転数を上げる。
先にも述べたようなカウンセリングの中で、森代表にこれらの答を導き出させた中小企業診断士。「現状分析や課題、私の希望についてすべて話させた後で選択肢をいくつか提示してくださり、『最終的に決めるのはあなたです、行うのもあなたです』という姿勢で臨んでくれるので、こちらとしても話しやすいのです」と森代表は経営相談について総括した。
* * *
“材料費・人件費の高騰で飲食店の倒産・廃業件数が増加”“キャベツが1玉1000円。飲食店悲鳴あげる”などの報道を年末年始に聞いた。材料費の高騰を反映して料理の値段を上げたところ、客離れが起きてお店の継続が難しくなった例もあったようだ。
「当店でもここ1年ほどで4回値上げした商品がありますし、キャベツをたくさん使う料理は、一時的にメニュー表から外すなどして対処しています。10円、20円の値上げに本当に気を使います」と森代表は語り、「最後はお客さんとの信頼関係でしょうか」と取材を締めくくった。
付言するとCIBO VERA PASTA WYE店の船出は、今のところは順調な様子。ただし総曲輪周辺とは客層・人の流れはまったく違うようで、イベント用の集客施設が多い駅北では曜日やシーズン、イベントの有無による変動が大きく、「開店から半年の今はそれを見定めているところ」(森代表)だそうだ。
所在地/富山市大泉本町2-4-15
代表者/森 隆太郎
資本金/100万円
従業員/15名(パート等含)
事 業/パン・総菜製造販売、飲食店
TEL/076-422-5515
FAX/076-422-5615
Instagram https://www.instagram.com/cibo1995/
https://www.instagram.com/cibo_vera_pasta/
https://www.instagram.com/ciboverapasta_wye/
作成日 2025/2/20