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第47回 株式会社河島建具

木製建具の復活を期す3代目を
支援メニューが後押しして……

木製建具復活への夢を語る河島隆志・亜紀夫妻。

 「日本の伝統な木製建具を復活させ、その技術を継承していきたい」
 河島隆志社長がそう思ったのは、まだ仕事に就く前のこと。同社はもともとは、木製建具の製作と取付を本業とし、河島社長の祖父が昭和8(1933)年に旗揚げした会社であるが、氏が大学生の頃には、海外からの技術で、工業的に大量生産されるアルミサッシ・フラッシュ建具(以下本稿ではアルミ製建具と略す)が市場を席巻。半面、木製建具を入れる家は徐々に減り、無垢材(むくざい/丸太から切り出した木材。集成材や合板ではない)を使用する家は少なくなってしまった。
 そうした状況を目の当たりにしていただけに、木製建具への思いは人一倍強く、氏は石川県の伝統技術を受け継ぐ木製建具の職人の下での修業を決意。卒業と同時に弟子入りしたのであった。

組子専用のカンナで、組子の角の厚さなどを0.01mm
単位で調整していく河島社長。

 親方の工房の2階に住み込み、修業の毎日。「丁稚」(でっち)という言葉は、平成の今日では死語に近いが、そんな日々だった。親方と同じ釜の飯を食べ、道具(カンナ・ノミ)や木にだけ向き合った。そんな暮らしを6年続けて、襖(ふすま)や書院(しょいん)などの日本の伝統的な木製建具の制作技術を身につけるとともに、そこで用いられる細かい装飾の技術、組子(くみこ)や象嵌(ぞうがん)についても習得したのだった。
 ところが家業の河島建具に入ると、アルミ製建具の調整や取り付け工事に追われるばかり。無垢の木製建具復活についての方策や商品展開の検証も、一人ではテンポよく進めることができず悶々としていたのだ。そこで河島氏は、当機構が実施している「とやま起業未来塾」(平成23年度)に入り、木製建具復活についてのビジネスプランをまとめることに。無垢材の良さや、組子や象嵌がほどこされた木製建具の美しさをいかに知っていただくかに始まり、その販売についても検討。同社の従来の商圏は地元砺波市に根ざしたものであったが、河島社長は「美しい木製建具を全国にも提案したい」と夢を高く掲げたのであった。
 その夢は、当機構の支援メニューや人との出会いによる“化学反応”によって一部叶えられ、日本を飛び越えフランス・パリでの導入事例を持つまでになるのだが、今回のレポートは、そこに至る河島社長の組子物語である。

まずは足元を固め、次に全国に

地域資源ファンドの支援によりでき上がった木製建
具の一例。井波彫刻がほどこされた木製ドア(上)
は全国建具展示会東京大会で技術委員長賞を、
組子と高岡漆器の螺鈿を融合させた式台(中)は
富山県家具展で砺波市長賞を受賞した。

 未来塾を修了した河島社長は、さっそく組子の普及に乗り出そう、とした。ところが再び、アルミ製建具の調整や取り付けなど、施主や工務店からの要望に追われ、なかなか緒につけない日々が続く。ただそれでは「減り続ける木製建具の需要を横目で見るばかりで何も手を打てない」(河島社長)ところから、氏は「専門家派遣制度」を活用して経営コンサルタントを招き(平成26年度)、同社の中長期の事業計画を策定。その中で、日々の業務の中で埋没しがちになる木製建具復活を期しての動きを絶やさないようにしたのだ。
 「とにかく私は、全国への挑戦で頭の中がいっぱいになる傾向にあったのですが、専門家の方からは『地に足をつけて、従来のお客さんをしっかりフォローしながら、新しいお客さんを開拓しましょう。思いだけで空回りしてはいけない』とアドバイスいただきました」(河島社長)
 事業計画は、直近、2〜3年後、4〜5年後というふうにスパンを区切り、そこでの経営課題と対策を掘り下げながら社長と夫人が意見交換し、専門家のリードの下で策定された。その過程で、全国への挑戦は4年後をメドにすることを決め、まずは足元を固めることにしたのだ。
 そして具体的な準備は、当機構の「地域資源ファンド事業」(平成26年度)の採択を通して行われることに。富山の地域資源である越中和紙、高岡漆器、井波彫刻などの伝統技術と、組子細工の技術の融合により、新たな木製建具の商品化が試みられるようになったのだ。
 ファンド事業の支援を受けて試作されたのが右の3点だ。上から順に井波彫刻が施された木製ドア、組子と高岡漆器の螺鈿を融合させた式台、越中和紙と組子を用いた飾り棚。材木は富山県産のスギなどが用いられている。
 取材の様子を見守っていた夫人の亜紀さんが語った。
 「この試作品を、高岡イオンモールで行われた家具展に出展させていただきました。年配の方はもちろんのこと、若い方も興味を持ってくださり、『組子がきれいだ』『組子の技術が素晴らしい』とお褒めの言葉をいただきました。来場者の反応を見てわかったのは、そもそも組子を知らない方が多いということです。年配の方も『久しぶりに見た』と口にされるのでした。そこで思ったのです、『いきなり組子を使った木製建具を紹介しても、和室が少なくなっている今日の住環境では、なかなか取り入れにくいのではないか。そうだとすると、インテリアや生活雑貨などに組子や象嵌の美しい装飾をほどこし、それに親しんでいただくことを通じて、無垢の木製建具にも関心を持っていただいたらよいのではないか』と」

そしてパリへ

「SOZAI(素材)展in Gift Show」で展示した組子サンプルの
一例と同社の展示ブース。

 夫人が展示会場で得たこの感触は、木製建具復活を期す河島社長にとっては新たな指針となった。そして平成28年度の「小さな元気企業応援事業」の支援を受けることにし、組子と象嵌の技術を用いた「和モダンな食卓おもてなし製品」の開発に着手。お盆、式台などの生活雑貨での組子の応用を図ったのである。
 その一例が左のものだ。「東京インターナショナルギフトショー春2017」の同時開催イベントである「SOZAI(素材)展in Gift Show」(2/1〜3、東京ビッグサイト)で、組子のサンプルを披露。続く「中小企業総合展in Gift Show2017」(2/8〜11、東京ビッグサイト)では、組子サンプルをガラスにはさみ、持ち手をつけ展示したところ、「代金をいただくトレイによい」「お茶菓子を載せるプレートに使いたい」との声が寄せられ、注目を集めたのだった。
 「皆さん木を細かく削ってつくられた組子をご覧になられて、『これはレーザーで削っているのだろう』とおっしゃられるのですが、レーザーでは木が焦げてしまい、また角も丸くなってしまいます。これは専用のカンナで削り、0.01mm単位の正確さを手作業で行っています。組子の角が合わさるところは、仮に1つの誤差が0.01mmでも、4つ合わされば0.04mmになって角に納まらなくなるのです」
 こう語る河島社長の顔は、まさに職人だった。その職人技が注目を浴び、100社ほどから問い合わせをいただいたのであるが、量産を前提にした話が多く、それらについては「生産体制が整ってから改めて……」と残念ながら断らざるを得なかったのだ。
 この展示会への出展には、うれしい副産物があった。同社の組子サンプルが、パリで日本の木や竹などの素材を販売する会社の担当者の目に留まり、現地のショールームで紹介して頂くことに。その担当者は、パリの温泉施設建設中のオーナーが組子に関心を寄せていることを知っていたのだが、展示用サンプルをお見せすると、「なんて美しい木工技術だ!」とオーナーは小躍りし、「導入したい」と即断。施設のエントランス全面を飾る組子パネル2枚が、4月にパリへと旅立ったのである。また同じくその担当者の推薦で、「2017台湾文博会」にも出展。そこでも注目を浴びたのだ。

再び足元を固めるために

組子制作の様子。長さ、厚さ、角度がわずかでも異なると組めない。昔は
一人前の職人になるには10年かかるといわれたが、「ITが発達した今日
では、5年くらいで一通りの技術が身につくのではないか」という。

 展示会などで組子をPRしてきた中で、大きな課題が浮かび上がった。それは生産体制だ。現職のスタッフはアルミ製建具の調整や取り付け工事に忙しく、組子や象嵌の技術を身につけたり、木製建具を企画製造したりするための時間がとれない。河島社長も既存の客先への対応に追われる毎日だ。
 そこで同社では、組子職人養成を前提に雇用を増やすことを計画。3人の新人を、5年かけて河島社長が育てようというのだが、ここでも課題が浮かび上がった。河島社長にとっては、企業としての求人活動は初めてのことで、従業員の確保や入社後の教育体制、会社全体の組織のあり方、人員増による財務負担への対策と全体的な売上げ計画……等々、経営全般に渡って“足腰の強化”が求められたのである。「再び、専門家派遣制度を活用してコンサルタントを招き、その指導を仰ぎます。そして人材を育成し、組織や生産体制を整えて、全国や世界の市場をうかがいたい」
 河島社長は、職人一本やりな面から経営者の顔ものぞかせるようになったのだが、町の建具屋を全国ブランドの木製建具工場へと進化させることを期待したいところだ。

所在地/砺波市荒高屋511-2
代表者/河島 隆志
資本金/400万円
従業員/2名
事 業/木製建具の製造・取り付け、アルミ製建具の取り付け、襖や障子の張り替えなど
TEL/0763-32-0105 FAX/0763-33-7105
URL/http://kawashima-tategu.com/

作成日  2017/08/24

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