第44回 大越工芸品製造株式会社 とやま起業未来塾 TONIO Web情報マガジン 富山

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第44回 大越工芸品製造株式会社

公的な販促支援などが功を奏して
中国での工芸品販売が軌道に乗った

とやま起業未来塾(平成24年度)のビジネスプラン発表会における大越
社長の挨拶。

 「仏具の世界で培われた金箔や象嵌などの技術を応用して工芸品をつくり、海外で販売してみたい」
 そう思った大越忍さんは、当機構が開催している「とやま起業未来塾」(平成24年度)を受講し、金箔ガラスを中心とした工芸品で欧米の市場を狙うための事業計画を練り上げることに。ビジネススクール形式で経営についての実践的なトレーニングを受けるとともに、例えば少人数で起業してもネットを使っての営業活動を積極的に展開するようアドバイスを受け、コンテンツの構成については微に入り細をうがつように指導されながら、事業開始の準備を着々と進めたのであった。
 会社を起こしたのは翌平成25年5月のこと。満を持してのスタートだった。未来塾受講中に当機構や国の創業時の支援メニューを知り、「創業・ベンチャー挑戦応援事業」(当機構)や「創業補助金」(国)での支援を申請。前者では金箔ガラスの欧米への展開を図るために英語版のホームページ作成を図り、後者では金箔ガラスの他に高岡銅器などの伝統工芸品も加え、欧米のみならず中東での展開も期待したのだった。併せて、支援制度を活用しての製造設備の充実を図ったのである。

欧米メインから中国に転換

人気商品・茶道具の鉄瓶。銀製のものもある。

 当時を振り返って大越社長が語る。
 「おかげさまで2つとも採択になり、英語版のホームページはさっそく開設しました。また中東の件ですが、私はドバイに関心があったので、現地での展示会を調べてみました。そこでわかったのはドバイの展示会は3カ月程度ブースを借り切り、営業マンや通訳を張りつかせるものでした。費用を試算してみると軽く500万円は越え、ドバイへの夢は露と消えてしまったのです」
 ただここで思わぬ反応もあった。大越社長はもともとは、グループ企業の大越仏壇にて墓石用石材を仕入れるために中国とのビジネスを15年ほど前から担当してきたのだが、大越工芸品製造を始める少し前に「高岡銅器を中国で販売したいので商品を用意して欲しい」と取引先の1社から依頼されたのを皮切りに、英語版のホームページをアップしてからは中国のバイヤーからの問い合せが多数入るようになったのだ。

 「欧米のバイヤーからの連絡もありましたが、圧倒的に中国の方が多かったのです。また成約まで至るのは中国系のバイヤーばかりで、引き合いがあった商品も高岡銅器の花器や香炉、茶道具などが中心で、金箔ガラスに関してはわずかしかありませんでした」(大越社長)
 インテリアや趣味用に、中国の富裕層が高岡銅器に関心を持ち始めたようだ。既存の高岡銅器をそのまま出荷すればよいため、大越社長にとってはありがたい話。欧米や中東への金箔ガラス・伝統工芸品の輸出ではなく、中国への高岡銅器を中心とした伝統工芸品の輸出へと、大越社長が舵を切り替えたのはいうまでもないことだ。
 この後、中国語版のホームページを開設したのはもちろんのこと、機会あるごとに中国のバイヤーに高岡銅器のカタログを見せるなど積極的に営業を展開。大越社長が中国で有しているネットワークを活用するとともに、富山・長野・岐阜3県が連携して開催している「海外バイヤー招へい商談会」(平成26年度)への参加や「販路開拓挑戦応援事業(国外分)」(27年度)に採択されて、北京で開催された「日本伝統工芸品展」に出展するなど、公的支援を受けての販促活動も展開するようになったのだ。

北京で開催された日本伝統工芸品展での同社のブース(左)と海外バイヤー招へい商談会(平成26年10月/
会場とやま自遊館)での大越社長の商談風景。

いずれは中国に営業拠点を

中国への留学や15年あまりに及ぶ中国企業との付き合い
の経験から、大越社長は中国語でのビジネス会話ができる
ようになった、とのこと。

 「海外バイヤー招へい商談会では、台湾のバイヤーとの商談が進み、もう一歩のところで話がまとまりませんでした。ただ、そのバイヤーには1年半ほどしてから改めて連絡を入れると話がまとまり、取引きが始まりました」と大越社長は語り、北京での展示会については「サンプル出荷として300万円弱の注文を受け、その後いくつかの商談はまとまりましたが、今のところ単発の取引きで終わっています。中国系のバイヤーを相手にする場合は、気長に付き合うことが大事です」と締めくくった。
 こうした公的な支援を受けながらの販促や独自の営業活動が相まって、同社の取引先は徐々に拡大。ほとんどが中国系(台湾含む)のバイヤーとなり、エンドユーザーもほぼ100%が中国系の人々ではないかと推測される次第だ。
 「欧米をメインの市場とする当初の計画からは外れて、中国が主戦場になっています。当社としてはうれしい誤算でしたが、未来塾の先生方のアドバイスを入れて、英語や中国語版のホームページを充実したのがよかったようです」
 大越社長はそれがビジネスチャンス拡大の要因のひとつになったと振り返りつつ、今後の抱負について話を進めた。いわく……。
 「いずれは中国国内に自社の店舗を構え、営業活動の拠点にしたいと思っています。店舗の運営については、卸・小売りの二通りの考え方があると思いますが、それについては今後徐々に詰めていきたい。実は今年に入って、上海の不動産賃貸料などを調べてみましたが、予想以上に高かったので、少し様子を見てみよう、と決めたばかりです」
 中国での15年にわたるビジネスの経験から、大越社長はじっくり待つことにしたのであった。

所在地/高岡市福岡町下老子735
代表者/大越 忍
資本金/200万円
従業員/1人
事 業/金箔ガラス、金箔加工、レーザー彫刻、工芸品等の製造・販売
TEL/0766-53-5560 FAX/0766-53-5561
URL/http://www.oogoshi.com/

作成日  2016/09/13

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