第52回 アルパカ舎 よろず支援拠点 小さな元気企業応援事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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第52回 アルパカ舎

コーヒー好きが高じてお店を持つまでに
将来はお店を持ちたい人の支援を!

コーヒー好きが高じて、IT関係の仕事から転身した水上敦子さん。

 「コーヒーについての最初の関心は、おいしく淹(い)れたいという単純なものでした。そのうちにいろんなコーヒ店で豆を買って飲み比べるようになり、それがさらに高じて自分で店を持ちたいと思うようになったのです」
 かつてIT関係の仕事をしていた水上敦子さんは、起業に至った経緯をそう話す。そしてお店を持ったのは平成24(2012)年8月のこと。自宅を拠点とし、コーヒー豆の煎り方の指導を受けたあるコーヒー店に焙煎機を借りて自分で焙煎し、その豆をイベントで販売したり飲食店に卸したりしながら、少しずつ販路を拡大してきた。
 といっても、順調に売上げを伸ばしてきたわけではないようだ。最初の1年は他のアルバイトとの兼業でコーヒー豆の販売を行い、2年目からは「アルパカコーヒーを知ってもらおう」とイベントの出店回数を増やして専業になったものの、収入は月当たりで7〜8万円がいいところだった。

自宅前にお店を構えて・・・

アルパカ舎のコーヒー豆は独自に焙煎され、県内飲食店の
オーナーの多数から「うちの商品に合うコーヒーを焙煎して欲しい」
と依頼され、卸している。マフィンなどスイーツも多数あり。

 転機は3年目に訪れた。「このままでは限界がある」と思った水上さんは、カーポート用に空けておいた自宅前の小さなスペースに店舗を建設。独自に焙煎したコーヒー豆を店頭販売するとともに、焼き菓子などコーヒーに合うスイーツもつくって売り始めた。そして週に2日パートを雇用し、さまざまな横のつながりによって増えたコーヒーの卸先への配達を行うようにしたのだ。
 「コーヒー好きな方はご存知でしょうが、同じコーヒーでも地域によって、あるいはブレンドの仕方によって、また焙煎の仕方によって、味や香りが全然違います。小さいとはいえお店を持ち焙煎機を入れることができましたので、当店オリジナルなコーヒーを煎ることができるようになりました。これが口コミで伝わって、来店客も徐々に増え始めたのです」(水上さん)
 売上げが少しずつ増える一方で、心配のタネが出始めた。以前より焙煎の量や回数が増えたことから、付近の住宅から「においがきつい」とクレームがくるのではないか・・・と。また住宅街にある同店に車で訪れる人が増えたことにより、騒音や安全についての苦情の恐れも、心配のタネの1つであった。
 そこで水上さんは、「周りの迷惑にならないところでお店を持ちたい」と密かに新店舗の計画を胸に。コーヒー豆の納品等で車で移動する際は、手頃な物件はないかと不動産情報を集めるようにし、また親しい友人に情報提供を呼びかけた。
 自宅前にお店を構えて4年になる平成30(2018)年3月のこと。金融機関に勤める友人からお勧めな物件があると連絡が入った。その建物は、商業施設と住宅が混在する市街地に立地するものの、密集地に建つものではなかった。街割りは変則的で道路で三角形に仕切られ、その先端部分に立地したため、建物の両サイドには道路が走り、風通しのよいロケーションであった。

新店舗増設に向けて商品開発を

小さな元気企業応援事業の採択を受けて開発されたコーヒー
カヌレ(上)と新パッケージ。売上げ拡大の一助になっている、とか。

 「配達で何度かその前を通っていたので、『ここはいいな』と思っていました。しかしながら、私には広すぎたので、友人から知らせを受けてからは本当に悩みました」
 2カ月余り悩み、賃貸を申し込むか否かの判断を迫られた水上さんがとった行動は、当機構を訪ねて経営相談すること。よろず支援拠点のコーディネーターに、「従来の倍以上の売上げを立てることが可能かどうか」のアドバイスを求めるとともに、金融機関から融資を受けるにあたっての留意事項のレクチャーを受けた。さらには助成金事業への申請を検討していた水上さんに、小さな元気企業応援事業を勧め、売上げ拡大に向けての商品開発などを促したのだ。
 「おかげさまで小さな元気企業応援事業には採択され、9月のオープンまでにスイーツの開発や贈答用のパッケージのリニューアルなどを行うことができました。現在のところは売上げも順調に推移し、お店の賃料や固定費、人件費もまかなうことができています」(水上さん)
 実は水上さんは自宅前に店舗を建てる際にも当機構を訪れていた。今回も以前同様に、「新しく事業に乗り出す時は事業計画を立て、売上げや支払をシミュレーションしてみたらよい」とコーディネーターからアドバイスを受け、身の丈にあったプランを立て、それをクリアするよう努めていたのだ。
 ちなみに同店がとっているPRの手法は、SNSを活用してのお店の情報発信がメイン。その受け手が、友人知人に情報を二次的、三次的に拡散(つまりは口コミ)することを通して新たな顧客を開拓したきた。ホームページでの店舗紹介はそれを補完するものといってよいだろう。

創業者をサポートしたい

平成30年9月にオープンしたアルパカ舎の新店舗(焙煎所&
マーケット)の外観と店内。ちなみに店名の由来は、「アルパカは
癒しのシンボルだから、うちのコーヒーを飲んでほっこりした
気持ちになって欲しい」ということで命名されたそうだ。

 最後に、今後の抱負について聞いてみた。「例えば、高岡や魚津などにお店をもう1店出す計画は持っていませんか」と投げかけると、「お店を増やすと管理業務が増えて、コーヒーに接する機会がどんどん減ってきます。私はコーヒーが好きでこの商売を始めましたので、お店を増やすことは今は考えていません」と返してきた。
 そして続けていうには、「自分のお店を持ちたいと思っている人をサポートしたい」と、心のうちで温めていた構想を語り始めた。創業から今年の夏で丸7年を迎えることになるが、落ち着いて眠れぬ夜もあった様子。師と仰ぐコーヒー店のマスターに多くの助言を受けたほか、自分の経験の中から得たノウハウもあるという。さらに5年、10年とアルパカ舎を続けるうちに、コーヒー店経営のツボも理解するようになるだろう。それらを集大成して、「若い人たちがこの業界に入ってくるお手伝いをしたい」というのだ。
 「その夢を叶えるためにまたコーディネーターに相談に行くかもしれません」と水上さんは微笑み、取材を締めくくった。

所在地/(直売所&工房)   富山市婦中町下坂倉1-23
      (焙煎所&マーケット)富山市太郎丸178-12
代表者/水上 敦子
資本金/個人創業
従業員/5名
事 業/コーヒー豆の焙煎・販売、カフェの運営
TEL/(直売所&工房)   076-482-2117

    (焙煎所&マーケット)076-482-5485
URL/https://alpaca-coffee.com/

作成日  2019/03/07

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