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第49回 リッジライン ボルダリングジム

転勤族の妻が始めたボルダリングジム
“稜線のこちら側”で安定経営を!

 

転勤族の妻・兵部智代さんは大阪の出身(ご主人は石川県出身)
山好きな兵部さんにとって、かつて富山は定住候補地の1つで
あったが、ジムの開設で定住は本決まりになった。

 転勤族の妻が、ボルダリングジムを開いてその運営に乗り出した。事業資金は、自己資金と金融機関からの借入れを合わせて、新築の家1軒を充分に建てられるほどの金額。ボルダリングとは、アルパイン・クライミング(山岳地帯の岩壁登攀)のトレーニングとして取り入れられているもので、次期夏のオリンピック(2020年東京大会)での新種目として注目されるようになった競技だ。
 そのボルダリングジムを転勤族の妻で一児の母である兵部智代さんが富山市内で始めた。ジムの名前は「リッジライン ボルダリングジム」で、オープンは2016年9月。開業の思いをご主人に伝えた時には、清水の舞台から飛び降りて大けがをするのではないかと心配し、「思い切りがよすぎないか」と声をかけてきたそうだが、兵部さんなりのビジネスプランを明かすと理解してくれたそうだ。

富山にきて創業の思いが芽吹く

壁には「課題」というコースが設定されている。同じ色、形のテープ
で指示されたホールドのみを使って登る。課題の難易度はテープ
で色分けされており、上の色の難易度は「やさしい」。

 兵部さんとボルダリングとの出合いは、大学時代にさかのぼる。山岳会に所属し、アルパイン・クライミングに取り組んだ兵部さんは、トレーニングの一環としてボルダリングも実施。卒業後は、登山用品を販売する全国展開するあるお店に勤め(2005年4月〜)、ボルダリングからは一時遠ざかったものの登山は続けた。ご主人とは同じ勤務先で出会い、結婚と同時に退職。その後はパートとして系列のお店で働いたりもした。
 「最初は関西圏内での勤務でしたが、2009年に主人が愛知県のお店への異動が決まりました。その時、住まいの近くにボルダリングジムがあり、通いやすい環境が整ったので再びボルダリングを始めました。2年ほどして今度は滋賀県へ異動になり、そこでもジムを探しました。滋賀で通ったボルダリングジムは夫婦で経営されていて、そこでジムの経営に興味を持つようになったのです」
 と兵部さんは振り返るが、ご主人はその4年後にジムの立ち上げ話が浮上してくるとは夢にも思ってもいなかった。
 ご主人が富山へ異動になったのは2015年だ。アルパイン・クライミングを志し、学生時代から富山や長野の山を登っていた兵部さん。「山の近くに住みたい」という希望を持っていたそうで、富山に住み始めた時に滋賀でまいた“ボルダリングジム経営の種”に水やりを始め、芽吹かせたのである。

まずは「よろず支援拠点」で相談

「ルーフ」と呼ばれる地面と水平な傾斜。足の置き方と体の使い
方を習得すると、楽に登ることができる(実際のアルパイン・
クライミングにはない傾斜)。

 「富山にきてよかったのは、子育て支援が充実していて、子どもを保育園に預けることができ、その合間に創業のプランを練ることができたことです。それ以前は保育園はどこもいっぱいで、受け付けてもらえませんでした。それともう1つよかったのは、創業支援も充実していました」といって兵部さんは、創業までの舞台裏を紹介してくれた。
 富山でのツテのない兵部さんはまず、「創業支援」などをキーワードにネットでの検索を続け、当機構の存在を知ることに。産業支援のメニューをつぶさに見ていくと、「よろず支援拠点」で「創業や経営の相談にのります」とあってさっそく電話をし、コーディネーターとの面談のアポイントをとった。
 「まずはボルダリングとは何かという説明から始めました」と兵部さんは微笑んだが、対応した2人のコーディネーターはそのビジネスプランに興味を示した。当時は、「2020東京オリンピック」でのボルダリングの正式採用は決まっていなかったのだが、政府系金融機関での相談員の経験のあるコーディネーターの1人は、「事業資金の融資はその金融機関に相談してみたらよい」とアドバイス。また兵部さんのビジネスプランを詳しくヒアリングして、市場のニーズもあるし、状況把握もしっかりしているからうまくいく可能性がある、と背中を押したのだ。
 「政府系金融機関の方にも、富山でのボルダリングジム運営の可能性についてのプレゼンテーションをさせていただきました。すると担当の方は『協調融資という形でご協力しましょう』と検討結果を伝えてくれました」と兵部さんは語り、「協調融資のもう一方は、主人の給与振込先の銀行に決まり、2行がほぼ半分ずつ融資するということで話がまとまりました」と続けた。
 後に当機構も「若者・女性・シニア創業チャレンジ支援事業」(平成28年度)の採択を通して、兵部さんのボルダリングジム創業の夢を後押しすることに。ジムの家賃や人件費等を助成した。

創業時から順調に集客できたのは……

子ども向けのコース。コースを追いやすくするために動物や果物の
イラストを補助で使う。

 建物探しは、よろず支援拠点への相談や金融機関への融資の申し込みで弾みがついた。比較的新しく、壁際にボルダリング用の構造物を設置しても強度的に大丈夫な倉庫のような建物。市街地にあり、トイレの設備があり、十数台の駐車が可能な駐車場もある……。現在地はまさにその条件にぴったりと合い、おまけにそばには大型のショッピングセンターもある。この倉庫に出合うまでいくつもの建物を見学したのであったが、ここを見てすぐに「キープお願いします」と不動産業者に申し込み、時を経ずして契約書を交わしたのであった。
 そしてさっそく、オープンに向けて準備を開始。工事の進捗状況をFacebookに紹介しながら2016年9月のリッジライン開店を予告してきた。Facebookのフォロワー数は一時2,000名を超え、オープン当初から経営を安定させるために必要な来店者数を確保できるようになった次第。他にはホームページの開設やオープン告知チラシを作成し、また地元のフリーペーパーに開店の記事(無料)を掲載してもらうなど、宣伝にあまり予算をかけなくとも集客は順調に進んだようだ。

「富山は、山があって海もあって、子育て支援や創業支援も充実
している」と語る兵部さん。

 「学生の頃から、また社会人になってからも、全国いろんなところでボルダリングを経験してきました。客としてたくさんのボルダリングジムを巡った経験を踏まえて私がリッジラインで目指したのは、初心者も経験者も楽しめるジムです。経験者オンリーのように敷居を高くしては、裾野が広がりません。リッジラインでは子どもも初心者も楽しめますし、登山や岩壁登攀のトレーニングのために利用されるお客様もいます」
 開業から1年半の好調な滑り出しの背景を語る兵部さん。開業前のフィジビリティ・スタディー(事業可能性を判断するためのケーススタディー)の中には「ぎりぎりの経営ライン」として「平日の来店者数X人、土日の来店者数Y人」も想定していたのであるが、今のところそれを3割ほど上回る来店者数を確保。これを維持することができれば、壁面のメンテナンスやホールド(壁に固定されている石)の更新も可能で、コースのマンネリ化を防ぐことができるそうだ。メンバーズカードの発行枚数は、この取材時(2018年2月末)で6,000枚を超えた。
 Ridge Line(リッジライン)には、稜線、尾根筋という意味がある。兵部さんのボルダリングジムは、稜線の向こうの崖っぷちではなく、こちら側のなだらかな草原にいるようなものだ。

所在地/富山市上冨居3-10-52
代表者/兵部 智代
資本金/個人創業
従業員/3名
事 業/ボルダリングジムの運営
TEL/076-456-7731
URL/http://www.ridgeline1.jp/

作成日  2018/03/20

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