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第45回 沼田畳内装株式会社

右肩下がりの業界に一石を投入
さて、どんな波紋が広がるか!?

畳の模型を手にしながら、“新しい畳”の新規性、可能性を語る
沼田秀和社長。

 子どもの頃から「畳屋のあんちゃん」で育ってきた沼田秀和氏。住宅の欧風化にともなって畳の需要が激減しているにも関わらず、「家業を継ぐことに迷いはなかった」という。というより、一般消費者に畳の文化を見直していただき、その延長線上で畳業界にいい意味での刺激を与えることができないかと模索。地元商工会などを通じ公的な産業支援の制度を活用して、ビジネスチャンスを拡大することを勧められていた。
 先代より社長を受け継いだのは、平成27年8月のこと。その年、旧知の当支援センターのマネージャーの勧めで申請していた「とやま中小企業チャレンジファンド事業(小さな元気企業応援事業)」に採択されたことをチャンスととらえて、畳の商品開発に乗り出したのであった。

自然素材の畳を求める声に応えて

現在の一般的な畳の断面(上)と同社の畳製造
ライン。この畳は上からイグサ、保湿シート、イン
シュレーションボード、ウレタン、インシュレーショ
ンボード、断熱シートで構成されている。同社では
製造ラインを持っているため、それぞれの厚みを
変えることができるほか、ヒノキやお茶殻などを
ボード化したものを芯材にして畳をつくることもで
きる。

 「畳の商品開発」と聞いて、すぐにピンとくる方は少ないかもしれない。かつて(二十数年前まで)の畳は、芯材はワラ、表はイグサ。すべてが自然由来のもので、長く使って耐用年数がきたものは堆肥に利用するなどして自然に帰すことができたものだ。
 ところが今日では、稲刈り時にワラは粉砕されて田んぼにまかれ、畳用のワラの確保が難しくなったばかりか、ワラを用いて畳の芯材をつくる職人も極めて少なくなってしまった。芯材がワラの畳と入れ替わりに市場に流れたのは、ウレタンとインシュレーションボード(木質繊維の圧縮ボード)を積層させた芯材を用いた畳。ワラの畳は吸湿する一方だったが、インシュレーションボードを使った畳は吸放湿して軽いため、あっという間に市場を席巻してしまった(ワラが芯材の畳は、今日では高級品になっている)。
 欧風化によりフローリングの間取りが増え、またシックハウス症候群などが知られるようになると、今度は逆に自然素材の畳が恋しいという声もチラホラ。住宅メーカや建材メーカーなども消費者の声を拾い上げて、昔ながらの“素材が呼吸する住宅”に注目し出したのだ。こうしたトレンドをとらえて沼田畳内装は“新しい畳”の開発に乗り出そうとしたのであるが、それを可能にした特殊な事情もあった。
 「多くの畳屋は、ウレタンとインシュレーションボードがセットになった既製品を購入していますが、当社ではそれらを別々に仕入れ、客先の要望や部屋の事情に合わせて厚みを変えるばかりでなく、畳の中身(素材)も変えて畳の性能も変えています。こういうことができるのは富山県内では数店の畳屋で、他の県でも事情はよく似ています」
 と沼田社長がいうように、同社はこの強みを生かして“新しい畳”の開発に着手したのだった。

芯材を選べる畳が登場

ヒノキの芯材にした例。旧来の和室では55mm程度の厚みのある畳を使用
していたが、その厚みにヒノキをボード化することも可能だという。

 芯材の素材候補にはいくつも挙ったが、ヒノキやケナフを破砕もしくは繊維化したものを圧縮してボード化したもの、あるいはお茶殻を乾燥・圧縮してボード化したものなど、いくつかに絞られてきた。
 新しい畳の試作品をつくった沼田社長が振り返る。
 「芯材をすべてヒノキにすることもできます。試作品では、ある森林組合の協力を得てつくりましたが、ヒノキだけを芯材にした場合は部屋の空気が違って感じられます。ただ、高価な畳になると思いますが…。またお茶殻を芯材に利用した場合は、脱臭効果が素晴らしいと絶賛されました」
 こうして芯材の素材やその組み合わせ、厚みなどを選べる畳ができあがり、商品名も「選べる畳」と銘打たれた次第。畳表も従来のイグサの他に、自動車のシートに使われている生地もアイテムに加わった。そして6家庭、1施設(福祉関係)でのモニタリング(12カ月〜18カ月)を経て、商品化のメドが立ったところだ。
 商品化のメドが立ってくると、次なる課題として浮上してくるのは生産ラインを整えること。先代が導入した畳づくりのマシンの中には入れ替え時期が迫っているものもあり、沼田社長としては設備投資の支援を仰ぎたいところだった。
 「そうした時、承認が得られれば金融機関からの低利融資が可能になる経営革新計画の申請を勧められ、中小企業支援センターより派遣していただいた専門家の指導を受けながら、設備投資によって事業をどう拡大したいかなどを事業プランにまとめることにしました」と沼田社長は語り、「その際改めて畳市場の将来予測などを知るにつけ、新しい取組みの必要性を痛感しました」と続けた。

畳表の映えるこうした和室は、一般家庭では少なくなりつ
つありますが、“ごろんと寝っころがる”ことができるのが、
一番の特徴では…。

 専門家の派遣は、のべ6回にわたって行われた(平成28年度)。畳業界の現況把握に始まり、「選べる畳」の新規性や生産から販売までのスケジュール、販促の計画などに加え、同社の財務分析や組織についても見直しが行われ、計画書が完成。28年10月に申請したところ、1カ月後に「承認」の知らせが届いたのだ。
 「おかげで金融機関からの低利融資が可能になり、さっそく数台のマシンを発注し、29年の2〜3月くらいから順次、新しい機械が導入されることになりました」と沼田社長は新年から表情が明るい(ちなみにこの取材は29年早々に実施)。
 沼田社長としては国のものづくり補助金などの支援も合わせて受けて、「選べる畳」の製造販売を本格化させたい様子。富山の畳屋が投じた一石が、畳業界やハウスメーカーにどのような影響を及ぼすのかと期待はふくらむ一方だ。
 ちなみに畳表に使われるイグサには、空気清浄力、湿度調整力、消臭作用、吸汗機能などがあることが知られている。くわえて北九州市立大学の森田洋准教授によると、フローリングの部屋とイグサを敷いた部屋を比べると、イグサを敷いた部屋の方が精神を安定させるという。
 今度畳を入れ替えるときは、芯材はヒノキ、畳表はイグサの畳はいかがか!

所在地/小矢部市水島261
代表者/沼田 秀和
資本金/950万円
従業員/5名
事 業/畳製造販売、インテリア内装工事
TEL/0766-61-2781 FAX/0766-61-4187
URL/http://www.numada-interior.com

作成日  2017/01/30

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