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第74回 株式会社UNISPOT(ユニスポット)

コロナ禍の向かい風の中での創業

順調に受注を進めたその秘訣は・・・

令和元年11月にUNISPOTを創業した海老真成社長。
創業時は25歳。1人でインターネットに付随する
データ作成サービス会社を立ち上げ、徐々に
従業員を増やしてきた。

 「卒業後は、このまま就職してサラリーマンになるのでいいのか・・・」
 水平線のかなたに浮かぶ真っ白い雲を見て、海老真成さんがこう思ったのは今からおよそ9年前のこと。当時、氏は富山高等専門学校商船学科に在籍して卒業前の航海実習に臨んでおり、その最中、自身の行く末について再考したのだった。出航前には、商船学科で学んだことを生かして、首都圏の港湾業務をメインとする企業から内定を得ていたのだが、洋上で「これでいいのか」と考え始めたのだ。
 海老社長が振り返る。
 「今私は、ホームページやネット上の広告制作、ホームページに載せる企業・製品紹介の動画制作等を業務とする会社を営んでいますが、航海実習中にこうした事業をやろうと考えていたわけではありません。ただなんとなく、自分で何かをしてみたいと漠然と思うようになったのです」
 帰港した海老さんは、内定をいただいた企業に事情を話し、内定を辞退することに。そしてとりあえずの仕事探しに奔走し、あるまちづくりに関わる企業に就職。まちの活性化などを目的とした各種のイベント開催等の業務に携わりながら、地場の多くの企業経営者らと出会った。経営者は皆、事業の興隆を期してアイデアを凝らしているが、そういう経営者から刺激を得たいという期待もあったそうだ。

コロナ禍初期に創業、でも追い風に

スタッフの平均年齢は28歳(取材時)。
半数はホームページやネット広告の制作を担当し、
残りの半数はアクセス数や広告効果の解析などの
マーケティング業務を行う。

 そうこうするうちに海老さんは、当時、注目されつつあったインターネット上の広告に着目。企業の中には、新聞やテレビなどの旧来のメディアに広告を出すより、インターネット上での広告展開に力を入れた方がよいと判断し、その比重を後者に移すところが増え始めていたのだった。
 「そこで私は、ネット広告の代理店業務を行っている会社に転職し、その営業を担当しました。ネット上でニュースを見たり、あるいはある事柄について検索してその記述を読んだりしていると、広告として商品画像が現れることがあります。それがネット広告ですが、当時は新しいビジネスのジャンルとして注目されつつありました」(海老社長)
 勤めたネット広告の代理店では、主に新規開拓の営業を、時には制作のディレクションも担当。ホームページ未開設の企業には、その必要性と運用の仕方をイチからレクチャーし、ネット上でのデビューも支援してきたのだった。
 広告業界は、大手は例外的に営業・制作の両部門を擁しているが、中小はどちらか一方を業務にしているところが多い。旧来のメディアの場合も、新しいネット広告の業界でもあまり事情は変わらないようだ。
 「ネット広告は、つくって終わりではありません。それがどのように消費者に閲覧され、売上げアップや集客増にどう関わっているかを理解し、それによって広告の内容や掲出されるコーナー、掲出の頻度などを修正していかなければいけない、ということが徐々にわかってきました。ただ、前の職場は営業に特化し、制作は外注していましたので、修正をタイムリーに進めることはなかなか難しかったのです。そこで私は、中小でも両方の機能を持った方がいいと判断し、このユニスポット設立に至ったわけです」(海老社長)
 創業は令和元年11月だった。
 その1ヵ月後には新型コロナウイルスが中国で猛威を振るい始め、翌年1月16日には神奈川県で日本で最初の感染者を確認。富山県では3月末に感染者1号が出て、4月7日には7都道府県を対象に緊急事態宣言が発出されたことは、まだ記憶に新しいところだ。一見したところ、“ユニスポットの船出は最悪のタイミング”と思われるのだが、実はそうでもなかった様子。「追い風になった部分もあった」と海老社長は語るのだった。

後発企業ながらも順調に受注

 そのあたりの事情をうかがうと、海老社長から以下のような答えが返ってきた。
 「確かに対面での営業はなかなかできず、新規開拓にはたいへん苦労しました。半面、新型コロナウイルスの蔓延は、広告宣伝自体やホームページでの告知の意義について、多くの企業が改めて考える機会になったようです。外出自粛が緩和されると、『ホームページをつくりたい』『ホームページを改修したい』『ネット広告を出したい』という企業が相次ぎました」
 おかげで初期に目標としたネット広告の制作、商品紹介の動画作成よりは、ホームページの制作や改修のオーダーを多く受け、前者は後追いで徐々に増加。仕事をこなすために半年に1人のペースで従業員を増やした他、「若者・女性等スタートアップ支援事業」(令和2年度)の助成を受けて、動画制作の業務を円滑にこなすために機材の拡充を図ったのであった。
 ではなぜ、先行するホームページ制作会社が多数ある中で、後発の同社がその制作や改修を数多く受注することができたのか。
 海老社長は、販促にあたって留意してきたことをまとめて語った。
 「当社では『ホームページをつくりましょう』『・・・つくり直しましょう』という営業は行いません。これは先行する制作会社を否定することにつながりかねないからです。当社はあくまでも後発企業ですから、『ホームページを活用して売上げを伸ばすために、ネット広告をしませんか』と持ちかけるようにしてきました。その商談の中で、たまたまホームページの制作や改修の話が出た場合は応じることにし、その先にホームページの活用があることを匂わせるようにしたのです」
 営業先に、先行企業とユニスポットとの間の競合による軋轢(あつれき)等を感じさせないように配慮をしてきた・・・、要は“ムダに敵をつくらない”同社の姿勢が、後発企業ながらも順調に顧客開拓ができたことにつながっているのではないか・・・。そう思い、海老社長に「ひょっとしてランチェスターの経営戦略について意識されているでは?」と問いかけると、「何冊か本を読み、参考にしています」と返ってきた。(ランチェスターの経営戦略/弱者の視点で市場環境を分析し、販売戦略を立案する手法)

甘い見通しについて警告を受けた

 こうして順調に顧客開拓を進める一方で、同社では令和3年度に「専門家派遣事業」を活用して、中小企業診断士を招聘(しょうへい)。「会社に体力があるうちに、事業計画と収益についての分析・改善についての助言、新サービス開発にあたってのアドバイスを求めた」(海老社長)のだった。
 海老社長が1人で始めたユニスポットも、この3年間で従業員6人を抱えるまでに。オフィスもより広いテナントに移転し、毎月の必要経費も徐々に膨らんできた。今のところの3期は、黒字で各期を締めてきた。が、この延長で進んでよいものかと疑問があったという。また当初の計画ではホームページの制作・改修はメインの営業品目ではなかったが、前述のようにコロナ禍により広報宣伝の仕方を再考する企業が多く、また意外と新規にホームページをつくりたいという企業やお店が後を絶たないところから、小規模事業者向けにホームページ作成の新サービスの商品化を模索。その可能性についての意見を専門家に求めたのであった。
 「事業計画については、私の甘い見通しについていくつも指摘していただき、下ぶれした場合は収支のバランスが崩れる、と警告を受けました。またホームページ作成の新サービスについては、ある条件のもとで段階的に制作していくメニューを考案していたのですが、こちらもいくつか問題点を指摘いただき、企画を練り直しているところです」と海老社長は語り、「専門家の指導で何よりよかったのは、従業員と私とのベクトル合わせができたことです」と続けた。
 その「ベクトル合わせ」とは・・・。
 同社では海老社長と従業員が、社のビジョンや売上げ達成のためには何をなすべきかを話し合ったことが幾度かあるそうだが、同じような言葉を使っていても何かしっくりしない経験をしたことがあるという。そのことを専門家に相談すると、専門家は従業員6名を集めて、企業にとって売上げとは何か、売上げを達成するにはどうするか、この会社の地域でのミッションは何か等々、企業経営やユニスポットのベースとなる部分について、ざっくばらんに話し合う場を設けたという。その結果、「見つめる先が一緒になり、話がかみ合うようになった」(海老社長)そうだ。
 こうした成果をもとに海老社長は、派遣期間終了後も専門家と付き合うように。別途、経営上の相談をしたり、専門家が主宰する勉強会に誘われて参加したりするなど、親交を深める方向で関係が続いているという。
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 インターネットの民間での活用が始まっておよそ30年。この間デジタル化はさまざまな分野で発達し、また技術開発も進んだ。富山県内でもホームページをはじめとするデジタルデータ制作会社は「雨後の筍」のように現れ、数年して首都圏や関西に第二の拠点を設けて社勢の拡大を図るも、いつの間にかフェードアウトしていく企業がいくつもあった。
 「それに関して私は、大都市圏に拠点を構えるようなことは、安易にはしないつもりです。コロナ禍によりオンラインでの商談が一般的になりましたので、遠隔地の客先とはそれで対応したいと思います。私たちが富山でなすべきは、地元の客先を大事にすること。この一言に尽きると思います。目先の華々しさに惑わされると、ビジネスの本質を見失うことになります」
 海老社長はそういって取材を締めくくったが、「地域密着」はランチェスターの経営戦略のひとつ。「若いのにしっかりしているなー」と馬齢を重ねている編集子は感心するばかりであった。

連 絡 先 :株式会社UNISPOT(ユニスポット)

所 在 地 :〒930-0887 富山市五福1931-2 中川ビル2F

従 業 員 :6名

資 本 金 :300万円

事   業 :ネット広告制作、ホームページ制作、ネット用動画制作など

 T E L  : 076-471-5865

 U R L  :https://www.uni-spot.com

作成日  2022/11/30

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