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第67回 株式会社ユメミガチ

大手企業をスピンアウトして宿泊業創業

「県外からの働き手を増やし地元を元気に」

26歳の時に氷見にUターンして宿泊業を始めた
松木佳太社長。帰郷前は大手経営コンサル会社
に勤め、主に宿泊業の経営改善を担当。

 このレポートの主人公・松木佳太社長が創業を意識したのは、4年前の平成29年のこと。当時、26歳の松木青年は大手のコンサルティング会社に勤め、中小企業の経営改善等の指導をしていたのだが、ふとしたことから古里の氷見市に帰って、宿泊業を営もうと思った。
 松木社長が振り返る。
 「私が主に担当していたのは、中小の宿泊業で、先輩の指導を受けながら経営改善の提案などを行っていました。効果が現れて宿のオーナーから感謝の言葉をいただいたりし、仕事は有意義で楽しかったのですが、29年の夏ごろから、人の会社の経営コンサルをするより、自分で会社を持って経営に与(あずか)る方が働きがいがあるのではないかと思うようになりました。またその頃、その数年前に話題になった日本創成会議による『消滅可能性都市』について思い出し、その可能性ありと判断された氷見市に帰って事業を起こし、働く人を増やすことを通じて、それに抗(あらが)うのは男子一生の仕事としておもしろいのではないかと思うようになったのです」

「氷見を元気にしたい」一念で

海沿いの古い民宿(写真上)をリノベーションして、
港町のオーベルジュ風に(写真下)変身させた。
創業時の活動資金としてクラウドファンディングに
よる出資を募った。当機構も「創業・ベンチャー挑戦
応援事業」(令和元年度)で備品の整備や初期の
人件費を支援した。

 Uターンしたのは平成29年10月だった。翌年1月には会社を興し、不動産業を営む父親が持っていた、元は民宿として利用されていた建物を借り受けて、大幅なリノベーションを実施。港町にたたずむオーベルジュ風の宿、「イミグレ」をオープンしたのは11月のことだ。
 「全6室、どの客室からも富山湾越しの立山連峰が見え、レストランからもその絶景を望むことができるようにしました。コンセプトは『移り住みたくなるような宿』です。英語のImmigration(イミグレーション)、『移住する』という言葉にちなんで宿の名前をつけました」(松木社長)
 創業準備のために金融機関から借り入れたのは7,000万円。個人からの借入金と後の追加融資を合わせると、創業初期には約1億円を借りることに。そこでちょっと意地悪に、「コンサル会社に勤めていた時に松木さんがこのような事業計画を見た場合、どう評価するか」と尋ねてみた。
 すると答えて曰く。
 「26歳の若者が家業などと関係なく、まったく新しい事業を始めるにあたり1億円近い借り入れをするといってきたら、恐らく『止めておいた方がよい』『ちょっと待て』とブレーキをかけたと思います。ただ私は、氷見の主だった宿泊施設の稼働率を調べ、一般的な宿の稼働率とも勘案して、ある稼働率で営業利益ベースでトントンになるようなシナリオを考え、料金設定や月の売上目標、コストなども試算しました。それで行くと、確かに初期の借入額は大きいのですが、軌道に乗れば何とかなるのではないかという目算を立てていたのです。融資していただいた金融機関はそこを評価されたのではないでしょうか。また私は、創業時に何より大事なのは、単なる皮算用ではなく、数字の裏付けのある事業計画とともに、事業に寄せる熱い思いだと思います。私には氷見を元気にしたいという、誰にも負けない情熱がありました」

予約の取りこぼしをなくし、週休2日制に

客室(スイートルーム)の一例(写真上)とレストランの
様子(写真下)。窓の外には、海越しに3,000m級の
立山連峰がパノラマで望むことができる。

 取材の際、松木社長は事業計画で想定した数字をつまびらかにしてくれた。ここでは月当たりの売上目標のみを明らかにするが、その額は300万円。毎月これが達成できるならば、「イミグレ」は安全運転を続けられると予想したのだ。そしてそれを確実にするために、当機構の専門家派遣事業(平成30年度)を活用して、専門家を招聘(しょうへい)。お酒やワインの基礎知識やサーブの仕方、氷見の素材を活かしたレシピ、お客様対応の所作やマナーアップなどについての指導を受け、スタッフのレベルアップとそれによる顧客満足の向上を図った。
 ところが1年目は計画通りにはいかなかった。 
 「平成31・令和元年の売上は、スタッフの確保が適切に行えず、せっかくいただいた予約をキャンセルしたこともあります。そのため、目標の70%強の売上げしか達成できませんでした。そこでこの1年を振り返って営業スタイルやわれわれの働き方の改革を図ることにしました」(松木社長)
 小規模な宿泊施設では定休日を定めず、予約の入っていない日を休日に当てる傾向がある。そのため繁忙期は3K職場に変身。それを見越してスタッフを多めに抱えて3Kにならない勤務のローテーションが組めるようにすると、閑散期には過剰な人員となり、その人件費が経営を圧迫するようになる。
 「シェフの定休日を、週に1日確保しようとすると、シェフと同等の調理技術を持つ人をもう1人雇わなければいけません。ところがシェフ2人分の人件費は、経営上の負担になります。そこで氷見市内の主だった宿の稼働率を、曜日ごとに調べてみました。月曜日から木曜日の平均稼働率は10〜20%、金曜日から日曜日は50〜60%。営業利益の観点から見た場合、シェフ1人の体制にして週の前半に定休日をとった方が効率的で、またこのご時世ですから週休2日にした方が人材を集めやすいことは明らかでした」 
 数字の意味を一つひとつ探りながら対応策を講じるのは、さすがは元コンサルタントというべきか。令和元年11月から働き方改革を導入すると、シェフをはじめとするスタッフの確保が安定するように。また予約の受付を、従来の「1週間前まで」を「前日まで」と変更したことにより、予約の取りこぼしをなくし、目標どおりの売上げを立てることができるようになったのだ。

「イミグレの次」も視野に

同店の食事の一例(写真上)。地元の素材を活かした
フレンチのコース料理となっている。
写真下は同店に隣接するテラス。富山湾が目の前に
広がり、夏はバーベキューなども行う。

 ところがコロナ禍により状況は一変。令和2年に入って最初の3カ月は順調に推移したものの、4月に入ると予約のほぼすべてがキャンセルされ、夏までは開店休業状態に。秋口以降は「地元で泊まろうキャンペーン」や「Go To トラベルキャンペーン」などが功を奏して、一転して今度は稼働率は90%を超え、売上げは前年対比200%に迫る勢いだという。
 松木社長が語る。
 「この数字は出来過ぎなので、コロナの影響のなかった一昨年11月から昨年3月までの売上げから推測すると、皆さんが普通に旅行を楽しむ1年であったら、2年目のイミグレは、初期の事業計画どおり軌道に乗りつつあったと思われ、営業利益もわずかながら確保できていたと予想されます」
 宿泊業の平均的な営業利益率はマイナス2%程度。家族経営で、苦しい時は給料をがまんするなどしているため続けられているようだが、それでは長くは続かない。「働きがいのある職場にすることで、県外から働き手を呼ぶことができる」と、松木社長は氷見市の労働人口を増やすことを通じて、地元の活性化を図りたいと夢を語った。
 ちなみにイミグレのシェフや支配人は、大都市圏のホテル等での経験者。「もっと多くの働き手を氷見に呼びたい」と松木社長は次なる事業も視野に入れており、コロナ禍で厳しい状況が続くと思うが、地域の活性化のためにも、新たなトライに期待したい。

企 業 名 :株式会社ユメミガチ
所 在 地 :〒935-0424 氷見市小杉232-1
電話・FAX:TEL 0766-92-2200  FAX 0766-92-2202
従業員数:7名
資 本 金 :500万円
事   業 :オーベルジュの運営
U R L  : https://www.imigre.jp

作成日  2021/1/19

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