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第71回 けんとれ接骨院

根治を目指す接骨院を開業

ジムを併設しての行方は!?

29歳の時、ジム併設の「けんとれ接骨院」
を開業した山崎健仁院長。

 今回、創業のいきさつをうかがったのは、富山市上袋で「けんとれ接骨院」を営む山崎健仁院長、30歳。コロナ禍により「ディスタンスを保つように」と日本中(世界も)が喧(かまびす)しかった令和2年5月に、逆風を真正面に受けての創業であった。
 「本当は4月1日開業予定でしたが、その2日前の3月30日、富山県内初の新型コロナウイルスの感染者が報告され、翌日には2例目が発表されました。富山市内では商店街やショッピングセンターの人出はほとんどなくなり、『これではダメだ』と判断して開業を1カ月のばしました。4月にオープンしていても実質、開店休業状態だったと思います」
 山崎院長は「けんとれ接骨院」旗掲げ時のことをそう振り返るが、オープンを1カ月遅らせたところで状況はあまり変わらなかった。ところが、3カ月ほどすると来院者が徐々に増え、その年の暮れには一般的な接骨院並みの売り上げを確保するように。「あそこの接骨院ではジムでトレーニングも併用し、患部の調子もいい」と口コミで顧客を開拓し、評判のよい接骨院へと成長し始めたのだった。

接骨院創業に備えトレーニングや経営を独学

けんとれ接骨院の外観と内観(施術のコーナー)。

 山崎院長が、いわゆる“骨つぎの医者”(正確には「柔道整復師」)を志したのは小学生の時のこと。白衣を着て、捻挫や脱臼に悩む患者の治療にあたる父親の背中を見て、「かっこいい」と感嘆したのがきっかけだ。当時の作文に、そう書いていたと氏は懐かしむ。
 ただ父親が運営する接骨院では、ジムなどは併設していないし、ほとんどの同業者もそのようだ。では一体、ジム併設の接骨院を山崎院長はどこで思い立ったのか・・・。
 柔道整復師養成学校を卒業した山崎青年は、富山県内のある接骨院に就職。「その年、県内では接骨院の求人は2カ所しかなかった」そうだが、高齢者向けのデイサービス事業も並行して行っていたそのうちの1つの接骨院を志望。リハビリ的な要素を学べるのではないかと期待して志したという。
 「機能回復訓練に励んでいる高齢の方々を見ているうちに、年齢を重ねて患部が悪化したりしてから訓練を行うのではなく、若い時に治療と並行して患部周辺の腱や筋肉を整えた方が治りが早く、また運動する習慣を身につけることにつながるのではないかと思いました」(山崎院長)
 山崎青年に「接骨院+ジム」の種が撒かれたのだった。その後は、仕事が終わった後でトレーニングについて勉強し、ジム運営のセミナー等に参加するなど、数年先の独立に向けての準備を開始。一方で、著名な経営者や経営コンサルタントが著したビジネス経営関連の本を読み漁り、また弱者生き残りの方法論・経営論を説いたランチェスターの解説本を愛読するなど、経営についての知見を深める努力も怠らなかった。

創業を見舞ったコロナ禍

施術の他に、患者の希望に応じ、腱や筋肉の
トレーニングを行い根治を目指す。
トレーニング内容は患者の身体状況により異なる。

 その後、縁あって別な接骨院に転職。そこで山崎青年は、その接骨院の多店舗展開を手伝い、ジム開設の準備も担当したのだった。
 「ジムの開設については、自分でも将来やりたいと思っていましたので、そこの社長がジム開設の構想を明らかにした時、準備役を自分から買って出ました。その接骨院では、ある有名な経営コンサル会社の指導を受けていましたが、経営の数値管理の手法や新規事業立ち上げ時の事業計画作成の資料などもあり、それらも参考にしながらジムの物理面・運営面双方の準備を整えていきました」(山崎院長)
 ところがジムを開設したその年の暮れから、新型コロナウイルス感染症が中国で猛威を振るい始め、翌年早々には世界各国へ。日本では、クルーズ船での感染拡大が騒がれた頃から全国に広まったのは周知のとおりだ。
 「ジムの運営が軌道に乗り、コロナ騒動が起きる前に、令和2年4月の開業を目指して私は具体的な準備を始めました。2つの接骨院で延べ9年間修行させていただき、接骨院やジムの運営管理のほかに経営上の数字の理解の仕方まで学ばせていただいたのは幸運でした」
 山崎院長のこの弁より“満を持して”の「けんとれ接骨院」開業がうかがわれるだろうが、冒頭で述べたようにコロナの猛威が立ちはだかったのだ。

もっとも効果があったPR方法は・・・

「若者・女性等スタートアップ支援事業」の採択を
受けて作成された同院を紹介する折込チラシ
(写真上)とタウン誌に掲載した広告(写真下)。

 そこで山崎院長は、開業準備のために融資の相談などをしていた銀行員が、当機構の創業時の支援メニューについて語っていたのを思い出し、さっそく「若者・女性等スタートアップ支援事業」(令和2年度)での助成を申請。その採択を受けて新聞折込のチラシやタウン誌への広告出稿などを通じて「ジムを併設した『けんとれ接骨院』開業」をPRし始めた。折込チラシは富山市を中心に延べ10万部配布したという。また富山商工会議所の支援を受けて「小規模事業者持続化補助金」を活用し、同院を紹介するホームページも開設。来院者を増やすために、できる限りの手を打ったのだ。
 反応はポツリポツリ。チラシを見た近隣住民が来院し始めるように。「周辺に競合する接骨院がない地域を出店地に選んだ」(山崎院長)ことが功を奏し、また何より「トレーニングにより患部周辺の腱や筋肉を鍛えて、根治を目指す」という山崎院長の治療についての考え方に共鳴した患者が、友人知人等がケガをした際に「けんとれ接骨院」のよさを語るようになり、口コミの連鎖が威力を発揮し始めたのだ。ランチェスター戦略のひとつに「地域密着」があるが、山崎院長はそれを地で行く形で、まずは地域の人びとに信頼される接骨院を目指し、それを顧客開拓の原動力にしたのであった。
 「最初の数カ月間は、当院から数kmの近場の方々のご利用がほとんどでしたが、徐々にその輪が広がり、今では富山市内全域からが約7割、残り約3割は富山市外からで氷見市や南砺市、入善・朝日町から通っていただく方もおられます。市外も含め、ほとんどの来院者は友人知人等から当院を勧められたようです」

新たなチャレンジを模索

同院でのトレーニング風景。
健康増進やダイエット目的のトレーニングの指導も行う。
筋肉をつけ、代謝を活性化させてダイエットする
方が効果的。

 こう語る山崎院長は、「けんとれ接骨院」に対するスポットの当て方に別な要素をプラスしようと模索。従来のような治療の一環としてのトレーニングジムの利用ばかりでなく、肩こりや腰痛などの日常的な体調不良を解決するための、あるいは体幹を鍛え、姿勢よく活動して体の1カ所に負荷をかけ過ぎないようにするための、健康増進を目的としたトレーニングジムとして利用していただこうと考え始めたのだ。そのPRのために、現状のホームページとは別にトレーニングジム紹介サイトを開設しようと、「とやま中小企業チャレンジファンド事業」(令和3年度)の支援を受けて制作に乗り出した(開設は令和4年2月頃の予定)。
 最後に山崎院長に、呉西地区あるいは金沢市などでの支店の出店について尋ねると、次のような答えが返ってきた。
 「接骨院にしてもジムでのトレーニングにしても、サービス業の視点を欠いてはいけません。われわれにとってのサービスの基本は、接骨院での施術であり、トレーニングでのメニューです。それも一人ひとりの体の状況に合ったものでなければならず、その品質レベルを高く保つことによって口コミが生まれます。仮にどこかに2号店を出したとしても、私は2店同時に見ることはできませんから、品質にムラが出るかもしれません。ですから今の時点では、2号店を出すことより、スタッフを充実して大きなスペースに移転する方がいいのではないかと思っています」
 地に足の着いたしっかりとした答え。名物経営者のビジネス・経営関係の書籍をたくさん読んでこられたからだろうか、コロナ禍の逆風をまともに受けながらもブレずに歩み、従業員2名(フルタイム1名、パート1名)を擁して、さらなる成長を模索している。
 山崎院長は近年稀に見る好青年であった。

連 絡 先 :けんとれ接骨院

所 在 地 :〒939-8071 富山市上袋605-2それいゆiビル1階

従 業 員 :2名

資 本 金 :個人創業

事   業 :接骨院としての施術の他に、患部の筋肉等を鍛えるトレーニングや整体・健康づくり

 T E L  :076-461-7642

 U R L  : https://kentore.life

作成日  2022/01/25

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