TOP > 未来を創るアントレプレナーたちの挑戦 > 第72回 縁、ル・リアン
夫婦で東京からU・Iターンして起業
各々の経験を活かし居酒屋と美容院を
夫人の故郷の入善町にIターンして居酒屋の
「炭火焼き鳥 縁」をオープンした勝田純吉さん。
「空気がうまい。水がうまい。米がうまい。ぼくは妻の故郷にIターンしての起業は大正解だったと思います。これまでの飲食店勤務でも新鮮な素材を仕入れていたと思っていましたが、先日いただいたネギやカリフラワーなどの富山の野菜の方がはるかにおいしい。野菜の甘み、うま味がぎっしりと詰まっていました」
こう語るのは夫人の出身地である入善町に、令和2年10月に炭火焼鳥「縁」を出して、念願の自分のお店を持った勝田純吉さん。夫人の小巻さんは美容師の経験を活かしてヘアサロン「ル・リアン」を構え、夫婦そろっての起業を果たしたのだった。
縁とル・リアンが入っている建物。
ご主人の純吉さんは、東京では居酒屋を中心とした飲食店に長らく勤務。調理、接客、店長など一通りの業務をこなし、居酒屋運営のノウハウは身につけていた。一方の小巻さんも美容師の資格をとって30年近く、都内のヘアサロンでその技術を磨いてきた。Uターンする前年には、入善で開業するヘアサロンの差別化を図ろうと、美容室用に開発されたミラーロイド(詳しくは後述)の扱い方を習得するためにメーカーの講習会に通うなど、ふるさとでの起業を着々と準備。入善町に引っ越す1年ほど前からは入善町商工会と連絡を取り合い、商圏環境や創業にあたっての助成制度についてのレクチャー等を、対面とオンラインを併用して受けていた。
助成制度のひとつが、UIJターン者の創業を支援する当機構の「移住者創業チャレンジ応援事業」(令和2年度)だ。その利用を入善町商工会から勧められた2人は、前年度末から当機構を訪れ、申請の準備を開始。年度が替わって事業の募集が始まると同時に、各々のお店の支援申請書類を提出したのであった。
一方で勝田さん夫妻は、お店を出すために不動産情報も収集。小巻さんの姉夫婦や商工会が空き店舗情報を寄せてくれた他、ネット上の検索なども併用して現在の店舗(当時は空き店舗)にたどり着いた。そこは元は電気店が営まれていた3階建ての建物。1階を居酒屋、2階をヘアサロンとして利用することとし、2人は令和2年6月に富山にU・Iターン。申請していた居酒屋、美容室両方の創業支援が採択され、助成金は主に建物の改装や備品の購入等に生かされたのだった。
ヘアサロン「ル・リアン」を運営する勝田小巻さん
(写真上)。写真下はミラーロイドでお客様に
ヘアスタイルのシミュレーションをしている様子
(鏡の上部にサンプルの髪型が表示されている)
地方の商店街はどこも厳しい。人口23,000人あまりの入善町も同じく、廃業等によりシャッターを下ろしているお店も珍しくはない。そこに新たに居酒屋とヘアサロンを構えるというから、お店の特徴を出して差別化し、選ばれるお店にならなければいけない。
小巻さんのヘアサロン「ル・リアン」のそれは、ミラーロイドの導入であった。ミラーロイドは鏡にITの機能を搭載したもの。カット前に撮影したお客の画像を鏡に表示し、鏡が内蔵するアプリからサンプルのヘアスタイルを呼び込んで、お客の画像と組み合わせて髪型のシミュレーションをすることができるシステム。お客がル・リアンに会員登録した場合は、ヘアセット後の写真が撮られてお客のスマホに転送され、それを保存しておいて次回のセットの際に活かそうというものだ。同じ髪型でよい場合は「これで」で済み、髪型を変えてイメージチェンジしたい場合は、改めてシミュレーションすればよいのである。
「入善町には50店近い美容院があり、他店との差別化を図ってミラーロイドを導入しました。北陸では初めての導入でしたので注目を集め、初期の客集めや口コミのネタになったと思います」(小巻さん)
ル・リアンのオープンに当たって夫人は、チラシ1万枚をつくって入善町の全世帯に新聞折込みを実施。さらにはホームページを開設しての宣伝に努め、あとは口コミでの市場の掘り起こしを狙ったのであった。
コクのあるシャモの刺身3種盛り(写真上)と
縁の店内(写真下)。コロナ蔓延中は焼き鳥の
テイクアウトも人気の様子。
一方、ご主人の居酒屋の差別化について。勝田さんは長い飲食店勤務(主には居酒屋)の中で、シャモ(軍鶏)が使われたメニューがお気に入りだった。ブロイラーのようにただ単に軟らかいだけでなく、平飼いで運動させているため身が締まり、飼育期間が長いため味わい深いのが特徴の鶏肉だ。
「初めてシャモを食べた時、『うまい、お酒に合う』と感動しました。それで、自分がお店を出す時はシャモをメインにしようと思ったのです。ひとくちにシャモといってもいろいろ産地がありますが、当店では埼玉県産の『彩の国地鶏タマシャモ』を使っています。刺身によし、鍋によし、焼き鳥によし。富山の皆さんにシャモのおいしさを堪能していただきたく、このお店を出しました」(純吉さん)
夫人同様、「縁」のオープンにあたっては新聞折込でチラシ1万枚を配布。その他、タウン誌やグルメ紹介サイト「ヒトサラ」でのPR、町のイベントに参加しての告知に努めた。
「縁」のオープンは令和2年10月。富山県内では新型コロナウイルスの感染も落ち着き、飲食店は平常に近い営業状態になっていた時だ。 「最初の3カ月は売上目標より少なかったものの、まあまあの実績を出せました。しかしその後は、再度のコロナの蔓延により落ち込みました。当初の計画では、常用のスタッフ1名とアルバイト数名でのオペレーションを考えていましたが、今はアルバイト4名でお店を回しています。経営的には『とんとん』といったところです」
ご主人は縁の近況をこのように語ってくれたが、コロナが落ち着いたら常用スタッフ1名を雇用し、お店を盛り上げることを計画。夫人の小巻さんも「近隣の美容室と連携して、成人式の着付けの件数を増やすなどにも挑戦してみたい」と夫婦そろって意気軒昂であった。
連 絡 先 :縁
所 在 地 :939-0626 富山県下新川郡入善町入膳3575-7
従 業 員 :4名(アルバイト)
資 本 金 :個人創業
事 業 :シャモをメインの料理にした居酒屋の運営
T E L : 0765-32-4915
連 絡 先 :ル・リアン
所 在 地 :同 上
従 業 員 :−
資 本 金 :個人創業
事 業 :ヘアサロンの運営
T E L : 0765-72-3281
作成日 2022/02/18