第47回 有限会社京吉 海外輸出に向けた国内商社との商談会 海外バイヤー招へい商談会 中小企業外国出願助成事業 富山県中小企業リバイバル補助金 富山県中小企業ビヨンドコロナ補助金  TONIO Web情報マガジン 富山

TOP > 世界をリードするアジア経済交流 > 第47回 有限会社京吉

TONIOの支援を活用しながらアジアを中心とした世界へ羽ばたく富山の中小企業をご紹介。

第47回 有限会社京吉

「富山独特の食材を海外で販売したい」
と黒作、ほたるいか醬油漬等でチャレンジ

富山独特の食材「黒作」等で海外展開を試みる
京谷政秀社長(写真上)と同社の黒作。

 今回の取材先は、黒作、ほたるいか醤油漬(沖漬)等の製造販売では老舗中の老舗、射水市に本社・工場を構える(有)京吉。創業は江戸時代中期にさかのぼる。
 現社長の父が代表を務めていた頃から、「金沢の市場や仲卸業者を介して主に北陸3県の小売店や飲食店に販売し、東京や長野でも黒作が売られていた」(京谷政秀社長)そうだ。 その京谷社長が「黒作をはじめとする自社商品を海外で販売してみたい」と思ったのは平成20年代の中頃のこと。食習慣の変化(食の欧米化等)が一因と思われるが、黒作など富山独特の食品の売れ行きが頭打ちになり、かげりが見え始めた時だった。
 京谷社長が振り返る。
 「確か平成25、26年頃の新世紀産業機構の販路開拓支援の担当者の一言がきっかけでした。もともと、新世紀産業機構については、その8年前に、たまたま私が訪れた金沢の展示会に同機構がブースを出していて、ふらっと立ち寄った際、担当者から『何か困っていることがあれば、話を聞かせてほしい』と持ちかけられたことがきっかけで知っていました。それ以来ホームページの改修、農商工連携による新商品の開発と販売等で度々、新世紀産業機構を利用していました。その時は、私は黒作やほたるいか醤油漬の国内での販路開拓の相談のために新世紀産業機構にうかがっていました。すると、その時の担当者が『こんな独特な食文化を背景にした商品の国内での販促は難しいのではないか。いっそのこと海外の市場に挑戦してみたらよい。JETRO富山に相談してみたら・・・』といわれ、その事務所の所在地を教えてもらって行ってみたのです」

すぐに成果が出なくても!

当機構が開催している「海外バイヤー招へい
商談会」に参加する京谷社長
(写真上、平成26年。写真下、令和2年)。
ここ8年ほどは毎年参加され、
2〜5社のバイヤーと商談。

 京谷社長は後に知ったのだが、同社の黒作やほたるいか醤油漬は、その数年前からすでに中国や東南アジアの国々に、仲卸経由で輸出されていた。日本国内で黒作等を扱っていた飲食店が、海外展開した際に現地のお店でも扱い始め、「珍味」として口コミで広まったことが輸出のきっかけだったようだ。後年、JETRO富山の紹介でタイの食品関係の展示会に出展した際、京谷社長がホテル近くの居酒屋で晩酌を楽しんでいると、小鉢の肴に箸が止まった。「味に覚えのある黒作で、トイレに行くふりをして厨房をのぞいたら、当社の業務用の黒作の袋があった」(京谷社長)そうだ。
 ただそれを知ったのは、「JETRO富山で相談してみたら」と勧められて数年してからのこと。その当時は「黒作を海外で」と言われても京谷社長は半信半疑で、手始めにJETRO富山や富山県農林水産部が行っている「海外輸出に向けた国内商社との商談会」などに参加するのみ。この商談会への参加は今日も続け、そこで出会った商社数社とは今も取引があるという。また同社では、当機構が行っている「海外バイヤー招へい商談会」にも平成26年より参加。毎年、複数の海外バイヤーと商談を重ね、海外展開の糸口を増やすことを試み続けているところだ。
 「海外のバイヤーには、黒作はなかなか理解できないようです。それで近年は、干物やほたるいか醤油漬を勧めています。サンプル出荷などは幾度か行いましたが、海外バイヤーとは今のところまだ成約には至っていません。ただ、私は可能な限り海外バイヤーとの商談会には参加していくつもりです」と京谷社長は語り、展示会や商談会に参加する意義を「ある講習会で聞いた話」とことわった上で続けた。その話をまとめると概要以下の通りだ。
 商談会や展示会に参加してすぐに成果を求める人がいるが、京谷社長は「すぐに成果が出るのは極めて稀なこと」と一言。もともと商談会等での成約率は2〜3%がいいところで、「数回の参加で成果がないからもう出展しない」は判断が早すぎるという。また仮に成約に至らなくても、商談の過程で海外バイヤーや国内商社の担当者との間にネットワークができ、同社では副次的にビジネスチャンスの情報を得て、販路拡大に結びつけることができているという。

シンガポールへの足がかりをつかむ

シンガポールで行われたテストマーケティング
の展示コーナーの様子(写真上)と出品した
同社の「ほたるいか素干」(写真下)。

 こうした経験を背景に、同社では、当機構が昨年行った「シンガポールにおけるテストマーケティング」および「オンライン商談会」(テストマーケティングは7月、オンライン商談会は11月〜翌年2月に実施)に参加。テストマーケティングでは、シンガポールを代表するビジネス街、ダンジョンパガー地区のJAPAN RAIL CAFEに併設された物販エリアで、富山県産品(24品目、うち2品は京吉の商品)の販売コーナーを設置し、一般消費者へのテスト販売やアンケート調査を実施したところ、同社の「ほたるいか素干」は「大変おいしい」(20%)「おいしい」(45%)、「ほたるいかいるし干し」は「大変おいしい」(15%)、「おいしい」(50%)と好意的な評価を受けたのだ。
 またオンライン商談会では、シンガポールで飲食店や食品販売店を営む5社と商談したところ、1社とは間もなく成約に至り、他とは今も商談が続いているそうだ。
 「新型コロナウイルスの感染状況については、シンガポールも予断を許さない状況にありましたが、全体的に、業務用の商材の動きが活発になりつつあります。昨年のテストマーケティング、オンライン商談会の様子から推察すると、当社商品はシンガポールの市場に受け入れられるのではないかと思われますので、活発になりつつある市場の勢いに当社商品を乗せることができたらと思っています」
 京谷社長は、マーライオンの口から放出される水のような勢いを「ほたるいか素干」等の販促にも求めているのか。東南アジアの交易・経済活動の拠点の1つであるシンガポールでの同社の試みは、コロナ後にどのように発展していくか楽しみなところだ。

次の目標はアメリカ

社名や商品名のロゴマーク、販促用につくった
いかのキャラクターなどを、中国、香港、台湾
において商標登録(写真上はその一例)。
令和3年度「富山県中小企業リバイバル補助金」
の採択を受けてリニューアルした同社の
ホームページ(写真下)。

 こうして京谷社長は、金沢の仲卸業者が海外向けの取り扱いを進める一方で、自社でも販路開拓に積極的に取り組み中国や東南アジアの国々向けに地道な販促活動を行ってきたところ、以前の商談会で出会った香港のバイヤーから「海外での商標戦略をおろそかにしてはいけない」とアドバイスを受けて、中国、香港、台湾での商標登録を進めた。その際、当機構の「中小企業外国出願助成事業」(平成27年度)の支援を受け、出願を行うとともに、さらなる売場スペースの確保に乗り出した。
 また同社では令和3年度の「富山県中小企業リバイバル補助金」の採択を受けてホームページの再構築に取り組んだ。従来のホームページでは、自社内にITに詳しい人材がいないため商品の追加や削除、商品の料金や送料に変更があった際の更新ができなかったため、再構築ではそういうコーナーの更新を社内でもできるようにしたのだった。
 リニューアルしたホームページをアップしたのは昨年10月。商品の写真をこまめに変えるなど、見え方が変化するようにしているとネット経由の売り上げは増え、忙しくて更新を怠ると減ってくるという。ECサイトで海外向けにも販売したいのではないかと京谷社長に尋ねると、「それをやりたいのは山々ですが、現状ではそれに対応する人材が不足していてできない。しかしいずれは取り組んでみたい」と答えが返ってきた。

     *     *     *

 売り上げ全体に占める海外出荷分は約1.5%。海外向けに販促活動を積極的に行ってきたところ、副次的に、その商社や代理店の国内向け商材を扱っている営業担当者とつながりができ、「国内向け出荷量が増えている中での海外出荷分1.5%は大きく、JETRO富山、県農林水産部、新世紀産業機構の紹介で参加した海外向けの商談会等で、多くの方々に出会ったのが功を奏していると思います」と京谷社長は語り、「今後は欧米、まずはアメリカの市場にチャレンジしてみたい」と抱負を語った。
 欧米への輸出となるとHACCP(ハサップ)等、食品の安全性や品質に関する基準が厳しくなるのだが、京谷社長は生産ラインの改善なども視野に入れ、次なる展開の計画を練っているところだ。
 販路開拓にかける京谷社長の姿勢は、「粘り強い」の一言に尽きる。その精力的な取り組みに驚いていると、「1人で考えたり、悩んでいる暇があるのなら、新世紀産業機構やJETRO富山に相談に行った方がよい。あるカウンセラーの話では、『人の悩みは相談することで80%は解決する』そうです」と京谷社長は快活に笑った。

 

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL https://www.near21.jp

作成日  2022/07/28

このページのトップに戻る

Copyright (C) 2005-2013 Toyama New Industry Organization.All Rights Reserved.