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第46回 中国向けライブコマース「富山県工芸品首播」実施

ライブコマース初挑戦
新しい売り方に手応えが・・・

ライブコマース「富山県工芸品首播」の様子。
司会進行係の中央の女性(「寺庫」のスタッフ)がスマホで
商品(写真の時点螺鈿ガラス)を映しながら紹介。
右隣の女性(当アジア経済交流センターの孫さん)が、
司会進行係の女性のアシスタントを務める。
奥の女性は、配信画面を見ながら視聴者からの
コメントの確認や販売手続きを行っている。

 ライブコマースをご存じだろうか。現在、中国で急速にその市場規模を拡大するECでの販売手法の1種。スマートフォン(以下、スマホ)やパソコンで商品紹介の様子を動画で撮影し、それをライブ配信して視聴者からの質問やコメントに答えながら商品を販売して、売上げを増やそうとする新しいマーケティング手法だ。
 コロナ禍により外出自粛が叫ばれる中で、新しい販売方法と注目を集め、日本でも昨年あたりから民間企業の間で導入を試みるところが出現。そこで当機構でも中国向けのライブコマースを企画したところ、高岡市の伝統工芸品メーカー5社が参加。中国で高級品を扱うライブコマース大手「寺庫」(SECOO/スークー)のグループ会社である(株)SECOO JAPANの協力の下、高岡の銅器や漆器を販売し、4時間のライブ配信中に百万円を超える売上げを上げた。
 今回のレポートでは、その概要をお知らせする。

視聴者の要望・疑問に即応じる

今回のライブコマースの四津川製作所の商品紹介の
の1コマ。四津川元将社長が自社の商品の特徴を紹介
するために急遽出演した(写真上)。写真下は、2019年
から富山県の経済・貿易連絡員となり、また昨年9月より
当機構アジア経済交流センター兼務となり、富山県企業
の中国での展開をサポートしている孫肖さん。

 まずはライブコマースでの販売の仕組みを説明しよう。
 わかりやすくいうと、テレビショッピングの販売方法をもっと簡素化したものだ。商品の他に必要なものは、スマホと自撮り棒、商品紹介用の明るい部屋、司会進行係とサポートするスタッフ2〜3名、商品に詳しいメーカースタッフ1名程度。テレビカメラや照明設備・音響設備が整ったスタジオは不要。それらを扱うスタッフや、いわゆるアナウンサーも芸能人も必要ではない。
 司会進行係がスマホで商品を映しながら、その商品の魅力や仕様などを説明。時には商品の素晴らしさを語る自分自身も映し、また場合によってはメーカースタッフに商品の特徴やより詳しいスペックを語らせることもある。これをスマホで撮影してライブ配信し、視聴者の購買意欲を高めて購入決定までを誘うものだ。
 テレビショッピングとの大きな違いは、先述のような簡素な機材、少人数のスタッフでよいことの他に、視聴者とリアルタイムでコミュニケーションをとることができることだ。チャットの機能を利用して、視聴者が「仕上げの精密さを見たいから、もっとアップで見せて」「商品の裏側も見せて」「商品を入れる箱を見せて」「素材は何を使っているの?」などと要望や疑問に思ったことを配信者に送ると、それをリアルタイムで見ている司会進行係がその要望に応えて商品をアップで映したり、金属の組成などをメーカースタッフに答えてもらうなど、視聴者の要望や疑問にすぐに対応してゆく。
 さらにライブコマースでは、この配信中に注文を受け付けるだけでなく、スマホ1台で支払いまで済ませてしまうという。編集子のようなアナログ人間、買いものは現物を見てからという人間には、なかなか入り込めない世界であるが、「だからこそ正確で正直な商品紹介とライブコマースでは信用のある業者の協力を得ることが必要なのです」と「富山県工芸品首播」を企画した孫肖(そん・しょう)さんが語った。
 孫さんは中国の高校卒業後、日本の大学に留学。大学院修了後、帰国して遼寧省瀋陽市の地方政府で日本との貿易関係の仕事に就くも、2017年に「国際交流員」として富山県に派遣された。2019年からは富山県の経済・貿易連絡員となり、また昨年9月より当機構のアジア経済交流センター兼務となって、富山県企業の中国での展開のサポートなどを担当している。

高岡の銅器・漆器メーカーとチャレンジ

SNS上でライブコマース「富山県工芸品首播」
を宣伝した、一種の電子媒体チラシ。

 その孫さんがいう。
 「新型コロナウイルス感染症が世界中に広まって、人や商品の動きが鈍くなりました。富山の企業の皆さんも大変つらい思いをされています。日本国内で行政関係がライブコマースを試みているところはほとんどなく、あっても観光地の紹介をサポートする程度でした。そこで、これを機会に物品の販売にチャレンジするのもいいのでないかと思ったのです」
 当機構では孫さんのこのプランを実行することに。ホームページ上で参加企業を募るとともに、当機構の海外展開等の支援メニューを利用された企業にも声をかけたところ、高岡市の銅器・漆器関係の5社が手を挙げたのだった。また孫さんはライブコマースを展開する中国企業の選定も開始。工芸品メーカーとの決済がスムーズにできるようにと、中国国内で評判がよく日本支社を持っている寺庫に協力を仰いだところ、二つ返事で同意が得られたのだ。

ライブ配信していくと画面左上にリアルタイムに
視聴者数が表示され、視聴者からの質問も
リアルタイムで表示(画面中央から下)される。

 一方で孫さんは、ライブ会場を決めるために、手を挙げた5社を個別に訪問。各社それぞれ趣向を凝らしたショールームを構えていたが、SECOO JAPANの担当者が「照明、雰囲気、中国人の好みに合う」として、スペースにも余裕のあった銅器メーカーの(有)四津川製作所に依頼することに。ほかの4社が同社のショールームに商品を持ち込んで商品紹介のライブ配信を行うこととした。
 そして、より多くの視聴者を得るために、ライブコマースをよく利用されている方々が見るSNS内で「富山県工芸品首播」の電子チラシを掲示し、中国の富裕層にライブの視聴を勧めたのだった。
 こうして迎えた令和3年11月11日。この日は中国で「独身の日」と呼ばれ、さまざまなECサイトで販売商戦が繰り広げられる。寺庫の女性司会者が高岡の銅器や漆器を手に取り、その精巧な技法やデザイン、使い勝手などを丁寧に紹介していくと、1個数万円〜数十万円する商品がライブ配信中に購入が決まり、決済まで手続きが進んだのだ。

「これも1つの売り方。勉強になった」

今回のライブコマースで四津川製作所が受注した
香炉「玉虎流水香炉」(写真上)とワイングラスの
「アロワール ブルゴーニュ」(写真下)。配信中には
香炉の金属組成やグラスの容量の質問が寄せられた。

 ライブ会場を提供し、自らも一部商品の紹介を試みた四津川製作所の四津川元将社長が振り返る。
 「コロナ禍でインバウンドの需要が落ち込んでいた当社にとっては、この企画は魅力的でした。人や物の移動が制限される中にあって、ライブコマースは新しい売り方ではないか、と。しかし最初からそうした確信を持っていたわけではなく、中国での事情を詳しくうかがったり、ライブ配信中に視聴者の質問を直に受けたりする中で、そのよさを認識していった次第です」
 配信を開始すると、電子チラシを事前に掲示したのが功を奏して、常時3,000人前後が視聴。アシスタントとしてついて回った孫さんのスマホの左上部にリアルタイムに視聴者数が表示された。例えば四津川製作所の香炉やワイングラスが紹介された際には、「細部の加工が見たい」「木箱を見せて欲しい」と視聴者から要望が寄せられるとともに、「香炉の金属組成を教えてほしい」「ワイングラスの容量はどれくらいか」と専門的な質問も。それらについては横に控えていた四津川社長が急遽答え、司会進行係が中国語に訳してすぐに伝えたのだった。
 再び四津川社長が語る。
 「当社ではこのライブコマースを経験する前には、越境ECのサイトを立ち上げることを企画のひとつとして持っていました。ただ、そのサイトを立ち上げるには相当の費用がかかりますし、サイト閲覧者はわれわれが提供する情報にしか接することができません。その点、ライブコマース実施のための費用は比較的安価に済み、視聴者の疑問にリアルタイムに答えて購買意欲を高めることができます。これはIT化が進みつつある今日ならではのビジネスモデルです。目の前で注文の手続きが進み、入金確認まで行くのですから、従来の日本的な感覚ではなかなか理解しにくいかもしれません」
 ちなみに今回のライブ配信に要した費用は、参加した5社が均等割りして負担。四津川製作所では香炉とワイングラスを販売し、コロナ禍での新展開という視点で見ると「よい勉強をさせてもらった」と前向きの答えが返ってきた。
 公的な機関がサポートしてのライブコマースは、「日本では初めてではないかと思われる」(孫さん)らしく、この試みは全国の自治体から注目されるように。富山県に続き、同様のライブコマースの実施をサポートした産業支援機関もあるようだ。
  当機構では、こうした新しい取り組みに今後もチャレンジしていく予定。ホームページ上で実施要項等を紹介するので、ご確認の上ご利用をお勧めする次第だ。
  ※「富山県工芸品首播」の「首播」は「初放送」を意味する。

○問合せ先
(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL https://www.near21.jp/

作成日  2022/02/07

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