第38回 株式会社ナガエ とやま中小企業チャレンジファンド 販路開拓挑戦応援事業(国外) 販路開拓総合育成事業(海外) 海外バイヤー招へい商談会 海外販路開拓サポートデスク TONIO Web情報マガジン 富山

TOP > 世界をリードするアジア経済交流 > 第38回 株式会社ナガエ

TONIOの支援を活用しながらアジアを中心とした世界へ羽ばたく富山の中小企業をご紹介。

第38回 株式会社ナガエ

欧州からアメリカ、そしてアジアへ
販路開拓と生産拠点の設置に東奔西走

(株)ナガエの長柄幸隆常務。ベトナム法人設立に当たって、
ベトナム駐在経験のある当機構の販路開拓マネージャーから
現地の情報収集を積極的に行った。

 ダイカストの総合メーカーとしての地歩を固め、特に薄肉成型などの付加価値の高いダイカスト製品の鋳造から塗装、組立てまでを行っている(株)ナガエ。一方で同社では1993年より美術品やインテリア小物の製造販売にも乗り出し、商品数を徐々に増やしてきている。
 そのナガエが、「美術品等の販売やダイカスト製品の製造を海外でも行いたい」と、本格的に考え始めたのは2008年を過ぎた頃からだ。近い将来、ヨーロッパ・アメリカ・アジアの各市場で自社製品を販売したいという青写真と、アジアの一角に生産拠点を持ちたいという希望を持つようになったという。

独自ブランドを立ち上げて販路開拓へ

ナガエの新しいブランド「naft(ナフト)」の一例。
上から富士の湖畔に花を生けるような「水盤 さかさ富士」。
グッドデザイン賞を受賞したフルーツボールの「汀—みぎわ」。
亜鉛合金のダイカスト品でつくられた持ち手の部分が自立する
うちわの「solano」。

 美術品等の販路開拓にあたって最も重視したのは、従来からの流通の主力である問屋の利益を害さないことだった。ダイカスト製品は各種機器の部材なので、機器メーカーに直接納めるケースが多いが、美術品やインテリア小物は問屋経由で流通させることが多い。その問屋群も、同様に海外展開を目指す動きがあった。
 「同じ商品を、問屋経由と直接取引の2つのルートで流通させると、販売店は混乱します。ですから、直接取引のルートでは新しいブランドを立ち上げて、問屋や販売店で商品がバッティングしないようにと考えました。そこで国内のみならず海外市場の開拓も当初から目標にし、立ち上げたのがnaft(ナフト)というブランドです」
 同社の長柄幸隆常務が、10年ほど前を振り返って語る。
 naftは、400年を超える高岡銅器の鋳造技術に最新の金属加工技術やデザインを融合させ、今日的なインテリア用品のブランドとして立ち上げた。国内市場の開拓は、2010年のインテリアライフスタイル展への出展を皮切りに、各種展示会への出展やデパート・セレクトショップの仕入れ部門への日参を通して展開していった。
 問題は海外市場の開拓であった。右も左もわからなかった。
「弊社としては独自の海外展開は初めてのことで、具体的に何から始めれば良いか悩みました。そうした時にニューヨークで開催される家具見本市への出展の話があったので、まずはこの見本市への出展準備に取りかかりました」

海外のバイヤーと積極的にマッチング

海外の展示会出展風景。
上は2017年8月のNY NOW(ニューヨークナウ)。
下は2013年2月のアンビエンテ2013。

 長柄常務がいう見本市とは、2011年5月に開催されたニューヨーク国際現代家具見本市のこと。他の企業と共同のブースで出展し、naftを中心とした商品を展示した。これをきっかけに、海外での展示会に積極的に出展するようになり、ニューヨーク国際ギフトフェア(2012年1月)、フランスのメゾン・エ・オブジェ2012(2012年2月)、ドイツのアンビエンテ2013(2013年2月)等に出展。また当機構の「販路開拓総合育成事業(海外)」(24年度)の助成を受けてフランスのJAPAN EXPO 2012(2012年7月)及びニューヨーク国際ギフトフェア(2013年1月)に、「とやま中小企業チャレンジファンド(販路開拓挑戦応援事業(国外))」(25年度)の助成を受けてシンガポールで行われた東南アジア最大級の建材展示会であるBuild Eco Expo Asia 2014(2014年9月)等に立て続けに出展し、商品展示を通じた海外市場の開拓に集中的に取り組んだ。
 海外の展示会に参加した成果を長柄常務が語る。
 「フランスのJAPAN EXPOでは弊社の兜に関心が集まり、いくつかの業者さんと商談を進めさせていただきました。ただ、これまでのところ、ヨーロッパよりアメリカの展示会の方が反応がよく、販路が広がっています」
 なお、同社は、家庭雑貨や生活用品等を紹介する展示会NY NOW(ニューヨーク・ナウ)にも出展するなど、現地での商品や企業名の認知度を高めるための努力を続けてきた。
 一方でナガエは、当機構と富山県が開催している「海外バイヤー招へい商談会」に、2013年以降4回にわたって参加。毎回、アジアから招かれたバイヤーとの商談を重ね、富山でも販路開拓に向けた営業を続けている。

工場建設の実務を相談

ナガエベトナムの正面と同社での生産品の一例。 同社の敷地
面積は約10,000平方メートル、工場面積は約5,000平方メートル。
ダイカスト鋳造及び機械加工、溶剤焼付け塗装などを行っている。

 2011年にベトナムからの技能実習生を受け入れたことを機に、ベトナムに海外生産拠点を設置する構想が浮上した。
 「ダイカスト製品の生産拠点設置を目指して、中国をはじめ、アジアの複数の国々に工場候補地の視察を行いました。当時は、中国への進出についてはコストダウンの限界やリスクもささやかれ、『チャイナプラスワン』として、タイやベトナム、インドネシア等が注目されはじめていました。弊社ではその頃、ベトナムからの技能実習生を受け入れていましたが、向学心が強く、まじめで仕事熱心な彼らの姿を見るうちに、ベトナムへの関心が次第に高まり、ベトナムでの工場設立を本格的に検討しはじめました」(長柄常務)
 工場の建設地は、ベトナム・ドンナイ省のロンドウック(Long Duc)工業団地(ホーチミン市まで車で約40分)に決まった。しかしながら、現地法人設立に当たっての手続きや提出書類の作成、人材募集、人件費の決め方等について不安を抱え、「手近なところでアドバイスしてくれる人や機関を探していました」(長柄常務)。その時、かねてより海外の展示会への出展について相談していた当機構の「海外販路開拓サポートデスク」のマネージャーが、東南アジアに駐在経験のある商社OBであったことを思い出し、現地の実情を踏まえた上での助言を求めたのである。
 サポートデスクのマネージャーはまず、経験豊富でマネジメント能力の高い日本人スタッフを現地法人の責任者として配置し、それをサポートする総務部長を現地で雇用することを助言。そして「総務や経理に詳しいのはもちろんのこと、できれば日本語ができ、日本企業で勤めたことがある人材、あるいは日本の文化や社会になるべく詳しい人材がよい。また総務部長は、高給を払ってでも優秀な人材を確保したらよい」とアドバイスした。

日本レベルに品質を上げ、稼働率も高める

ナガエベトナムの皆さんと工場内の様子

 さらにはマネージャーのアドバイスで、ホーチミン工科大学で求人のプレゼンテーションを実施することを決め、応募のあった学生の中から初年度4名、次年度2名を採用内定者とした。この6名は、ベトナムでの2カ月間の日本語研修ののち、高岡市のナガエ本社での6カ月間にわたる研修を行い、ベトナム法人創業初期の中間管理職として育成した。
 「ベトナムでは雇用の流動性が高く、初期の中間管理職6人のうち今でも在職しているのは3名です。そこに、2012年に受け入れた技能実習生の中で、ベトナム帰国後に当社の工場で働くことを希望した2名が加わり、合わせて5名がナガエベトナムの中間管理職として経営側と従業員の間の橋渡し役を務めています」(長柄常務)
 2013年3月の、ナガエベトナム設立以来、従業員の数は徐々に増え、2017年末の時点で約60名。ナガエ本社からの依頼によるダイカスト製品の製造の他に、ベトナムに進出している日系企業、欧米系企業からも受注するようになった。ナガエ本社からの依頼と現地での受注の比率はほぼ半々だが、最近では外資系企業の本社からの問い合わせが増えているという。
 「ダイカストマシンなどの導入は当初計画の約半分まで進み、あと数年で計画を達成する予定です。それに伴って従業員を増やさなければいけませんが、受注も順調に増やさなければなりません」と長柄常務は語り、「それを実現するには、従業員全体のさらなるスキルアップと中間管理職の養成、そしてベトナム人従業員の中から営業スタッフを育てあげることが必要」と付け加えた。
 海外販路開拓サポートデスクへは、駐在員の待遇や健康保険、現地での所得税や法人税の基本的な考え方、日系企業への営業のかけ方などについても相談し、まさしく現地に詳しい販路開拓マネージャーならではのきめ細やかなアドバイスにより、ナガエベトナムは順調な船出を迎えたようだ。
 最後に長柄常務に、5年先、10年先を見据えての海外での生産拠点の方向性についてうかがった。
 「ベトナムの人々は優秀で、向上心があって手先も器用です。それと目がいい。単に視力がいいだけでなく、ものづくりの過程で気をつけなければいけないところをしっかりと見ている。きちんと教育していけば、日本の工場と同様に精密なものづくりも可能でしょう。他の地域での展開の誘いもありますが、近隣国に新たな現地法人を設立するよりも、現ベトナム工場で精密加工品を製造できるようにし、二交代・三交代勤務による製造ラインの稼働率向上を目指したい。その上で『ナガエの製品は、made in Japanもmade in Vietnamも同じ品質だ』と評価されるように努力していく。これが当面の目標です」  ものづくり県富山の心意気を、ベトナムでも開花させようと意気込む。

○問合せ先
(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/

作成日  2018/02/28

このページのトップに戻る

Copyright (C) 2005-2013 Toyama New Industry Organization.All Rights Reserved.