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第43回 株式会社柴田漆器店

漆器の市場開拓でアジアの国々へ
新商品の酒器をたずさえて

柴田治之社長(写真上)と同社社屋(写真下)。

 「コロナ禍によって、インバウンドも含め海外向けマーケットは縮小するでしょうが、時間をかけても徐々に復活させたい」
 こう語るのは高岡市で柴田漆器店を営む柴田治之社長。緊急事態宣言が解かれてしばらくした後の取材の場で、開口一番に語った。国内の漆器市場に限界を感じており、そのことも海外展開に積極的に取り組む理由となっている様子だ。地元の伝統工芸品を扱う事業者の中には、数年前より欧米やアジア諸国などで販路を開拓し、事業再興の糸口をつかんだ事業者もいる。柴田社長もかねてより海外のマーケットに関心を持っていたという。
 柴田社長が続ける。
 「当社の場合、業界団体や公的機関の支援を受けて、4年前の平成28年より中国での展示会に出展するなどしてきましたが、さらにその数年前には欧米の市場での漆器の可能性について調べてみました。欧米では金属、陶器、ガラス製の器を基本的に用い、木を加工したものに塗装を施したものを食器として扱うことには馴染みがないようでした」

最初は博物館での展示会から

当社で扱っている漆器製品の例。写真上は小箱。
下は茶道具の棗。

 耳にするところによると、他産地には欧米の市場を開拓しようと試行錯誤を重ねた漆器事業者もいるようだが、欧米には漆器を珍重する文化の土壌がなく、関心を持つ人は多くないようだ。
 「アジアでの市場開拓のきっかけとなったのが『第一回日本工芸展IN上海 高岡漆器2016』への参画でした。上海・工芸美術博物館での高岡漆器の展示・PR、文化交流とともに現地バイヤーや芸術・美術関係者との商談会も併せて行ったのです。現地関係者のご協力で会場は連日大盛況で、併設した臨時ミュージアムショップの漆器商品も数日で在庫がなくなるといった状態でした。その期間中に商談がまとまることはなかったのですが、何人かのバイヤーと知り合うことができました。しばらくすると、中国の他の博物館でも高岡漆器を紹介する企画が立てられて当社に声がかかりました。この展示会では日本のあるデパートの上海店が運営に携わったため、博物館の売店や現地デパートでの催事などでも当社の漆器が販売されるようになったのです」
 と柴田社長は、中国での販路開拓を始めた当初を振り返る。そして「ここでの成果は、金額よりはバイヤーとの出会い」と語り、平成30年度に出展した上海で行われた中国国際輸入博覧会や中国華東輸出入商品交易会でも「新たなバイヤーとの出会いが後々の取引の糸口になり始めた」と続けた。
 柴田社長のバイヤーとの親交やビジネス展開について要約すると、以下のようになる。
 展示会等で出会ったバイヤーたちは、商用で来日する際には高岡にも足を伸ばすようになった。頻度は年間に6〜7回程度。数名から20名ほどのバイヤー仲間が一緒に来店し、「各々がこれは!」と思うものを買い付けて、中国で販売しているという。どのバイヤーも定期的に漆器製品を仕入れるところまでは進んでいないが、中国国内での各種漆器製品の反応を確かめるために、試験的に買い付けて販売しているのではないか、と柴田社長は見ている。

中国市場を意識して酒器を商品化

チャレンジファンド事業の支援を受けて商品化した酒器2点
(写真上)と、同酒器のデザイン開発を担当した同社デザイナーの
上原千紘さん。(写真下)

 ここまでの展示会には、業界団体やジェトロ、あるいは中国との交易のコンサルティングを行っている企業の支援や勧誘を受けて出展していたが、バイヤーとの付き合いを重ねるうちに、より興味を持っていただけるような商品を開発したらよいのではないかと柴田社長は考えた。そこで当機構の「とやま中小企業チャレンジファンド事業(地域資源活用事業)」(令和元年度)の支援を受けて、酒器(漆器の銚子と盃)の開発を試みるように。近年採用したデザインに詳しい社員と二人三脚で商品開発に取り組むとともに、漆器製品を紹介するためのしおりの制作、そして中国の展示会でのお披露目を計画したのだ。
 「従来の展示会の出展は散発的なものでした。これでは中長期的な視点に立って、漆器事業の再興を図ることは難しく、機会があれば事業計画を練って新しいことに取り組みたいと思っていました。チャレンジファンド事業は、2年にわたって商品開発や販路開拓などを支援していただく事業ですが、まずはこうした成果を積み重ねて、将来的にはより長期的な視点で取り組めたらよいと考えています。第一弾の酒器は、日本酒が海外でも人気を博しているところから企画したのですが、比較的コンパクトですから、数個買って帰っても大きな荷物にはならず、徐々に人気が出つつあります」
 同社ではバイヤーへの利便を図るために免税店の登録をするとともに、キャッシュレス化が進む中国向けにWeChat PayやAli payでも決済ができるようにと取引環境の整備にも取り組んだ。

ものづくり総合見本市でも販路開拓

2019年9月27〜29日に開催された大連日本商品展覧会の同社の
ブース

 そして中国で酒器のお披露目が行われたのは、令和元年9月の「大連日本商品展覧会」の場。この展覧会は大連市人民政府や遼寧省商務局、中国国際貿易促進委員会遼寧省分会などが共同で行うもので、富山県内では当機構が出展の窓口になっている。
 「この展覧会には、バイヤーも一般消費者も入場することができ、サンプルで持ち込んだ漆器製品は、3日間でほぼ売りつくしました。新たに50名近いバイヤーと出会い、今後も連絡を取り合いたいと8名からリクエストをいただきました」と柴田社長は目を細くしながら語り、「この8名が高岡を訪れるバイヤーの仲間入りをしたのです」と続けた。
 また同年10月末日から富山テクノホールで行われた「富山県ものづくり総合見本市2019」では、柴田漆器店は海外から招聘されたバイヤー4社との商談を実施。そのうちの1社で、東南アジアのあるバイヤーが「私の知人のアメリカ人が、こういうものをつくって欲しいといっている」と打診してきたという。この商談は、通訳を介して具体的な仕様やデザインへと話しが進み、この6月から製品の制作に取りかかったようだ。
 「海外の方との新規の商談は、成約に至るには国内の商談より時間がかかり、文化や商習慣が違いますから、辛抱強く相手先と連絡を取り合い、ビジネスの中身を正確に理解していかなければなりません。本格的な貿易はまだ先のことですが、こうした商談会や展示会に参加することは、トレーニングの一環になっていると思います」
 また、このように語った柴田社長は昨年度チャレンジファンド事業の支援を受けて出展する予定であった「京都インターナショナルギフトショー」が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止になったため、「今年度は大連の日本商品展覧会をはじめ、展覧会等に積極的に参加したい」と考えているという。将来的には、当機構の海外販路開拓サポートデスクのアドバイスを受けながら、「タイ、ベトナム、シンガポールなど東南アジアの国々への展開も図りたい」と抱負を語り、取材を締めくくった。

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL https://www.near21.jp

作成日  2020/07/13

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