第36回 中国(上海・重慶)経済視察ミッション開催  TONIO Web情報マガジン 富山

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第36回 中国(上海・重慶)経済視察ミッション開催

現代版シルクロードの拠点都市—上海・重慶
最新の経済動向とビジネスチャンスを探る

 環日本海経済交流センターでは毎年、中国をはじめとする環日本海地域や東南アジアに経済ミッションを派遣している。現地政府機関や企業関係者との意見交換を通じて、富山県企業の海外ビジネスを後押ししており、今年度は中国・上海市と重慶市を訪れた。
 中国では現在、習近平政権による現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が進められており、アジアや欧州との関係を強めながら堅調な経済成長が続いている。今回の訪問地である重慶市は「陸のシルクロード(一帯)」の重要拠点と位置づけられ、2002年以降は10%を超える高い経済成長が続いている。中でも自動車の年間生産台数は300万台超、ノートPC生産の世界シェアは3分の1に達するなど世界的生産拠点として知られている。また、重慶から欧州へと続く「渝新欧鉄道」が2011年に全線開通し、物流面の強化も着々と進んでいる。一方の上海市もビジネスと物流のハブとして経済発展を続け、上海港のコンテナ取扱個数は世界一位を誇るなど「海のシルクロード(一路)」の重要拠点だ。
 今回のミッションで行われたブリーフィングや意見交換の内容を振り返りながら、両都市及び中国の最新の経済動向やビジネス環境について紹介することとする。

スマホを活用した新しいサービスが次々と

ジェトロ上海でのブリーフィング

 2月22日に訪問したジェトロ上海事務所では中国の経済動向や成長産業などについてブリーフィングを受け、日本企業にとってどのような分野がビジネスチャンスとなるか意見交換を行った。その1つが、日本と同様、中国でも急速に進む高齢化を背景としたビジネスだ。中国の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は9.5%(2015年)、約1億3,000万人である。これが25年後の2040年には21%を超え、3億1,000万人程度になると推測されている。中国では、日本式の介護サービスや福祉機器・用品に対する評価は高く、潜在需要も大きい。日本企業の進出も着々と進んでおり、日本で培ったノウハウを中国でローカライズしながら需要の取り込みを狙っている。

上海市内のシェア自転車。スマホで予約、解錠、決済、施錠を行う。
事業者別に自転車の色分けがされている。

 また、日本を上回る勢いで急拡大するインターネットビジネスについても活発な意見交換が行われた。中国ではアリババやTmallをはじめとするeコマースの分野が急成長を遂げたほか、スマートフォン(スマホ)での決済額は600兆円(2016年)に達し、日本のGDPをも上回る。国を挙げてインターネットのインフラが整備される中、中国人のアイデアで多種多様なサービスが次々と開発されている。動画や音楽、ゲームはもちろん、タクシーの配車、旅行の手配、ケータリングなどもスマホ1台で完結する。そのほか、ユニークなものでは「シェア自転車」が上海ほか大都市でブームとなっている。スマホに専用アプリをダウンロードすると、街中に停められているシェア自転車を検索でき、ロックを解除後、使用が可能となる。その後の施錠や決済もスマホで行える。上海の人たちの間でも、道路が渋滞している時の「ちょい乗り」に便利と好評で、複数の事業者が参入している。
 中国でインターネットビジネスが活況を呈する中、日本でも中国向けの「越境EC」が注目を集めているが、もちろんオンラインサイトに出品しただけでは売上げにつながらない。大手サイトの場合、掲載商品が何百万点とあるため、サイト閲覧者に見つけてもらうための戦略が必要だ。商品広告やプロモーション、検索で上位にする仕掛け、口コミやブロガーの活用など、相当の時間と予算を要することも忘れてはならない。

規制・制度面では日本より厳格な面も

リッチェル上海での意見交換

 22日は富山県からの進出企業、利其尓(上海)商貿有限公司(リッチェル上海)にも訪問した。本社である㈱リッチェルは1956年(昭和31年)に創業。家庭用品(ベビー、高齢者向け)、ペット用品、その他日用品の企画開発から製造・販売まで一貫して行う。中国には1995年に東莞で製造拠点を設立して以来、製造・販売合わせて5つの拠点を有している。そのうちリッチェル上海は2008年に設立、中国全土でベビー用品やペット用品、ライフケア用品の販売を手掛けている。上海では進出日系企業の5年生存率は30%という見方もある中、同社はもうすぐ設立10周年を迎える。
 団員との意見交換では中国でのビジネス展開の現状や課題、苦労話など、話題は多岐にわたった。特に進出日系企業が苦慮する項目としては、現地の制度・規制への対応、商習慣の違いなどが挙げられた。例えば、法務・訴訟対応は日本よりもウェイトが高く、契約書も詳細なものが求められる。また、財務や税務、労務管理のほか、品質基準も日本より厳格な場合がある。さらに、商習慣の違いから現地代理店に販売を任せる日系企業も多いが、契約条件を厳格に詰めないと、売上げが上がっても利益が全然伸びないというケースもあるという。中国市場は大きく魅力的な一方、乗り越えなければならない障壁も多々あり、中国でビジネスを進めるにあたっては、日本本社側の理解が不可欠だ。

重慶市との経済交流発展に向けた意見交換

重慶市商務委員会での意見交換(上)と両江新区の視察(下)

 翌23日は重慶市を訪れ、市商務委員会や重慶両江新区管理委員会などの政府機関で意見交換を行った。重慶市は人口約3,000万人、面積は北海道とほぼ同じ8万㎢で、1997年に中国で4番目の中央直轄市となった。2010年には上海・浦東新区、天津・濱海新区に続く3番目の国家級重点経済開発区である「両江新区」が成立した。重慶は内陸部にありながら水上交通の要衝として3千年前から栄えた。現在は自動車やノートPCの世界的生産拠点として、そして水運に加えて、年間3千万人が利用する重慶空港や、国内主要都市や東南アジアの国々に通じる道路網など、物流と商流のハブとしての地位を確固たるものにしている。
 意見交換では、富山県と重慶市は自動車部品や電機・電子分野などで共通した産業集積を有すること、重慶市では新しい産業として化学やバイオ、新エネルギー、ロボットなどの振興に注力していることなどから、双方向のビジネス連携の可能性が探られた。富山県側からは、2017年10月に開催予定の「富山県ものづくり総合見本市2017」への重慶企業の出展を呼びかけ、重慶市側からも近く設立される予定の重慶市自由貿易新区のPRを行いたい旨、具体的な経済交流の提案があった。

中国-欧州間鉄道と北陸港湾の連携の可能性は

日通国際物流有限公司 重慶分公司訪問。中国~欧州間を結ぶ
鉄道と北陸港湾の連携の可能性について、意見交換が行われた。

 24日は日本通運㈱の現地法人、日通国際物流有限公司重慶分公司を訪問した。重慶は独・ドゥイスブルクに直結する「渝新欧鉄道」の出発点であり、当ミッションの団員より「北陸港湾から中国へ荷物を送り、鉄道に積み替えて欧州まで送るサービスを開発できないか検討したい」との要請を受け、情報交換を行うに至った。渝新欧鉄道は2016年、西行きに230便、東行きに80便が運行しているため、提案のあった輸送経路が実現すれば県内港湾の活性化にもつながる。
 同社の見通しでは、海上輸送に比べて1か月程度リードタイムを短縮できる優位性があるものの、現時点ではコストが3倍近くになる可能性があるという。多くの荷主にとっては、リードタイムよりコストの優先順位が高いことから具体化にはやや時間を要する見込みだ。他にも、鉄道輸送と海上輸送では使用するコンテナの高さが異なること、中国とCIS諸国での通関基準の整合が取れていないこと、冬場の厳しい気候など、乗り越えるべき課題は多いが、荷主側の一定のニーズもあることから、引き続き検討が進められるようだ。

○問合せ先
(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/

作成日  2017/03/28

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