第35回 海外バイヤー招へい商談会開催 海外販路開拓 TONIO Web情報マガジン 富山

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TONIOの支援を活用しながらアジアを中心とした世界へ羽ばたく富山の中小企業をご紹介。

第35回 海外バイヤー招へい商談会開催

富山県企業は25社が参加。
成約に向けてテスト販売なども……

 昨年10月に行われた、富山・岐阜・長野の三県が連携して行う海外バイヤー招へい商談会。三県連携により、アジアを中心とした世界各地の有力バイヤーを招くことができるため、それぞれの県では海外へ販路を開く貴重な機会として注目されている。本年度の富山会場(10月20日/ホテルグランテラス富山)には、富山県内から食品や生活雑貨、工芸品などを製造販売する企業25社が参加。前年までには、このコーナーでも紹介した氷見市の氷見稲積梅(株)や高岡市の山元醸造(株)などが、この商談会を縁に海外企業との取引きを始めていることから、「それらに続け」とばかりに商談会場は熱気に満ちあふれたものになった。
 その商談会の様子をレポートしよう。

「気になる生活雑貨が……」

商談会では会場正面を背にする側にバイヤーが着席し、その正面で日本
側の企業が商品の説明を行う。その左右には通訳やサポート役がつき、
商談のスムーズな進行を図った。

 今回招かれたバイヤーは13社。内訳は中国3社、香港1社、ベトナム2社、マレーシア1社、シンガポール4社、アメリカ1社、フランス1社。ホテルの広いバンケットルームに縦5列、横3列に商談用のテーブルが2mほどの間隔を置いて設けられ、内2つは商品展示用と控え用のスペースとして割り振られていた。
 いずれのバイヤーも豊富な貿易経験があり、取り扱っている商品は多種多様である。一例を挙げると、各種食品や調味料、酒類、生活用品、ベビー用品、電気製品、繊維製品、工芸品、家具、文具等々。サプリメントやアロマオイルなどの健康増進のサポートを謳う商品などを扱うバイヤーもあった。その13社が着いているテーブルにおいて、富山県からエントリーした企業が時間を区切って、自社商品のセールスプロモーションを展開した。
 サンプルをバイヤーとの間に並べて熱心に商品の説明をする人、さらにはタブレットに商品の特徴を示すデータなどを表示しながら、類似商品との違いを訴える営業マンなど、各社それぞれのスタイルで売り込む。各テーブルには主催者サイド(富山県と当機構)があらかじめ準備しておいた通訳が配置されていたが、さらにバイヤーによっては日本国内の代理店の担当者を同行させていたため、商談の際の意見交換はスムーズに展開された。

北京生活飾集商貿有限責任公司の王辰さん。日
本の生活雑貨に興味を持ち、取り扱っている家具
にマッチするインテリア用品や工芸品を探している
という。ちなみに日本での留学先は青森の大学。

 その合間を利用して、バイヤー側の1社、中国の北京生活飾集商貿有限責任公司の販売マネージャー・王辰(オウ・シン)さんに話をうかがった。社名の通り同社は北京に本社を有する企業で、家具やインテリア用品の製造販売をメインとする会社。部屋を飾る陶器や工芸品などの販売も行っている。ショップは北京の2店舗の他に上海と無錫(むしゃく)にそれぞれ1店舗を持ち、日本の家具メーカー5社の他に、家具や工芸品のデザイナー(30名程度)との取引き・コラボレーションは数年前から行っているのだそうだ。
 「中国では、生活に少しゆとりが出てきたファミリーが、インテリアや工芸品を部屋において生活を楽しむようになってきました。日本の家具や工芸品はデザインが洗練されていて中国でも人気があり、当社では社長をはじめとする調達担当のスタッフがいろんな機会をとらえて、日本で新しい商品を探しています。今日商談した1社とは、そういったご縁で数年前からお付き合いさせていただき、一部の商品の販売を始めていましたが、今日は、取り扱いアイテムを増やす方向で商談しました」と王さんは通訳を通じて語り出したが、実は日本の大学院に留学した経験があるため、日本語も堪能だった。
 王さんの富山県企業との商談は、先の1社も含めてのべ5社。いずれも伝統的な技術を現代風にアレンジして、工芸品やインテリア雑貨、繊維製品などをつくっている企業だ。続けて王さんが語る。
 「数年間、日本に留学していましたが、富山県にこんなに工芸品があることは知りませんでした。県の方々にうかがったところでは、銅をはじめとする各種の金属加工品に加え、漆器、木工、彫刻、和紙などの伝統工芸品があり、ガラス工芸も盛んだと教えていただき、大変興味を持ちました。今日拝見した商品はその一部でしょうが、社長に報告して前向きに検討したいと思った商品がいくつかありました」
 といって、その商品名を具体的に挙げたのだった。それらはいずれも古くから伝わる技術をベースに、今日的なライフスタイルの中で使われるシーンを想定してデザインされたもので、和とモダンが共存しているインテリア雑貨として、日本でも注目されつつあるもの。商談の様子を遠巻きに観察していた際の印象では、かなり突っ込んだ話になっているのではないかと推測できる場面があり、また商談がのびて休憩時間も話を続けていたので「大分盛り上がっていたようですね。何を話していたのでしょうか」と王さんに尋ねると、「商品そのものに関心があって質問を繰り返したのと、貿易実務の経験などをうかがいました。今日の担当者は、貿易実務についてはあまり詳しくないようでしたが、『実際に取引きが始まって手続きするようになったらすぐに慣れますよ』とお話しました」と答え、「成果の期待できる商談会でした」と取材を締めくくった。

「香港でテスト販売を始めます」

北山物産の北山晃社長は、取扱商品のコーヒー豆と富山の地域資源
「黒部の名水」を生かして新商品を開発中。

 一方で、商談会に参加した富山県の企業にも話をうかがった。インタビューしたのは黒部市に本社を構える(株)北山物産の北山晃社長。同社はレストランなどの飲食店にコーヒー豆を卸す他、直営の喫茶店を構えてお店でコーヒーを供している。お話をうかがったのは商談会から1月半ほどしてからだ。
 商談会に参加しての手応えを尋ねると「5社のバイヤーとお話しさせていただきました。そのいずれの社とも商談は続けさせていただいています」と返ってきた。
 同社では平成27年、当機構の地域資源ファンド事業の支援を受けて、黒部の名水を使った「水出しコーヒー」やそのコーヒーをベースにしたカフェオレからつくった羊羹(ようかん)などを開発。平成28年に入ってからは首都圏での販路開拓に勤しむ一方、香港のコーヒー事情の視察に出向いた。そして8月、県の支援を受けて香港国際食品見本市「フードエキスポ2016」へ出展し、「水出しコーヒー」が受け入れられるかどうかの可能性を探った。
 「中国や韓国では、近年急にコーヒーを楽しむ文化が広がり、いわゆる喫茶店は日本以上に充実しつつあるようです。そこで当社の水出しコーヒーが受け入れられるのかどうかに関心がありました。貿易の経験はまったくありませんので、例えば日本国内に営業所を持っているような香港のバイヤーと出会い、その営業所と取引きができないかと考えました。それが可能ならば、決済は日本国内でできるし、当社には貿易実務の負担もない。自社独自での貿易実務は、経験を積んでからでいいのではないかと思っていました」

地域資源ファンド事業の支援を受けて開発された水出しコーヒー
のボトル、商品名「水の時計」(上)。その水出しコーヒーをベース
にしたカフェオレを素材につくった「『水の時計』珈琲羊羹」。

 北山社長は香港国際食品見本市への出展動機をこのように語るが、日本にも拠点を持っている香港のバイヤーが水出しコーヒーに関心を示し、もうすぐ商品の出荷が始まる予定で、他にも商談を継続しているバイヤーがあるそうだ。
 さらに、北山社長は「東南アジアでも、黒部の名水でいれた水出しコーヒーは受け入れられるのか」と興味を持ち、このたびの「海外バイヤー招へい商談会」に参加した。商談会では5社と面談し、その後の交流会で出会ったバイヤーとも情報交換を続けている。
 北山社長は「特にシンガポールと香港のバイヤーが熱心」と語る。シンガポールのバイヤーからは、デパートやショッピングモールでのテスト販売、試飲販売の提案が次々と送られてくる。また香港のバイヤーも、北山社長が競合他社と始める平成28年暮れからのテスト販売に強い関心を持ち、自社でもなるべく早くテスト販売をさせてほしいとラブコールを送り続けてくるという。
 「ベトナムやマレーシアのバイヤーからも、時々メールで連絡が入ります。皆さん、消費者が水出しコーヒーにどんな反応を示すのか、興味津々なのです。ただいかんせん、商談で飛び回れるのは私ひとりなので……」と北山社長はうれしい悲鳴を上げ、「生産や供給の体制も整えなければなりません」と続けた。
 北山社長は、今回の海外バイヤー招へい商談会・交流会では、半日で6粒のタネをまいたことになる。そして、すべてのバイヤーと前向きな交渉を続けていることは、商品の魅力もさることながら、バイヤーサイドも熱心に魅力ある商品を探していることの証左ではないだろうか。
 次回の海外バイヤー招へい商談会には、ぜひともご参加を。言葉の壁なく率直に商品についての感想が聞けます。現地の嗜好にあわせた商品開発や海外展開のヒントが得られること請け合いです。

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/
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作成日  2016/12/27

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