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第48回 海外販路開拓商談会開催

盛会だった海外バイヤーとの商談会
新たな販路開拓の取り組みの提案も

11月9日に実施された海外販路開拓商談会の
様子(写真上)。各バイヤーの商談コーナの他、
ポーランド・欧州への販路開拓相談ブース
(写真下)やJETRO富山のブースも設けられた。

 「富山湾は水揚げされる魚介類の種類が豊富で、またその加工品もおいしいと聞いています。将来的に、その中からインドネシアの市場に合うものを当社が仕入れ、BtoBあるいはBtoCで販売する可能性もあると思います。そこで、どのような規模で漁を行い、また魚介類の加工工場がどのように展開されているのかを知りたくて、今回の商談会に先立っていくつかの漁港周辺を視察してきました」
 こう語るのは11月9日に開催された「海外販路開拓商談会」(主催:富山県、当機構)にバイヤーとして参加されたKlikspot(クリックスポット)の代表を務める青柳健氏。この商談会には、同社の他に、アジアの国々や北米で事業を展開する4社が招聘(しょうへい)され、富山県内の19社と商談。そのテーブルには加工食品や化粧品、工芸品、日用雑貨などが並べられ、取引の可能性について話し合われた。
 今回のレポートでは、熱心に商談していた企業に、その概要やこの先の進展の可能性についてうかがった。

「5社の商品をインドネシアで試してみたい」

Klikspotの青柳健代表(写真上)と、商談の
様子。食品などはサンプルを試食し、
インドネシアでの可能性などを吟味していた。

 まずは、冒頭にコメントを紹介したバイヤーのKlikspotだ。同社のグループ中核企業のKlik-Eat (クリック・イート)は、インドネシア最大のフードデリバーサービスfoodspot(フードスポット)を運営する会社。foodspotは、例えるならば日本のUber Tats(ウーバーイーツ)や出前館のビジネモデルをBtoB用に特化して展開しており、ビジネスマンらに昼食等を届けるサービスを提供している。そこで培ったノウハウを応用して、日本企業のインドネシア進出の支援を行っているのがKlikspotだ。
 前出の青柳代表が語る。
 「長年、インドネシアでビジネスを展開してきた中で、同国の医薬品食品監督庁(BPOM)の規制やハラルなどのイスラムの食文化に詳しくなり、日本企業のインドネシア進出について相談を受けるようになりました。相談のみでしたらJETROなどでも対応できますが、当社では現地のレストラン等の協力を得てテストマーケティングも行うことができます。そのテストマーケティングをビジネスとして成り立つように整え、実施しているのがKlikspotです。3年前にサービスを開始し、30社を超える日本企業のインドネシア進出の支援をさせていただきました」
 当アジア経済交流センターの鎌田慶昭センター長は、かつては三井物産やJETROに在職し、東南アジアの国々で活躍してきた人物。インドネシアでは通算7年半あまり、日本企業の現地展開の支援などを担当してきたが、現地での青柳代表との交友の縁で、Klikspotはこの商談会に参加するように。2年前の初参加の際は、コロナ禍による商談後のフォローが難しかったがゆえに成果は出なかったが、今年の春、希望する富山県内企業を募って行われた同社との商談会では、テストマーケティングに興味を持つ県内企業も多く、準備を続けてきた。
 「今回の海外販路開拓商談会でも5社にテストマーケティングについて紹介させていただき、前向きな反応が得られました。これからは、実施を現実のものとするため、企業や関係機関と協議を進めていきたい」(青柳代表)という。
 同氏が続けた。
 「テストマーケティングでは、提携しているレストランで、富山の食材を使ったメニューを提供し、お客様に評価していただくことを考えています。人気があれば定番のメニューに加えることができますし、その食材を別途販売することもできます。5社の内の1社の商品は、富山の伝統工芸の技術を使ったグラスでした。こういった商品でもレストランで使い、お客様の反応を調べることができます。テストマーケティングによる販路開拓は、リスクを抑えながら可能性を探ることができるので、バイヤーにとってもサプライヤーにとってもメリットがあると考えています」

地元漁協も海外販路開拓に挑戦

魚津漁業協同組合の田切正彦次長(写真上)
と当日同組合が商談の対象としたホタルイカ、
白エビの加工品(写真下)。

 サプライヤー側からは魚津漁業協同組合の田切正彦購買FM事業次長に話をうかがった。
 魚津漁協では(一社)農林水産業みらい基金の支援を受けて、魚介類の加工工場を増設。令和元年にその工場が衛生管理では最も厳しいFSSC22000の認証を取得し、富山湾産及び北陸で漁獲される魚介類を中心に加工して、海外市場の開拓を試みるように。国内では大手食品スーパーや百貨店、回転寿司チェーン、生活協同組合にホタルイカや白エビの加工品を卸しているが、それを海外にも広げようというのだ。
 「地方の一漁協が、最新鋭の加工工場を構えて海外の市場をうかがうというのは、恐らく全国的に見ても例は少ないでしょう。ではなぜ、こうしたことに取り組むのか。日本では、鮮魚の消費量は年々減っています。そこで漁協の事業や組合員の経営を安定させるために、海外の市場を開拓しているのです」
 田切次長はこういって、この3年間の成果について言及。当機構の昨年までの「海外バイヤー招へい商談会」や県農林水産部やJETRO富山などが主催する海外販路開拓の相談会、また先述の国内の大手販売先との縁などで出会ったバイヤー経由で、年間約1500万円の魚介類の加工品を輸出するまでになったという。
 田切次長が続けた。
 「魚津漁協では、売上げベースでは鮮魚の販売の方が大きいのですが、利益ベースでは、加工品の販売は利益率が高いため、こちらの方が経営の安定に寄与するようになっています。しかも鮮魚の販売は漁獲量の減少もあり頭打ちですが、加工事業は、国内販売でここ十数年でゼロベースからここまで育ったわけですから、海外でも大きな成果をと組合員全員が期待しているところです」
 同氏は当日、2社のバイヤーと商談を実施。ホタルイカの加工品(釜揚げの冷凍品と醤油漬けの冷凍)や白エビの冷凍品を前にして商品の特長や衛生基準の高い加工工場を紹介したところ、「ある1社が興味を示し、取扱いの条件などを後日の相談の中で詰めたい」(田切次長)と打診を受けたという。そのバイヤーは、将来的にはアメリカの市場をうかがうことも視野に入れている様子で、魚津漁協としても期待は膨らむ一方ではないかと推察されるところだ。

あの「清流素麺」がアジアの4カ国へ

(株)グラスキューブの「清流素麺」。
商談の結果、4カ国での販売が試みられる
こととなった。

 会場には「清流素麺」の製法を紹介するかたわら、日本の代表的な素麺メーカーの最高級品に勝るとも劣らないその品質の良さをPRする㈱グラスキューブの中川信長氏の姿もあった。すべて手づくり、日にちをかけた自然乾燥ゆえに、ライバルメーカーの最高級品よりコシが強く、風味があると熱弁していた。
 商談終了後、中川氏に参加の経緯をうかがうと以下のような答えが返ってきた。
 「販路開拓支援でご指導いただいたマネージャーから海外展開についてもチャレンジしたらよいと勧められたことを機に、輸出についても関心を持ちました。また当社の記事が『TONIO News』のホームページに掲載されたので同コーナーを閲覧すると、バックナンバーの記事の中に、県内の親しい企業の方々がTONIOの支援を受けて海外展開している例がいくつも紹介されていました。中には富山独特の食品も扱われており『こんなにクセのある商品も!?』と感心した次第です。そこで当社でもひとつ海外に挑戦してみようと思い、この商談会に参加しました」
 当日、中川氏は2社のバイヤーと商談。「ウチの素麺は値段が高いから無理かもしれない」と思っていたそうだが、品質の良さが評価されて「扱ってみたい」と回答を得たという。その上でバイヤーからは、公的な検査機関で分析した清流素麺の成分表やその原料の品質規格表などの提出が求められ、通関手続きの準備が始められた様子。2社との商談の結果、それらバイヤーが持っている販路の中からアジアの4カ国での販売が試みられることになったようだ。

     *     *     *

 今回の商談会では好感触を得た富山県企業が多く、アンケートによると参加したほとんどの県内企業が、バイヤーから「前向きに検討します」と回答を得、翌日以降も連絡を取り合っているようだ。

 

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL https://www.near21.jp

作成日  2022/12/21

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