第27回 世界をリードする環日本海経済交流 協和製作所 TONIO Web情報マガジン 富山

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第27回 世界をリードする環日本海経済交流

協和製作所——青島を拠点に面の展開を
ミッションでは有望企業とも出会って

 「こういう商談ミッションに参加したのは初めてですが、よい経験になりました。特に団長の藤野さんの、中国での経験の豊かさ、人脈の広さには驚かされたものです。現地での移動時間には、なるべく藤野さんの近くに座るようにして、お話をうかがったり質問したりしていました」
 昨年12月、当機構主催の「中国華東・華中地域貿易投資商談ミッション」に参加し、6日間の日程をこう振り返るのは、高岡市に本社を構える協和製作所の中村恵充さん。同社は自動車や産業機械用の鋳物部品を製造・販売する企業で、同じく昨年12月には山東省青島に現地法人(青島協和商事貿易有限公司、以下、青島協和)を設立して、中国でのビジネスの拡大を図っているところだ。
 今回の環日本海経済交流レポートでは、協和製作所の対中ビジネスの推移を振り返りながら、ミッションについても紹介しよう。

中国の実情に対する理解を深めた

安徽省商務庁を表敬訪問。楊本清副庁長、張春風副所長、
玨赭明外商投資促進事務局長らが対応。(他の政府機関や国貿促
でも同様にトップクラスが出迎えてくれた)

 当機構では例年、県内企業などから有志を募り、中国への貿易投資商談ミッションを派遣している。本年度は華東・華中地域の蘇州、南京、合肥、長沙などの各都市を訪問。省や市などの政府機関や中国国際貿易促進委員会(以下、国貿促)の各地分会を表敬訪問し、また中国企業や日系企業との交流会、日本から中国へ先駆けてビジネス展開した企業を訪ねて、事業の推移や成功・失敗の要因等をうかがう交流会などを行ってきた。
 冒頭のコメントで、中村さんがいう「団長の藤野さん」とは、当機構・環日本海経済交流センター長の藤野文晤氏のこと。氏は、前職の伊藤忠商事時代は中国ビジネスの先駆者として名を馳せ、当時も、そして現在の中国指導部も、“最初に井戸を掘った人”として敬意を表する人物だ。
 その藤野氏が団長としてミッションを率いて行くため、訪問先では熱烈歓迎ばかり。政府機関や国貿促の分会では、トップあるいは副長(副委員長)クラスが出迎えて旧交を温める場面が何度も見られ、中村さんはそこに氏の人脈の広さを実感したのだった。

合肥市で行われた交流会の様子。中国側からは8社8団体が参加して、
交流・マッチングが行われた。

 「富山県はものづくりが盛んで、各種の製造業が集積していますが、あくまでも日本の地方都市のひとつです。その富山でなぜNEARが盛大に開催され、中国からあれだけ多くの企業が出展するのか…。もちろん県やJETROなどのご尽力もあるのでしょうが、藤野さんの人脈によるところも大きいでしょう。かねがね出展企業の募集はたいへんだろうと思っていたのですが、今回のミッションでひとつ疑問が解けたように思います」
 かくいう中村さんら協和製作所のスタッフも、10年ほど前からNEARにはほぼ毎回足を運び、中国での協力工場の発掘などに努めてきた次第。今日、取引関係にある中国企業の数社は、いずれもNEARの会場で出会い、その後の商談の結果、協力工場になってもらい、彼らが生産する鋳物製品を、協和製作所経由で日本の企業に納めてきたのだ。

沿岸部にも内陸部にも行きやすい

協和製作所の中国での事業活動の概念図。青島協和を中心に沿岸部、
内陸部へと営業範囲を広げていく。

 ところがさらなるコストダウンを求めて、客先の工場そのものが中国に移転するように。その結果、わざわざ日本の本社に鋳物製品を輸出する必要はなくなってきた。ただ協和製作所では、中国国内に拠点を持っていなかっため、商社を介して協力工場と客先の間の取引きを続けてきたのだ。
 しかしながら、そこに問題が起きた。商社スタッフは鋳物に詳しくなく、品質管理が行き届かないことがあったのだ。そこで同社では、もともと中国での事業拡大に前向きなこともあって、「拠点づくりが具体的に検討され始めた」(中村さん)のである。
 当初は、「大連が有力候補地だった」という。すでに協力工場や客先が数社あり、何より富山との直行便があって便利だ。ところが富山—大連間の航空便が一時的になくなった時、「中国国内での客先や協力工場への移動のしやすさを優先した方がいい」という考えが浮上。上海周辺にも客先や協力工場があることを考慮して、大連と上海のほぼ中間にある青島に決めたのだという。

青島協和が中国国内で展開していく際に用いているパンフの
一部。船舶用の鋳物、油圧ショベル用の鋳物が例示されている。

 ではなぜ、現地法人開設で忙しい時に、協和製作所では今回のミッションに、青島協和の総経理就任が予定されていた中村さんの参加を決めたのか。そこにはこんなわけがあった。
 「現地法人開設のために、また客先や協力工場を訪ねて何度か中国に行きました。しかし今までは、点ないしは線としてしか各都市の位置関係を認識していませんでした。現地法人を開設したこれからは、青島を中心に面としての中国を知りたいと思っていたのですが、華東・華中地域を訪ねる商談ミッションでしたので、いい機会だと思って参加を決めたのです」(中村さん)
 青島からは、沿岸部の工業地帯にも、内陸部の発展進行地域にもアクセスしやすい、と感じたというから所期の目的は達成された様子。またミッション参加には、想定外の成果もあったようだ。ミッションには合肥・長沙の両市で企業交流会が行われ、中国企業、日系企業とのマッチングが行われたのだが、合肥市の会場で有望な企業と出会ったのであった。
 「日本の、ある産業機械大手に当社の鋳物部品を納めさせていただいていますが、そのグループ企業の現地法人の方が合肥の企業交流会に参加しておられ、工場見学もさせていただきました。日本での取引きのこと、また青島に事務所を構えることなどを紹介すると、『落ち着いたら再度、工場にお越しください』と招かれたのです。4月以降、その会社にアポを入れるとともに、周辺の企業にも営業をかけていきたい」
 中村さんはやや興奮気味に語るが、NEARでの出会いがビジネスに発展した経験を持っているだけに、今回の新たな出会いに期待しているようだ。

現地スタッフは日本語が堪能な青年

青島協和で総経理を務める中村恵充さん(左)と現地スタッフの
張穎芸さん。

 幸い、現地スタッフ1名の雇用も昨年末に決まった。名前は張穎芸(ちょう・えーげい)さん。山東省の済南(じーなん)大学で日本語を学んだ青年(26歳)。日常会話レベルの日本語は十分に話せる。ただ、鋳物についてはまったく初めてだった。
 「それはおいおい勉強していけばいいことで、自分の考えをはっきり伝えようとする姿勢を評価して、彼の採用を決めました」
 中村さんは面接時を振り返っていうが、鋳物についての研修中「わからないことは、わからないと伝えて、理解しやすい説明を求めてくる」そうで、期待どおり意欲は高いようだ。
 その張さんに、高岡の協和製作所での研修中に会ってみた。張さんいわく。
 「協和製作所の中国の協力工場で3週間ほど研修を受け、そのあと高岡の本社でも研修を続けています。今日の時点(2月中旬)では、鋳物に携わってまだ2カ月経っていませんが、日本の鋳物技術はすごく精密なのに驚きました」と。この弁を受けて中村さんは、「今の日本の若者で、金属や鋳物について何も知らないところから始めて、2カ月未満でここまで理解できる人は少ないのではないか」とご満悦だ。

青島協和が入居するビル。

 青島協和は、その正式名称が示すとおり、いわゆる商社として動き始める。それも単なる商社ではなく、鋳物の専門的知識を持った商社。品質管理は万全だ。張さんの研修が終わった後、商談相手が中国系企業の場合は張さんが、日系企業の場合は中村さんがメインというふうに初期は二人三脚で仕入れや販促に歩き、徐々に1人で対処できるようにするという。
 合肥市の交流会で出会った企業には、2人で赴くことになるのだろうが、商談成立を願うばかりだ。

○問合せ先
(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/

作成日  2014/03/12

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