TOP > 世界をリードする国際経済交流 > 第58回 杉野味噌醤油株式会社
味噌・醤油の海外展開を模索。
そのミソは・・・
総務・広報などを担当される杉野智美さん(写真上)
が、同社の海外展開チャレンジの様子を語ってくれた。
写真下は同社の代表的な商品のひとつ「無添加越中みそ」。
富山県産大豆と小矢部川水系の清冽な湧き水が
原料に用いられ、地元を中心に愛用されてきた。
「当社が、初めて味噌・醤油の海外展開を意識し始めたのは平成25年頃でしょうか。北陸新幹線の金沢までの延伸開業がその2年後に迫り、観光客の増加が期待されました。特に、海外で日本食の人気が高まりつつありましたので、外国人旅行者向けに土産物用の味噌のセット販売ができないかと思った次第です」
語るのは小矢部市に本社を構える杉野味噌醤油(株)で総務・広報などを担当される杉野智美さん。当時の担当者に確認しながら、フリーズドライにした同社の味噌とテーブルウエア(箸、器など)や手ぬぐい等をセットにした土産物を販売することを試み、そのサンプル商品に対しての消費者のアンケート調査を行った経緯を明かしてくれた。
ヒアリングにあたっては、「とやま中小企業チャレンジファンド事業 ビジター対応ビジネス支援事業」(平成26年度)の支援を受けて、「富山県ものづくり総合見本市2015」や「フード台北」などの展示会に出展。その来場者に意見をうかがい、「総合見本市」では海外からの出展企業の担当者を中心に、3日間で約3000食の試食も提供しながら、アンケートを実施したのだった。
杉野さんが当時を振り返る。
「アンケートの結論をいいますと、味噌とテーブルウエアなどとのセット販売に『魅力を感じる』と回答してくださった方は1割弱。味噌よりもセットにした小物に興味を示される方が多く、セット販売では逆効果になることが判明しました。また仮にセット販売をするにしても、富山産の食材と組み合わせた方がいいように思われました」
セット販売には否定的な意見が多かったため、この時の海外志向は軌道修正を迫られることになったのだった。
「シンガポール県産品プロモーション」の様子
(写真上)と展示中の同社の商品(写真下)。
ショッピングモールの一角に富山県産品を紹介
するポップアップストアを設けて展示即売を行い、
その後、地元スーパー等と商談を行った。
2度目の海外志向は、コロナ禍によって出荷量が減少したことに加えて、国内の食生活の変化(食の欧米化)によって味噌・醤油の使用量が少しずつ減ってきたからだ。
同社は大正11(1922)年の創業以来、問屋・代理店経由で北陸3県と東京・大阪の食品スーパーや飲食店などに味噌・醤油を卸し、急激に出荷量が減ることはほとんどなかったという。ところが令和2年からのコロナ禍により、出荷量は約15%減少したそうだ。
「コロナ禍中のマイナス分のほとんどは、飲食店向けの出荷と推測されます。新型コロナウイルスの蔓延により飲食店は休業を余儀なくされ、中には廃業されたお店もありました。またコロナ禍を機に、食材の仕入れ先を変更された飲食店もあったようです。最近は、業務用でもポイント還元などを導入されているメーカーがあり、中小メーカーはそこまでの対応ができないので、切り替えられるケースが多々ありました。そうしたことなどが重なって、コロナ禍が収束しつつあっても出荷量は回復しなかったのです」
杉野さんはそういって、流通環境が変化してきたことを明かされた。
そのマイナス分を補おうと思案した時、かつての宿題と当機構の助成制度を思い起こし、再び味噌・醤油を海外に輸出することを模索し始めたのだ。
その第1弾は、当機構が実施した「シンガポール県産品プロモーション」(令和5年度)への参加である。この事業は現地バイヤーの協力を得て、シンガポールの繁華街のショッピングモールの一角にポップアップストアを設け、複数の富山県産品と共同で展示即売を行う(1カ月間)もの。来場者の反応を踏まえて、現地のスーパー等とオンラインによる商談を行う、というものだ。
杉野味噌醤油では「こだわり無添加越中味噌」、「しょうゆキャラメルソース」の二品を展示。7社の食品スーパーにアプローチしたところ、そのうちの3社が関心を示して商談したのだが、成約には至らなかったそうだ。
「オーストラリア県産品プロモーション」で
富山県産の食材が現地のスーパーで展示
即売された際の様子(写真上)。写真下は
期間中に設けられた同社の味噌の試食コーナー。
野菜などに味噌を少しつけて味わっていただいた。
続いては翌年度に実施された「オーストラリア県産品プロモーション」への参加である。この事業ではシドニーやメルボルンなどの食品スーパー5店舗の協力を得て、店頭で4週間、富山県産品のフェア販売を実施するというもの。そのうち各週末は、各社商品の試食コーナーも設けられ、来店客にその味を味っていただいた。
杉野味噌醤油では、「こだわり無添加越中味噌」、「よごし味噌くるみ」、「よごし味噌山椒」の三品でプロモーションを行ったのだが、結果は上々。フェア終了後、バイヤーから「扱いたい」と連絡が入り、追加のオーダーも来るようになっているという。
3弾目の海外展開の挑戦は、当機構が実施している「海外販路開拓商談会」(令和7年度)への参加だ。そこで同社は、アジアや中東に販路を持つ商社と商談する機会を持ち、商談成立には至らなかったものの有益な情報を得たという。
杉野さんが語る。
「日本の味噌・醤油の輸出の歴史は古く、大手メーカの商品が海外の食品スーパーの棚を占めているようです。そこで、当社のような中小メーカーの新規参入は難しいのではないかと思っていたのですが、バイヤーの回答は『おいしかったら置いてもらえる』でした。つまり海外展開・外国人向けのプロモーションでは、試食していただき、おいしさを実感していただくことがポイントだとわかりました。こうした情報を得ることは当社にとっては何より重要です」
伝統の製法により100年以上続く味を引き継い
でいる杉野味噌醤油の製造工程の一コマ。同社
の味噌・醤油は甘みが強いのが特徴。
こうした経緯も踏まえ、同社では令和8年度の海外市場開拓事業にも関心を持ち、参加予定で準備を進めているところ。その一方で、国内の外国人旅行者に向けて、試食販売の機会を設けることができないかと模索し始めたのだった。
「和食が、ユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、日本の調味料である味噌や醤油への関心も高まりつつあります。欧米への輸出にも関心がありますが、HACCP(ハサップ)など規制の面で厳しいところがあり、そこを現実的に判断していくと、当社の場合はアジア各国やオーストラリアが中心になるのではないかと思っています」
杉野さんはこう語り、当機構の海外展開の支援事業に期待を寄せるとともに、インバウンド向け対応の充実を図りたいと抱負を語るのだった。
連絡先/杉野味噌醤油株式会社
〒932-0045 小矢部市中央町1−25
TEL 0766-67-0111
FAX 0766-67-3889
URL http://www.sugino-miso.com/
作成日 2026/09/30
