第53回 本格手打ち蕎麦「福籠」 富山県よろず支援拠点 クリエイティブ産業振興事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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元気なお店に聞く商売繁盛のコツ。「ウチの店でもやってみよう!」と思わず手を打つアイデア満載。

第53回 本格手打ち蕎麦「福籠」

ロゴマークを一新して店のイメージチェンジを展開
客足が従来の2倍に伸び、経営が安定するように

同店の人気メニュー・変わりそばの「福籠」。湯葉の包みをあける
と、そば、野菜の上に半熟卵がのっていて、かき混ぜて食べる。

 さて、今回訪問したのは店主とパートの2人が切り盛りする街のそば屋。店主のお名前は福澤奈保子さん。タクシーやトラックの運転手の他に、いくつかの飲食店で勤めた後で、「自分が本当にやりたいのはそば屋」と気づき、3年前の平成26年11月に本格手打ちそばのお店「福籠」(ふくろう)をオープン。富山市山室(現在のお店から数百メートル離れたところ)で、元はうどん屋だったお店を改装して、念願の店を持ったのだ。
 ところがなかなか、経営が安定しない。他地域のそばに比べ、香りがしっかりした八尾のそばを手打ちにし、「そばは、こうでなくては……」とそば通の評価を得ながらも、客足は安定しなかったのだ。
 その理由はいくつか考えられるのだが、28年秋にお店を移転し、界隈のメインストリートから1本奥まった住宅地にお店を移転したのを機に、当機構のクリエイティブ産業振興事業を活用してイメージチェンジを図ったところ、客足はほぼ倍増。経営の安定がもたらされたばかりか、打ち手の見習いの雇用も検討するほどになったのだ。
 今回のレポートでは、公的産業支援を活用して、経営にも“こし”を得つつある、福澤さんの足跡を追った。


風味のよい八尾のそばを用いたが……

厨房でざるそばの用意を進める福澤奈保子さん。「八尾のそば
粉を使った十割そばは、香りが強いため人によっては飽きるか
もしれない。その点、この二八そばは飽きがこないと思う」と。

 福籠の前には、居酒屋を持っていた福澤さん。手料理が「おいしい」とお客から誉められるのがうれしく、仕込みには人一倍の時間をかけた。それが負担になって体が悲鳴を上げ、2カ月間入院することに。当然、居酒屋は閉めることになった。
 「その時私は、自分の人生をリセットしようと思ったのです」
 病院の天井を見続けていた福澤さんは、ふと思った。そして、調理師免許を持ち、飲食店で働いている時がもっとも充実していたことなどを確認し、「では、どんな食べ物をお出しするお店が一番好きなのか」と突き詰めていったのだ。その結果出たのが、「そば屋」という答えだった。
 退院後、福澤さんは県内や隣県のそば処等を訪ねて、そば打ちの体験を重ねるとともに、各地のそばの味を堪能。また、そば打ちの見習いを募集しているお店がないかなども調べるようになった。
 見習い募集に関しては、何軒かのそば屋で確認された。しかし年齢制限をクリアすることができず、悔し涙を飲むはめになったのであるが、そばの味を比較するうちに、あることに気がついた。それは、一口に「手打ちそば」といっても、風味や香りに歴然とした差があること。つなぎを用いていない十割そばで、それは顕著に現れるのだった。
 「いろいろ調べてわかったのは、そばは交雑しやすい植物だということ。他の花粉を受粉すると、いわゆる雑種化が進んで、風味や香りが徐々に落ちてくるのだそうです。そば処として有名な地域でも、交雑は避けられないようです。ところが八尾では、そばを栽培されている農家の方々が交雑が進まないように努力されているため、『八尾のそば粉を使ったそばは、風味がしっかりしている』と評判です」
 こうして八尾のそばに行き着いた福澤さん。そして、そば打ちの師匠を八尾に求め、均一なそばが打てるよう修業を続け、平成26年11月に念願のお店を持ったのだ。
 ところがである。そのお店では以前はうどん屋が営業していたため、「オーナーが代わって今度はそば屋か……」と前の常連客をそのまま引き継ぐ形となった。また福澤さんの前のお店の常連客なども足を運んでくれたため、初期からある程度のお客の支持を得たのだが、「経営を安定させるには今一歩」という状況が続いたのだ。
 「本格的な手打ちそばにすると、ザルでも1,000円近くはし、天ぷらもつけると2,000円程度になる。昼時のランチとしてはちょっと高いところがあります。また店内はカウンター席がほとんどで、ご家族や友達連れでお越しいただいても、ゆっくりとそばを召し上がっていただく雰囲気はありませんでした。おまけに駐車場は、営業マンには不便はなかったのでしょうが、運転があまり上手ではない女性客には入りにくかったようです」(福澤さん)
 こうしたことが重なって、客足は期待したほどには伸びなかったのだ。

個人営業のそば屋でも支援を受けることができた

住宅を改装してオープンした、現在の店舗。広間、縁側をつないで
利用し、奥にカウンター席を4席だけ設けた。

 あと数カ月で、そば屋を始めて丸2年を迎えるようとする平成28年の夏の終わり。福澤さんは、お店を続けるか畳むかの決断を迫られることになった。「2年で答えが出るだろう」との予測から、お店の賃貸契約を2年にしていたのだ。そのため、そば屋を続けるのなら賃貸契約を更新するか、新たな物件を探すことを迫られたのである。
 「経営的にみると、厳しいところはありましたが、『店を畳むにはまだ早い』という思いがありました。そこで新たな物件を探し、『女性客がゆっくりそばを楽しむことのできるお店にしたい』と思い、金融機関を訪ねて改装費の融資をお願いしました。すると担当者は、『この機会に新世紀産業機構のクリエイティブ産業振興事業の支援を受けて、お店のイメージチェンジを図ったらよいのではないか』と薦めてきたのです。私は、公的な産業支援機関があることも知らず、ましてや個人経営のそば屋などは支援の対象外だろうと思っていたのですが、金融機関の担当者から詳しく話しを聞き、振興事業の申込書の作成も協力していただいて訪ねてみたのです。すると、当店の課題を親身に聞いてくださり、商業デザインについて詳しいアドバーザーを紹介してくれたのです」(福澤さん)
 そのアドバイザーとは、当機構に事務局を置く「富山県よろず支援拠点」のスタッフ。商品や販促ツールなどのデザイン開発に詳しく、デザインを通してのブランディングにも実績のあるコーディネーターだった。
 コーディネーターは、従来の福籠のロゴマークや看板などのデザインを一新し、お店のイメージアップを図ることを提案。具体的なデザイン開発はコーディネーターから紹介されたデザイナーに託された。
 「福籠は、『福を手元に閉じ込めて幸せになる』という意味で、私の姓の福の字も使っています。また鳥のふくろうにあやかって、賢く幸せになりたいという願いも込めています。そして新しいお店は女性のお客さんに支持されたいことなど、お店に対する私の思いを詳しくデザイナーの方にお伝えしました」(福澤さん)
 そしてでき上がったのが、「福」の字を、鳥のふくろうの顔に見立ててデザイン化したロゴマーク。それを看板や名刺、ショップカード等に用い、新しいお店のオープンに合わせて平成28年11月から使い始めたのだ。

デザイナーを紹介されてロゴマークを一新すると……

移転に伴って作成した新しいロゴマーク。漢字の「福」をふくろうの
顔のようにデザインし、お店の看板や名刺、ショップカードなどにも
利用している。

 評判は上々である。「上品で洒落たデザインだ」「老舗料亭のロゴマークみたい」と評する人が陸続と現れた。また一般の住宅を改装したお店も、「自宅でそばを食べているみたいに、くつろぐことができる」と好評で、女性客が徐々に増加。フリーペーパーや地元TV局の情報番組で取り上げられたことで客足がさらに伸び、そうして来店されたお客が次は家族や友人を伴って再び三たび来店されるようになったため、移転前に比べて経営は安定するようになったのだ。
 人気のメニューは、もり・かけ・天そばなどの定番に加え、そばを湯葉で包んだ「福籠」や山芋をメレンゲ状にふわふわにして山かけにした「淡雪」など、福澤さんが考案したそばの創作料理だ。これらは移転前からメニューにあり、オーダーはほとんどなかったのだが、今ではほとんど毎日数食のオーダーが入るように。平日の昼どきは、1日30食ほど(週末は45食ほど。大盛・特盛のオーダーの入り方により変動する)で「売り切れご免」となる同店にとって、ほぼ毎日数食のオーダーが入るというのは人気のメニューといっていいだろう。
 取材時にさっそく「福籠」を試食させていただいた。湯葉をめくって中のそばや野菜を混ぜると……。残念ながら食レポは得意ではないので、読者の皆様にはまずは召し上がっていただくことを薦めるばかりであるが、ゆで始めるとそばの強い香りが漂ってきて、そば通が唸るのも理解できる気がしてきた。
 「これらを私は『変わりそば』と称し、当店オリジナルメニューとして売り出しています。話題づくりの一環ですが、これを食べてみようと思われるのはほとんどが女性客です。女性客は一度召し上がられると、友人などに『福籠のアレ食べたことある?』と口コミで広げてくれるのです。フリーペーパーや情報番組で取り上げていただくのもありがたいのですが、口コミの効果は長く静々と続きますので、お店としては本当にありがたい」と福澤さんは支持してくれる多くのお客に謝意を表すのであった。
 その具体的な表現が、同店の夜の部のメニューと料金設定だ。1晩1組(2名以上〜20名程度まで)のみの予約制にし、料理は「蕎麦コース」(1人分2700円)か「おまかせコース」(1人3000円〜)から選んでいただくことに(お酒等は別途)。料理は最低でも7〜8品つくため、一般的なお店では6000〜7000円程度の値段がつけられても不思議ではない内容だ。それを半分程度の値段にして、「ゆっくりくつろいで存分に食べていただくことをとおし、日頃のご愛顧に感謝したい」というのだ。

*     *     *     *     *

 このため夜の部の客足も必然的に伸びてきたのだが、ここにきて課題が浮かび上がってきた。それは、そばの打ち手の確保だ。福澤さん一人では、20数人前から30人前程度のそばしか一度に打てないのだが、お客のニーズに応えるには、新たなそばの打ち手の確保が必要になってきたのである。
 その人材をいかにして確保するか……。福澤さんは今度は、うれしい悲鳴を上げ始めたのであった。

本格手打ち蕎麦 福籠
富山市山室303-28
TEL076-422-7607 
事業内容/飲食店(そば屋)

作成日  2017/6/23

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