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元気なお店に聞く商売繁盛のコツ。「ウチの店でもやってみよう!」と思わず手を打つアイデア満載。

第52回 お宿 いけがみ

一時は閑古鳥が鳴いていた旅館も
三姉妹の秘策で繁盛店に。その秘策とは……

「お宿いけがみ」の名物「三姉妹女将」。左から、ちさとさん(長女)、
あすかさん(三女)、しのぶさん(次女)。

 「三姉妹女将」をご存じだろうか。魚津の里山で6室のみの「お宿 いけがみ」を運営する三姉妹。7年ほど前からメディアにその言葉や活字が躍るようになったのは、昼の人気番組「笑っていいとも!」に3人で出演したことがきっかけだそうだ。最近では「じゃらん」、「楽天トラベル」などの旅のサイトで人気を博し、「人気の隠れ宿ランキング」では3位に選ばれるほどの宿に。といっても目玉が飛び出るほど高い宿泊料ではなく、1位、2位にランキングされた宿の1/3程度の料金で利用ができるというから、庶民でも贅沢を楽しむには手の届く範囲といったところだ。
 このお宿、今でこそ全国区となった「富山の大人の奥座敷」であるが、一時は閑古鳥が鳴いていた日々もあったようだ。

繁盛していた湯治場の温泉宿も……

同宿の客室、浴室、料理など。いわゆるオーベルジュの要素が
強く、行き届いたサービスを提供するために1日の利用者を6組
(12人程度)に限定している。

 元々は湯治場の温泉宿であった「お宿 いけがみ」。創業は明治元年(1868年)。その前年の慶応3年にお湯が発見された。
 言い伝えによると……。
 今から153年前の慶応元年のこと。なかなか子どもに恵まれなかった仁右衛門・まつ夫婦に待望の子どもができた。ところが産後の肥立ちが悪く、それから3年あまり、まつは寝たきりに。もう回復しないのでは……と絶望の淵に立たされたある夜、夢枕に薬師如来が現れて、「ここを掘ったら水が出る。それを沸かして薬とせよ」とお告げがあったそうな。それを受けて、仁右衛門が掘ったところ水が湧き出、それを沸かして飲むとまつは布団から起き上がることができるようになり、さらにこの霊泉を沸かして風呂の湯として使ったところ、歩けるまでに回復したというのだ。このウワサはたちまち広まり、産後の肥立ちだけでなく神経痛や胃腸病などにも効果がみられ、その効能はたちまち知れわたり、湯小屋として親しまれるようになった。
 後に一粒種の男の子は、「力岩」の名を襲名して明治の相撲界にその名を轟かせた。角界を引退後は、自らの出自を顧みて神仏に導かれ寺を開き、湯治客用の温泉宿を開くに至った……。
 これが「お宿 いけがみ」の初代当主である。三姉妹の父(4代目)が差配するようになってしばらくしても、同宿は宣伝は一切しなくても予約でいっぱいという状況が続いたそうだ。
 今日では想像しにくいだろうが、かつての湯治場とは宿泊客は幾日も連泊し、宿からはごはんの提供を受け、おかずは自炊したものだ。三姉妹の長女ちさとさんは、「子どもの頃、朝はお客様にごはんを運ぶのを手伝っていました」と三十数年前の記憶を解きほぐすが、その頃は既に湯治客も減り始め、それから数年後には一般的な旅館へと衣替えしたのだそうだ。
 長女が就職を考え始めた時、すでに客室の稼働率は徐々に低下していたのだが、三姉妹の母は「卒業してすぐ家業に入ると世間を見る目が養われないから、他の職場を経験しなさい」と、家業とは別の仕事に就くことを勧めたのであった。

ブログで復活の糸口を

宿の近くに現れた日本カモシカ。

 転機が訪れたのは、旅館に三姉妹がそろうようになってからだ。長女のちさとさんは、11年ほど前に子育てを機に仕事を辞め旅館を手伝うように。次女のしのぶさんも、繁忙期だけ手伝いに加わった。そして三女のあすかさんは、仕事の休日だけ手伝うようになった。
 取材に応じていただいた、あすかさんが語る。
 「最初のうちは、次女と私は常勤ではなく忙しい時だけお手伝いしていました。当たり前の事ですが、自営業の子どもが家業を手伝うのは自然な流れですから。しかし、テレビに出たことから『三姉妹女将』という言葉が徐々に広がり、『それを楽しみにいけがみ旅館に行ったのに、2人にしか会えなかった』『‥‥1人しかいなかった』というお客様も出始めました。それが何度も重なると、これじゃあお客さまに申し訳ないな…と思い、次女も宿で働くようになり、私が仕事を辞めてここに常勤になったのは6年前のことです」
 テレビに出るきっかけ、そして多くの取材を受けるようになったのは、まだ三姉妹が宿に入る前にあすかさんが書き始めたブログがきっかけだった。
 「ブログは、上品に料理を紹介するような内容や観光施設をパンフレットのように書くのではなく、自分たちが見て、感じて、伝えたいことを書いています。また、旅館運営の裏側・テレビ撮影や取材の裏を載せたり、お客様が宿泊している時にどんな行動を私たちがして過ごしているのかなどを、ありのままに書きました。また宿の近くには何もないのですが、それもありのままに書き、裏も表もなく『おもてなし♪』と、正直に書くことを心掛けています」(あすかさん)
 実際、「いけがみ三姉妹ブログ」をのぞいてみると、いわゆる舞台裏が紹介されるとともに、裏庭から逃げようとしているカモシカの後ろ姿の画像があるなど微笑ましい1コマもある。このブログが面白いと評判になり、テレビや雑誌がこぞって取材にくるように。かつては費用をかけてテレビCM用や雑誌広告用のデータを作成し、お金を払ってそれらを放映・掲載していたものが、メディア側の取材になった途端に費用はゼロになった。しかも報道や記事の影響は大きく、広告とは比べ物にならない集客効果が現れ始めたのだ。

目指すは外国人旅行客100人

助成事業を活用して作成した英語版のホームページ(一部)
温泉の起源についても訳し、紹介している。

 ネットの影響の大きさを否応なしに実感した三姉妹。従来からもホームページの充実を図り、Facebookでの情報発信も盛んにしてきたのだが、それ以来ますます新しいネタを追加するなど更新をこまめにするようになった。そうした折、常連客の1人から、「これから外国の旅行客も増えると思うけれども、ここは本当の日本を体験したい人に使ってもらいたいね。団体の人とかに来てもらって荒らされるのは困るけど……。私の海外の客先も紹介するから、いけがみ旅館のホームページの、外国語版があったらいいな」と提案されたのだ。
 かねてよりあすかさんは、ある会社の経営者から「公的な産業支援を活用して仕事に勢いを持たせたらよい」とアドバイスを受けていたこともあり、躊躇なく当機構のホームページを閲覧。そして、ホームページの英語版作成にあたっての支援メニューを発見し、「小さな元気企業応援事業」(平成27年度)の申請・採択を経て英語版サイトの制作に入ったのだ。
 「翻訳の際、私たちがこだわったのは、ブログの時と同じように、日本語サイトを機械的に英訳するのではなく、日本の文化も理解していて、日本語の微妙なニュアンスも伝えていただけるような、ネイティブの方に翻訳をお願いしたいということでした。よくよく考えるとあるサイトの管理者が当時外国の方で、若旦那と親しくさせていただいており、彼がピッタリだ!ということで相談すると、『僕で力になれることがあれば、やらせてください』と返事をいただき、英訳をお願いするようになりました」(あすかさん)
 英訳版のサイトが公開されたのは、27年4月のことだ。その効果のほどは……。
 同旅館の外国人利用者の数は、平成26年度は14人、27年度は24人、28年度は100人を目指していたのだが、29年1月末までの時点では20人とのこと。1月だけで5人の外国人客を迎えたというから、残りの二月で昨年並みくらいは行くのではないかと推測されるのだが、なかなか難しいところもあるようだ。
 「うちの場合は従来、ご夫婦などの2人連れの一方が外国人というのがほとんどでした。今までのところ、2人とも外国人というお客様はなく、これからそういうお客様もおいでになるのではないでしょうか。東京オリンピックの開催も迫り、訪日外国人旅行客も増えているようですから、英語サイトはこれから効果を発揮するのではないかと期待しているところです」とあすかさんは続けた。

プロジェクションマッピングを導入

三姉妹が富山の海の幸、里の幸を料理にしていく過程をアニメ化
しているプロジェクションマッピングの1コマ。
三姉妹はキャラクター化されて登場している。

 一方で彼女は「クリエイティブ産業振興事業」(27年度)の支援を受けて、テーブル上でのプロジェクションマッピングを作成。この事業は、クリエイター等のアイデアを活かして、デザイン性の高い商品パッケージの開発や、商品・サービスのプロモーション映像の制作、ホームページでの商品選択がしやすくなるようなオリジナルのシステムやアプリなどの開発を支援するもので、27年度から新たに始まったものだ。あすかさんはそれをさっそく活用されたわけだ。
 制作されたそのプロジェクションマッピングとは……。一般的にプロジェクションマッピングは、建物の外壁などにCG画像を投影するものだが、投影の対象は外壁に限定されるものではない。テーブルや人体、樹木などいろいろなものに応用が可能である。あすかさんがCGの投影先として目をつけたのは、お客様がつく夕食の際のテーブルだ。そこに前菜が出てくるまでの2分ほどの間、キャラクター化された三姉妹女将がブリやホタルイカ、野菜などを富山の海や里山から収穫してきて、料理してお客様にお出しするというショートストーリーを投影しようと考えたのだった。
 問題は、その制作会社を探すことであったが、常連客のある御仁が「あの会社のクリエイターならできるだろう」とヒントをくれたところから具体的なプランがまとまり、当機構は同振興事業に応募されたそのアイデアの斬新さを買い、事業初年度の採択案件の2件うちの1つとして採択。こうして卓上プロジェクションマッピングという珍しい制作が始まった。
 その結果でき上がったのが、右に紹介するものだ。天井のプロジェクターから、テーブルをはさんだ2人の前それぞれにショートストーリーが映し出される仕掛けになっている。
 「これをご覧になると、皆さん歓声を上げます。長年連れ添ってあまり会話のなかったご夫婦も、このショートストーリーをご覧になったことをきっかけに明るく話し始めますし、私たちとの会話も弾みます。一般的に、お客様とはチェックアウト間際になってやっと話が弾んだり、距離が縮まったりと名残惜しい結果になることが多いのですが、このプロジェクションマッピングを用いるようになってからは、初日の夕食が終わった段階で、それに近いところまでいけるようになりました。それはお客様の満足度アップにつながると思いますし、リピーターの方には違ったことをすることで『ここは来るたびに進化する宿』と思っていただきたいと期待しているところです」とあすかさんはご満悦だ。
 さて、この記事がアップされるのは29年3月だ。ちょうど富山湾ではホタルイカ漁が始まり、浜辺でのホタルイカのつかみ取りが行われる時期だ。
 毎年これを楽しみに、お宿いけがみに泊まられるお客様も多いというが、もちろん浜辺にお客様を案内し、いっしょになってホタルイカを捕まえているのは三姉妹だ。楽しかった、おいしかったという思い出を多くつくることができるようになって、かつてのようにお客で賑わう旅館になったのだ。

お宿 いけがみ(有限会社池上旅館)
魚津市北山684
TEL 0765-33-9321 FAX 0765-33-9322
事業内容/旅館業
URL http://ikegamiryokan.jp/

作成日  2017/03/27

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