第21回 株式会社FASSE 産学官連携 TONIO Web情報マガジン 富山

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産学官連携の様子をご紹介しながら、将来、売上げの柱になる可能性を生む新技術・新製品誕生のドラマを追う!

第21回 株式会社FASSE

半導体の装置メーカーが技術を生かして
医薬品製造機器の開発にチャレンジ

完成した粉取り機を前に、開発の経緯などを語る同社新規事業
開発課長の田上悟さん。

 FASSE(ファッセ)はもともとは、半導体の製造装置を開発製造する企業。半導体づくりにはクリーンルームが必要となり、その環境では静電気が発生しやすい。そこでクリーンルームの除電が必要となり、同社では半導体の製造装置の開発とともに除電システムの開発にも取り組んでいた。
 そうした中で、自社の技術・ノウハウを応用して収益の柱を増やすことができないかと考えていた平成24年頃のこと。「富山県は薬の生産量は多くても、薬をつくるための設備や周辺機器の生産は少ない。地元の機器メーカーが、製薬メーカーをサポートできるようになれば、ニーズに合わせた開発がしやすくなり、またメンテナンスも容易に行えて、製薬メーカーに喜ばれるのではないか」と考え、同社では新しいジャンルに進むことを視野に入れたのだった。
 そして、以前耳にした「製薬メーカーの中には、錠剤につく粉のことで困っているところがあるらしい」という情報を思い出し、そこに「新事業の可能性があるのでは……」(田上悟氏/同社新規事業開発課長)と判断してリサーチを始めたのである。

原理的なところから考察を開始

錠剤をアルミシートとプラスチックではさんだPTP包装の例。

 ではそもそも、なぜ製薬メーカーは錠剤についた粉を取ろうとするのか。それはアルミシートとプラスチックによるPTP包装の際、粉が付着していると包装が密着しにくくなり、見た目にもきれいとはいえない状況があるためだ。それゆえ従来は、パッケージの前工程で空気を噴射して粉を飛ばす、あるいはブラシで表面の粉をはらうなどの方法で、錠剤に付着している粉を取り除いてきたのだが、口腔内崩壊錠が登場して、物理的な力を加えることにも限度が出てきたのだ。
 「昨今は水なしでも飲めて、口に入れたらすぐに崩れる口腔内崩壊錠が増えつつあります。実際の粉取り機には、ブラシタイプのものが多いようですが、口腔内崩壊錠をブラシではらうと表面を傷つける恐れがあるのです」(田上さん)

打錠が終わった状態の錠剤サンプル。表面には薬の粉末が
多数付着している。

 そこで新しいタイプの粉取り機のニーズが浮上してきたわけだ。同社ではまず、「なぜ錠剤に粉が付着するのか」という原理的なところから考察を開始。その結論として「製造過程で錠剤が帯電し、静電気により薬の粉を吸着しているのではないか」と仮説を立て、「除電のシステムを粉取り機に取り入れることで問題は解決するのではないか」と見込んで開発に乗り出したのだった。
 ちなみに同社に先立ち、粉取り機に除電システムの導入を試みた企業もあったが、製薬メーカーのラインに採用されるには至らなかった。その訳は、除電のためのイオンをシャワーのように錠剤にかけるだけであったため、反対側の面が帯電したままであったのだ。そのため粉が残ったままの錠剤があったようで、製薬メーカーは導入に二の足を踏んだようである。
 そこでFASSEのスタッフは、以下のように取組み、その課題を乗り越えたのだ。
 錠剤がラインから粉取り機に移る際、筒状の空間を落下するようにし、筒内を通過するわずかの時間(おそらく1秒未満)に、イオンが四方八方から当たるようにしたのである。その結果、くまなく除電が行われ、わずかな振動を与えるだけで、錠剤表面の粉は取り除かれるようになったのだ。
 粉取り機の基本構想ができ、試作1号機が生まれたのは平成25年度に入って間もなくのこと。といっても商品として世に送り出すにはまだ早く、改良の余地は多々あったようだ。

公的支援を受けて商品をブラッシュアップ

同社の粉取り機により除電された後で粉が取り除かれた錠剤
サンプル。

 そこで同社では「新商品・新事業創出公募事業」(平成25年度、制度改正により産学官連携推進事業【新商品・新事業創出枠】に引き継がれる)の適用を受けて、粉取り機のブラッシュアップを図ることに。県の薬事研究所より錠剤サンプルの提供を受けるとともに、錠剤の成分によって帯電状態がどう変わるかなどのアドバイスも受けた。また新世紀産業機構の医薬工コーディネータからは、その年の7月に開催される第26回インターフェックスジャパン(医薬品・化粧品・洗剤の研究開発・製造技術国際展)に試作機を出展し、製薬メーカーや製薬機器の商社などの反応を調べたらいいのでは……と勧められ、東京ビックサイトの会場でお披露目したのであった。
 「そこで2つの有意義な出会いがありました」と田上さんは振り返る。
 ひとつはある打錠機メーカーが粉取り機に強い関心を持ち、「製造ラインに組み込めるほどに精度が上がったら、自社で採用して打錠機とセットで販売してもいい」という主旨のことを伝えてきたのだ。また一方は、樹脂製の薬の容器をつくっているあるメーカーで、「これをアレンジして容器につく樹脂の粉末を取り除くことはできないか」と打診してきたのだ。
 2社からの引き合いにより、粉取り機のブラッシュアップは実際の製造ラインを想定してのものとなり、製薬メーカー向けには試作1号機から数えて5機目が商品として市場に投入されることとなり、容器メーカー向けにはそれ用にアレンジされた改良バージョンが、この取材の時点(2月末)で容器メーカーのラインで試験稼働を行っている最中であった。

着々と進む導入に向けての改良

上は粉取り機の試作1号機。下は改良の末製品化されたもの。
マシンの開発に当たっては富山県工業技術センターのアドバ
イスも得ている。

 「粉取り機に錠剤を投入してすぐに除電し、その後の振動で粉を取り除く、という基本構造は1号機の時から変わりませんが、5号機まで改良を重ねてきたのには訳があります。そのひとつは粉の除去をより完全に近づけるため。もうひとつは、生産ライン全体の中での粉取り機のポジションを明確にし、錠剤がスムーズに流れるようにするためです」(田上さん)
 この弁をご理解いただくには、試作1号機と製品化された現在の画像を見比べるとわかりやすい。両方とも左側の金属の筒状の個所から錠剤が入り、落下の過程でイオンを浴びて除電される。そして右に運ばれ筒状の透明樹脂の部分に入ると、その部分が回転しながら錠剤を右に運ぶ。その過程で粉が取り除かれるわけだ。そして次のパッケージの工程へと錠剤は排出される。排出口は試作1号機では右端の下側で、製品化された現状のものでは透明樹脂の先の乳白部分の下側だ(ちなみに筒の先の、掃除機の蛇腹ホースのような部分は吸塵のためのシステム)。特許申請中のため細部を画像で紹介することはできないのだが、透明樹脂の中には螺旋状に羽根が連なり、回転するたびに錠剤がコロンとひっくり返り、かつ筒の先(右側)に移動するようになっている。またこの筒も一見、円柱に見えるが製品化されたものの内部は6角形の筒状で、筒や羽根の形状の試行錯誤だけでも相当の時間を要したのだった。
 また試作1号機では、錠剤の排出口は投入口より下がった位置にあるが、製品化されたものでは、錠剤はいったん落下するものの“V字回復”するように樹脂筒内を上っていき、投入時とほぼ同じ高さになってパッケージのラインへと排出されるようになっている。この改良は、導入を検討している打錠機メーカーからのアドバイスによるもので、実際のラインを想定してのものだった。
 粉取り機の開発は平成25年度以降も引き継がれ、展示会で出会った有望な見込み客とは意見交換や共同実験も行うようになり、平成28年に入ってようやく市場投入が見込まれるようになった次第。これを縁に富山の製薬関連の産業の裾野が広く、厚くなることを祈るばかりだ。

[株式会社FASSE]
 本社 高岡市岩坪23-25
 TEL 0766-25-2010 FAX 0766-25-2019
 URL http://www.fasse.co.jp/

作成日  2016/03/08

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