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第25回 世界をリードする環日本海経済交流

タイでのビジネスショー出展を支援
新たな販売ルートも開拓されて…

日本の企業向けに作成された SubconThailand2013のパンフレッ
ト(一部)。タイ国内はもとより、アセアン各国から約200社の部品・
加工専門のメーカーなどが出展する。

 「この展示会に出展してみようか」
 日本セック・タイ法人の南雲弘之社長(射水市の日本セック本社では会長)は、バンコクの事務所で、当センターからのメールマガジン(H25.2.25発行)を読んでつぶやいた。
 南雲社長が触手を動かしたのは、5月16日~18日の3日間、バンコクのタイ国際貿易展示場で開催されるサブコン・タイランド2013(Subcon Thailand 2013)。このビジネスショーには、自動車、機械、電機、エレクトロニクスなどの産業部品が展示されるが、富山県ではこの展示会に富山県パビリオンの設置を企画。新世紀産業機構を通じて、タイでのビジネス展開を模索している富山県企業にパビリオンへの出展を呼びかけ、販路開拓をサポートするとともに、タイ政府や関係機関との交流を密にすることを目的に、バンコクに向かったのであった。
 今号のレポートでは、タイ政府や関係機関との懇談の概要を紹介し、合わせて出展企業の1社である日本セック・タイ法人の南雲社長からうかがった、出展の狙いや成果などをまとめよう。

人的にも経済的にも交流が拡大

オープニングセレモニー(写真上)では、富山県から初めての
参加があり、6社の製品が展示されていると紹介された。タイ
投資委員会訪問の際(写真下)には、石井知事の親書を手渡し、
今後の経済交流について意見交換を実施。ワッサナー・ムトゥ
ターノン副長官に「ぜひ一度、富山におこしを」と勧める場面も
あった。

 富山とタイとの交流はここ数年、急速に拡大してきた。例えば、タイから富山県への観光客は、平成15年には150人ほどであったが、ここ10年間で徐々に増え、平成21、22年はそれぞれ約3,700人。翌23年は東日本大震災の影響で700人程度まで落ち込んだものの、24年に入ると回復基調を見せるようになった。そして新年度に入ってサブコン・タイランドに出発するまでの2カ月間では、約4,600人が来県。7月からタイ人観光客のビザ免除が実施されているが、ますます多くのタイ人観光客が富山を訪れるのではないかと期待されるところだ。
 経済交流も盛んになってきた。富山県の企業は、すでに37社49事業所がタイに進出(25年5月時点)。今後さらにタイへの進出が増えることが予想されるところから、県では県内企業のタイでのビジネス展開をサポートするための拠点として、富山県バンコクビジネスサポートデスクを設置したところだ(24年12月、北陸銀行バンコク駐在員事務所内に)。また平成24年に開催された、富山県ものづくり総合見本市NEAR2012に、タイから14社(団体含む)が参加。これは石井隆一富山県知事が、タイ投資委員会(BOI)長官に「NEARに出展しませんか」と誘ったのがきっかけだった。
 ミッション一行が、タイ政府(商務省、工業省)や関係機関(BOI、タイ工業連盟(FTI))などを表敬訪問した際には、ここ数年の交流のあらましを互いに確認し合うなかで、次のステップへの要望なども意見交換された。例えばBOIのワッサナー・ムトゥターノン副長官は、「日本で開催しているタイ投資セミナーを、今後は富山県でも開催したい」と提案。それに対して富山タイ協会の野村正也会長は、「タイへの進出を検討している企業が富山県内には100社ほどあり、アセアン経済共同体ができれば、タイへの進出はますます加速するのではないか」と応じ、富山でのタイ投資セミナー開催を歓迎したところだ。
 この話には後日談がある。「タイ投資セミナーを富山で」の案件は、タイ大使館の協力も得ながら現実のものとなり、9月11日に開催(会場/ANAクラウンプラザホテル富山)。BOIのワッサナー・ムトゥターノン副長官は、タイの投資環境や貿易概況を説明しながら、「タイは自由な投資体制をとっており、現地調達を条件としていないので、事業活動がしやすい。また、東南アジアの国々にさらに展開していくことを計画されているなら、タイに拠点を置くと便利だ。日タイの輸出入額は、2009年以降、安定的に増えており、この動きは今後も変わらない」と県内企業の経営陣に熱弁をふるった。
 訪タイミッションに話を戻そう。意見交換の場では、「急激に外国企業がタイに進出して、技術者や事業所用地に余裕はあるのか」と当機構の鹿野健マネージャーから問い掛けがあった。それに対して、タイ商務省国際貿易振興局のアンパーワン・ピチャライ副局長は、「アユタヤ付近では人材に余裕があり、事業所用地としてはカンボジアとの国境に近い304工業団地は、東西回廊があるため物流的にも恵まれている」と返してきた。
 タイへの進出について語る際、2年前の洪水を引き合いに出し、懸念を表される人もいるようだ。この点について、ジェトロバンコク事務所の田中一史次長は、「洪水後、日系企業の周辺国への移転はなく、翌年には年間の自動車生産が245万台と過去最高を記録した。また日本のコンビニエンスストアや宅配運送業などのきめ細やかなサービス業が受け入れられ、日本からの企業進出はますます盛んになっている」と、先の懸念を一掃したところだ。

フォロー営業で3件受注、内2件は大口で…

11月上旬、1週間ほど帰国された南雲社長に、展示会の様子を
うかがった。「今後もチャンスがあればタイでの展示会に出展
したい」と意欲満々だった。

 さて、富山県企業のサブコン・タイランド2013への出展の件だ。当機構ではホームページやメールマガジンで、出展企業を募ったところ、冒頭に紹介した日本セックを含め、6社から応募があった。いずれも県内のものづくり企業で、うち3社は、タイに現地法人を有しながらも新たな販売チャネルをつくることを企画。2社は、シンガポールに拠点はあるもののタイに足場がなかったのでこれを機にタイへの進出をうかがい、残りの1社は代理店経由でタイで販売するのみで、独自のルートを開拓したいという意図をもって出展したのだ。
 日本セック・タイ法人の南雲社長が、タイに進出した当初を振り返る。
 「当社では21年前の平成4年から、代理店経由でタイの企業や行政機関に表示板の販売・施工を行ってきました。ところが平成9年のアジア通貨危機で、バーツが急落したためタイでのビジネスが非常に厳しくなったのです」と。
 その時、「撤退も考えた」という。しかし、「徳俵に足がかかった状態で踏ん張って、タイでつくって日本で売る方向に転換した」のだそうだ。
 その後、平成20年に現地法人を設立して、協力工場の生産管理から販売も手がけるように。富山の本社への販売以外は手探り状態であったものの、日本のある代理店の協力を得て、タイでの販売も開始。代理店とともに展示会に出展し、代理店名義で顧客の開拓に努めていた。
 しかし昨年頃から独自の販売チャネルを持ちたいと思うようになり、そう思っていたところに、当センターの「サブコン・タイランド2013出展企業募集」のメールマガジンが届いたわけだ。
 南雲社長にとっては、渡りに船だった。バンコクからさっそく「参加」のメールを返信して、サブコン・タイランド2013に臨んだ。
 展示会には、南雲社長も立ち会った。パンフレット等の資料を要望されたのは約200社。うち60社程度に「脈がある」と感じたようだ。そこで展示会終了後、南雲社長は現地スタッフとともにフォーローの営業に歩み出した。
 「この5カ月間の営業で、3件の販売・施工を受注することができました。そのうち2件は大口の案件で、代理店の力を借りずに受注できたことは現地スタッフの自信になるとともに、会社にとっても大きな実績になりました」と南雲社長はえびす顔だ。
 展示会最終日に、富山県から出展した6社にアンケートをとってみた。商談結果に「満足」と答えたのは1社、「やや満足」は4社で、残り1社は「やや不満」。総合評価も同じスコアだ。ただ「やや不満」の1社は、すでにタイに現地法人を構えており、「コンタクトを得た企業との関係を維持・発展させる」のはもちろんのこと、「本社から再度タイを訪問し、販売促進に努めたい」と意欲的で、「今後もこういう展示会に参加したいか」の問いには他の5社ともども「参加したい」に○をつけていた。

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 話は変わるが、南雲社長がタイでの事業展開を考えたのにはわけがある。それはこうだ。
 「反日感情が強い地域に進出したら、それが沸騰した時には経営資源をその対策に割かないといけない。中小企業にはそんな余裕はないから、親日的な地域での展開の方がリスクは少なくて済むのではないか」
 二十数年前、こうした思いをもってアジアの国々を歩いたそうで、その結果タイ進出を決めたという。南雲社長は今では、日本にいるよりタイでの生活時間の方が長くなり、「あの時の決断は間違っていなかった」と実感しているところだ。

○問合せ先
[(公財)富山県新世紀産業機構 環日本海経済交流センター]
所在地 富山市高田527 情報ビル2F
TEL 076-432-1321  FAX 076-432-1326
URL http://www.near21.jp/
海外販路開拓サポートデスクについて(台北・バンコクビジネスサポートデスクについて)

作成日  2013/11/25

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