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[ 特集 ]中小企業活性化協議会

本年4月、中小企業活性化協議会が始動

より“軽症”のうちに経営改善を!

企業再生が進みつつある氷見市の温泉旅館
「うみあかり」全景。ある旅行サイトでは、
宿泊客等からの高い支持を得て表彰を受けている。

 「あのテレビドラマが描いたM&Aや企業再生の世界に、当機構のような行政の立場の人間が関わるようになったのは、これまた時代の要請なのかもしれない・・・」
 これは氷見市にある旅館「うみあかり」の企業再生についての取材の後で、編集子と同行した機構職員がつぶやいた一言。「あのテレビドラマ」とは、「倍返しだ」が有名なフレーズの銀行を舞台とした人間模様を描いたドラマのこと。債権者−債務者の間に立って、再生スキームを崩さないように調整を進めていく再生支援マネージャーには、まさしくあのドラマのような場面に遭遇したことがうかがえた。
 時計の針を十数年前に巻き戻そう。
 経営難に陥った「マイアミ」(「うみあかり」の前身)は、身の丈に合わない負債を抱えて二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなった。外資系ファンドの管理下で企業再生を試みるも、なかなかうまくいかず嵐の海をゆく小舟のように漂っていた。そうした折、「マイアミ」の従業員であった里木昌博さんがファンドの推薦を受けて、平成22年、社長に就任。翌年秋〜暮れにかけて、宿の名称を「うみあかり」に変えることを決め、登記・商標等の変更手続きを経て、24年4月、「うみあかり」としての営業を開始したのだった。
 事業や仕入れ先の見直し(遊覧船事業の売却、固定の業者への発注から入札制度導入)等々により経営改善を試みるも、返済や利払いの重圧は変わらず、そのうちに外資系ファンドは国内の証券系ファンドに同社の債権を転売。その営業マンから「中小企業再生支援協議会のサポートを受けて企業再生に取り組むのも一つの方策」と里木社長がアドバイスを受けたことを機に、「うみあかり」は再生への一歩を踏み出した。平成27年のことである。
 この中小企業再生支援協議会。今年4月には経営改善支援センターと統合して中小企業活性化協議会に改組。当機構に事務局(支援業務部門)を置き、中小企業の収益力改善や事業再生、再チャレンジをワンストップで、一元的に支援することになった。本稿では、企業再生施策の概要とともに当機構での支援事例を示し、またアフターコロナに向けた再生支援・企業活性化のポイントを紹介しよう。

“瀕死”になる前に企業再生を

従来(今年3月まで)の企業再生・経営改善支援の概要と、4月以降の施策概要を模式化したイメージ図
 (当活性化協議会の綾子PM作成)。

 ご承知のように、バブル崩壊は大きな爪痕を残した。平成9年には大手の一角を占めた証券会社や銀行が破綻。翌年にも大手銀行2行がその歴史に幕を下ろし、さらにその後には過剰債務に苦しむ企業が存立の危機にさらされた。大手スーパーの整理・再生が図られたのは平成15年のこと。この整理・再生にあたって、国は産業再生機構を設立して企業再生のスムーズな進展を試みたが、同じような経営状況にある全国の中小企業の再生も図るために、中小企業再生支援協議会を各都道府県に設置。公的な産業支援機関や商工会議所等にその業務を委託し、富山県では当機構が引き受けて業務に当たることとなった。
 主な業務を紹介しよう。
 民事再生法による再生支援(つまり法的整理)は、例えるならば、瀕死の患者に対して外科的な手術を施して患部を切除し、大量の輸血や薬剤・栄養剤の投与も行って命を長らえるようなもの。企業再生のために大ナタをふるい、債権者も債務者も大きな痛みを負い、債権カットや経営陣の刷新などが求められた。
 これに対して中小企業再生支援協議会による再生支援は、同様に例えるならば、瀕死になる前の重症患者に、なるべく痛みの少ない手術や化学・薬物療法を加えることにより企業再生を図ろうというもの。民事再生法の「法的整理」に対して、こちらは「調整型の私的整理」を目的とし、最初から「債権カットありき」で臨むのではなく、対象企業の経営上の課題を把握した上で、再生の方策を探るものである。
 富山県中小企業活性化協議会のプロジェクトマネージャーを務める綾子賢氏が語る。
 「再生支援のご相談をいただいた際、協議会は『なぜ赤字なのか』『なぜキャッシュフローがうまく回らないのか』等を当事者間で十分に話し合い、解決策の有無を模索し、その実現可能性について探ります。その上で、企業(債務者)にも金融機関(債権者)にも中立の立場で現状把握するために、分析作業(DD:Due Diligence/デュー・デリジェンス)を中小企業診断士や公認会計士など外部の専門家に委託し、再建計画を作成してもらいます」
 場合によっては借入金をどのように返済するかについても話が及ぶ。「私的」とはいえ「整理」の二文字があることから債権カットをすぐに思い浮かべる方がおられるかもしれないが、その昔の「徳政令」のように“何でもかんでも借金棒引き”ということではない。借りたお金は返すのが当たり前、これを原則として金融機関の経済合理性を追求し、“民事再生になって80%の債権カットになるより、今なら50%の回収が可能だからそれで手を打とう”と判断したり、一定期間の返済猶予や金利の低減、債権を劣後ローンや株式に転換してもらうなどのスキームも視野に入れて企業再生を図るのだという。
 企業と金融機関の間の調整は、協議会が行う。中小企業診断士や公認会計士などの専門家が作成した再生計画をもとに、どちらか一方に偏ることなく中立の立場で話し合いを進め、企業再生の道を探る。方向性の決定は多数決ではなく、債権を持つ金融機関すべての合意を得て決められる。一行でも異を唱える金融機関があれば、合意に向けて粘り強い交渉が続けられ、それでも合意が得られなかった場合は、再生スキームは一旦白紙に戻され、一から練り直される。協議会のマネージャーは、金融機関と協議を重ね、合意を得るために調整を図ってきたのだ。

重症化する前に経営改善を!

「『中小企業のかけこみ寺』として幅広く中小企業者の
相談に応じています」と語る、富山県中小企業活性化
協議会の綾子賢プロジェクトマネージャー。

 バブル崩壊後、前述のような概要で経営難に陥った中小企業の再生支援が行われていたが、平成20(2008)年秋、いわゆるリーマンショックが起きて立ち直りつつある中小企業に追い討ちをかけた。これを受けて国は翌年、「中小企業金融円滑化法」を施行。別名「金融のモラトリアム法」といわれたこの法律は、借入金の返済が困難な中小企業が緊急事態に対処するために、金融機関からのリスケジュールの同意を得やすくするためのもの。その円滑化法の終了にあたる出口として、経営改善支援センターが各都道府県に設置されたのである。
 「国が認定する士業等専門家(税理士や中小企業診断士等)が中立的な立場で経営改善計画を策定し、経営改善支援センターは事務手続きをサポートする形で事業を進めました。前述の中小企業再生支援協議会同様、当機構内に経営改善支援センターの事務局を置き、両者の連携を密にして中小企業の経営改善に当たりました」
 続けて綾子PMは、「この事業は、重症化する前の中等症の段階で経営改善の道を探り、健全経営への道標を示そうというものです」と疾患を抱えた患者を例に語った。

「うみあかり」再生のために協議会職員が奔走

「うみあかり」の里木昌博社長。
社員の雇用を守るために同社の社長を引き受け、
企業再生に取り組んで成果を出しつつある。

 こうして中小企業の再生支援施策が充実してくる中で、「うみあかり」は平成27年に再生への第一歩を記すことになるのだが、その道のりは決して平坦なものではなかった。里木社長が振り返る。
 「外資系ファンドから当社の債権を買い取った国内の証券系ファンドも、『2〜3年のうちにどこかのホテル・旅館グループに転売する予定だ』といい、売却益にしか関心がないように見えました。ただ、証券系ファンドのある営業マンは、『関心があったら行ってみたら・・・』と中小企業再生支援協議会のパンフレットを渡してくれたのです。そこには『企業再生の道がある』と書かれていて関心を持ちました」
 ちょうどその頃、2社の企業再生に関与した経験のある竹本恭司氏を金融機関の紹介で総務部長に迎えた里木社長。さっそく再生支援協議会を訪ねて企業再生についての相談を始めた。また一方では、証券系ファンドから企業再生の手続きをとるための同意を得るために5カ年の事業計画書を作成し、「今のままでは会社が潰れるのを待つだけだから、再生に向けて何かしよう」(竹本部長)と一念発起。ファンドが有する債権を買い戻すための融資を金融機関に募り、他方では債権を有する金融機関にリスケジュールの同意を得るために奔走したのだった。
 ところが、10行を超える金融機関を回ってもほとんどが門前払い。事業計画書そのものを受け取ってもらえない場合もあったという。その時、「うみあかり」再生に向けて地道な歩みをしていたのが、再生支援協議会の当時の担当職員だ。
 里木社長が述懐する。
 「協議会の担当職員と一緒に金融機関には何度も足を運びましたし、職員単独でも訪問されていたようです。全行からリスケジュールの合意を得られる・・・と思った矢先、最初に同意していただいた金融機関が『本店の同意を得られなかった』と翻意し、それを機に同意を翻(ひるがえ)す金融機関が現れる、ということもありました。そういう場合はリスケジュールについて改めて交渉するために、担当職員との金融機関回りを再開するのです」
 金融機関にはそれぞれ事情があり、全行からリスケジュールの合意を得るには時間がかかった。ましてや追加融資の要請に耳を貸す金融機関はなく、再生のための事業計画書は“絵に描いた餅”で終わるのかと思われた時、ある一行が「こういう時こそ地元の中小企業を助けなければいけない」と手を挙げ、また市外のある信用金庫が「これからは市域の枠を超えて融資を検討すべき」と名乗りを上げてくれたのだった。

法人税を納める企業に変身

「中小企業チャレンジファンド事業」の支援を受けて作成
した「うみあかり」のプロモーション動画(冒頭部分)と、
ワーケーションプランを紹介する同宿のホームページ。
「うみあかり」では令和3年度の「富山県中小企業
リバイバル補助金」を活用して、館内のWiFi整備に取り
組んだ。

 証券系ファンドから債権を買い戻し、企業再生に向けて歩み出したのは、里木社長が再生支援協議会を訪ねて1年数カ月が経過した頃のこと。最終的に、追加融資は目標額の160%超を達成し、超過分で館内のリフォームを実施。第二会社方式(採算性のよい部門を別会社(第二会社)に移して事業の存続を図り、不採算部門を旧会社に残して清算して再生を図る方式)での経営改善を試みたところ、初年度(平成28年度)より黒字に転化することができた。
 「協力していただいた金融機関の方々には、感謝するばかりです。おかげさまで5カ年計画で立てた目標は全てクリアすることができ、法人税を納める事業所に転換することができました」(里木社長)
 この間、同社では当機構の「中小企業チャレンジファンド事業」(平成28年度)を活用して、ホームページ上に「うみあかり」の紹介動画を公開。ドローンを駆使して、海辺の温泉宿の魅力を紹介したのだった。そして平成30年度には「専門家派遣事業」の採択を受けて、中小企業診断士を招き、予約や経営管理にITを導入して合理化を図り、経営改善の一助としたのである。
 また令和3年度には「富山県中小企業リバイバル補助金」の採択を受けて、館内WiFiの整備を実施。コロナ禍により派生してきたワーケーション(テレワークを活用し、リゾート地で普段の仕事を行いつつも、その地での活動を楽しむ生活様式)に対応し、宿泊客の取りこぼしを少なくするための取り組みも始めたのであった。
 「この十数年の改革を通して、当館では団体客から個人客へとシフトし、経営のスリム化の一方で、客単価の向上を目指してきました。初期は亀のような歩みで目的地に着くかどうか不安なところもありましたが、再生支援協議会からの助言をもとに経営改善に取り組んできたところ、コロナ禍でもなんとか生き残り、毎年新卒採用ができるようになりました」
 里木社長はこのように取材を締めくくり、「金融機関の方々には、これから恩返ししなければいけない」と結んだ。

アフターコロナのための経営相談

中小企業庁の「中小企業活性化協議会」設置を
告知するサイト(一部)。

 さて冒頭に、中小企業再生支援協議会は経営改善支援センターと統合して、今年4月より中小企業活性化協議会として改めてスタートを切ったことを紹介した。その意図するところは・・・。コロナ禍により中小企業の資金繰りがかつてないほど厳しい局面を迎えたため、国はゼロゼロ融資(実質無利子・無担保)等の緊急対応で支援し、再生支援協議会は「新型コロナリスケジュール」で対応するも、いつまでもそれに頼ることはできない。そこでアフターコロナ、ウィズコロナを視野に入れた企業活動が必要になってくるが、国は中小企業活性化協議会を通して、より広範囲な支援を提供することを企画。先述の人の病(やまい)に例えると「中等症以前の、軽い風邪・腹痛の状態から相談に乗ろう」(綾子PM)と支援の範囲を広げ、収益力改善計画の提示や助言を行い、より早い段階から症状の悪化を防ごうというのだ。
 平たくいうと、「資金繰りが苦しくなったら(苦しくなりそうなら)、早めに相談してください」ということ。本県の場合、中小企業活性化協議会の事務局は当機構内にあり、企業の課題に応じて経営全般の相談(よろず支援拠点)の他、販路開拓(中小企業支援センター、アジア経済交流センター)や新商品・新技術の開発(イノベーション推進センター)などにもワンストップで対応が可能。経営改善のための総合病院的な役割と、健康増進センターのような機能も合わせ持ち、中小企業の経営者には利用しやすい支援機関となっている。経営上の不安がある時は、ぜひともご相談いただきたいところだ。

○問合せ先:(公財)富山県新世紀産業機構 

        富山県中小企業活性化協議会
所 在 地:〒930-0866 富山市高田527 情報ビル2階
TEL 076-444-5663  FAX 076-444-5618

URL : https://www.tonio.or.jp/

作成日  2022/08/31

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