第46回 株式会社ナカノ 広域商談会 とやま中小企業チャレンジファンド 販路開拓挑戦応援事業(県外) TONIO Web情報マガジン 富山

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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第46回 株式会社ナカノ

得意なステンレス加工の技術を活かし
BtoBを拡大、BtoCにも進出・・・・

「これからはBtoCにも意識をもっと持ちたい」と語る中野隆志社長。

 黒部市に本社を構える(株)ナカノ。ステンレス製部品の製作や精密板金、搬送関連製品の設計・製作などが得意な会社。従来のビジネスモデルはBtoBがメインであったが、次世代型進化系ごみステーション「DUSPON」(ダスポン)を開発し、市販するように。町内会や企業等で採用される中で徐々に販路が拡大し、2018年度のグッドデザイン賞に輝いた。
 「これからはBtoCも意識して、商品開発していきたい」
 と中野隆志社長は意欲満々な姿勢を示すが、ここに至るには苦難の道もあったようだ。

新規顧客開拓のために広域商談会に参加・・・・・

同社工場の様子。6mの長尺もののステンレスの加工を歪みなく
できるところは全国的に数えるほどしかなく(写真上)、
大手の機械メーカーが噂を聞きつけて加工の依頼をしてくる
ケースもあるようだ。

 創業は1967(昭和42)年。鉄工所に勤めて新川地区の工場等の生産ラインの整備に当たっていた先代が、24歳の時に起業した。ラインにトラブルがあった際は、徹夜してでも早く直して、翌日の操業の支障にならないようにと熱心にがんばるその姿勢から、当地の大企業をはじめとする地元有力企業の数々から、「君が独立するなら応援する」と熱い支援の言葉をいただいての独立であったようだ。
 「親父(おやじ)のそのご縁を、今も仕事で感じることがあります」と中野社長は語るが、「オイルショックの時は厳しかった」と先代が口癖のように語ったことを思い出し、「私はそれをリーマンショックの時に追体験しました」と続けた。
 リーマンショック。2008(平成20)年9月15日、アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発して起きた、世界的な金融危機を総称していう。日本でも株価が暴落するなど、大きな影響を受けた。
 「オイルショックの時に親父は、名古屋に営業に出かけて仕事を1つ掘り起こしていたのですが、リーマンショックの時はもっとひどく、仕事がパタリと止まりました。そこで“じたばたしても始まらない。こういう時だからできることをしよう”と社員に呼びかけました」(中野社長)
 板金や溶接の技術アップを図るために、スキルの高い先輩社員が講師役になって技術指導を繰り返した。また拡大路線を続けてきた結果、“組織に贅肉がついたのではないか”と判断し、社内のスリムアップを図った。そして当機構が首都圏、中京圏、関西圏等の企業からの部品や組立て等の発注等を斡旋していた広域商談会にも積極的に参加するようになったのだ。

リスクを分散するために

大都市周辺の産業集積地で開催される当機構主催の広域商談会
の様子。上は東京(H30.11.28)、下は名古屋(H31.2.26)。

 「広域商談会への参加は、発注先を分散し、仕事が止まることはないようにしよう、という親父の考えで始めました。そして平成24年からは他の社員に任せるのではなく私が行くようにし、なるべく多くの商談会に参加するよう努めてきました」
 中野社長の言葉通り、同社は平成24年は東京、大阪、神奈川、名古屋、25年は東京、26年は東京、名古屋・・・というふうに平成30年度まで欠かさずに広域商談会に参加。特段の事情がない限り複数の会場に赴くようにしたようだ。そこでこれまでの成果を中野社長にうかがうと、「24年、27年の名古屋の商談会で出会った企業からは大きなご注文をいただき、その企業との取引きは今も続いています」と返ってきた。そして「仮に受注に結びつかなくても、同業者や周辺の業界の方々との情報交換は有意義です」と続けるのだった。
 一方の「DUSPON」(ダスポン)の件。これは元々は魚津市ある町内会からの相談がきっかけで始まった。
 「町内のごみステーションは鉄製で、錆びて赤くなって景観としても見苦しい。また金網の隙き間からカラスがくちばしを入れ、生ごみをちらかして困っている。製缶、板金が得意なナカノさんなら、何かいいものをつくることができるだろう」と町内会の役員から声をかけられた。1994(平成6)年のことだ。
 設計図を描くことが得意な先代は、10種くらいのごみステーションの絵を描き、役員に提案したところ、そのうちの1つを試しにつくってみようということに。そして町内のステーションに設置すると、それまでたくさん集まっていたカラスが来なくなり、隣の町内のごみステーションに集まるようになったというのだ。

グッドデサイン賞受賞。さらに商品開発を

同社のスライド式DUSPONは足元から開くため投入が楽で高齢の
方の評判がよい。写真下はグッドデザイン賞の表彰を受けた後で。

 これが口コミで他の町内にも伝わって注文を受けるようになったばかりか、新川地区のある大きな企業が「工場内の回収ボックスに便利だ」と年に70台前後の発注を幾年にもわたって出してくれたそうだ。
 「今ではバリエーションも増え、ハウスメーカー2社が進める富山県内のアパート建設の際には、設計段階からDUSPONが採用されるようになりました」
 と中野社長はご満悦の様子で語り、2018年度のグッドデザイン賞を受賞したことも明かしてくれた。
 DUSPONはオールステンレス製で、クリーンなボディーを保つ。足元までスライド式のものは、袋を高く持ち上げなくても投入することができ、女性や高齢者に優しい設計となっている。換気のための側面の穴は、パンチングによる小さい穴であるためカラスのくちばしも入らない。本品のデザイン性もさることながら、町の美観を守るところが評価されてのGマークではないかと思えてきた。
 同社ではこのDUSPONの販売に勢いをつけようと、2018(平成30)年度のとやま中小企業チャレンジファンド(販路開拓挑戦応援事業(県外))の採択を受けて、第25回建築・建材展2019(2019年3月5〜9日、東京ビッグサイト)への参加を決定。まずは首都圏での販路開拓に着手し、いずれは全国の市場もうかがう予定だ。
 またDUSPONの開発にヒントを得て、他に3つの商品化も模索。消費者ニーズを探りながらの商品開発に愉しみを見つけたばかりか、BtoCによる売上げを増やしてのリスクの分散を図ることも念頭に置いているようだ。

連絡先/株式会社ナカノ
〒938-0043 黒部市犬山213-1
TEL 0765-52-1896 FAX 0765-54-0352
URL https://na-ka-no.co.jp/

作成日  2019/03/28

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