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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第39回 有限会社モメンタムファクトリー・Orii

どん底状態で事業を引き継いだ三代目
復興を果たし、アメリカ・ドイツにも

「ヴォーグジャパン」と「アンリアレイ」がコラボレーションしてでき
たワークウエアを同社に皆さんに着ていただいた(上)。ストロボ
の光が強すぎて模様は全て白っぽくなっているが、蛍光灯の下
では、ピンクや青、黄色に発色するものがあり、星空のように輝く。
(下)は折井社長。

 「この記事、見てください」
 折井宏司社長が女性ファッション誌「ヴォーグジャパン」(VOGUE JAPAN)を広げた。見るとそこにはスレンダーな男女のモデルが白い生地のジャケット・パンツ/スカート姿でキメのポーズをしている。ウエアの表面には、機械修理工の作業服についた油のシミのような模様が不規則にちりばめられている。
 実はこのウエア、「COTTON USA」「ヴォーグジャパン」ファッションブランド「アンリアレイジ」と「モメンタムファクトリー・Orii」とのコラボレーションによりできたワークウエア。世界的に評価されつつある上質なアメリカ綿を用いて斬新なワークウエアをつくることで、後継者不足により減りつつある日本の伝統工芸や伝統技術の、「きつい、汚い、暗い」イメージを、一新することを狙って企画されたもの。伝統的な銅器の着色技法に新しい息吹を吹き込んできた折井社長ら同社スタッフのために、「アンリアレイジ」のデザイナー・森永邦彦氏が特別にデザインしたものだ。
 「ヴォーグジャパン」のそのページを、ここで再掲することは著作権上支障があるので、同社スタッフの皆さんにワークウエアを着ていただいた。冒頭に掲げた一葉がそのキメポーズだ。陽光の下では、一般的なワークウエアと変わらないが、カメラのストロボや蛍光灯の光を反射すると模様が浮かび上がる。この写真ではストロボの光が強すぎて、模様は皆白くなっているが、蛍光灯の下ではピンク、青、黄などの色が淡く浮かぶ。仕事の現場でついたシミを“職人の勲章”に模しているらしく、若い世代に職人魂や伝統技術が受け継がれるように、という願いが込められているのだそうだ。
 「でも僕が、跡を継ぐためにUターンしてきた20年前には、銅器の着色の世界に希望はありませんでした」。折井社長はしみじみとこの20年を振り返るが、それはどん底からのスタートであった。

老舗のデパートから声が……

折井社長が初期に取り組んだ着色した銅板を用いた例。スタンド
(上)と建物の壁面(下、富山県民会館)

 折井社長がUターンした当時の高岡の銅器業界は、“動悸業界”と揶揄されるほど疲弊していた。職人の中には、「この家業はオレの代限り。お前はサラリーマンになれ」と息子に諭し、廃業したところも多いと聞く。折井青年(当時26歳)はそんな中で、家業を継ぐ決心をしたのだ。といって、家業再興のための腹案があったわけではない。この業界では分業が進んでいるため、その一部である着色工程だけが商売繁盛になることはあり得ないことだった。
 「着色屋には、独自の商品はありません。そこで僕は、ホームセンターでも買える圧延板を入手し新しい発色技法の開発に取り組み、着色した銅板を時計の文字盤や一輪挿しのベースに応用する、あるいは建材としての展開を図っていきました。そうした中でこの新しい発色技法は話題となり、半減していた銅器着色の売上げをフォローアップし、徐々に従来の売上高までに戻すことができました。しかしそれがなかなか安定せず、かつてのような売上げを維持することに苦戦していました」(折井社長)
 こうした模索を数年続けたある日、某IT企業の営業マンの紹介で当機構を訪れた折井社長。「ホームページ作成の支援を受けたい」と切り出してサンプルの銅板をテーブルに広げると、「それも進めたらいいだろうが、これだけの技術を持っているのなら、展示会に出展して実物を多くの人に見てもらった方がいい」と提案され、翌年、中小企業自立化支援事業(平成21年度)による支援を受けて、インテリア・ライフスタイル・リビング展に出展したのであった。
 「それ以前にも、伝統産業青年会や組合事業などで、東京での展示会には何度も出展していましたが、爆発的な成果はありませんでした。ところが単独で出展したこの時は、注目度がまったく違いました」と折井社長がいうように、この展示会出展はまさに同社のターニングポイントになったのだ。
 多くのバイヤーに出会って、20店ほどのインテリアショップとの間で取引きが始まった。また名刺交換したバイヤーの中にはある老舗デパートの担当者がいて、1年後、そのデパートのリニューアルオープンのイベントとして「4週間Oriiブランドの商品を展示即売してほしい」と打診してきたのだ。もちろん折井社長は引き受けたのだが、22年度は「地域資源ファンド事業」の採択を受けていたため、その支援の下で増やした商品も展示するとともに、来場者一人ひとりにパンフレットを差し上げたのであった。
 このデパートでの展示即売会は、翌年以降も続くことに。また他のデパートからも催事の際に声をかけられるようになり、中には常設の販売コーナーを設けるデパートも現れたのだ。

 

そしてニューヨークへ

戸田祐希利さんデザインによるtoneシリーズの一例。ワインクー
ラーや鉢植えに利用できるバケツ(上)とランプシェード(下)。

 こうして徐々に注目を集めるようになると、インテリア雑誌などの取材も受けるのだが、知名度が上がると思わぬところから声がかかってきた。その一つはジェトロ(JETRO/日本貿易振興機構)だ。モメンタムファクトリーOriiでは、国の地域資源活用プログラムの採択を受けて(平成23年)、銅器着色技法を応用しての建材製品の開発を図っていたのだが、地域資源ファンド事業でのインテリア用品の開発と合わせて、商品開発がユニークだと評価されて、ジェトロよりニューヨークの国際現代家具見本市への出展を勧められたのだ。
 「この展示会でもものすごく注目されました。直接的には大きな商談はまとまっていませんが、この出展を機にマテリアルコネクションという素材図書館に、当社の着色パネルが収蔵されました。マテリアルコネクションは世界12カ国に拠点があり、建物の設計やデザインをされる方がよく利用されるそうで、当社の着色パネルをご覧になられた方からのオーダーが入っており、ドバイやサウジアラビアの物件に納入する予定もあります」と折井社長は語るが、ニューヨークの国際家具見本市に出展したことで日本国内での注目度がさらに上がり、売上げも大幅に伸びることに繋がった。
 思わぬところからの声のもう一つは、独立したばかりのデザイナーからだ。声の主は高岡短期大学(富山大学芸術文化学部の前身)の卒業生・戸田祐希利さん。戸田さんは大阪の家具メーカーでデザイナーとして働いていたのだが、独立して創作活動をはじめた事を機に、自分の作品を高岡で鋳造し、折井社長のところでの着色の依頼と工場見学を申し込んできたのだ。
 「インテリア・ライフスタイル・リビング展などには、平成21年から3年続けて出展し、翌年もそのつもりでした。しかし僕の視点からの商品だけでは、来場者に飽きられるのではないかと心配でした。そう思っていた矢先に戸田さんと出会い、彼と話をしているうちに『面白い感性をしているから、ウチの商品をデザインしてもらおう』と思い、『当社の契約デザイナーになりませんか』と誘ってみたのです。そしたら戸田さんは、ぜひやってみましょうと快諾してくれて…」
 折井社長は声を弾ませた。翌年の展示会では戸田さんがデザインし、同社による着色が施された「tone」(トーン)が従来品以上に注目を集め、「エル・デコ」(ハースト婦人画報社)など数々のインテリア雑誌で大きく取り上げられ、おかげでモメンタムファクトリーOriiは、再びバイヤーから注目されるようになったばかりか、戸田さん自身も全国で活躍するプロダクトデザイナーになったのだった。

従業員は2倍に、そして売上げは3.5倍に

若い人が嫌う典型的な3K職場であるが、商品が注目されるよう
になると県外出身の若者も増え始めた。

 商品が動き始めると、生産の現場が忙しくなるばかりか、受注や発送、入金管理などの販売業務も増える。従来は社長が、あるいは社長夫人が総務・経理と兼務の形で対応してきたが、それも限界に近づいてきた。同社では、創業等企業力強化支援事業(平成25年度)の採択を受けて、販売管理用の人材を確保することに。この事業は、かつての国の緊急雇用の地方版のようなもので、スキルを持った人材を確保するために一定期間の人件費を補助し、期間満了後は双方の合意の下で雇用の継続を図るものだ。折井社長は、文字通り猫の手も借りたいほどの忙しさであったため、その人材の継続雇用とともに、販売管理の合理化などに取り組んだのである。
 また前述のように、ニューヨークの国際現代家具見本市に出展したのを契機に、アメリカを中心とした建築・デザイン関係の業界に注目された同社であったが、「ヨーロッパにも……」とドイツのインテリア用品の総合見本市「アンビエンテ2016」(Ambiente2016/2月12~16日)に出展。「小さな元気企業応援事業」(平成27年度)に採択され、出展費などの補助を受けてフランクフルトの国際見本市会場に飛んだのだ。

アンビエンテ2016に出展した際の同社ブース

 「アンビエンテでは、日本のインテリア用品の販路開拓の支援をされている方と出会い、支援していただく約束をしました。またパリにギャラリーを持っている方との知遇を得、そのギャラリーでの展示についても勧められました。29年1月にはパリでの出展、アンビエンテには29年2月にも行く予定にしています」(折井社長)
 積極的な商品開発や海外市場をうかがう同社の姿勢は、地元のみならず全国の美術系大学の学生に注目されるようになり、工場見学に訪れる学生は年々増加。そうした中から就職希望者が現れ、従業員数はターニングポイントの時の倍の10人に。売上げは3.5倍になった。
 折井社長は、同社の3代目だ。会社を継ぐためにUターンし、新しいことに取り組む折井青年を見て「3代目の道楽」と揶揄されたこともあったというが、業界の常識に捕われなかったことが功を奏して希望の道が開けてきた。折井社長は今、この勢いを維持して売上げ5倍を目指して、本年度、2度目の地域資源ファンド事業に挑戦。「tone」のバリエーション展開を図るとともに、ヨーロッパを中心とした海外市場の開拓を狙っているのだった。
 2~3年後の続報(それも朗報)を、期待していただきたいところだ。

連絡先/有限会社モメンタムファクトリーOrii
〒933-0959 高岡市長江530
TEL0766-23-9685 FAX0766-23-9696
URL http://www.mf-orii.co.jp

作成日  2017/01/04

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