第43回 タカタ精密工業株式会社 展示会・商談会 高精度加工 短納期の秘訣  TONIO Web情報マガジン 富山

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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第43回 タカタ精密工業株式会社

性能のよい機械をそろえて一貫加工を
同業者も一目置くようになって・・・・・・

「若い頃、家電メーカーの製造ラインの整備、自動化などに
携わって技術を学んだ」と振り返るタカタ精密工業の創業者、
髙田俊秀会長。

 「会社の経営は、体育会的にはいきませんね」
 若大将のように明るく語るのはタカタ精密工業(株)の髙田俊一社長。高校・大学時代をたぶんに体育会的に過ごしてきた同氏にとっては、「気合いだ!……」のかけ声は必勝の呪文のようなものであった。しかしながら、“喝”のかけ声で売上げが増えるのならば、経営はなんと楽なことか。会社を引き継ぎ、「代表取締役」の重さを両肩に感じた時には、それをしみじみ思ったものだ。
 タカタ精密工業は、現会長の髙田俊秀氏が35歳の時に興した会社である。氏は関西の大手家電メーカーに9年ほど勤めた後でUターンし、地元の金型部品メーカーで研削の仕事に8年携わったのちに独立したのであった。
 同社の礎となる技術を習得したのは、家電メーカー時代だ。ある時、それまで分業で生産されていたある家電製品を、部品の設計・製造から完成品の組み立てまでを、社内の一貫ラインで行うこととなった。その時、髙田青年(現会長)が家電メーカーの生産技術研究所に半年あまり派遣され、研削やプレスなど当時としては最先端の産業機械の操作方法ならびに、加工のコツについて研修を受け、それを製造ラインのスタッフに伝える役目を負ったのだ。

口コミで客先を増やす

薄いシートや医薬品の包装材などを切る産業用カッター。
材質はSKD11。

 髙田会長が当時を振り返る。
 「のちに工場の機械化はもっと進み、今度は自動化が試みられるようになりました。今では当たり前ですが、40年ほど前の当時としては画期的なことで、その推進役がまた私のところに回ってきたのです。マシンの動作をよりよいものにするために、治具の改良を自ら試みたりもしましたが、そのうち富山にUターンする話が浮上して、帰ってきたのです」
 ハローワークで再就職の相談をしても「そんな大きな会社を辞めるとはもったいない」「そこで培った技術を生かせる企業は富山にはない」とけんもほろろだったという。仕方なくハローワークを辞去したのだが、帰りぎわにたまたま富山市内の金型企業の求人票を見、そこを訪ねてみた。
 「住所をたどって行くと、ある農家の隣の土蔵に行き着きました。社長は不在で、薄暗い蔵の中に研磨機が2台あり、その脇に加工が終わった金属部品が並べてありました。一目見てすごい技術の持ち主であることがわかりました」
 そのまま社長の帰りを待った髙田青年。帰ってきた社長の顔を見るなり「明日からここで働きたい」と直訴し、従業員第1号となったのだ。
 腕のいい職人が2人になり、その噂が業界に伝わったため仕事は徐々に増え、同社はのちに30人ほどの従業員を抱えるまでに。その後で髙田青年はタカタ精密工業を創業し、「腕の確かさ」を買われて得意先を徐々に増やしていった。同業者が“青息吐息”になったバブル崩壊時もリーマンショック時も、他所より半年ほど遅れて売り上げが落ち、他所より半年ほど早く売り上げが回復したのだという。
 「それでもあのバブル崩壊の時はきつかった。一時は廃業も考えましたが、ぎりぎりのところで1社からの発注が復活し、生き返ることができました。それまで当社は、その1社からの受注の比率が高すぎた面があったのですが、景気が戻ると『喉元過ぎれば熱さを忘れる』の諺のように、1社依存への危機感も消えていきました」

展示会参加と会社の特色づくり

高性能な機械を積極的に導入してきた同社。JIGBORER、ワイヤ
放電加工機、NC成形研削盤など一貫生産のためのマシンが
導入され、加工現場の従業員数の5倍のマシンがそろっている。

 髙田会長は反省の弁も交えながらバブル崩壊の後を振り返るが、本格的にその具体的な対策を練り始めたのは、リーマンショックの2、3年ほど前からだ。取引先を増やそうと、当時専務であった現社長が、当機構が主催、あるいは参加を支援する展示会や商談会に参加し始めたのであった。
 「初めのうちは、ポツリ、ポツリという感じでの参加でしたが、リーマンショック以降は年に5〜6回は参加するようにしています。リーマンショック後、景気が落ち着いてきた頃の当社の取引先は50社あまりで、そのうちの15社ほどから毎月注文をいただていましたが、今では取引先は200社近くに増え、毎月注文をいただく企業はそのうちの45社くらいになりました」(髙田社長)
 取引先数の増大は、気合いによるものではない。展示会や商談会で出会った企業担当者とのご縁を大切にし、フォロー営業を続けてきた結果だ。展示会のブースで隣り合わせになった同業者からも受注するようになった。タカタ精密工業の腕の確かさが買われ、同業者が外注先の1つに加えたのである。
 「同業者も一目置く」タカタ精密工業。これは会長が経営の前線に立っていた頃から心がけてきたことで、現社長がそれに拍車をかけ、会社の特色づくりに結びつけた。特色の1つは、一貫生産だ。それも、よい機械を導入し、より高精度な製品を一貫生産で提供する、である。機械の導入のために銀行からの融資や国のものづくり補助金も活用してきた。
 「私が目指してきたのは、『道ばたに落ちている釘1本を加工してでも、1つ1万円の精密部品をつくる』です。実際それを実行してきましたが、そのためにはよい機械と、それを使いこなす技術が必要です。技術の方は勉強すれば追いつきますが、機械の導入には資金が必要で、何度か銀行のご協力をいただきました。銀行の方には『よい機械と技術があれば仕事はついて回る』といって精密加工のサンプルをお見せしたりもしました」
 と髙田会長は語るが、同社ではリーマンショックからの立ち直りの兆しを感じた時点で、新型のある精密加工機を入れ、展示会への積極出展と合わせて“取引先200社”へのきっかけをつくったのだ。

特色づくりが功を奏して……

「リーマンショックの時、私は落ち込んで迷ったこともあったけど、
社長(現会長)は『今できることをしよう』といって真っすぐに前を
見ていた。経営者はこうでなくてはいけない」と思いましたと語る
髙田俊一社長。展示会等には積極的に参加するようになった。

 特色づくりの2つめは、短納期のための工法転換である。気合いだけでの短納期は、無茶を繰り返すだけで長続きするものではないが、客先から提供された図面を理解し、部品の用途、必要とされる強度などを詳しくヒアリングした上で、材質や形状、加工の手順、加工法などで変更した方がよい点があればそれを提案し、コストダウンも含めて工期短縮を提案していく、というものだ。
 「部品をつくる技術そのものは、客先にもあります。従ってそういう提案を行うためには、客先の加工技術を上回るノウハウと知見を持っていなければならず、社員の一人ひとりが技術の向上はもとより、新しい技術や工法の情報も積極的に取り入れるようにしています」
 と若社長は「全社的なスキルアップがあってはじめて短納期は可能」と強調するのだった。
 特色づくりの3、4番目は上記2つとも関連するが、納期に合わせた工程管理と材料の在庫がそれだ。納期に合わせた工程管理は、材料の特性や加工法に合わせて、工程をアレンジしていくこと。これは一貫生産と、図面を理解した上での工法転換のノウハウを有するがゆえにできることである。
 また材料の在庫は、同社の場合は小型の部品が多いため可能な側面があるものの、客先からの急な要望に応えるために、また材料変更に応えるために、ダイス鋼、合金工具鋼鋼材、プリハードン鋼、炭素鋼、ステンレス鋼材、高速度工具鋼材などを常備。鋼材によっては3mm〜20mmの厚みを1mmごとに用意し、ダイス鋼、合金工具鋼鋼材、ステンレス鋼材、高速度工具鋼材では焼入れを済ませた状態での在庫もしている。焼入れだけでも1日、それを鋼材の発注から行ったとすれば3日〜4日待つところを、その日から加工に入ることができ、さらなる納期の短縮が可能になるわけだ。
 こうした特色づくりと展示会や商談会に積極的に参加するようになり、リーマンショック明けの落ち着いた状態の時に比べて現在は、毎月注文をいただく客先は3倍、全取引先数は約4倍に増えた。それに比例して、売上げも従業員数も1.5倍になったそうだ。

医薬品製造の機器の世界へ

滑り止めの加工やチューブ端の止め加工などに用いられる
ローレット加工とその拡大写真(下)。

 最後に髙田社長に今後の抱負についてうかがった。
 「数年前から、医薬品メーカーの依頼で製造ラインの不具合を改善するための部材・部品をつくらせていただくようになりました。例えばある医薬品メーカーでは、テプラをラインに貼付け、材料や工程を表示していましたが、万一テプラが剥がれたり一部欠けて破片が医薬品に混入した場合は、その生産ロット分を廃棄し、ライン全体を点検しなければなりません。そうした事態が起きない工夫を当社の技術でご提案させていただきました。それが金融機関の紹介などで他の医薬品や化粧品のメーカーにも伝わり、困り事のご相談を受けるようになったのです」
 この取材の時点ではその数は5社に及び、中には大手製薬メーカーも含まれる。それら5社に同社の金属加工の技術を用いた部材を提供したのだが、髙田社長は「これをもっと広げたい」という。
 富山県は医薬品の生産額は全国トップクラスであるが、医薬品をつくる機器の生産はきわめて少ない。せっかくのビジネスチャンスを生かしきれていないのが実情だ。タカタ精密工業はそこに着目し、医療用機器製造業の登録も済ませて、新しい道を切り開こうとしている。
 医薬品にかかわるだけに、求められる品質や安全性は、従来より遥かに高いものが求められるが、ここは気合いの入れどころかもしれない。

連絡先/ タカタ精密工業株式会社
〒930-3261 中新川郡立山町野町326
TEL 076-463-6311 FAX 076-463-6388
URL http://www.takataseimitsu.com/

作成日  2018/03/26

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