第29回 株式会社クリア 節水器 販路開拓ステップアップ事業 TONIO Web情報マガジン 富山

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企業活動には山あり谷あり。谷から脱却し、右肩上がりに導いた経営者のひと言には再起のヒントあり。

第29回 株式会社クリア

新しい節水器でビジネスチャンスを創出
支援マネージャーと大口案件も受注した

節水器「エコ」でご自身の人生のルネッサンスを図った小竹昇社
長。

 「えっ、あの小竹(こだけ)さんが水道設備の業界に転身して、節水器を販売するんだって!?」
 24年前のある日のこと。富山のスーパー業界が揺れた。それまで小竹さんは、チェーン展開しているあるスーパーのボランタリー本部に勤め、店長や専門店Mgを担当するなど、競合するチェーン店からも一目おかれた存在になっていた。そんな氏がまったくの畑違いの分野で、一から、いやゼロから再スタートを切るというのだから、業界雀が騒ぐのも無理もないことだった。
 「当時は、バブルが弾けて数年したころでした。とはいえ商品の売れ行きは今日よりよく、極端なディスカウントをしなくてもよかったように思います」
 小竹昇社長は20年ほど前を振り返るが、多少かげりが出始めたものの、当時の小売業界はまだ元気だったようだ。そうした中で氏は、店長や新店舗の立ち上げを数店経験し、「この業界で、やることはやった。この後は、何か新しいことを…」と転身を図ったのである。
 ところが退職して間もなく、別なボランタリーチェーンの経営者から「新しいショッピングセンター立ち上げの事務局長を務めて欲しい」と懇願されて再登板。そこで運命の節水器に出合ったのであった。

これはビジネスチャンスかも…

 「環境とか資源に関心を持ち始めていた私は、ショッピングセンターの事務局に訪ねてきた節水器の営業マンの話を詳しく聞きました。食品スーパーでの導入事例があり、15%程度の節水効果があるという。そこで私は、キーテナントの食品スーパーだけでなくショッピングセンター全体で取り組んだ方がいいと判断して、他のテナントの方々にも協力をお願いしたのです」(小竹社長)
 その節水器を取り付けると、確かに15%ほどの節水効果があった。そこで氏は、今後の自分のビジネス人生を、その節水器にかけてみようと思い、メーカーに代理店として販売させて欲しいと申し出たのである。
 メーカー側からは、了解の返事が返ってきた。小竹社長はさっそく個人創業(平成6年)して、スーパーチェーンの本部などを訪問。まずは、かつて知った業界に営業をかけたわけだ。冒頭に紹介した、業界雀が騒いだのはこの頃のことで、県内はもとより北陸や岐阜、長野などで展開しているチェーン本部にも足を運び、業界事情に詳しいことを武器に徐々に販売の実績を伸ばしていった。
 「一般的に節水器は、販売して取り付けたらそれで終わりです。しかしある時、取り付けて3~4年ほどした食品スーパーに出かけて、何か変化があるかと思って調べさせていただいたら、節水器の形が変わっていたのです」
 小竹社長にとって、この変形は意外だった。中には、影も形もなくなっていたところもあったそうだ。さっそく形が変わった節水器を持ち帰り原因を調べると、その地域一帯の水道水は硬水で、真鍮製の節水器は長年の使用の中でいわば摩耗していたのだ。これでは節水効果が低下し、節水器導入の意味がなくなってしまう。
 その時、小竹社長は思った。
 「これはひょっとしたら、ビジネスチャンスかもしれない」
 さっそく友人を介して金属加工に詳しい業界人に相談すると、材質をステンレスに換えたらいいとアドバイスされ、独自に商品開発に乗り出したのである。
 その際、留意したのは節水器の導入により、水の使用感が変わらないこと。代理店として販売していた某メーカーの節水器もよく研究されたものであったが、取り付けると水が若干細くなって使用感が変わり、業務上、水を使う現場では水栓金具をより開く方向に回すケースもあったそうだ。それでは期待した節水効果が得られない。そこで使用感は変わらないものの、節水効果が確実な節水器に進化させることを狙ったのだ。

あの自動車会社もエコを導入

同社のエコには38種あり、節水器メーカーでは群を抜く品揃え。
水の使用状況によってどの品番のエコにするか使い分けている。

 新しい節水器ができ、特許が認められたのは平成18年3月。代理店契約を結んでいたメーカーとの契約を解除し、小竹社長は自社製品の節水器「エコ」の販売に乗り出した。
 ちなみにエコの効果のほどは…。
 実験レベルでは、毎分16.7リットルの水が出ている水道栓に、同社のエコを取り付けて同じ開栓状態にすると毎分9.2リットルの出水に。節水量7.5リットル、節水率は約45%だ。こうして水量を削減しても、水勢がプラスされているため水の使用感は変わらないという結果が得られた。
 ただ、これはあくまでも実験レベルのもので、日常的な水道使用に基づいたものではない。そこで、ある自動車会社の本社ビルに採用された実例を紹介しよう。ちなみにその自動車会社は、コスト管理や品質管理では群を抜いて厳しいことで有名な企業だ。
 本社ビルには1800人あまりが働いていた。年間の水道使用量は約41000トン、およそ2540万円の水道料金がかかっていた。そこで エコを導入したところ、節水率10.38%、節水量約4256トン。水道料金の削減は年間で264万円あまりだった。システムの設置費は、6年リースで年間37万6800円だったので、年間の正味の水道料削減は226万3200円、6年間で1360万円近くになったという。
 「もともと節約の意識の高い社員の皆さんですから、水栓金具の開け方も、必要以上に“開”にはされていなかったのでしょう。エコを導入しての、このビルの実際の節水率は10%を少し超える程度でした。当社ではエコの導入をお勧めする際、蛇口毎の水の使用状況をうかがい、エコの中でもどの品番の製品が適しているかを判断して全体の節水計画を立てます。使用状況からみて、節水効果の低い水道栓には無理に導入は勧めません。また水道料金は地域によって異なり、東京のある自治体では1立方当たり700円程度のところがあるかと思えば、水が豊かな地方ではその半額というところもありますので、実情に合わせた試算をします。そして実際に導入されたら、売りっぱなしにはせず、どれだけの節水効果があったかを追跡調査し、お客様に報告するようにしています」(小竹社長)
 随分と手間ひまのかかる営業スタイルだが、「信用を得るためには一番の近道」(小竹社長)だそうだ。
 こうした営業方針でいるため、単に代理店契約を結んで取扱店を増やすことはしていない。自社での営業・施工を中心に行い、その過程で施工協力店を開拓し、そのお店を取扱店に育てていくことに。こうした地道な営業努力が実を結び、エコのウワサはじわじわと広がり、食品スーパーや病院、福祉施設、学校、工場などに導入されるようになった次第だ。

公的支援制度を活用し始めると…

平成19年2月に開催された「第2回とやまベンチャーマッチング
フェア」でのプレゼンテーションの様子。

 平成19年に転機が訪れた。前年に「とやまベンチャーマッチングフェア」(主催/県・当機構)に参加し、また県の「トライアル発注制度」の認定を受けたある水道管メーカーの社長から、これら制度の概要を聞いた小竹社長はさっそく当機構を訪問。機構ではトライアル発注制度への推薦をするとともに、マッチングフェアへの参加や他の支援制度の利用も勧めた。(注釈/「トライアル発注制度」:県が認定したベンチャー企業・中小企業者等の開発した新商品を県が試し買いし、使用後の意見をフィードバックする制度。
中小企業者等の販路開拓を積極的に支援し、合わせて使用後の意見をフィードバックし商品開発を支援する。「とやまベンチャーマッチングフェア」:県と機構が協力して行った新商品プレゼンテーションのイベント。フェアには各種業界のバイヤーや金融機関、投資家を招き、業務提携や販売などの商談の機会を設けた)
 その際小竹社長は、平成19年2月に開催される「第2回とやまベンチャーマッチングフェア」に参加することにした。そしてフェアの当日、たまたま来場していた中小企業基盤整備機構の担当者に東京ビッグサイトで開催される中小企業総合展への出展を勧められるとともに、首都圏での事業展開を促されたのである。
 「東京での事業展開は当初から考えていましたが、そのきっかけがありませんでした。そこで新世紀産業機構の担当者に相談し、中小企業総合展で、県が県内企業を支援するために借りていたブースの一部を使わせていただき、エコをPRするとともにその感触を調べることにしました。反応は上々で、近いうちに首都圏に拠点を構えようと思いました」(小竹社長)

東京で大きな案件を受注

 それが具体化するのは、翌年(平成20年)に入ってからだ。2月に、千葉市に営業拠点を設け、さらに翌年には世田谷に東京オフィスを開設。関東での施工協力店がノウハウを蓄積して取扱店となり、営業やアフターフォローの体制も整い始めた。後には金沢や福井、京都、大阪にも取扱店ができ、関東から関西までの営業・施工が可能になってきた。
 そして平成22年。当機構の販路開拓ステップアップ事業に採択されて、商社OBの支援マネージャーから販促のアドバイスを受けることに。これにより首都圏での営業活動に弾みがついた。その代表的な例が、東京のある区へのアプローチ。区長が富山にご縁のある方と知った小竹社長とマネージャーは、区長にトップセールスをかけ同区の区立小・中学校(全35校)でのエコの導入を提案したのだ。
 小竹社長はマネージャーの指導を受けながら、まずは区長宛にビジネスレターを書き、エコの紹介とともに面会を求めた。区長は「話を聞いてもいい」と応諾。さっそくアポイントをとってマネージャーとともにうかがうと、「本当にそれだけの節水効果があるのなら、検討してもいい。ただ、導入には物品購入の手順など、役所の決まりがあるのでそれに準じて欲しい。担当者を紹介する」と返ってきた。
 そこからが長かった。事業計画の提案書、節水の計画書を作成し、現場の担当者から順に上司の了解をもらい、翌年度には2校で実証実験を実施。水道栓にエコを取り付け、いわゆる“使用前・使用後”のデータをとったわけだ。

あるスーパーでエコを取り付けた際の、取付け前(左)、取付け後(右)の流量の比較(同じ開栓状態で15秒の流水量)。1/3強の節水になっている。

 「最終的にエコ導入のご判断をいただいたのは今年の夏。最初のプレゼンテーションから導入決定まで2年ほどを要しました。公共施設での導入では、だいたいこうです。この間いろんな書類を作成しましたが、マネージャーにはその都度相談にのっていただきました」(小竹社長)
 35校での導入が決まり、施工はこれからとはいえ同社にとっては大きな実績になった。しかも、これで終わりではない。実証実験や導入が決まったことが他の地域に伝わり、「そこまでの節水効果があるのならウチでも…」と関心を示している自治体や学校がいくつもあるという。
 従来、学校での施工例は20校程度であったが、今回の受注で一気に3倍になった。全体の施工数も1000件の大台に乗った。
 小竹社長は今、次の1000件を5年でクリアするための計画を練っているところだ。

連絡先/ 株式会社クリア
〒939-0364 射水市南太閤山8-42-2
TEL0766-56-6554 FAX0766-56-7554
URL http://www.clear-eco.jp/

作成日  2013/09/25

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