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第64回 Cafe小馬キラリ店

喫茶の名店「小馬」、TOYAMAキラリに出店
よろずコーディネーターとの二人三脚が効いた

富山の喫茶店の老舗「小馬」を引き継ぎ、TOYAMA
キラリ2階の喫茶コーナーに「Cafe小馬キラリ店」を
出店した、オーナーの山澤房子さん。

 ちょっと古い話で恐縮だが、その昔、「学生街の喫茶店」(昭和47年リリース)というフォークソングがあり、結構はやった(翌48年、年間オリコンチャート3位)。当時は、学生街のみならず商店街や駅周辺にも喫茶店は増え、昭和56年には全国で15万4630店まで増加。ところがそれをピークに減少し、令和3年には5万8669店に。最盛期の4割弱になってしまった(店舗数は、各年の総務省事業所統計調査報告書、経済センサス基礎調査・活動調査結果より)。
 最近は、コーヒーの専門店やチェーン店のロードサイドや郊外への新規出店は時折目にするものの、個人経営のお店が新規に暖簾(のれん)を出すのは極めて珍しい。その珍しい一例に数えられるのが、富山市ガラス美術館や富山市立図書館本館などが入る複合ビル、TOYAMAキラリに出店した「Cafe小馬キラリ店」だ。

「小馬」をやってみないか、と誘われて

桜町の喫茶「小馬」の内観(写真上)と、人気のオム
ライスの巻きオムライス(写真中)、ふんわりオム
ライス(写真下)。

 富山市内の方なら桜町の喫茶「小馬」のことをご存知の方も多いだろう。昭和60年オープンで、オムライスがおいしいと評判の店だ。その店を、知人経由で「やってみないか」と山澤房子さんに打診があったのは、平成26年のことである。当時、山澤さんはある高級割烹店(ミシュラン三ツ星取得店)で働き、接客と調理補助に従事。「いずれは和食のお店を持ちたい」と希望を抱き、飲食店運営のノウハウを学んでいたところだった。
 山澤さんが振り返る。
 「最初は『店長として小馬の運営をやってみないか』と持ちかけられたのですが、それはお断りしました。しばらくすると今度は『小馬の名前を引き続き使ってもいいから、経営してみないか』と誘われたのです。そのお話をいただいた時、お店に活気は感じられませんでしたので『経営は苦しいのかな』と想像することはできました」
 先述のように、「いずれは和食のお店を持ちたい」と思っていた山澤さん。同じ飲食店とはいえ、喫茶店は畑違いだ。冒頭に挙げたように、「街の喫茶店がだんだん少なくなり、厳しい経営環境にあることは感じていた」そうで、周囲の誰もが断るだろうと思っていたのを、山澤さんは引き受けたのだった。ちなみに、この話があった平成26年の全国の喫茶店数は6万9983店で(平成26年経済センサス基礎調査結果)、「だいぶ減ってきた」と感じる人も多かったのではないか。
 山澤さんが続けた。
 「返事をするまでの1週間、営業中のお店に何度も見学に行きました。そこでいくつか気づいたことがあり、『これらを改善したら小馬は復活するのではないか』と思ったのです。また創業30周年を迎える小馬が苦境に立ち、立て直しを求めている場に巡り合ったのもひとつのご縁ではないかと思い、『和食のお店を・・・』はしばし脇に置いて、小馬再興に努めることにしました」(山澤さん)
 結果は上々だった。ミシュラン取得店でのノウハウの蓄積がよかったのか、あるいは山澤さん本人のサービス業に対する勘どころがよかったのか。「これらを改善したら・・・」を実行に移すと、初年度から今日まで健全経営を続けてきたのだ。

 

今度はガラス美術館のキラリへ

富山県よろず支援拠点のホームページのトップ画像
(写真上)富山市高田の新世紀産業機構のオフィス内
での相談対応をメインとし、南砺市商工会館、魚津
商工会議所、富山市立図書館などでサテライト相談
会も実施している。写真下は富山市ガラス美術館
などが入るTOYAMAキラリの外観。

 この山澤さんに風雲急を告げる事態が起きたのは、令和5年1月のことである。新年明けて6日の地元紙が「富山市は、市ガラス美術館や市立図書館本館などが入るビル『TOYAMAキラリ』(西町)で4月からカフェを運営する事業者を募集すると発表」(富山新聞)し、希望者によるプロポーザル(事業提案)が行われ、最優秀者がカフェを運営することになると報じたのだ。
 この記事を読んだ山澤さん。居ても立ってもいられなかった。コロナ禍により桜町の「喫茶小馬」では、パート従業員を解雇せざるを得ない状況になったのだが、コロナ収束の兆しが見え始めた時の“出店話”だっただけに、「かつての仲間と一緒に新天地でお店を」と期待が膨らんだのだ。また西町は山澤さんの父親がかつて陶器店を営んでいた地で、お店を経営する父親の背中をみて「将来は自分も」と志を立てた原点でもあった。そこでさっそく市役所の担当課に連絡を入れ、プロポーザル参加の意思表明をしたのである。
 後には引けなくなった山澤さん。懇意にしている建設会社の社長に電話を入れた。「この社長ならば、プロポーザルの書き方を誰に相談したらよいかなどの、的確なアドバイスをしてくれるのではないか」と期待して連絡したのだ。
 すると社長いわく、「富山県よろず支援拠点に指導を仰いだらよい」と。
 事業提案書の提出締め切りは、2週間後に迫っていた。山澤さんは建設会社社長の勧めを受けて、よろず支援拠点を訪問。資料作成のために、コーディネーターとの二人三脚を始めたのだ。
 「お店のコンセプトは『繋ぐ』にしようと思っていました。その意味するところは、高齢者や学生、旅行者などの人と人を繋ぐ場、駅前の小馬とキラリのお店が繋がって街につながりをつくる場、人と街が繋がることで街に元気をもたらし、現在と未来を繋ぐ場にしたい、と。そういったことをコーディネーターの意見も参考にしながら事業提案書に盛り込みました。またガラス美術館があるビルに入居することにちなんで、飲食物の提供にガラスの器を多用するなどのアイデアも書き添えました。2週間にわたってご指導いただいた結果、私が提出した事業提案書は高く評価され、2月9日に採択の通知をいただくことができたのです」(山澤さん)

キラリではオムライス弁当に封印

ゆったりとした「Cafe小馬キラリ店」の内部(写真上)と、
テイクアウト用に想定していたオムライス弁当(写真下)。
お店には調理用のガス設備はなく、また匂いの強い
食べ物の提供にはあらかじめ制限があった。

 さっそくオープンに向けての準備が始まった。その中で、問題点も浮かび上がってきた。人気のオムライスを弁当化して持ち込み、キラリ店で販売する予定でいた。ところがよく観察すると、お弁当を美術館や図書館に持ち込んで食べている来館者が時折いるようで、「どんなに注意喚起しても、持ち込みは止められないかもしれない。美術館の資料や図書館の本にケチャップをつけられたら大変」と山澤さんが思ったことから、弁当類の販売を見送ることにしたのだ。
 準備に手間取って、TOYAMAキラリに「Cafe小馬キラリ店」がオープンしたのは6月1日のことである。新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きつつあり、それを見込んで売上計画を立てていたのだが、弁当類の販売を見送ったため計画に齟齬が生じてきた。商品アイテムが少なくなり、また利幅の薄いドリンク類をメインにしなければならないという、厳しい経営課題が立ちはだかってきたのだ。
 「それでも令和5年の夏は暑かったので、ここでドリンクを飲まれる方も多く、経営的には助かりました。しかし問題はこれからいかに集客を伸ばすかです」と語り、「大型ショッピングモールの富山市周辺への出店の噂もありますから、ここで営業を続けられるかは予断を許さない状況です」と付け加えた。
 山澤さんは今、「Cafe小馬キラリ店」の運営に注力する傍ら、営業時間が重ならないよう工夫して桜町の「喫茶小馬」は曜日を限って営業。ともに従業員に任せきりにすることなく、運営や接客には毎日あたっているという。
 「主な商材はドリンクの提供ですが、私たちの姿勢で客足はがらりと変わります。私はスタッフに『笑顔が大事』といつもいっていますが、逆に私たちの表情が暗いとお客様はどう思うでしょう。『あんな店にはもう行かない』となり、お客様の足を遠のかせてしまうのです。またオーナーの目がお店の隅々に行き渡らないと、従業員のお客様を迎える姿勢やホスピタリティーにムラが生じたりして、それが客離れの一因になることもあるのです」(山澤さん)

この先、中心街の商圏環境が変わる

「Cafe小馬キラリ店」で提供されているドリンク、軽食
の例(写真上・下)。富山ガラス工房の協力を得てつくっ
た同店専用のグラスで飲むドリンクが人気だという。

 この言葉からは喫茶店運営の難しさが伝わってくるが、「オーナーの目が行き渡らないと・・・」ということは、小馬3号店、4号店の可能性はないのか。そのあたりをうかがうと、「現状ではないですが、信頼できる店長を育てることができればその可能性がありますし、脇に置いた『和食のお店を』が息を吹き返してくるかもしれません。いずれにしても、この先5年、10年を見渡すと、富山市の中心部での飲食店の経営には難しいところがあると思います」と返してきた。
 今回の TOYAMAキラリへの出店にあたって、山澤さんは各種の統計を利用しながら富山市内の人口の推移も調べたという。そこでわかったのは、5年先程度までなら中心街にはまだにぎわいが残っているようだが、10年先になると陰りが見えてくるのではないか、と。進出が噂されている大型ショッピングモールのあり方いかんによっては、富山駅周辺、西町周辺の人の流れも変わることが推測されるという。
 「今回のプロポーザル資料の作成にあたり、私が立てた事業計画、売上計画などに目を通していただき、不備な点や見通しの甘さなどを、よろずのコーディネーターにはいくつもご指摘いただきました。またお店を出す機会があったら、今度は真っ先によろず支援拠点に連絡を入れます」と言って、山澤さんは取材を締めくくった。

 

所在地/富山市西町5-1 TOYAMAキラリ2F
代表者/山澤房子
資本金/−

従業員/12名

事 業/喫茶店の運営
TEL/076-492-7867
SNS/https://www.instagram.com/cafe.koumakirari/

作成日  2024/01/30

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